7V型になったストラーダポケット「CN-SP700VL」
パナソニックのポータブルナビ「ストラーダポケット」が新しくなった。今回のモデルチェンジの最大のトピックは、7V型の大画面タイプが登場したこと。もちろん従来どおりの5V型も用意され、好みで選べるようになった。
そのほかは、一見進化がないように見えるが、実際に使ってみると“きちんと使える”という点がさらにブラッシュアップされている。実は“きちんと使える”がカーナビでは非常に難しい。カーナビは一見、単体で使っているように見えるものの、クルマの運転と密接に連携する。機能の反応速度が遅ければ運転を邪魔することになりかねない。運転を一切邪魔することなく、円滑に運転をサポートできるナビとなるためには、高い基本性能が求められるのだ。その点で今回のストラーダポケットは、位置精度、操作上の動作速度、見やすい表示などに重きを置いている。スペックに派手さがないことと引き換えに、店頭展示品やカタログを見ただけではわかりにくい、実際の使い勝手をきちんと進化させているように思えた。
余裕の7V型サイズの画面。操作頻度の高いボタンを画面の右外側に移動させ、液晶画面いっぱいに地図表示ができる
7V型になれば、画面も大きくなり画面が見やすくなる
まず、今回のモデルチェンジで登場した7V型モデル「CN-SP700VL」を見てみよう。従来の5V型と比較してしまうと大きいのは当たり前だが、単体でクルマに装着してみると率直に「見やすい」と感じる。実際、カーナビの画面は凝視することはほとんどなく、運転中も操作中もチラチラっと見ることが多い。現実問題として、停車中でなければカーナビ画面の凝視は法令で禁止されている。そのため、表示が大きければ大きいほど見やすくなる。7V型になって見やすくなる人がいても、見えにくくなったという人はいないだろう。
画面が大きくなることで、VICSの渋滞表示もわかりやすくなっている。ストラーダポケットのVICSの渋滞表示は、5V型液晶でも視認性のよい太めの表示だが、7V型はさらに大きく表示されるため、もっと渋滞箇所の確認がしやすくなっている。
また、操作がタッチパネルという点でも、画面の大きさはありがたい。実際に右ハンドル車でダッシュボードのセンターに装着すれば、左手で操作しなくてはならない。サウスポーならまだしも、人類の過半数が右ききという現状では、利き手でない左手の指でタッチするためには、操作に余裕が生まれる大画面のメリットは大きい。
7V型では、操作頻度の高いボタンを液晶画面の右外側に追い出した。常に使うボタンのため、画面上に配置すると表示範囲を狭めることになってしまう点が解消された。操作ボタンは液晶画面上に配置すれば機能を自由に割り当てられるが、外に出したボタンは「現在地」「MENU」音量調節など。常に使うボタンなので、固定でも問題ない。
7V型の大画面になったので、期待してしまうのは地図やワンセグの映像を見たりするときの高画質化。しかし、液晶解像度は5V型と全く同じだそうだ。これを残念とみるか、気にしないかは人それぞれだが、筆者は全く関係ないと考えるばかりか、むしろ歓迎と思っている。前述したように、カーナビ画面はチラ見がほとんどなので、画面の解像度はあまり気にならない。それよりも短い時間できちんと内容を把握できる表示能力が必要で、高解像度かどうかは関係がない。パソコンやテレビの画面とは全く用途が異なるのだ。ワンセグについてはもともと低解像度の規格なので、この液晶で解像度が気になることはない。一方、高解像度液晶を使ったカーナビでは、輝度や視野角に難点がある機種も存在する。ストラーダポケットの7V型は、見やすさ、視野角とも問題ない。むしろナビゲーションを重視するなら、低解像度液晶採用という点でもプラスの評価をしたい。
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タッチパネルの操作も大画面なら余裕を持って行える
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高精細にはなっていないものの、液晶が粗くて見えづらいことはない
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渋滞を発見した場合などは迂回ボタンで迂回ルートをすぐに探索して表示できる。細かくなりがちなVICSの渋滞表示もわかりやすいデザインで表示される(写真は5V型モデル)
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実は目立ない機能のバージョンアップだが、ルート探索が大幅に高速化している。東京から大阪までのルート探索も2-3秒だ。驚くべきことは、高速道路だけでなく、東京から大阪まで一般道を使った場合でも同様の探索速度なのだ。実際に東京から大阪まで一般道を通るといっても、国道1号をずっと走っていけばよいというほど単純ではない。試した目的地は大阪のユニバーサル・スタジオで、数秒で探索されたルートを確認すると、途中、国道246号や最後は国道2号なども織り交ぜて走りやすい最短距離を導き出しており、いい加減に探索されたものではないことがわかる。また、ストラーダポケットの特徴的機能でもある、5ルート探索についても一瞬で探索されてしまう。
実際、カーナビのルート設定は信号待ちなど、短い時間で素早く済ませたい場面は多い。また、この素早さはルートを外れたときに再びルートを探索するときにも役に立つ。これはカーナビの性能として重要視したい項目のひとつだろう。
