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Sun Microsystems「Sun Ultra 20 Workstation」

パソコンとしての導入も現実的なワークステーションの存在
 ”ワークステーション”とは、一般に科学技術計算やCAD、CGのレンダリング、スモールオフィスにおけるサーバー用途など、業務用途の高性能コンピュータのことである。Sun Ultra 20 Workstation(以下Sun Ultra 20 WS)もそうしたワークステーションとして発売されている製品だ。一方、個人向けのコンピュータは”パーソナルコンピュータ”つまり”パソコン”と表現して区別されてきた。

AMD Opteron搭載64bitワークステーション「Sun Ultra 20 Workstation」
 しかしながら、昨今はパソコンとワークステーションの境界は非常に小さなものになっている。その昔、ワークステーションといえば性能面のほかに、UNIX系のOSを使い、ネットワーク機能を持っているのも特徴といえた。しかし、最近ではワークステーションでもWindowsシリーズを利用することが増えたし、逆にPCで動作するLinuxなどのUNIX系OSも一般的になった。また、ブロードバンドの普及に伴って、ネットワーク機能もパソコンにとって必須の機能となっている。

 性能に関しても、従来ワークステーションではSPARCやPowerPCなどのRISC系のCPUを採用するのが当たり前であった。パソコンではx86アーキテクチャのCPU(つまりAthlonシリーズやPentiumシリーズなど)が主流となったが、こちらの性能が飛躍的に向上したうえ、AMD64/EM64Tの登場によって64ビット化も果たしたことで、ワークステーションへの採用も増えているのである。

 今回紹介するSun Ultra 20 WSも、こうしたパソコンに近いワークステーションである。本製品は秋葉原のTSUKUMO eX.でも販売される予定で、一般ユーザーでも入手が可能なワークステーションである。また、OSもWindows XPをサポートしており、付属のSun Ultra 20 Workstation Supplemental CD-ROMにドライバ一式が収録されている。つまり、購入から利用導入までの流れは、パソコンを購入するのと変わりないのである。

 こうなると、Sun Ultra 20 WSはパソコンではないのか、という疑問を持たれるかも知れないが、やはり業務によっては高い性能が求められるワークステーションだけあって、パソコンでは採用されていないCPUである「AMD Opteron 156」を選択できるのが大きな特徴となっている。

 このAMD Opteron 156は3GHzで動作するシングルコアCPUで、AMD Opteronシリーズではもっとも高いクロックで動作する製品となる。AMD Opteronシリーズはワークステーション向けということもあって、パソコン向けのAthlon 64シリーズよりも高いクロックの製品を一足早くリリースする傾向にある。当然ながら、この3GHz動作のAthlon 64シリーズも現時点ではラインナップされていない。つまり、パソコンでは得られない性能を手に入れられるのがワークステーションの魅力の一つといえるのである。

 さらにいえば、このAMD Opteron 156はAMDと強力なパートナーシップを結ぶSun Microsystemsがいち早く導入したもので、このCPUを採用したワークステーションやパソコンが、現時点で他社から発売されていないというのも大きなポイントだ。これはSun Ultra 20 WSならではの大きな魅力となっている。


Opteron 156を搭載するSun Ultra 20 WSの中身
 さて、先にも述べたとおり、このAMD Opteron 156はシングルコアCPUである。昨今ではデュアルコアCPUがブームとなっており、シングルコアという点でインパクトが弱いかも知れない。しかしながら、同じマイクロアーキテクチャならシングルコアのほうが高クロック動作をさせやすく、現状3GHz動作のデュアルコアAMD Opteron/Athlon 64シリーズは発売されていない。ということは、デュアルコアの特性が活かされないシチュエーションであれば、クロックの高さによるアドバンテージを得ることもできるわけだ。そうした、デュアルコアの特性が活かされない顕著な場面が3Dゲームである。3Dゲームは現在のPCにおいて高い性能が求められるジャンルの一つで、3DゲームのためにPCを強化し続けている人も少なくない。

写真1 Sun Ultra 20 WSの前面。光学ドライブやインタフェース類以外は、すべてメッシュパネルとなっている機能的な外観だ
 基本的に「ながら作業」が行われず3Dゲーム単体で動作させることが多いので、マルチタスクの状況は発生しずらい。また、マルチスレッド動作に対応した3Dゲームも、現時点ではそれほど多くないのが3Dゲームの特徴であり、シングルコアでクロックが高いCPUがより高速に動作する可能性が高いといえる。

 ちなみに、3Dゲームというと真っ先にビデオカードの性能を追求しがちだろう。しかし、ゲーム内のキャラクターや物体の動きを計算するのはCPUの役割であり、しかも最近のハイエンドビデオカードの性能向上があって、CPUがボトルネックになっているゲームも少なくない。AMD Opteronが採用しているAMD64のマイクロアーキテクチャは、こうした3Dゲーム用途で優れた性能を発揮することで定評がある。その最高クロック製品として、AMD Opteron 156は3Dゲームにおける高い性能を期待できるのだ。

