Windows Mobile機の常識を変える高性能インターネットケータイ現る  docomo PRO series T-01A
いま世界市場はもちろん、日本国内でも利用者が増えつつあるスマートフォンと呼ばれる新分野。今年は参入メーカーも増えたこともあり、店頭での選択肢はさらに広がりつつある。6月20日、NTTドコモから発売された東芝製『docomo PRO series T-01A』もそこに分類される機種のひとつ。本稿では、『T-01A』を見ながら、新分野の魅力や可能性、従来のケータイとの違いを浮き彫りにして、最新機種選びの一助としていただきたいと思う。

世界市場で存在感を示すニッポンのモノ作り

「T-01A」。3色のストライプメニューが特徴的

 本機は、加圧式のタッチパネルを採用し、大半の操作が親指で行なえるケータイだ。外観で最も目を引くのは、待受画面に表示されるストライプメニューだろう。各種操作を「Web」「Mail」「Application」「Phone」「Data Folder」「Tools」「Setting」「Player」という8色のストライプメニューに分類。各色ストライプメニューの下部には、常時3つのアイコンを表示して、直感的な操作を可能にしている。

 このストライプメニューは、タテに10個(ヨコの場合は8個)のアイコンを表示でき、よく使うアプリや好みのURLなどを登録しておくと便利だ。ネットフロントの技術を利用した「ガジェットメニュー」に切り替えることもできる。

ストライプメニューの配色と並び順は、設定で自分の好きなものに変更できる

 待受画面状態では、3色つまり3つのカテゴリーを表示していて、横スクロールすると別のカテゴリーが現れ、回転ドアのようなギミックで表示されるのも本機の特徴といえるだろう。この待受画面のストライプメニューは「10メートルアイキャッチ」というコンセプトで開発されている。「10メートルアイキャッチ」とは、デザインやマーケティングの世界で用いられている表現で、10メートル先にいてもその商品と識別できるようなデザイン、店頭展示、ロゴデザインなどを考えることを指す。もしご興味がある方は、店頭で是非チェックしてみて欲しい。『T-01A』は他のケータイに比べて抜群に目立つことが確認できるはず。極力ハードキーを廃し、タッチオペレーションを中心にしたケータイは、どの機種も似たような外観になるにも関わらず、『T-01A』は目立つ。これが周到にデザインされた結果であることは改めて言うまでもない。

 デフォルトになっている3つのストライプメニューの色は、布と布を重ね合わせたときに生まれる配色が妙の十二単から着想し、日本の伝統色を重ね合わせることで調色したそうだ。この配色に親近感のような感覚を持つのは、私たちが潜在的な意識で、この色になじんでいるからなのかもしれない。ちなみに『T-01A』は、『TG01』という品番で海外展開されている。世界市場では、この配色がジャパネスク(日本風、日本趣味の意)な気分で捉えられるのだろうと想像すると、日本が得意とするエレクトロニクス製品と日本文化の融合が感じられる。世界的にスマートフォン市場が勃興するなかで、製品のスペックはもちろん、デザインやテイストでも日本のモノ作りをアピールできる存在ではないか、と想像が膨らむ。

 ちなみにデフォルトのストライプメニューの配色は上述の「Oriental」だが、グレー調の「Ceramic」、ピンク基調の「Candy」にすることもできる。自分の好みで選べることを付記しておこう。

5つの特徴から探る『T-01A』の魅力

ここで、ご存じの方は多いとは思うが、改めて『T-01A』の魅力を整理しておきたい。製造元の東芝は、報道関係者向けの説明会などで、次のような5つのポイントをアピールしている。

  • 1)約9.9mmの薄型ボディ
  • 2)約4.1インチワイドVGAの大画面&高精細ディスプレイ
  • 3)クラス最速の1GHz CPU「Snapdragon」採用
  • 4)ワンハンドオペレーションの実現
  • 5)手のひらで快適なインターネット体験

