ゲームやフィギュアが仮想現実に!秒間120コマが映し出す“真”の立体感 別世界への扉を開く東芝3Dノートを見る

東芝から3Dノートが発売された。3Dゲームも楽しめるハイスペックな本体に、秒間120コマの表示が可能な高速駆動液晶を搭載。アクティブシャッター方式の3Dメガネと組み合わせて、自然で違和感のない立体映像の表示を可能にする。その立体感はどれほどのものか、3Dノートの実力を見ていこう。
メガネをかけた瞬間に目の前に現れる立体空間 自然な立体感を実現する秒間120コマの3Dシステム

東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

  東芝の「dynabook Satellite AXW/90MW」は、液晶画面での立体表示が可能な3Dノートだ。立体表示の方式にはいろいろとあるが、東芝が採用しているのはアクティブシャッター方式である。超高速駆動が可能な液晶と、専用の3Dメガネを組み合わせることで立体表示を可能にする。具体的には、液晶画面に左目用の映像と右目用の映像を交互に表示し、左目用の映像が表示されたときには右側の、右目用の映像が表示されたときには左側のメガネが黒くなって片目の視界を遮る。これを高速に行うことで視差による立体表示を可能にしている。

 当たり前だが、そもそも人間は左目と右目が左右離れた場所に付いている。つまり、同じものを見る場合でも、左目が見ているものと右目が見ているものは微妙に異なるわけだ。その異なる映像を頭の中で合成しているから人間はものを立体に見ることができる。このことは、顔の前に人差し指を立てて、その指を見ながら左目と右目を交互につぶってみると分かりやすい。左目と右目で見ている部分が異なっていることがすぐに分かる。

 パソコンで使われている通常の液晶画面は、そのほとんどが1秒間に60回の表示を行っている。秒間100コマの描画を行うゲームでも、秒間24コマの描画を行う映画でも、液晶画面自体は秒間60コマで表示している。ところが、前述した立体表示の仕組みでは、左目用と右目用の映像を交互に表示して、それを合わせて1コマとして表現しなければいけないので、通常の液晶画面では秒間30コマでしか表示できない。秒間60コマの表示に慣れている我々の目には、秒間30コマでは表示がチカチカしたりスムーズさが欠けたりして見えてしまう。そこで東芝の3Dノートでは、秒間120コマの表示を行える高速駆動液晶パネルを採用している。秒間120コマの表示が可能な液晶画面なら、左目用60コマと右目用60コマで、立体表示時でも秒間60コマの表示を行える。


東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

3Dノート本体に加えて、手前左が3Dメガネ、右手奥が3Dメガネと液晶画面を同期させる送信機だ。立体視に対応するソフトを動かし、メガネをかければすぐに立体表示を体験できる。本体にはAVリモコンとマウスも付属する。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

立体システムには、NVIDIAの3D Visionを使用している。3Dメガネは充電式のワイヤレスなので、感覚としてはサングラスをかけるような感じである。メガネをかけていても問題なく装着でき、重さは約50gだ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

3Dメガネの充電は、付属のUSBケーブルを使ってノートから行う。3Dメガネ側の端子は汎用のミニUSBだ。バッテリーの持ちは、仕様では満充電から約40時間となっており、連続して使用したとしても十分な持続時間である。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

液晶画面と3Dメガネの同期を行う送信機。3Dメガネに赤外線で信号を送り、液晶画面に左目用の映像が映っているときには右目側を、右目用の映像のときには左目側を黒くする。赤外線の届く距離は約4.6メートルだ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

送信機の裏側にはミニUSBポートがあり、付属のUSBケーブルでノートと接続して使用する。3D SYNC IN端子は、3Dテレビ用のものなのでノートでは使用しない。ダイヤルは、立体視の立体具合(奥行き)を調整するものだ。

 東芝の3Dノートが採用する立体表示の仕組み自体は、最近話題になっている3Dテレビで使われているものと同じで、ほかの方式よりも立体表示が分かりやすく、多くの実績がある。現在のほぼスタンダードな立体表示方式と言える。実際、この東芝3Dノートも違和感のない立体表示をいとも簡単に体験でき、その立体具合もかなり凄い。

