第1回では、省エネルギーの要となる東芝の独壇場の技術デュアルロータリーコンプレッサー、「デュアルコンプ」について紹介した。今回はデュアルコンプがどのように省エネの旗手として活躍するのかを、エアコン本体の機能やしくみなどから斬り込んでいこう。そこには革命的ともいえる、さまざまな機能が盛り込まれている。
エアコン本体でまず目に付くのは、右上に表示されているモニターだ。現在消費している電力を15秒おきに数値で表示してくれる。大人の事情も考えると、省エネに相当の自信がなければ、このような機能はつけないだろう。営業サイドは搭載を強く迫るが、開発サイドが首を縦に振らないというのが一般的だ。実際、消費電力を表示するのは東芝しかない。それ以外のメーカーでは、アイコンの数などでごまかすという両者の落としどころがほとんどである。大清快UDRシリーズには、省エネ運転中に「ecoマーク」が点灯するようになっているが、同社の省エネマスコットの「ecoマーク」がこれは「消費電力を数値で見せられても分からない」という人向けの補助サインだ。
さらにリモコンのボタンを押すことで、電力→運転開始からのトータルの電気代→1時間あたりの電気代→室内温度→パワー表示→「デュアルコンプ」の動作状況の確認に切り替えられる。つまり6つの表示が可能だが、内4つが消費電力に関わるモニターとなっていて、自分がピン!と来る表示にしておけばいいというわけだ。
省エネには、エアコンの設定温度を変えるのが効果的と言われるが、リアルタイムでどれぐらい省エネできたかを確認できるので、アレコレやってみたくなるエンターテインメント性を秘めている。たとえば部屋のドアを閉めたり、カーテンで日差しを遮ったり、二重カーテンで窓から入る熱や寒さを防いだりすると、数値がどのぐらい変わるのかがすぐに確認できるのだ。
もし子供のいる家庭であれば、数値をどれだけ下げられるかを兄弟や両親と競争してもいいだろう。こうすれば自然に省エネに関する実践的な知識を遊びながら学べるはずだ。独身世帯でも、女性ならダイエット気分で省エネライフを楽しめるだろう。男性であれば、車のタコメーターを見てドライブするあの楽しみを味わえるはずだ。ただ本当なら、男女共通の貯金通帳を例に出すのが一番かもしれないが、筆者を含めほとんどのみなさんが、ため息をついてしまうので、不況の昨今では適切な例じゃない(笑い)。
「このような楽しいモニターをなぜ白のLEDで控えめに表示する!」。「このモニターを目立たせたい!」という場合は、室内機のカラバリで写真のクリスタルホワイトモデル以外に、クリスタルゴールドをチョイスするといい。落ち着きのあるシャンパンゴールドなので白色LEDがすごく映えて見えるモデルとなっている。
上のグラフには従来エアコンで室温が安定した場合の温度変化と、コンプレッサのON/OFF変化を示す。0のときはコンプレッサが停止した状態、凸部分は再びコンプレッサが稼動させた状態。上の折れ線グラフを見るとおり、室温は設定温度を中心にブレが生じる
東芝独自のデュアルコンプだからこそできる、安定した室温(上の赤い線)と、突入電力が生じない安定したローパワーの省エネ運転。
旧式の日本家屋ではなかなか難しいかも知れないが、ツーバイフォー住宅や最近の高気密住宅やマンション・アパートなどでは、最小消費電力の45W運転を目指したい。見出しにもあるように、電気代に換算すると1時間1円というから驚きだ。
第1回でも説明したとおり、旧式の家屋はその構造ゆえ隙間風などが入りやすくエアコンの負荷も高い。しかしツーバイフォー住宅や高気密住宅は、気密性が高くなっているため、ひとたび室温が設定温度になってしまえば、エアコンの負荷も下がりローパワー運転を行う。
大清快UDRシリーズが本領を発揮するのは、まさにそのとき。ローパワー運転時だ。フルパワー運転を基準に設計された他社製のコンプレッサーは、ローパワー運転が苦手だ。あまりにローパワーになってしまうと、コンプレッサーを駆動するモーターが安定して回転できないためいったんモーターを停止させる。ここで室温が変化するのを待って再度モーターを駆動し再び設定温度にするという間欠運転をせざるを得ない。このような運転は、部屋の温度が一定にならないというばかりでなく、モーターが回転を始めてしばらくは、安定的に機器を運転するためにコンプレッサの回転数を高めに維持する必要があり、省エネ運転ができない時間が生じる。
しかし東芝のデュアルコンプの場合、圧縮室を2つ持つことでフルパワー運転からローパワー運転まで幅広いレンジをカバーするため、室温が設定温度に近づくと自動的に1つの圧縮室を使わず運転する。つまり、部屋の温度が一定になるだけでなく、突入電力もなくなり消費電力を44%まで抑えられるのだ。
資料によれば、デュアルコンプレッサーで最もローパワー運転を行った場合、その消費電力はたったの45Wだという。トイレの電球1個、いや今のトイレは明るいから60W程度なので、このエアコンより電気を食う。だいたい普通サイズの扇風機と同じ消費電力なのに、エアコンとして機能してしまうのだ。
さすがに外気と室温の差がある場合、45Wは運転は難しいかもしれないが、少し暑いときに扇風機がわりにも使えるエアコンといえるだろう。
設定温度をいくら高くしても、温風が早く出ることはないので、従来機を使っている場合はあきらめる他ない。出るときにならないと出ないのだ。
別途ダッシュ暖房の予約開始時刻を設定しておくと、開始時刻の1時間前から2時間後まで予熱運転を行う。会議で少し帰りが遅れたとしても、ダッシュ温風で温まるれるのは嬉しい!
