11月に発売され、その後約1カ月間で8000台以上も売れた大人気SUVことスバル(富士重工業)の新型「フォレスター」。このクルマを試すべく、前編では東京都内から伊豆までロングドライブをしつつEyeSight(アイサイト)を使ってみたり、280PSの水平対向4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボ「FA20 DIT」エンジンを体感してみたり。
いや~やっぱりEyeSightイイっすわ~。たとえばEyeSightの「ついていく技術」により、高速道路の長距離走行とかホントにラク。具体的には「全車速追従機能付クルーズコントロール」───ドライバーはハンドル操作だけでOKなオートクルーズ機能で、先行車への追従および車間距離の調節は全てEyeSightが代行してくれる。長距離移動の疲れが激減!! 快適♪
それからEyeSightの安全性能である「ぶつからない技術」「飛び出さない技術」「注意してくれる技術」。前方のクルマへの衝突を避ける「プリクラッシュブレーキ」や、停車からの急な誤発進による事故を防ぐ「AT誤発進抑制制御」は、「まさかの事故」を未然に防いでくれる、一種の「保険」のような安心感がある。走行中のクルマのふらつきや車線からのはみ出しを警告してくれる機能もあり、「EyeSightのおかげでリスクを激減させられる」という大きなメリットを感じた。
そして次は、新型フォレスターの「走りの実力」を試してみたい。と言っても、既に一般道~高速道路での走行は前編でお伝えしたとおり。280馬力を発生する「FA20 DIT」エンジンは、ターボ車特有の加速時の違和感もなく、低回転から高回転まで滑らかに力強くパワーを発揮。シャシー剛性の高さと重心の低さが相まって、わりと背が高めのSUVなのに、ワインディングロードをクイクイと気持ちよく走ることができた。
俺的には既にこのへんで大満足&マジで新型フォレスター買っちゃおうかな~みたいな気分。だが、やはりスバルのAWD(All Wheel Drive;全輪駆動)車ということで、オフロード走行も試してみましょうよ、というハコビに。
そこで訪れたのが伊豆モビリティパークだ。いよいよ新型フォレスターでオフロード走行にチャレンジ!! どうなるのかッ!?
新型フォレスターでオフロード走行……ちょっと楽しそうじゃないですか♪ などと興味津々だった「本格的なオフロード走行なんて体験したことのない俺」である。が、実際に走行するコースを見てビックリ。
いやいやいやいや、そこ走るのムリでしょ。スバルの中の人、何言ってんスか。はぁ? 勾配48.7%(角度26度)の砂利道を新型フォレスターで上る!? 勾配48.7%って、100m進んだら48.7m高さが増す坂でしょ。10m進んで4.87m上がるって、アリエナイ道ですよソレ。ねえ。
そんな坂上がれないし。しかも砂利道だし。ダメだめ危ないから。上ってる途中で新型フォレスター裏返しに倒れて壊れちゃうから。この超売れてる新車が廃車になりますよマジで。
でも、スバルの中の人は「ちょっと勇気が要りますが、大丈夫です」とか笑顔で言うわけですよ、この「本格的なオフロード走行は未経験の俺」に。明らかに無茶な感じなんだけどなぁ。
試しに、そのオフロードコースを歩いてみた。前述の勾配48.7%の坂道は、もはや崖に近いですな。人がマトモに上って行くには登山靴が要りますよええ。こんなトコ、単なるSUVで上がれるかぁ?
いやいや、なんすかコレ? クルマの走るところじゃないでしょ? | 26度の斜面ってこれもう崖みたいなもんですよ。しかも足元がジャリだから超滑るし |
え!? X-MODE? ふむふむ。はあ。なるほど。
新型フォレスターには「シンメトリカルAWD」システムが搭載されている。AWDシステム、水平対向エンジン、トランスミッションが縦一列に並んでおり、これを上からみると左右対称となっている独自の駆動系で、これにより優れた走行安定性と路面を問わない走破性を実現しているのだそうだ。
そして新型フォレスターは、このシンメトリカルAWDの優れた性能をベースとして「悪路走破性」をさらに高める「X-MODE」も搭載している。悪路でタイヤが空転し始めると即座に介入し、エンジン、トランスミッション、AWD、VDCを統合的に制御して、4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールする。こうすることにより、タイヤの空転を抑えつつスムーズな脱出を実現する、とのこと。
要は、X-MODEをONにしておくと、タイヤが空転した直後に即、上記の制御が介入し、スムーズに走破(脱出)できるということらしい。従来では、タイヤが大きく空転し始めてから制御が介入したため、タイヤの空転を抑える~走破(脱出)までにある程度時間がかかったが、X-MODEなら非常にスムーズに走りきれるというのだ。
なるほど……16%くらい理解した。残り84%は新型フォレスターの実力を信じて、はいはいもうわかりました、トライしますよこの激坂(ていうか軽く崖)!! 上ってみます!! ……超怖いけど。
もともと走破性の高いフォレスターだけど、X-MODEのスイッチをオンにしておくと、タイヤが空転したときにより素早く対処してくれてさらに安心なんだとか |
クルマの中から眺めると、勾配48.7%の上り坂って、もはや壁ですな。あは、これ、壁~、あはは、あはははは~、と自分の中で何かが吹っ切れたのを感じつつ、おもむろに新型フォレスターのX-MODEボタンをONに。その超激坂に向かって走り始めた。
恐怖の超激坂を上り始めると、タイヤがズルッ、ズルルッと空回して砂利を蹴る音が聞こえてくる。のだが、あららら~、不思議。どんどん坂を上っていきますよ~新型フォレスター。
そして結局、この崖みたいな激坂をものともせず、シレッと上まで登り切っちゃいました♪ あは、あはははは~、異常な坂をスッと上っちゃう異常なクルマだコレ~あはは~♪ てか、すすす、スゴいじゃないですか新型フォレスター!! この悪路走破性能に、今、俺は、猛烈に感動しているッ!!