 もっとも、いかに3Dゲームが高速であっても、普通にパソコンとして利用できなければ不便極まりない。そこで、まずはSun Ultra 20 WSの外観とスペックをチェックしておきたい。

 Sun Ultra 20 Workstationの前面部は、FDDはなく、光学ドライブはトレイのみが顔を出し、前面面積の4分の3以上をメッシュパネルが占める、実にシンプルなデザインである(写真1)。自由に使える5インチ/3.5インチベイが用意されていないのは、後々の拡張性に不安を残すが、このメッシュパネルによるケース内の冷却効果も見逃せない。ワークステーションという製品の性格上、納品された後の拡張よりも、まずは完成された製品としての機能面を優先したデザインということになるだろう。とはいっても、前面部にはUSB2.0×2とIEEE1394×2がしっかり備わっている(写真2)。また、背面部にもUSB2.0×4を備えているので、いざ拡張を検討した場合は、これらのインタフェースを利用した外付けデバイスを検討したほうが現実的だ(写真3)。

 余談ではあるが、ワークステーションという響きとは相反して、シリアル、パラレルなどのレガシーインタフェースは一切排除されているのも印象的だ。この辺りも、よりパソコンに近い印象を受ける箇所といえるだろう。


写真2 光学ドライブはDVD+R DL、DVD-RAM、DVD±R/RWへの書き込みに対応。フロントインタフェースはIEEE1394×2、USB2.0×2、マイク入力、ヘッドホン出力となっている 写真3 本体背面。PS/2やシリアル、パラレルなどを排除したレガシーフリー構成が特徴。USB2.0×4やギガビットイーサ、サウンド入出力、内蔵グラフィック用VGA端子などを備える


 さて、写真3に示したとおり、本体の背面に設けられた冷却ファンは80mm角ファン一つのみである。本製品で、このほかにファンが使われている箇所は、CPUクーラーに同じく80mm角ファン、電源の内側に120mm角ファンがそれぞれ一つずつあるのみ(写真4)だ。これらは、電源起動直後こそフル回転するために多少の音を発するものの、BIOSが起動して回転数制御が行われてからはきわめて静かに動作する。


写真4 本体内部。冷却ファンは背面の80mm角ファンとCPUクーラーに同じく80mm角ファン、電源の内側に120mm角ファンがそれぞれ一つずつ 写真5 本体内部。ケーブル類は非常に綺麗にまとめられているうえ、シャドウベイもシンプルなので、前面から背面にかけて流れる空気の障害は少ない。この冷却性能の良さにより、ファンの回転数を抑えて静音性を確保するというメリットにつながっている


写真6 PCIスロットを4本持つのも本製品の大きな特徴。3本のPCIスロットでも多いと言われる昨今の情勢では貴重な存在だ
 こうした静音性を実現できているのは、先にも少し触れた前面のメッシュパネルによる外気の取り込み量の多さに加え、ケース内が非常にすっきりとレイアウトされていることも大きな要因だろう(写真5)。ケース内でエアフローの障害となる部分が極めて少なく、背面の80mm角ケースファンと、電源の120mm角ファンのみで、うまく排気ができていると想像できる。

 もちろん、ビデオカードを装着すれば、そちらのファンによるノイズは発生するが、最近はハイエンドビデオカードでもドライバレベルでのファン回転数制御が進んでいるので、大きな問題にはならないかも知れない。より静音性にこだわるのであれば、ファンレスや静音性重視設計の製品を選べばいいだろう。

 さて、ケースの内部に触れたところで、本製品の特徴をあと二つピックアップしておきたい。一つは拡張スロットである。本製品はビデオカードを接続するPCI Express x16のほかに、4本のPCIと2本のPCI Express x1スロットを持つ(写真6)。ここで強調しておきたいのは、PCIを4本持っている点である。最近のコンシューマ向け製品はPCI Expressインタフェースを多く持たせる傾向が強まりつつある一方で、肝心の拡張ボードのほうはPCI対応製品がいまだに主流というギャップが発生している。そのため、自身で拡張を行うようなパワーユーザーにとってPCIスロットの本数不足が問題となっている。PCIスロットを多く搭載しているといわれるマザーボードでも3本であることが多く、本製品のように4本というのは、現在においては貴重な存在といえるだろう。

写真7 メモリはECC付きのRegisteredメモリを採用。信頼性重視のメモリを採用することで動作中に不具合が発生する可能性を抑えている
 もう一つはメモリである。これはSun Ultra 20 WSの特徴というよりは、AMD Opteronシリーズの特徴といったほうが正確だが、本製品のメモリはRegisterd DDR SDRAMのECC付きを利用している(写真7)。パソコンで利用されるAthlon 64シリーズでは、Unbuffered DDR SDRAM ECCなしを利用することになる。Registeredタイプとは、メモリアクセスにバッファを設けて、クロックの乱れなどによる転送エラーを回避するもので、ECCは発生したエラーを訂正する機能となる。こうしたメモリを利用することで、動作の安定性を確保しているわけだ。動作中の不具合を起こす確立が下がるというのは実感しにくいメリットではあるが、こうした点もワークステーション製品ならでの特徴といえる。


