パナソニックからポータブルカーナビのストラーダポケット「CN-MP200DL」が登場した。バリエーションは4タイプあるが、ワンセグ受信機能の有無と、クルマから持ち出して使う際の家庭用スタンドとACアダプターの付属の有無。カーナビとしてだけ使う場合に性能の差はない。
今回、試用したのはワンセグ内蔵の「CN-MP200DL」で、クルマから持ち出して使う付属品がセットになったもの。主に家電店で販売され、持ち帰って簡単にクルマに設置して使うことのできるお手軽なパッケージだ。面倒な取付工事は不要。クルマに設置する作業は、設置場所を決めてダッシュボードにスタンドを貼り付ける作業程度のものだ。
実際に箱から出して、車載用スタンドの設置場所を悩んだりする時間を差し引けば、10分もかからずに動作までたどり着く。スタンドの貼り付けが終わったら、シガーライターソケットに電源ケーブルを差し込んで接続、サイドブレーキ、FM-VICSの配線が終わったら、スタンドに本体をカチっとはめ込み、すぐ利用できる状態だ。
目的地設定もすぐにできる。「目的地」を押して施設名称などから検索してもよいが、だいたいの場所はわかっているときによくやる方法として、地図を縮小→スクロール→拡大して目的地を探す場合でも、サクサクと画面表示が行われる。
後述するが事前にパソコンで行き先を調べておき、カーナビに転送することも可能だ。
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ポータブルナビというと、機能が大幅に制限されると思われがちだが、このストラーダポケットはそうではない。カーナビの機能として正確に自車位置を示すことはもちろんだが、渋滞情報のVICSの受信に対応している。
VICSはラジオなどで交通情報を提供している(財)日本道路交通情報センターの情報を直接カーナビの地図画面に表示してくれるシステム。FMラジオの電波にデータが乗せられて放送され、通信料は一切かからずに情報が得られる。ラジオの交通情報を聞き逃したり、地理に不案内でラジオの情報では渋滞箇所がわからないということもない。この便利なシステムを活用できるのがストラーダポケットなのだ。
渋滞情報が表示されるということは、良く知った道でも活用範囲が広がるということ。ふだんはカーナビにカバーをかけておく人がいるが、ストラーダポケットでは、画面を見ないなんてもったいない使い方はあり得ない。
さらに、VICSでは工事や通行止めの情報も提供される。ストラーダポケットで通行止めの情報を受信すると、案内されるルートは通行止めを回避したものとなる。これなら、道順をよく知っている場所でもルート設定して走りたくなる。
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カーナビの性能のひとつで重要なのが自車位置精度。大昔、カーナビは海の中を走っていったなどと性能の低さを物語るエピソードがあったが、現在のカーナビにそんなことは皆無。
ストラーダポケットでは、さらに、GPSに加えてジャイロと加速度センサーを搭載する。精度を出すならGPSの性能だけを上げてしまえば良いと思うがそうではない。クルマは絶えず動き、高いビルやトンネルなどGPSからの電波が遮られてしまう瞬間も多く、GPSだけでは現在地を捉えきれないのだ。
また、交差点で曲がるときはGPSだけでは方角のデータがとりにくい。曲がったことをしっかりに認識するためには、別のセンサーも必要になる。
そこでストラーダポケットでは、上下左右のジャイロセンサーと、上下左右と前後の加速度センサーを搭載し、GPSの途切れを解消している。上下のセンサーがあるため、高速道路の高架へ登っているときやその逆もしっかり認識できる。
これだけでは完璧ではない。もし、カーナビ本体がクルマの進行角度にピッタリ合わせて設置されていれば問題ないが、角度が微妙にずれることもある。上下の角度も同じで、運転者に対して見やすいように液晶画面に角度を付けたいことも多いはずだ。
そこで、ストラーダポケットでは上下方向を検知するセンサーを併用、エンジンをかけた瞬間と走行状態によって本体の傾きを検知、角度を補正してジャイロや加速度センサーを最大限生かせる工夫がなされている。たとえストラーダポケットが斜めに設置されていても、進行方向は正確に前を向くのだ。