 興味深いのは東芝のWebサイトなどでは、「高性能インターネットケータイ」と呼んでいて、スマートフォンという表現を使っていないことだ。「OSにマイクロソフトのWindows Mobile 6.1 Professionalを採用し、タッチオペレーションで……」とくればスマートフォンでしょ、と思われる読者は少なくないはず。では、東芝がスマートフォンという呼称を使わず、新しいモノと定義する所以はどこにあるのか。上記した5つのポイントに沿って詳述していこう。

1. 持ち歩くと実感。「持ち歩けるインターネット画面」な感覚

 『T-01A』を使って新鮮に感じるのがその薄さ。これまでのWindows Mobile機にはないスマートな感覚で、本機が長年モバイルPCの分野で培った「dynabook」を連想させるペットネーム「dynapocket」(ダイナポケット)と呼称するのもうなずける。薄着になるこれからの季節、シャツの胸ポケットに入れても自然に持ち歩けるし、スーツの上着に入れても型くずれなどしにくい。手ぶらで出かけるときにも、能動的に持って出たくなる。持って出かければ、ちょっとした空き時間にインターネットなどの情報にアクセスできるし、メールはもちろんmixiやTwitterなどWebコミュニケーションも楽しめる。PCで使うことが一般的だったコンテンツやサービスなどが、ポケットに収まる機器で扱えるようになる。その大前提となるのが、薄くて持ち運びやすいこと。薄型ノートブックPCの画面だけを取り外して持ち出した感覚、といったら少し大げさだろうか?

本体正面。約4.1インチの大画面ディスプレイを採用

本体側面。薄さ約9.9mmのスリムなデザイン

本体背面。約320万画素のカメラを搭載

2.同じ情報なのに見え方が違う大画面&高精細ディスプレイ

 『T-01A』は、この分野としては突出した約4.1インチの大画面、ワイドVGA(480×800ドット)のディスプレイを搭載している。不思議なのは、同じメールやWebサイトの画面、同じオフィス文書、同じYouTubeの映像が、本機で表示すると違った印象になること。Webサイトは情報を見るだけでなく関連したことを調べたくなったりするし、オフィス文書であれば閲覧だけでなく修正などをしてみようという気になる。たとえば「パワーポイントの文書を保存しておき、移動中にプレゼンのリハーサルをする」「訪問先の地図のPDFファイルを確認」「メールの添付ファイルで送られてきた見積書をチェック」なんてことを空き時間にしたくなるのだ。

 このほかゼンリンデータコムが提供する個人向け地図サービス「いつもNAVI」用の地図アプリ(プリインストール済み)を使う際も大画面&高精細なディスプレイのメリットを実感できる。通常この手の地図サービスを頼りに目的地まで行こうとして道に迷ったときは、目的地までの距離や経路、現在位置などを拡大/縮小をしながら確認するはず。使っているケータイの画面が小さいと、その拡大/縮小を頻繁に繰り返すことになるだろう。この操作は面倒だし、そもそも見にくいので地図はプリントして持ち歩く、という方は少なからずいるはず。が、『T-01A』は、画面が大きくて高精細なので、その操作をあまり必要としない。普段使っている情報が、デバイスを変えると、行動にも変化を起こす−−こんな体験をできるのが本機の魅力だろう。

ワイドVGA(480×800ドット)表示可能で、Webサイトも非常に見やすい

オフィス文書の閲覧はもちろん、修正などもとてもやりやすい

標準で搭載されている「いつもNAVI」。大画面&高精細がフルに活用できる

3.速さも機能のうち。「脱もっさり」なWindows Mobile機

 これまでWindows Mobile機を使ったことのある方は、その“もっさり感”に違和感を感じたかもしれない。『T-01A』は、その“常識”を覆すといっても過言でないほど、快適な動作を実現している。筆者は、約2000件の連絡先、過去1年分くらいの予定表、そして日々のメールをOutlookで管理している。これらのデータをWindows Mobile機へ移して扱うと動作はもっさりするのが当たり前だった。ところが本機はそうした先入観を覆し、スクロールや表示がとても速い。ここまで速く動くWindows Mobile機を使う経験は多くの人が未体験ゾーンなはず。その大きな理由としては、クアルコム社が開発した高速CPU「Snapdragon」を国内のケータイとしては初めて採用したことが挙げられるだろう。