 立体映像が立体に見えなかったり、少し見るだけで気持ち悪くなってしまったりと、立体表示が苦手という人もいると思うのだが、東芝のノートなら多分大丈夫だ。何の工夫も何の心構えも必要なく、メガネをかけて液晶画面を見た瞬間に、そこには普通に立体映像が現れる。多少頭を動かそうが、見る角度を変えようが、お構いなしに立体だ。しかも、かなり立体である。凄く立体に見えるものでは、液晶画面に手を突っ込めば、そこに手が入っていくのではないかと錯覚するほどに立体に見える。立体の度合いはコンテンツによってかなり変わるので、ほどほどに立体なものから、前述の凄い立体までさまざまで、それぞれ異なる良さがある。今後は、コンテンツ側の立体度合いの調整も、作品の演出方法の1つになっていくのだろう。

 このような自然な立体表示は、アクティブシャッター方式を使用する3Dシステムならではのもので、ほかの3Dパソコンなどが採用する偏光方式では得ることができない。たとえば液晶画面の前で、立体に見える位置を頭を動かしながら探した経験がある方もいるだろう。この3Dノートならそんなことをやる必要はない。3Dメガネをかけて液晶画面を見るだけで、すぐに立体表示を楽しめる。その手軽さがいい。
ディスプレイの中に広がるゲーム世界 まるでノートの中に小人がいるかのよう

 立体表示に対応するコンテンツはいろいろとあるが、もっとも手っ取り早く立体表示を楽しめるのは3Dゲームだ。3Dゲームは、ゲーム内の世界をリアルタイム処理で描いている。ゲームシステムが作り出すゲーム内世界に対して、液晶画面の位置から見たらどのように見えるのかということを計算して画面を描いているのだ。そのため、左目から見えるであろうゲーム内世界と、右目から見えるであろうゲーム内世界を視差を考慮して演算するだけで容易に立体映像を作り出すことができる。その仕組み上、最新の3Dゲームでなくても、キチンとリアルタイム演算を行っているものであれば古いゲームであっても立体表示が可能だ。この3Dノートの場合、立体表示システムにNVIDIAの3D Visionを使用しているので、NVIDIAのWebサイトで3Dゲームの快適度合いをチェックできる。3Dゲームを遊ぶ際には参考にするといい。

 試しに、3D映画としても有名な「Avatar」の3Dゲーム版である、Ubisoftの「James Cameron's Avatar: The Game」のデモ版で遊んでみたが、さすが映画でも立体映像が話題になった作品である。まるでそこに本当に存在しているかのように見える航空機、奇妙な植物、風に飛ぶ火の粉など、現実感が半端ではない。キャラクターにまとわりつく植物の葉や胞子は、確かにそこに存在しているように見える。ジャングルの湿気を含んだ重い空気まで感じられるほどだ。これには心底感動した。また、このノートはオーディオ分野で有名なharman/kardonブランドのスピーカーを搭載している。実際、ノートにしてはかなり音が良く、その音質と相まって驚きの臨場感を生み出しているのだ。

 ゲームはほかにもいろいろと試してみたのだが、その中でも今回とくにハマったのは、NHN JapanのオンラインアクションRPG「ドラゴンネスト」だ。剣と魔法のファンタジー世界で、剣で戦うウォーリアーや、魔法で戦うソーサレスなどを操って冒険を楽しむ3Dゲームである。オンラインゲームなので、画面内には他のプレイヤーが操るキャラクターが冒険をしており、ときには協力をしながらゲームを楽しんでいく。

 このゲーム、アニメ調のかわいいキャラクターが画面内をちょこまかと走り回るのだが、その様子が立体で描かれると、なんともかわいく見える。液晶画面の向こう側に箱庭があり、その中を実際にキャラクターが走り回っているような感覚だ。Avatarが、リアリティを追求した仮想現実のような立体表現なのに対して、こちらは箱の中にいる小人と遊んでいるような、まるでオモチャを立体化したような表現である。

 液晶画面の向こう側には、山があり、川があり、街があり、そこを自分の分身である小人が走り回る。モンスターが現れれば、小人同士が剣や魔法で大騒ぎを始める。なんとも微笑ましい。こういう立体表現もあるのだなと感心した。

 Avatarにしてもドラゴンネストにしても、3Dノートで楽しむことで、通常のパソコンでは絶対に体験できない別の楽しみが生まれる。ゲームによって立体視との相性もあるが、3Dノートで良かったと本当に感動するレベルの3Dゲームもあり、そのようなゲームでは1度立体視を体験してしまったら、もう通常の表示には戻れなくなる。ゲームなのに空気を感じるほどのリアリティ、画面の向こうに広がる別世界、3Dノートで楽しむ3Dゲームは想像していた以上にかなり楽しい。