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カーナビの画面は実際に運転している状態でこそ、真の使いやすさがわかるものだ。お店で触ってみるとキレイな画面でも、実際に車に設置して走ってみると、アレっと思うほど使いにくい機種もあるのも事実。動作速度もそうだが、運転中にドライバーがチラっと見るには適さない画面デザインや配色の機種もある。
今回登場したストラーダポケットは、日本のエンジニアが国内の道路事情に合わせてソフトウェアを練り直しただけあって、道路の表示や案内ルート、VICSによる渋滞情報の表示色など、見やすさは十分だ。カーナビの種類によっては道路と案内されるルートの区別がつきにくいものもあるが、この機種では一般道を利用時のルートは青で表示され、画面上の他の色とかぶるものも少ない。液晶も見やすいものを採用し、輝度が高いので昼間の利用にも問題ない。
また、道の種類や太さもひと目でわかるように表示され、ルートの選択も有料道路利用の有無などは色分けでも示され、選びやすくなっている。
VICSの表示についても同様だ。渋滞箇所の表示は常時表示され、渋滞の線も適度に太く配色も判別しやすくなっている。カーナビの画面をチラ見した場合でも、渋滞箇所をしっかり把握できる。
少し表示が小さくなるが、2画面表示ができるのものストラーダポケットの特徴だ。曲がる場所をわかりやすくするためにの3D画面と、現在地把握のための2D画面を両方出しておくことができるのもこの機種ならではだ。
そして、もうひとつ重要なのが音声案内の聞きやすさ。ポータブルのカーナビのスピーカーは画面裏にある機種が多い。ストラーダポケットも画面裏にあるが、車載スタンドに音を横に導くダクトがあって明瞭に聞こえてくる。また、音声案内の女性の声も、低い声の女性で、聞きやすいが耳障りでない声なのものうれしい点だ。
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カーナビにもうひとつ必要なのは動作速度。パッと押してパッと反応しなければ運転にも影響してくる。たとえば、信号で止まっているとき、付近の地図を確認したいとき、スクロールや表示縮尺の変更はスムーズでなければならない。
筆者が使ってみた印象は、押せばさっと反応するカーナビだということ。短い信号待ちになどに、ルートの確認や変更をしなければならないときでもすぐに応えてくれる。地図のスクロールは常にスムーズで、パソコンでいう砂時計が出てきて処理待ちになるような場面は、ルート検索時くらいなものだ。
目的地設定のメニュー画面は2段階になっており、自分で設定した4つを最初に大きく出し、その後すべてのモードも表示できる。細かいことだが、目的地設定の際、毎回、全国地図から選ばせるカーナビがある中で、最後に検索した都道府県から先に選ぶようになっている点もユーザーへの気配りが感じられる。
また、販売店の店頭ではスムーズに動作しても、クルマに付けて走り出したら一気に動作が遅くなる機種もある。GPSの電波を捕捉し、自分の動きを検知、画面が流れていく作業はカーナビにとっても処理能力が要求される部分。これらの処理をせず、地図を表示しているだけの店頭デモでは、真の実力はわからないからだ。
その点、ストラーダポケットの動作は問題ない。地図のスクロールは常にスムーズで、パソコンでいう砂時計が出てきて処理待ちになるような場面は、ルート検索時くらいだった。
また、細かい点になるが、交差点を曲がっているときに、自車位置を示す三角のマークがクルマの動きに合わせて遅れることなく回転してくれる。現在の車の位置を知るためにはこれも重要で、GPSだけで現在地を補足しているカーナビに比べて、本当にリアルに動いていることがわかる。
さらに、ルート計算中にも自車位置を捕捉して遅れることなく表示している。たとえば、曲がるべき交差点を過ぎてしまった場合にルートの再計算が行われるが、その間、現在地の表示が止まってしまうカーナビも存在する。ストラーダポケットはポータブルでありながらきちんと補足し続けるのも、基本性能がしっかりしている証拠だ。