空気も汚れず安全で快適、石油やガスファンヒーターよりもエネルギー効率がよく経済的と言われるUDRシリーズで搭載している「ヒートポンプ式」の暖房(詳細は「エアコンの光熱費は暖房器具の中で一番安い」のページを参照)だが、唯一弱点がある。
寒い朝、なんとか暖かい布団の誘惑を振り切って起きてきたものの、エアコンのスイッチを入れてもサッパリ温風が出てこないのだ! 何とか早く部屋を暖めようと、設定温度を30℃まで上げても、出てくるのは冷風か、まったく反応を見せないエアコン……。
エアコンの暖房機能の弱点は、温風がすぐに出ない点だ。
それもあって「エアコンはあるけど冬はやっぱりファンヒーター」という人も多いのではないだろうか? タイマーをセットしておけばいい話なのだが、筆者もみなさんの多くと同じで、タイマー機能を使わない人なのだ。おやすみタイマーは使うのに不思議だ……。
しかし東芝の大清快UDRシリーズは、エアコンの弱点を克服。
なんと1分で温風が出てくる!
また独身世帯は、朝の寒さに加え帰宅した独特のアノ寒さも辛い。近隣からファミリーの笑い声でも聞こえようものなら、心の中まで冷え込むってものだ。こんなときでも1分で温風が出るエアコンならどうだろう? 「エアコンは温風がすぐに出ない」という理由で、年中床を占領していたファンヒーターを片付けられ、1DKの部屋も有効に使えるようになることを約束しよう。
設定は簡単。タイマー設定は不要でリモコンの「ダッシュ」ボタンを押すだけ。別途設定する予約開始時刻の1時間前から2時間後まで、エアコンが予熱運転が必要かどうか(外気が10℃未満、もしくは室温が15℃以下という条件)を自動的に判断し、必要な場合にのみ予熱運転行う。あとは朝起きたり、会社から帰宅して「暖房」ボタンを押すと、ダッシュで温風が出てくるというわけだ。指定時刻を過ぎた2時間後まで予熱運転を行うので、土日に少し寝坊した場合や、会議で帰りが遅くなってもダッシュ暖房。心憎いまでの配慮だ。
炊飯器のように朝と夜のダッシュ暖房時刻を設定でき、設定時刻の1時間前から2時間後まで必要であれば予熱運転を行う。
ここでも省エネルギーに配慮していることが分かる
こんな芸当ができるエアコンは、今のところ東芝だけ。なぜなら「デュアルコンプ」のなせる技だから。予熱運転中は、外気温が低い場合に大抵、2つの圧縮室のうちの片方を止め、シングル運転でトロトロと予熱する。スクロールコンプレッサはもちろん、大きなシリンダのロータリー方式のシングルコンプレッサでは、予熱運転の消費電力が多すぎて「省エネエアコン」を名乗れなくなってしまうため、<b>デュアルコンプを持つ東芝だけのアドバンテージと言える。
最近はエアコンに空気清浄機機能を求める声も多いので、大清快UDRシリーズにも搭載されている。カタログでは4見開き目で控えめに機能を紹介しているが、その機能性はプラスとマイナスのイオンをクラスター化(対に)するタイプにも劣らないといえるだろう。
東芝ではこの空気清浄機能を「スゴイオン」と呼び、「とびだせイオン」と「まちぶせイオン」の2つの機能で構成している。「まちぶせイオン」機能は従来型の空気清浄機とほぼ同等の機能を持ち、熱交換器の空気吸込口の手前に配置されたプラズマイオンチャージャーによって、ウィルスや菌、カビなどをマイナスに帯電させ、アースされた熱交換器に静電気で引き寄せられてキャッチするというもの。子供の頃に下敷きで髪の毛をこすって、静電気で髪を逆立てるあの機能の延長だ。
「とびだせイオン」機能の要となる、空気吹出口にあるプラズマイオンジェネレータ(青い部分)から部屋全体にプラズマイオンを放出し、浮遊する菌や微粒子をマイナスに帯電。空気がエアコン内に循環した瞬間、熱交換器がこれを捕獲する
これが「スゴイオン」の全体像。まさに待ち伏せして捕まえる粘着方式のゴキ退治だ