東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

液晶画面から見える箱庭の中で、小人のようなキャラクター達がちょこまかと動き回る様子はとてもかわいい。通常の画面では体験できない、立体表示ならではの不思議な感覚だ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

モンスターも当然立体に見える。立体表示のため、動きの速いモンスターは視点の動きが追い付く前に目の前に現れることがあって臨場感がある。実際にモンスターに襲われたらこんな感じなのだろう。

 ちなみに、東芝の3Dノートは3Dゲームを快適に楽しめるだけのハイスペック仕様になっているので、大抵の3Dゲームはサクサク動く。CPUには、4コアのIntel Core i7-740QMを搭載しており、通常時は1.73GHz駆動だが高負荷時にはTurbo Boostが働いて最高2.93GHzで動作する。Intel Hyper-Threading Technologyに対応しているので、Windows上では何と8コアとして認識される。ノートには十分過ぎるほどのCPUだ。GPUは、NVIDIAのGeForce GTS 350Mを採用しており、1GBの専用のビデオメモリを搭載する。メインメモリは余裕の4GB、HDDは何本でもゲームを入れられるであろう640GB、ブルーレイディスクドライブも搭載するので、将来Blu-ray 3Dに対応する映画コンテンツなどがたくさん発売されれば、立体表示で思いっきり映画を楽しめる。15.6型のワイド液晶画面は、目の前で見ると結構大きく感じ、かなりの迫力を生む。3Dゲームを楽しむ際には1,366×768ドットの解像度もちょうど良い。全体に普通にゲーム用ノートとしても使えるスペックである。

東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

本体は、ハイスペックノートとしても使える性能を持つ。液晶画面はLEDバックライトを使用する15.6型のワイドサイズで、解像度は1,366×768ドット。GPUがGeForce GTS 350Mなので、この解像度なら3Dゲームも結構余裕だ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

本体前面には、SDXCメモリーカードやSDHCメモリーカード、メモリースティックなどに対応するメモリスロットを搭載する。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

左側面には、左からD-Sub 15ピン、1000BASE-T対応のLAN、HDMI、USB 2.0と共用のExternal Serial ATA、USB 2.0、ExpressCard/34スロットを備える。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

右側面にはブルーレイディスクドライブと、左からヘッドホン、マイク、USB 2.0×2、電源端子を備えている。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

背面には、約1.8時間の駆動を行えるバッテリーを搭載しており、インターフェース類はない。天板は模様部分がデコボコしていて手触りがいい。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

メモリは4GB、HDDは640GBを搭載する。どちらも本体の裏側のフタを開ければ簡単にアクセス可能だ。

フィギュアや景色がノートの中に現れる 3Dカメラで立体写真を楽しむ

 立体表示は対応コンテンツが少ないなんて思っている人はいないだろうか。前述したように、3Dゲームには対応の有無というものがそもそもなく、立体表示を行えるゲームだらけである。さらに、立体表示に対応するコンテンツは自分で作ることだってできる。これがまた実に楽しいので、ぜひ紹介したい。何を作るのかというと、3Dデジタルカメラを使用した立体写真だ。

 今回は、富士フイルムの「FinePix REAL 3D W1」という3Dデジタルカメラを使って立体写真を撮影してみた。3Dデジタルカメラと言うと、なんだか難しそうに感じるかもしれないが、実際には凄く簡単だ。その仕組みは、前述した左目と右目の視差を考慮する仕組みそのままとなっている。具体的には、デジタルカメラにレンズが2つ付いていて、それが人間の左目と右目の役割を担っている。パシャっと撮影すると、左のレンズと右のレンズに映る風景を別々に撮影して、それを1つのファイルとして記録する。それを、3Dノートの機能で人間の左目と右目にそれぞれ見せてやれば、立体写真のできあがりというわけだ。保存されるファイルの拡張子は「mpo」で、東芝の3Dノートでは、3D Vision Photo Viewerというソフトで見ることができた。

 実際に撮影をして、3Dノートでそれを見てみると凄く楽しい。通常の写真の場合には、撮影した風景などを“写真”として見るわけだが、立体写真の場合にはそこに現実感のようなものが含まれる。さっき見た光景が、ディスプレイの向こう側に広がるのだ。「え、凄い」と一人で声に出してしまうほど自然かつ立体に見える。