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カーナビを操作していると矛盾に思う点がある。据え付けのカーナビを操作する場合、エンジンをかけるかバッテリーからの電源供給をONにしなければならない。そしてカーナビは原則として走行中の操作が制限されるため、いつ、目的地の検索や設定をすればいいのか、ということになる。
環境面でも無駄なアイドリングはよくない。地域によっては条例で禁止されているところもある。かといってエンジンをかけずに電源だけ供給するポジションで操作してもよいが、バッテリー上がりなどに注意しなくてはならない。
そこで、ポータブルであるストラーダポケットの本領が発揮される。自身にバッテリーを内蔵しており、エンジンがかかっていなくても動作可能。しかも、取り外して使えるため、別の場所でじっくり設定してからクルマに装着し、走り出すということも可能なのだ
これらの動作は実はとってもエコ。カーナビの設定のためだけにエンジンをかけたり、アイドリングの時間を延ばしている経験があるなら、無駄なアイドリングがストラーダポケットでは不要になり、その分がエコになる。
まさに、内蔵電池とクルマからの電源の“ハイブリッド”エネルギーを用いたカーナビといえよう。
ちなみにバッテリーのほか、ACアダプターを使えば家庭の電源からいつでも動作できる。長時間に渡って室内で地図を使いたい場合や、ポータブルなワンセグ受信機としても活用するときも役に立つ。エネルギーに無駄がないカーナビなのだ。
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目的地設定はパソコンからする方法がある。ふだんからパソコンを多用している人なら、行き先をカーナビ内の情報だけに頼ることはあり得ないだろう。ネットで検索した場所に行きたいのは当たり前の欲求だ。
そこで、ストラーダポケットでは2つのネット連携機能がある。パナソニックのカーナビユーザー専用サイト「おでかけストラーダ」とGoogleマップだ。どちらもSDカードを介してデータの移行をしなくてはならないが、ネットで検索した情報をそのまま転送できるのは便利だ。
特に注目はGoogleマップとの連携だ。「おでかけストラーダ」を介して転送する方法もあるが、SDカードリーダーのあるパソコンとSDカードがあれば、ユーザー登録などの手間なくGoogleマップから目的地を転送できる。Googleマップの表示と添付ファイル付きのメールが受信できれば、ブラウザやOSの制限もない。
方法は、Googleマップで目的地を検索、地図上の吹き出しから「送信」をクリックし、カーナビ→Panasonic→メールアドレスと選び、情報をメールに送信する。届いたメールに添付されたgoogle.poiというファイルをSDカードに書き込み、ストラーダポケットにSDカードを挿入、MENU→設定→SD地点読込、で転送できる。
google.poiというファイル名をgoogle1.poiなどにファイル名を変更して複数の地点情報をSDに書き込んで一括転送もできる。容量が必要なファイルでもないので、余った低容量のSDカードに次々と地点情報を溜め込んでおけば、すぐにストラーダポケットで利用できる。
また、「おでかけストラーダ」もGoogleマップとの連携が可能だ。この場合はGoogleマップのデータを「おでかけストラーダ」のデータに転送し、それを改めてSDカードをを介してストラーダポケットに転送できる。
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カーナビにあると便利なのは、ワンセグの受信などメディア端末としての利用だ。ストラーダポケット「CN-MP200D」はワンセグ放送の受信、SDカードに入った静止画の表示も可能。据え付けのカーナビと違って、外に持ち出せば、どこでも使えるビューワーとしても利用できる。
デジタルカメラで撮影した画像をストラーダポケットの5V型液晶ディスプレイで表示すれば、デジタルカメラの画面より大きな画面で写真を楽しむことができる。もちろん車内だけでなく、取り外して持ち出せば、別の場所でフォトビューワーとしても利用可能だ。