「とびだせイオン」機能は、空気吹出口に設置されたプラズマイオンジェネレーターから、冷風や温風と一緒にプラズマイオンを部屋に拡散。空気中に漂う菌や微粒子は、放出されたプラズマイオンによりマイナスに帯電し、再びエアコンに循環された瞬間を狙って熱交換器が捕獲するというものだ。
この機構でキーとなるのが、部屋全体の空気をどのぐらいの時間で循環できるかだ。東芝の行った実験では、条件の良い実験室の結果とは言え、14畳間の空気を約4分でほぼ循環するというから、パワフルさが分かるだろう。
エンジニアに聞けば「クラスター化方式との違いは、ゴキブリ退治をするときに、スプレー缶を使うか粘着式を使うかの違いです」という。これは凄く分かりやすい説明!と関心。アプローチこそ違え、結果は同じなのだ。
クラスター化方式では、プラスとマイナスのイオンを部屋に放出し、菌などに両方のイオンが付着すると、化学変化により菌のタンパク室を分解しその場で死滅させる。難点は、スプレー缶を使ったゴキ退治と同じで、部屋の床にそれらの死骸が残ってしまうことだ。あとでキッチリ掃除機をかけなければ、ハウスダストの原因になる。
いっぽう東芝の「スゴイオン」方式は、マイナスのプラズマイオンを部屋に放出して、空気を循環させるなかで、抗菌処理した熱交換器で捕獲して菌を抑制させる。さら捕獲した菌などは冷房使用時に部屋の湿気を集めた排水で屋外まで流してしまう。粘着式のゴキ退治どころかそれ以上だ。
さらに本体に備えている換気機能は、冷暖房時運転にも利用できるため、春のスギ花粉や秋のイネ花粉の時期だけでなく、夏や冬でも花粉症をはじめとしたアレルギーに悩んでいる人には、一回使ったら手放せないエアコンになる。
ファミリー世帯のリビングでは、もうひとつ有効な省エネ機能がある。「ピタッと気流」機能だ。リビングには常に家族全員がいるわけではない。夕食後の家族だんらんの時間もあれば、1人で読書をしている時間もある。こんなとき「ピタッと気流」を使えば、部屋全体を冷暖房したり、一部分をスポットで狙えば省エネ運転ができるのだ。
左右の風向きを調整する羽根は、2系統が独立して動くため、従来型のエアコンに比べ左右のふり幅が165°(暖房時のみ)とワイドになっている。エアコンの取り付け位置や家具の配置によっては、右より左よりを温めたい場合もあるだろう。こんなときでもリモコンのボタンひとつで左ワイド、右ワイドの切り替えが可能だ。
リモコンの「快適気流」ボタンを押すと6種類の気流をコントロールできる
1人での読書の時間などであれば、スポット気流に切り替え、正面、左、右に風を集中させることで省エネに一役買う。カタログによれば、消費電力換算で暖房時で14%、冷房時にはほぼ半分の48%もエネルギーを節約できるというから驚きだ。
また上下の風向きを変えるルーバーは、冷房時と暖房時では180°回転するようになっている。このため冷房時は、冷気が直接体に当たらないように天井付近を通過させ部屋全体を涼しく、暖房時は温風を足元からポカポカと暖めることができるようになっている。
さて東芝独自の「デュアルコンプ」だからこそできる、さまざまな省エネ機能を中心に紹介してきたが、次回は実際に筆者宅に設置してもらい、その機能を体験レポートしていくことにしよう。また今回紹介できなかった「全自動お掃除」機能や「選んで再熱除湿」機能のランドリーモード、「ぐっすり快眠」機能などを、リモコンの使い勝手とともにお伝えしよう。
(Text by 藤山哲人)
■関連情報
□東芝エアコン大清快
http://www.daiseikai.com/index_j.htm
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東芝のエアコンがスペック値以上に省エネできる理由
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□東芝、電気代を表示してエコを喚起するエアコン「大清快」
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