うおぉ~っっ!! 登っちゃてますけど、フォレスター!! でも俺ってばまったくの初心者ですが? | いや、マジこれ、すんごい坂ですけど。とりあえずX-MODEスイッチをオン | アハ、あはははは~、ズルズル言ってる、ズルズル言ってる~、けどなんだか登っちゃいますな~ |
でも、感動はまだまだ続くのであった。
激坂を楽勝で、滑らずグイグイと上っちゃう新型フォレスターだが、下り坂にもメチャ強いのである。もちろん単なる下りじゃなくて、勾配40%超えの「断崖絶壁」みたいな感じの「悪路」ですよ。車内から見下ろしても路面すら見えない状況。周囲の状況から「この方向が道だろう」と予測して下りていく(というか落ちていく)ような感じの下り坂だ。
こういう異常な下りのラフロードでも、フォレスターは安心感を伴う下り方をする。「ヒルディセントコントロール」と言い、下り坂などで車速が急に上がってしまうような場面で、常に一定の車速を維持して下ってくれるのである。
あはははは~、運転席からは道がまったく見えないんですけど……。ホントにこっちであってるんスか? |
まるでジェットコースターみたいな急坂があちこちに! でもX-MODEのヒルディセントコントロールのおかげで自動で車速をコントロールしてくれて、ドライバーはハンドル操作に集中できるのだ | X-MODEの作動状況がモニターに表示される。スリップする4輪を絶妙にコントロールしてくれているのだ |
なお、この「ヒルディセントコントロール」では、車速の設定も行える。具体的には、アクセルやブレーキで任意の車速(20km/hまで)に合わせるだけ。以降、アクセルペダルやブレーキペダルから足を離しても、その車速で下り続けてくれる。
こんな感じで、X-MODEは「悪路の上り坂」でも「悪路の下り坂」でも楽勝&余裕で走破してしまうわけだが、驚くべきは「ドライバーに特殊なスキルは不要」であること。何しろ、俺とか、こういう超激坂はおろか、ほとんどオフロードを走行したことないしネ。そんなヤツでも、「本格的四輪駆動車でも手こずりそうな悪路を無問題で走破」できちゃうんである。
X-MODE、恐るべし。これがあれば、タイヤが空転しやすいスキー場近くなどの雪道とか、あるいは同様に路面状態の悪い山道~林道なんかも不安を感じることなく走れるハズ。
んむむ~、渓流釣りとか行くと、砂利道とか山道とか走ってヒヤヒヤしがちなんだよな~。……やっぱ新型フォレスター超欲しいゼ!!