カードは普通サイズのSD/SDHCカードに対応する。カーナビの地図データとは別スロットになっているので、差し替えて地図データを紛失してしまうこともなくなった。
そして、パナソニックならではの機能も用意される。これは対応予定とのことで、現時点で試すことはできないが、ブルーレイレコーダーのDIGAで録画したワンセグの番組を持ち出し、ストラーダポケットで再生できるワンセグ持ち出し機能が提供される。2009年秋のバージョンアップまで待たなければならないが、ビューワーとしてのストラーダポケットの機能がフルに発揮されるといえよう。
また、カーナビにワンセグやビューワー機能は不要と言い切るユーザーもいる。そんな人にはカーナビ機能だけに絞った「CN-MP100D」「CN-MP100DL」も用意される。さらに価格が安くなるので、ケータイのワンセグ機能を使ったり、別にボータブル機器を持っているなら、こちらを選択するものアリだ。
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簡単に使えて基本性能もしっかりしたストラーダポケットだが、簡単といわれる取り付けを再確認しておこう。
まず、設置場所を決める。これが意外に難しく、運転中の視界を遮らず、かつ、見やすい場所はそんなに多くない。車載用スタンドと本体をクルマのダッシュボードに当てがって決めるのがよさそうだ。
場所が決まったら、車載用スタンドの裏についている両面テープでしっかり貼り付ける。貼り付ける場所の汚れは付属のクリーナーでしっかり落として貼り付ける。密着する部分は薄い金属になっており、車のダッシュボードの曲線に合わせて曲げることができる。両面テープは自動車用に最適なテープで、高温下の状況でも溶け出したりせず、後で剥がした場合でも跡が残りにくいタイプだ。
スタンドの取り付けができたら、シガライタープラグへのDCコード、VICSアンテナ線を接続、カーナビ本体をスタンドに合体させればひとまず完成だ。
パーキングブレーキ結線もできればしたいところだが、しないなら、ストラーダポケットの設定で走行中の判定を自動に設定変更する。そうしないとスタンドに取り付けた状態では走行中と認識され、目的地設定などができなくなってしまう。
ここまでの作業なら、誰でもできる簡単な作業。カーナビの設置に工賃や工期は一切不要だ。
さらに確実な取り付けをするなら、スタンドの固定にビスを併用し、ガッチリと確実にスタンドを固定したい。クルマの中のものは事故などの際にものすごい衝撃が加わり、外れて飛び出したら大けがのもと。安全性を向上させるためにはぜひやりたい。また、パーキングブレーキへの配線も、走行中の判定を確実にするためにはおすすめだ。
もうひとつ筆者のおすすめはVICSアンテナの工夫だ。付属のアンテナはただのワイヤーをたらしただけのアンテナ。VICSはデータ放送なのでFMラジオの音声が受信できてもデータ受信が厳しいこともある。VICSの受信ができないときはアンテナを伸ばしたり、車内での引き回しを変化させると受信できることもある。
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ひととおり使ってみた筆者の結論は、カタログに表示されにくい部分において、想像以上に快適で、使いやすく見やすい画面のカーナビだということ。位置がピッタリ、動作がサクサク、表示がスムーズ、といった点を全て揃っている。
また、ワンセグはじめビューワーとしても機能も豊富で、クルマに乗る機会が少ないユーザーでも無駄なく利用できる機械だという点も注目したい。ふだんは枕元でテレビやDIGAの録画を消化する機械として使っていてもいいのだ。
据え付けの上位機種に比べると、機能が少ないなどポータブル機なりの点はあるが、設置の自由度と活用の広さ、そして基本性能の高さでポータブルカーナビを検討する際は、候補から外せない機種であることは間違いない。
さて、後編は、ストラーダポケットを使ってカーナビ初心者とドライブに出かけてみるとしよう。
(text by 正田拓也)
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