これまで、携帯性を重視したモバイル用途のノートPCは、安価なネットブックと、20万円前後で販売されるフルスペックモバイルPCに大きく二分されていた。ネットブックとフルスペックモバイルPCの間の価格帯となると、15型以上の大型液晶を搭載するスタンダードノートPCが中心で、携帯性に優れた製品はこれまで殆ど存在していなかった。

 そういった中で、東芝が投入した最新ノートPC「dynabook MX」シリーズは、低価格ながら優れた性能を発揮する、インテルの超低電圧版プロセッサーを採用することにより、フルスペックモバイルPCにかなり近い性能や使い勝手、携帯性を実現している。さらに、フルスペックモバイルPCとネットブックの中間に位置する価格を実現し、価格と性能の両面で優れた魅力を備える製品に仕上がっている。

 しかも東芝は、dynabook MXが実現するスペックを満たすような、ネットブックを超える薄型・長時間駆動・高性能といった特長をもつノートPCを、新ジャンル“ネットノート”と定義。このジャンルを業界全体で盛り上げるべく、ネットノートという名称をメーカーの垣根を超えて使ってもらいたいと提案するほどで、ここからもdynabook MXに対する大きな意気込みが感じられる。

左が、13.3型ワイド液晶を搭載する「dynabook MX/43KWH」。右が、11.6型ワイド液晶搭載の「dynabook MX/33KRD」

 dynabook MXシリーズには、搭載CPU・液晶サイズの違いで、「dynabook MX/43KWH」と「dynabook MX/33K(赤・黒・白の3色をラインナップ)」の2モデルが用意されている。

 上位モデルのMX/43KWHは、「超低電圧版 インテル® Core™2 Duoプロセッサー SU9400」と、13.3型ワイド液晶を搭載する、フルスペックモバイルに匹敵する性能を備えるモデルだが、価格が約11万円と非常に安価に抑えられている点が特徴。また、下位モデルのMX/33Kは、「超低電圧版 インテル® Celeron® プロセッサー 743」および11.6型ワイド液晶搭載と、スペック面はMX/43KWHに比べやや抑え気味だが、MX/43KWHよりも軽量で携帯性に優れるとともに、価格も約8万円からと、ネットブックに負けない価格的な魅力がある。

 それらdynabook MXシリーズ2モデルのうち、今回は上位モデルである「dynabook MX/43KWH」を取り上げ、その魅力を掘り下げていこう。

13.3型ワイド液晶を搭載する「dynabook MX/43KWH」

 dynabook MXの最大の特徴となるのが、安価な価格と優れたスペックを両立しているという点だ。安価なノートPCと言えば、インテル® Atom™ プロセッサーを搭載するネットブックを思い浮かべる人が多いかもしれないが、dynabook MX/43KWHは、本格モバイルPCなどで広く採用されている、「超低電圧版 インテル® Core™2 Duo プロセッサー SU9400」が搭載され、非常に快適な動作を実現しているのである。

 インテル® Atom™ プロセッサーは、Webアクセスやメールの送受信、WordやExcelなどの文字入力が中心の作業をこなすには十分なパワーがある。しかし、動画再生や、デジカメで撮影した写真の編集といった作業を行うには、若干パフォーマンス不足な感はいなめない。もともとネットブックは、コストをおさえながらWebアクセスやメールの送受信、WordやExcelなどの文字入力が中心の、比較的軽い作業をこなすノートPCを実現するということが主目的なのだから、それも当然のことかもしれないが、パワー不足を不満に感じているネットブックユーザーがいるのは事実であり、やはり弱点と言えるだろう。


 それに対し、“ネットノート”、dynabook MX/43KWHに搭載している超低電圧版 インテル® Core™2 Duo プロセッサー SU9400は、CPU自体が持つ絶対的な処理能力の高さに加え、デュアルコア構成となっていることで、インテル® Atom™ プロセッサーよりも桁違いの処理能力を発揮。ネットブックでは厳しい、映像処理など比較的動作の重いアプリケーションも、余裕を持って利用できる。さらに、電力効率に優れたテクノロジーを採用している超低電圧版の採用により、後述する最大10.5時間という長時間動作と、快適な動作を両立しているというわけだ。

 ちなみに、超低電圧版 インテル® Core™2 Duo プロセッサー SU9400は、東芝のフルスペックモバイルPC「dynabook SS/RX2」シリーズ最新モデルに搭載されているCPUと同じものであり、ここからもdynabook MX/43KWHのスペックの高さが理解できると思う。

 また、チップセットは、フルスペックモバイルPCなどで広く採用されている、インテルの「モバイル インテル® GS45 Express チップセット」を搭載。このチップセットには、「モバイル インテル® グラフィックス・メディア・アクセラレーター 4500MHD」と呼ばれるグラフィック機能が統合されており、優れた3D描画能力を実現するとともに、マルチメディア能力にも優れるのだ。事実dynabook MX/43KWHでは、Windows 7が快適に動作するのはもちろん、ネットブックではストレスがあるHD動画の再生が余裕で行えるとともに、3Dゲームも軽めのものであれば十分プレイできるはずだ。