最後にインストラクターの運転であのコブ山を走るんだとか! いや、あれ道じゃないですよ、スバルの人 | ひょえ~、前輪浮いてますけど。いやいや今度は後輪浮いてますから! ってかなんで走れちゃうの? こんな場所!! |
最後に、新型フォレスターを「ユーティリティ性」という観点からチェックしてみた。X-MODEの悪路走破性能や「FA20 DIT」エンジンの力強さと心地よさ、さらにEyeSightの安全性と快適さも含め、新型フォレスターは最強のSUVだと思うが、日常の道具としても役立ってくれないとネ♪
新型フォレスターに乗ってみてまず感じるのは、車内空間のゆとり。新型フォレスター、車幅は1795mmで、このタイプのSUVとしてはわりとタイト。幅が狭めの一般道もけっこー走りやすいのだ。が、車内空間は広々していて、前席も後席も「大人が余裕をもって座れる広さ」がある。
実際、俺は身長約180cm・体重約100kgで、そんな巨漢が座っても余裕。運転席でも後部座席でも余裕。後部座席空間の広さは特筆モノで、俺が座っても脚が前席シートに当たるようなことはなく、また、頭の上にも十分な空間がある。
カーゴルームにも実用的な広さが確保されている。6:4分割可倒式リヤシートを倒せば最大505リットル(パワーリヤゲート装着車は488リットル)という空間が生まれ、9インチサイズのゴルフバッグを横に4個、大型スーツケースを立てたまま4個収納可能だ。横倒しにすれば自転車も入っちゃいますな。
運転席、後席ともに十分な広さがあって、頭上空間も広くて圧迫感がない。特に後席の足元の広さはスバラシイ |
ラゲッジルームは俺が座れちゃうくらいの十分な広さと高さ。さらに後席を倒せば寝られちゃう広さである | リアゲートの近くにあるこのスイッチを操作すると、後席のシートバックが倒れる仕組み。荷物を積むときに重宝しそうですな |
あとこのクルマ、SUVなのでセダンほどは乗り降りがスムーズではナイ……みたいな先入観があったりする。のだが実際は、ステップが低く、クリーンサイドシルにより服を汚す心配がなったりして、乗り降りがとてもラクなのだ。
ちなみに、クリーンサイドシルとは、従来は外部に露出していたサイドシル(ドアの下部のボディ/フレーム)を、ドアパネルで完全に覆っているというもの。走行中でもサイドシルが汚れないので、乗降時に服などがサイドシルに当たっても汚れることがない。
実際、前述悪路走行直後の降車時、パンツのふくらはぎあたりがシルに当たったが、汚れることはなかった。ボディはホコリだらけだったのにも関わらず、である。快適~♪ これなら雨のしずくや泥汚れが足につくことはないだろう。
サイドシルの高さが低いから乗り降りも自然にできる | さらにドアパネルが下まで覆っているので、ふくらはぎがぶつかる部分が汚れにくくなり、結果的に服が汚れる可能性が減る |
あとこの新型フォレスター、パワーリヤゲートが便利。開閉はリヤゲートオープナースイッチや運転席などのボタンを押すことで、電動で開閉する。ので、荷物が多いときや雨天のときは超実用的。それと、開閉が非常に静かに行われるので、たとえば夜間の住宅地などでも開閉音を気にせず荷物の出し入れができる。
もうひとつ、リヤゲートには開閉角度を任意で設定できるメモリー機能がある。ので、たとえば天井高が低い車庫や、後部に壁がある駐車場でも、リヤゲートを天井や壁にぶつけることなく開くことができる。こういったユーザー本位でのユーティリティ性が至るところにある新型フォレスターなのだ。
スイッチ1つでウィーンと電動で開閉するリヤパワーゲート。両手が荷物でいっぱいの時に重宝しそうですな | 例えば立体駐車場で高さに余裕がないとか、後ろが壁だとか、リヤゲートが全開にできない場合は、車内のスイッチでリヤゲートの開く開度を設定しておくことができる |
さて、ドライバー視点での「使いやすさ」を見てみよう。すぐ気づくのは視界の広さですな。シートを調節すればボンネットまで見渡せるし、ピラー周辺も死角が少ない。ボディが大きめのSUVでは運転時の死角の多さが不安要素となりがちだったが、新型フォレスター運転席からの視界は十分広く、開放感と安心感をもって運転できると思う。
ハンドルやメーターパネル周辺の操作系にもコナレ感がある。たとえばEyeSight関連の操作ボタンはハンドル右側に集中し、少し慣れると右手親指だけで瞬時に操作できる。EyeSightの動作の状態は、メーターパネル中央およびダッシュボード中央のマルチファンクションディスプレイに表示されるが、ドライバーの前方視野に含まれる位置にあるので、EyeSight動作状態の目視も安心して行える。
ピラーの細さやドアミラーの取り付け位置などの工夫で、前方視界がよく、クルマの大きさのワリに初めてでも緊張せずに運転することができた | EyeSight関連の操作はハンドルの右側、オーディオ関連の操作は左側に集約。慣れれば見ないで操作できる |
マルチファンクションディスプレイは高くて奥まった位置に配置されていて運転中も視認しやすい。さらに表示できる内容もEyeSightの作動状態から、燃費やVDCの作動状態など様々で、いくつもの表示形式から選ぶことができる |
てな感じの新型フォレスター。今回試乗したのは、最高グレードの「2.0XT EyeSight」だが、これで300万円を切っているってのは……なんか非常に安い気がするんですけどぉ~。って、そうか、だから売れまくり中なんですな。ん~、しかしイイわ新型フォレスター。
新型フォレスターは、非常に見どころが多く、魅力的なクルマだ。シロートな俺が見ても「うひゃ~超欲しい~」てなテンションになってしまうほど。「FA20 DIT」エンジンのパフォーマンスやEyeSightの安心感と快適は誰でも体感できると思うし、各所のユーティリティ性の高さにも頷けると思うので、ぜひ一度試乗してみて欲しい。
スタパ齋藤 |
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