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ルート探索の速さを試すべく、東京から大阪までのルートを探索してみた。一瞬でルートが表示されるのがわかるだろう
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ランドマークセレクトで表示する目的地の選択画面
走っていて、付近の駐車場やガソリンスタンドなどを地図上にアイコンとして表示しておく機能は、たいていのカーナビが持っているが、ストラーダポケットでは「ランドマークセレクト」として、必要なときだけ呼び出せるようにしている。
地図上に表示していると、実際に困る場面は少なくない。たとえば駐車場を表示していて、駐車場が多い地域に入りこんだ場合だ。地図の縮尺によってはアイコンによって地図が埋め尽くされてしまい、地図が非常に見えにくくなる。かといって、表示しない設定にしておいても不便。再び表示させるにしても、メニューをたどっていちいち設定しなおさなといけないからだ。
そんなときにストラーダポケットに搭載される「ランドマークセレクト」の機能が非常に有効となる。この機能は、画面上にランドマークセレクトのボタンが表示され、それを押すとアイコン表示がされるというもの。必要なければワンタッチで非表示、もう一度タッチで表示という簡単なものだ。なお、この機能では目的地のジャンルから自由に選んで設定できる。最大5業種まで設定でき、選んだ業種のアイコンはワンタッチで地図上に表示させるかどうかが決定できる。
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ランドマークセレクトのボタンを押すことで周囲のお店などのアイコンの表示/非表示が切り替えできる
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設定で表示する目的地の種類を選択することができる
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カーナビで必要な機能は、道順を案内することのほか、VICSをはじめとする道路交通情報を表示する機能も忘れてはならない。実際にカーナビを活用している人ほどVICSの重要性がわかっていると思う。VICSが入っていると、(財)日本道路交通情報センターの渋滞情報を、地図画面の道路に沿って表示してくれる。その情報は、FMラジオの電波にデータが乗せられて放送され、無料で手に入れられる情報だ。ラジオの交通情報と違って、交差点名がわからなくても、地図上で見れば渋滞箇所が一目瞭然となる。ストラーダポケットでは、一部を除いてVICSを装備し、通行止め情報を受信したときは、迂回ルートまで探索してくれる。
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付属のフィルムタイプのVICS用アンテナ。クルマの載せ替えなどで単体で購入することもできる
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VICSに非対応の機種でも、後からVICS対応にできるオプション品が用意されている
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そして、FM-VICS機能を内蔵しただけでなく、きちんと受信できるFMアンテナまでセットになっている。実はFM電波によるVICSは、極めて良好にFMラジオの電波を受信している状態でないとデータを完全に受信出来ない。東京なら東京タワーから送信されるため、都心から離れてしまうと簡易的なアンテナでは受信出来ないこともある。
ストラーダポケットにセットになっているFM-VICSアンテナはフィルムアンテナタイプでフロントガラス上部に貼り付けるようになっている。実際に使ってみると受信に問題はなく、せっかくのFM-VICSもきちんと受信できた。
なお、ストラーダポケットでも型番に「V」の付かない「CN-SP700L」、「CN-SP500L」、「CN-SP300L」はVICSに対応しないが、後からVICSの機能が欲しくなった場合でもオプションのFM-VICSキットを購入することでVICS内蔵へとバージョンアップできる。最初からVICS対応機種を購入することがおすすめだが、そうでないユーザーにもバージョンアップの道が用意されていることは評価できる。
ポータブルナビの欠点といえば、車速センサーなどの接続がないことによる自らの位置の補足が不十分なことが挙げられる。車速センサーがあるカーナビでは、クルマの走行速度がわかり、ジャイロとの組み合わせで自らの位置を算定することができるのだが、そうでないカーナビは、GPSの電波が受信できないと自分の位置がわからなくなるのだ。GPSの電波がうまく受信できなくなるのは、トンネル内やビルの谷間。特に都心部の首都高など。トンネル内で分岐があるような場所では、GPSだけに頼っていたのでは、分岐の案内すら満足にできない。
ストラーダポケットでは「3Dハイブリッドセンサー」と称する上下左右のジャイロと上下、左右、前後の加速度センサーを搭載している。実際に首都高 都心環状線のトンネル内の分岐は全く問題なく案内がなされた。地図上の自車位置についても、GPSの電波が受信できないトンネル内でも、きちんと移動し、分岐した場合でも、自分が分岐した方向に自車位置を示すマークが付いてきた。