3Dゲームで魅力を増すSun Ultra 20 WSの性能
 さて、先述のとおり、Sun Ultra 20 WSに搭載されたシングルコアAMD Opteronは、個人ユーザーの利用シーンを考えると、とくに3Dゲームにおいて高い性能が期待できる。そこで、いくつかの3Dゲーム関連のベンチマークを実行してみたい。

 ただ、今回機材の都合でAMD Opteron 156を搭載したSun Ultra 20 WSをテストすることができなかった。そのため、2.8GHz動作のAMD Opteron 154と、2.6GHz動作のAMD Opteron 152を搭載したSun Ultra 20 WSでベンチマークを計測し、そこで発生したスコア差とクロック比率から、3GHz動作時のスコアを推測する方法をとっている。スコアはリニアに伸びるとは限らないので正確な値とはいえないが、おおよその目安をつかめるかと思う。

 また、比較対象として、シングルコアのPentium4では最上位クロックとなる3.8GHz動作のPentium 4 670を用意。こちらはnForce 4 SLIチップセット、DDR2-667メモリと組み合わせた環境を構築し、そのほかの環境はSun Ultra 20 WSと統一して計測している。

 ビデオカードはハイエンドからメインストリーム向けまで3製品を用意。GeForce 7900 GTXを搭載する「Leadtek WinFast PX7900 GTX TDH Extreme 512MB」、GeForce 7900 GTを搭載する「Leadtek WinFast PX7900 GT TDH Extreme 256MB」、GeForce 7600 GTを搭載する「Leadtek WinFast PX7600GT TDH 256MB Extreme」を各環境に差し替えてテストを行っている。


グラフ1:ベンチマーク結果(GeForce 7900 GTX使用時)


グラフ2:ベンチマーク結果(GeForce 7900 GT使用時)


グラフ3:ベンチマーク結果(GeForce 7600 GT使用時)


 結果はグラフ1〜3に示しており、ビデオカード別にグラフを分けている。また、測定した結果の単位が異なるため、グラフはAMD Opteron 152環境を100としたときの相対値を基に作成し、グラフ上に各スコアを明示した。

 さて結果を見てみると、アプリケーションによって程度に差はあれ、Sun Ultra 20 WSの安定した成績の良さが目に留まる。とくに差が顕著なのはGeForce 7900 GTXを利用した環境で、逆にGeForce 7600 GTを利用した環境では、差が小さくなっていることに気が付くかと思う。

 これは、3Dゲームやベンチマークを実行時に、GeForce 7600 GTクラスのメインストリーム向けビデオカードでは、ビデオカード側の性能によってスコアが頭打ちになってしまうためだ。逆にGeForce 7900 GTXのようなハイエンドビデオカードでは、そちらの性能に余力があるため、CPUの差がスコアに結びつくのである。

 とはいっても、グラフ中で示したF.E.A.R.やDOOM3、FinalFantasy XIのように、最新のビデオカード技術を使っていないゲームではビデオカードの性能はそれほど必要とせず、キャラクターやオブジェクトなどの動作を行うCPUの処理に多くが裂かれる。現実的には、まだまだこうしたゲームも多く、ハイエンドビデオカードと組み合わせなくてもAMD Opteron 156を採用することの意義は大きいわけだ。


3DゲームPCとして抜群の性能を期待できるSun Ultra 20 WSの魅力
 このように、Sun Ultra 20 WSは個人ユーザーにとって現実的な入手性と導入の容易さを持っているうえ、3Dゲーム性能を兼ね備えたワークステーションであることがお分かりいただけたかと思う。

 入手性については、本稿中にも触れたとおり、AMD Opteron 156を搭載した本製品がTSUKUMO eX.で発売される予定になっている。構成はAMD AMD Opteron 156 (3.0GHz, 1MB Cache) x 1、1GB Memory (512MB unbuffered ECC x 2 DDR/400)、250GB 7200回転SATAディスクドライブ x 1、DVD-DUAL ドライブ (DVD+-R/RW)で、価格は249,800円(税込み)〜といったパッケージだ。ワークステーションといえばメーカーから直接納入されるというイメージがあるかも知れないが、個人向けの量販店でも入手ができるわけだ。

 導入の容易さは、Windows XPのドライバが用意されている点が大きい。また、Windows XPを利用する環境として、USB2.0やIEEE1394といった現在主流のインタフェースを豊富に備えている点など、非常に現実的な製品として捉えることができる。

 3Dゲームにおける性能については、グラフに示したとおりだ。より高いクロックで動作しているPentium 4を安定して上回れる性能をAMD Opteron 156は持っている。また、3Dゲームを楽しむようなパワーユーザー向けには、PCIスロットの豊富さも魅力だろう。

 本来は業務向けコンピュータであるワークステーションではあるが、Sun Ultra 20 WSはパソコンに求められる要素もバランスよく兼ね備えているのが印象的だ。性能にこだわるユーザーにとって検討の価値がある製品といえる。

[Text by 多和田新也]


販売店情報
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Sun Ultra 20(AMD Opteron 156)搭載パッケージ

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