 撮影時に難しいことは何もなく、通常のデジタルカメラと同じように撮影するだけだ。それでも、うまく立体にするコツのようなものはある。それは、見たままを撮るということだ。立体写真の場合、まるで液晶画面の向こうに小さな現実世界があるかのように見えてしまう。そのため、ついつい立体写真を見ていると、自分が見たい部分に視点を合わせてしまうのだが、撮影時にピントが合っていない部分は、いくら見ても後からピントが合うことはない。たとえば、前ボケのような写し方をすると、なんとも気持ちの悪い違和感のある立体写真になってしまう。通常の写真で使うような、写真になったときにキレイに見えるようなテクニックはあまり使わず、自分が見ている様子そのままを撮影するとうまく立体になる。

 いろいろと撮影していて思ったのだが、Web通販などの製品写真が立体写真になったら便利そうだ。通常の写真では分からないような質感まで知ることができる。そこで、試しに手持ちのフィギュアを撮影してみたのだが、これが結構いい。フィギュアはもともと立体なので、立体で見たければ実物を見ればいいわけだが、画面の中に入るとまた違った魅力が出てくる。少々マニアックな例かもしれないが、新しいフィギュアの楽しみ方としてなかなかおもしろいなと思った。自分が持っているフィギュアの完成度の高さを知人に見せたいときにも、立体写真を送ればすぐに伝えることができる。展示会などで撮影してくれば、立体だからこそのフィギュアの魅力をそのまま家に持ち帰ることができる。

 マニアックな用途はこれくらいにして、ほかの例も考えてみよう。たとえば旅行やスナップ写真、料理や風景の写真だって立体なら通常の写真とは違った魅力が出てくる。とくに、建物や景色は立体写真との相性が良く、撮影時に目で見たままの風景を、そのまま小さくして段ボール箱に入れて持ち帰ってきたかのような楽しさがある。まるで、ドラえもんの道具のようで、凄く楽しい。もちろん動画も撮影できるので、立体映像として残すことも可能だ。

東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

富士フイルム「FinePix REAL 3D W1」。前面にレンズが2つ付いていて、簡単に立体写真と映像を記録できる。液晶画面には立体表示を行えるものを搭載しており、裸眼で立体に見える。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

カラフルな立体感が楽しい野菜。通常の写真では絶対に伝わらない、そこに実際に存在しているかのような質感。立体写真のフィギュアコレクションなんてのも楽しそうだ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

立体表示で見ないと、何の変哲もないブランコ。ところが立体表示で見ると、この写真は楽しい写真に様変わりする。立体表示では、ブランコは確かに液晶画面の向こうに存在し、今にも動き出しそうに見えるのだ。
東芝 dynabook Satellite AXW/90MW

偶然撮れた1枚なのだが、実はこの写真は立体表示で見るとシャベル部分が飛び出して見える。通常は液晶の向こう側に世界が広がって見えるのだが、撮影の仕方によっては飛び出させることも可能なようだ。かなり迫力がある。

3Dノートはとにかく楽しい これは早めに体験しておくべき

 ここまで何度も同じような表現を使っているが、3Dノートというのは、液晶画面という窓の向こう側に仮想現実を作り出すパソコンと言っていいと思う。液晶画面の向こう側には、ときにはリアルなジャングルが広がり、ときには小人が走り回る小さな箱庭がある。イベントの楽しさや旅の思い出をそのまま切り取って、液晶画面の向こう側に再現して楽しむこともでき、将来的にはさまざまな仮想現実の映画を楽しめる。映像がただ立体に見えるだけなのではなく、そこには今までには感じたことのない現実感や楽しみがある。立体表示というのは、新しい記録の方法なのだ。

 これは、一刻も早く体験し、そして既存のコンテンツを楽しむことはもちろん、記録も始めるべきだと思う。液晶画面の向こう側に広がる仮想現実には、今しか体験できないものもあるはずだ。同じゲームを楽しんだとしても、立体表示で楽しんだ人とそうでない人とでは、体験したものがまったく違う。映画なども同様だ。記録については、たとえばビデオカメラを始めて手にしたとき、何故もっと早くビデオカメラを手に入れなかったのだろうと感じた人は多いと思う。それと同じで、今しか撮れないものがあるのだから、今から立体写真や立体映像を記録しておくべきなのだ。東芝の3Dノートは、それを簡単に実現できる、立体表示のベース機械とも言うべき新時代の新しいノートと言える。新時代の楽しみ、是非体験してほしい。


[関連情報]

dynabook Satellite AXW 3Dモデル 製品情報
http://toshibadirect.jp/pc/catalog/axw9m/

東芝ダイレクトPC トップページ
http://toshibadirect.jp/pc/index_j.html

【PC Watch】 東芝、15.6型3D Vision対応ノートの直販モデルなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100702_378297.html