 さらに、映像出力端子にアナログRGBだけでなくHDMIを標準搭載している点も大きなポイントだ。家庭にある大型液晶テレビなどのHDMI端子に接続することで、HD動画やデジカメ画像などを大画面で楽しむことが可能。こういった部分も、ネットブックには真似のできない特徴だ。

 インテル® Core™2 Duo プロセッサーは、クロックあたりの処理効率を高めることで、性能向上と消費電力の低減を両立したプロセッサーだ。ネットブックに搭載されるインテル® Atom™ プロセッサーに比べ、クロックあたりの処理効率が大幅に優れているのに加え、1チップに2個のCPUコアを搭載するとともに、大容量(超低電圧版では3MB)の2次キャッシュを搭載することによって、インテル® Atom™ プロセッサーよりも低クロックで動作するインテル® Core™2 Duo プロセッサーのほうが、圧倒的に優れた処理能力を発揮するのだ。

 
本体左側面には、RGBコネクタ、HDMI出力、USBコネクタを備える
 
本体右側面には、メモリカードリーダー、ヘッドホン出力、マイク入力、USBコネクタ、LANコネクタ、電源コネクタが並ぶ
本体の高さは約22.2〜34.2mm。先端部に行くほど薄くなるラウンドフォルムによって数字以上に薄く見える

 クラスを超えた高級感を感じさせるデザインと、携帯性に優れる薄型ボディを実現しているという点も、dynabook MX/43KWHの大きな特徴だ。

 まず、dynabook MX/43KWHを見て真っ先に感じるのは、先端部が薄くなるように曲線を取り入れたラウンドフォルムの本体デザインと、光沢感が強いだけでなく、見る角度によって異なった印象を与える模様、ピクセルグラフィックが描き込まれた天板デザインによる、質感の高さだ。特に、dynabookシリーズでおなじみの、成型時に金型の中に転写フイルムをはさみこむ「成型同時加飾転写工法」を採用した天板デザインは、低価格帯のノートPCとは思えないほどの高級感が感じられる。

 また、本体の高さは、約22.2〜34.2mmと、薄さがかなり際立っている。しかも、先端部に行くほど薄くなるラウンドフォルムによって、見た目には数字以上に薄く感じるのだ。加えて、本体重量は約1.76kgと十分に軽量。ネットブックやフルスペックモバイルPCに比べると若干重いものの、スタンダードノートPCと比べると圧倒的に軽量で、モバイル用途にも十分対応できる。

 
天板だけではなく、キーボード面にも同様の模様が描かれており、質感高い本体デザインに仕上げている
3色のカラーバリエーションのdynabook MX/33K。左から、アイアンレッド、リュクスホワイト、プレシャスブラック

 カラーバリエーションは、dynabook MX/43KWHはリュクスホワイトの1色展開となるが、11.6型ワイド液晶モデルのdynabook MX/33K(インテル® Celeron® プロセッサー搭載)はリュクスホワイトに加えてアイアンレッド、プレシャスブラックの計3色が用意される。鮮やかな雰囲気のアイアンレッド、都会的な雰囲気のプレシャスブラックも非常に魅力で、購入時にはカラーの選択でも迷ってしまいそうだ。しかもdynabook MX/33は、本体重量が約1.58kgとdynabook MX/43KWHよりも約0.2kgほど軽量で、楽に持ち運びができる点も大きな魅力である。携帯性を重視するなら、dynabook MX/33も要チェックだ。

1,366×768ドット表示の液晶は、明るく色鮮やかな「Clear SuperView 液晶」を採用

 dynabook MX/43KWHは、本体の薄さや軽さに比べると、フットプリントが幅約323.0mm×奥行き約223.0mmと、ネットブックやフルスペックモバイルPCよりも若干大きくなっている。これは、1,366×768ドット表示に対応する、大型の13.3型ワイド液晶を搭載しているからだ。

 ネットブックでは、大きいものでもサイズ10.1型程度、解像度で1,024×600の液晶を搭載する製品が多い。この解像度では、Webアクセスは窮屈だし、中には横の解像度が足りない場合も発生する。当然、ビジネスアプリケーションも快適に利用できると言うにはほど遠い。

 それに対し、dynabook MX/43KWHに搭載の液晶は、13.3型ワイドで表示解像度が1,366×768ドットと、比較的大画面なネットブックの10.1型に比べて、約1.7倍の表示解像度を持つ。これなら、Webアクセス時に横幅が足りないということもほとんどないし、Excelなどでも一度に多くの領域を表示でき、快適な作業が可能だ。

 また、液晶サイズが13.3型ワイドという点も見逃せない。ネットブック搭載の液晶はもちろん、フルスペックモバイルPCに搭載される液晶よりもひとまわり大きなサイズで、アイコンの文字などの視認性も申し分ない。この点も、快適に利用できる大きなポイントだ。13.3型ではちょっと大きすぎるという人には、より軽量で持ち運びしやすい11.6型のMX/33Kという選択もありだ。