内蔵辞書なども快適に使える

 とにかく速く動くので、いろいろな機能を使ってみようという気にさせてくれる。たとえば従来は時間がかかるので面倒だったWebアクセス、内蔵辞書を使った言葉の確認(ちなみに本機は明鏡国語辞典MX/ジーニアス英和辞典MX/ジーニアス和英辞典MXを搭載している)などを、積極的に使ってみようという気にさせる。これは既述した薄さ、大画面&高精細ディスプレイとも重なる話だが、モバイル機器は携帯性、画面の見にくさ、動作速度が損なわれていると、備わっている機能を十分に使わなくなる傾向がある。搭載されていても結局は使わないので無いに等しくなってしまうのだ。

 本来改めていう話ではないのだが、速さは機能を使わせる必要条件といえる。これをきちんと備えている点も『T-01A』の強調すべき特徴だろう。

4.ケータイ風の片手操作を実現するための配慮が満載

ディスプレイの下に配置される「ホームキー」、「UIキー」、「バックキー」

 約幅70mmで約4.1インチの大画面ディスプレイを搭載する『T-01A』は、握った手の親指で各種操作ができる工夫が盛り込まれている。本体左下にある家マークの「ホームキー」、本体下部にある帯状の「UIキー」、本体右下にある「バックキー」などは、その一例だ。

 「ホームキー」を押すと、どの画面状態からもストライプメニュー、つまり待受画面に戻れる。この待受画面時に「ホームキー」を押すと、もうひとつのデスクトップともいえる「NetFront Widgets Player」が現れる。初期設定では、電卓、天気、テキストメモなどのウィジェット(いずれもアクセス製)などがあり、ストライプメニューとは違った操作感で使える。

 ワンハンドオペレーションをする際は、親指の操作が中心になる。これを意識してストライプメニュー上に常時表示されるアイコンは約17mm間隔(縦方向は約9mm間隔)に配置。左右にめくったり、上下にスライドさせる操作が気持ち良く行なえる。

 このほか片手操作を支援する入力手段として、ケータイの十字キー+決定ボタンなどの操作ができるソフトUI「フローティングパッド」が用意されている。この手のソフトウェアは好みが分かれることが多いのが常だが、筆者は快適に使えた。ユニークなのは、PCのマウスパッドのようにカーソルを自在に動かせる「フリーカーソルパッド」があること。ニュースサイトなど文字がたくさん表示されたWebサイトのリンク先をクリックする際などに重宝するだろう。ちなみにInternet ExplorerやWord Mobileなどは「UIキー」を左右に動かすと、画面を拡大/縮小できるのも便利だ。

 もうひとつ触れておきたいのは、独自に開発されたソフトキーボード「T-Keyboard」だ。PCのキーボードのような配列の「QWERTYパッド」は、約7mmのキーピッチになっていてスムーズに文字入力できる。Windows Mobile標準搭載のソフトキーボードに比べると、その差は歴然。一般的なケータイでおなじみの「10キーパッド」もあり、好みに応じて使い分けられる。予測変換機能を備えた日本語入力「ATOK for Windows Mobile」との相乗効果でストレスの少ない文字入力ができた。