実際、筆者が試用した限りでは、ストラーダポケットにおいて、車速センサーがないことによる自車位置精度の不安は感じなかった。
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これらのセンサーの組み合わせの総称を「3Dハイブリッドセンサー」と呼ぶ
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センサーで進行距離や進行方向を推測して現在地を把握するため、トンネルの中でも現在地をトレースできる
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都内では、走行ルートを大きく変化させる道が3月に開通したばかり。それは首都高速中央環状線と大橋ジャンクションだ。東名高速から関越道、東北道、常磐道方面に抜けたり、新宿や池袋、城北地区から東名方向へ向かう場合のルートも大きく変わってしまった。
今回発売したストラーダポケットでは、首都高速中央環状線の新たに開通した箇所と大橋ジャンクションを収録しているので、ルート探索の際にもしっかりと大橋ジャンクションを通るルートを提示してくれる。
新たに開通した道と諦めれば済むことかもしれないが、今回開通区間は都内を通過する場合の走行ルートを判断する上ではあまりに重要。せっかく新しいカーナビを買ったのに、開通した道が載っておらず、ルートとしても探索できないのはルート探索機能が大幅に削ぎ落とされたも同然。その点でも首都高の新規開通区間が掲載されたストラーダポケットを選ぶ価値があるといえよう。
従来、ポータブルカーナビといえば、簡易的なもの、低価格なものという位置付けがされていたため、高級感という点では今ひとつだった。ストラーダポケットも、従来の製品では装着の簡単さなどを訴求したものだった。
ところが、今回登場したストラーダポケットは一転して高級志向となっている。従来はプラスチック製の丸みを帯びた縁取りだったが、今回はどちらかと言えば角張っており、液晶画面と外装の縁取りも段差のないフラットなものになった。さらに、縁取りには目障りにならないようツヤを抑えたシルバーラインを組み込んでいる。従来モデルは画面の上下にストラーダのロゴとパナソニックのロゴが配置されていたが、新型では画面下に小さくPanasonicとあるのみ。ブランドをでしゃばらせない配慮も大人のデザインという印象だ。
これまで、ルート案内などカーナビ本来の機能について見てみたが、新型となったストラーダポケットでは、ワンセグなどの映像再生も進化している。
ワンセグやSDビデオを表示する際、従来は地図かワンセグかどちらかの表示しかできなかったものが、地図を表示しながら、右上に小さく画面を表示する同時表示に対応したこと。走行状態になるとワンセグの画面が自動的に地図になる機能も持っている。ワンセグについては録画機能を新搭載、クルマで外出中に見たい番組があった場合にその場で録画し、後で再生してゆっくり楽しむこともできる。
また、音楽再生機能も新たに搭載した。SDメモリーカードスロットに楽曲ファイルを入れると音楽プレーヤーとして再生できる。また、FMトランスミッターを内蔵し、音楽再生以外にもワンセグやSDビデオの音声をFMラジオの電波として飛ばし、カーラジオから再生可能となった。
なお、これらの機能は内蔵バッテリーでも動作するため、ポータブルなワンセグ対応テレビとしても活用できる。
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従来から対応していた、SDメモリーカード経由でパナソニックのDIGAや録画対応VIERAで撮った番組の再生にも対応する
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ワンセグのアンテナは、本体左上部分に用意されている
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5V型液晶のCN-MP500VD。7V型との違いは、液晶画面サイズと一部のボタン配置のみ。その他の機能は基本的に同一だ
試用してみたのは7V型のモデルだが、従来機種と同じ5V型のモデルも用意される。どちらもVICSの有無があり、5V型にはさらに廉価モデルとして音楽再生と3Dハイブリッドセンサーを省いた1機種があり、合計5機種のラインナップとなる。
いずれも8GBの地図容量やタッチパネル、ワンセグやSDビデオの再生に対応している。筆者のおすすめは、やはりVICS対応のモデル。7V型か5V型かは悩むところだが、映像再生などにも使うなら、迷わず7V型のほうを選ぶだろう。
今回、試用してみた新型のストラーダポケットだが、見やすい地図画面と非常に早いルート探索、きびきびした動きで、基本性能がしっかりしたカーナビだというのが率直な感想だ。
これからカーナビを購入したいと思う人がいるなら、カーナビ初心者でも、すでに使っている人でもすすめられる機種だと思う。特に、7V型であれば4〜5年前のオンダッシュのHDD/DVDカーナビやからの買い替えなどでも十分に満足するものとなるはずだ。ルート探索の速さは特筆もので、下手なHDDナビよりも早い。現在使用している機種の動作速度に不満があるなら、なおさらストラーダポケットをすすめしたい。
さて、後編は、最新のストラーダポケットを使ってドライブに出かけてみよう。
(text by 正田拓也)
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