 ちなみに、液晶パネルには、dynabookシリーズでおなじみの「Clear SuperView 液晶」を採用しており、表示品質は折り紙付き。鮮やかな発色は、動画再生やデジカメ画像の表示といったAV用途も難なくこなす表示品質を備えていると言っていいだろう。

 dynabook MX/43KWHのキーボードは、主要キーのキーピッチが19mmと、変則的な部分が全く存在しない配列で、スタンダードノートPCやデスクトップのキーボードに近い使いやすさが実現されている。

 また、パームレストの余裕に合わせて、タッチパッドも余裕がある。他のdynabookシリーズに搭載されるタッチパッド同様に軽快な操作が可能で、クリックボタンを左右一体型にすることでデザイン性に配慮している点も特徴だ。

 大型の液晶とキーボードを搭載することで、確かに本体のフットプリントは大きくなっているものの、逆にそれによってネットブックよりも使い勝手が大きく向上していることは間違いない。もちろん、本体の薄さと軽さによって、携帯性は思ったほど損なわれていない。そう考えると、大型の液晶やキーボードを搭載したという点は間違っていないだろう。

 
キーピッチ19mmのキーボードを搭載。配列も変則的な部分が存在せず使いやすい
 
大型のタッチパッドは、クリックボタンを左右一体型にしてデザイン性を高めている

 dynabook MXは、ネットノートという新しいジャンルに位置付けられているが、もちろんターゲットとなるのはモバイル用途だ。そこで気になるのはバッテリーライフだが、実はdynabook MX/43KWHでは、約10.5時間という、非常に長いバッテリーライフが実現されている。フルスペックモバイルPCでもこれだけ長時間のバッテリーライフを実現する製品が少ない中で、これはかなりの魅力だ。

 もちろん、この約10.5時間という数字はカタログスペックなので、実際に利用した場合にはこれより短くなると思われる。そこで、海人氏製作のバッテリーベンチマークソフト「BBench」を利用し、dynabook MX/43KWHの省電力設定を「ecoモード」にするとともに無線LANを動作させた状態で、BBenchのキー入力とWeb巡回をONにして計測してみた。すると約6時間55分と、ほぼ7時間の動作が記録された。これだけ長時間のバッテリーライフなら、1日持ち歩いて利用する場合でもACアダプターを持ち歩かなくても不安はないだろう。この点からも、dynabook MX/43KWHがモバイル用途をメインターゲットとしていることがよくわかるはずだ。

 
約10.5時間という長時間のバッテリーライフを実現
 
「TOSHIBA ecoユーティリティ」では、ecoモードのon/offが切り替え可能。また、消費電力の推移をリアルタイムでグラフ表示できる

※JEITA測定法Ver1.0による値

 dynabookシリーズは、充実した機能や豊富な付属ソフト、手厚いサポートなども魅力だが、当然それらはdynabook MX/43KWHにも受け継がれている。

 まず、3D加速度センサーが搭載され、外部からの衝撃や落下を感知し、自動的にHDDのヘッドを待避させる「東芝HDDプロテクション」機能を標準搭載。モバイル用途をターゲットとする製品だからこそ、不意の衝撃からのHDDクラッシュを防ぐ機能を省かずに搭載するという点は、さすが東芝といったところだ。

 また、携帯音楽プレーヤーや携帯電話などUSBで充電できる機器が増えていることに合わせ、本体の電源がOFFになっている状態でもUSB充電が行える「東芝USBスリープアンドチャージユーティリティ」も搭載。充電のためにPCを起動する必要がなく、思った以上に便利に活用できる機能で、こちらの搭載も素直に嬉しいと感じる部分だ。

 付属ソフトとしては、コルクボードにメモを貼り付けるかのような感覚で、よく利用するソフトやWebページ、デジカメ画像などを貼り付けてすぐに呼び出せる「TOSHIBA Bulletin Board(ブリティンボード)」や、過去に利用したファイルを時系列に表示して直感的にアクセスできる「TOSHIBA ReelTime(リールタイム)」といった、使い勝手を高めるオリジナルソフトが魅力だ。

 
「東芝HDDプロテクション」設定画面。検出レベルを設定できる
 
PC本体の電源がOFFでも、USB接続で接続機器の充電ができる「東芝USBスリープアンドチャージ」
 
コルクボードにメモを貼り付けるかのような感覚の「TOSHIBA Bulletin Board」
 
過去に利用したファイルを時系列に表示し、直感的にアクセスできる「TOSHIBA ReelTime」

 このように、dynabook MX/43KWHは、約11万円程度という低価格で販売される製品にもかかわらず、ドライブを除けば、フルスペックモバイルPCに匹敵する性能や使い勝手が実現されており、非常に魅力の大きい製品であることがわかると思う。実際に触れば触るほど、東芝が“ネットノート”というジャンルとして強くアピールしたいという気持ちが強く伝わってくる。常に持ち歩いて利用するモバイルノートで、スペック面にも価格にも妥協なくこだわりたいという欲張りな人に、自信を持ってオススメしたい製品だ。

[Text by 平澤 寿康]
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