「NetFront Widgets Player」。ストライプメニューとは違った操作感で使える

「フローティングパッド」。ケータイの十字キー+決定ボタンなどの操作ができる

「フリーカーソルパッド」。こちらはPCのマウスパッドのようにカーソルを自在に動かせる

独自に開発されたソフトキーボード「T-Keyboard」。QWERTY配列や10キー配列、手書き入力方式にも対応する

5.情報を探したくなるインターネット体験

 『T-01A』には、「Internet Explorer Mobile 6」と「NetFront Browser」がWebブラウザーとして用意されている。「Internet Explorer Mobile 6」が標準設定されていて、「Internet Explorer 6」相当の表現力を持つ。「Flash Lite3.1」対応なので、YouTubeなどはもちろん、Flashムービーが組み込まれたページの再生も可能になった。

 モーションセンサーをオンにしておくと、本体を縦/横に傾けて表示切り替えが可能。「UIキー」の中央部を抑えながら本体を左に傾けるとページが戻り、右に傾けるとページが進むチルト操作にも対応した。

 繰り返しになるが、『T-01A』は高性能CPUの採用により、快適にWebブラウジングを可能にした。これまでは「情報を見る」だけだったが、サクサク動くので「情報を探したくなる」のが不思議。YouTubeの映像は、従来のケータイでは小さくて気がつかなかったディテールなどがちゃんと見えてくる。筆者は、テレビを見る時間が少ないうえ、有名人の名前を覚えるのが苦手。世間の話題についていけないことが多いのだが、本機でYouTubeや画像検索などでテレビ著名人を確認し、「あぁ、この人のことを言っていたんだ」と確認できて新鮮だった。

高機能メディアプレーヤー「Kinoma Play」

 YouTubeなどマルチメディア系のコンテンツを見る際は「Kinoma Play」という高機能メディアプレーヤーを使った方が動作は軽快。RSSリーダーの機能もあるので、定期的にチェックするニュースサイトやブログを登録すると、空き時間や移動中などを情報収集の時間として活用することができるだろう。

 日本全国で使えるうえ、データ通信の定額メニューも用意されたHSDPA(下り最大7.2Mbps)、高速アクセスが可能なWi-Fi(IEEE802.11b/g)、海外でも利用可能なGSM/GPRSなど主要なワイヤレス通信に対応しているので、いつでも、どこでもインターネットへアクセスできるのもありがたい点だ。

自分好みにカスタマイズしよう!

「Toshiba Mobile Plaza」

 Windows Mobile機は、自分好みのアプリを追加してカスタマイズできるのも魅力。『T-01A』は、そんな利用も想定し、出荷時は必要最小限のアプリしか登録されていない。見方を変えれば、各種ソフトを自由に登録できるとも言える。東芝ユーザー向けに情報を提供する「Toshiba Mobile Plaza」では、『T-01A』用のソフトやレビューを提供中。また「窓の杜」では数多くのWindows Mobile向けアプリを効率よく探すことができるので、『T-01A』をパワーアップさせるアプリ探しに活用しよう。

 さらに、『T-01A』には8GBのmicroSDHCが同梱されている。microSDHCは最大16GBまで、microSDは最大2GBまでサポートしているので、本体に収まりきらない映像や音楽、各種ファイルを持ち運べる。暗号化機能を使うと、『T-01A』で管理したmicroSDHCカード/microSDカードのデータはセキュリティがかけられる。情報を安心して持ち歩けるのも、従来のケータイにはない価値といえるだろう。

まとめ

 最後に改めてお伝えしたいのは、すでにWindows Mobile機は、一般的なケータイと同じ土俵で検討しても遜色ない段階に入りつつあることだ。『T-01A』は大画面かつ高速動作などにより、一般的なケータイとは違う価値を私たちに提案してくれている。すでに触れたインターネットアクセスなどのほか、電話やメールなど基本的なコミュニケーションにおいても、これまでの常識を変える使い勝手や操作性を備えている。一般的なケータイに飽き足らないアクティブユーザーはもちろんだが、ネットワークでつながって仕事やプライベートの生活を充実させたいと考えている方も注目だ。とにかく一度店頭などに展示されている『T-01A』を触ってみていただきたい。従来のスマートフォンとは違うインターネットケータイであることを確かめられるはずだ。

----- Reported by 雨野真実



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