前回の記事で、パナソニックの「Strada CN-HW830D」の基本機能は分かってもらえたと思う。
今回は、さらにCN-HW830Dを深く使い込み、前回記事で評価できなかった機能をチェックしていく。ただし、今回は車を変更し、この季節ならではの紅葉ドライブプランを計画し、長距離ドライブで製品を使用し、各機能をレポートする。
今回の評価はパナソニックが用意してくれたCN-HW830D搭載の広報車のトヨタ・エスティマ(2.4L)で行った。筆者の愛車のRX-7(FD3S)では、編集スタッフや撮影スタッフまでが同乗できないと判明したため(笑)。
また、今回のドライブでは、Stradaユーザーのためのポータルサイト「おでかけストラーダ」を活用した。おでかけストラーダは、PC上で作成したドライブプランをSDカードに書き出すことができるため、今回は長野県「白樺湖」までのドライブプランを立てて、実際に行ってみることにした。ちなみに、おでかけストラーダで立てたドライブプランは、自分の車でなくても対応のStradaさえ搭載されていれば事前に立てたドライブプランを持ち込める。これはSDカードとStradaを手がけるパナソニック・プラットフォームのアドバンテージだといえよう。
借り受けた車両なので、まずはしっかりとドライビングポジションの確保から。CN-HW830Dは、2DINサイズの画面一体型のカーナビだが、画面の角度を変えることができるので、さっそく調整。意気込んで調整モードをいじってみたものの、エスティマだと2DINスロットがあらかじめナビの装着を前提に作られているためか、画面が完全に閉じている初期状態が一番見やすかった。
運転を開始して、まず初めに見ることになる地図。
CN-HW830Dはクラストップの高精細解像度を誇るワイドVGA、800×480ドットの7インチ(7V型)液晶画面を採用しており、画面が非常に細やかで美しく、それでいて見やすい。一般的な同クラス製品だと画面サイズは同じでも解像度がワイドQVGA(480×240ドット)前後なので、画数の多い漢字が読みにくかったり、有名フランチャイズチェーンのロゴなどが潰れていて簡易的で判別しにくかったりするのだが、CN-HW830Dではそういうことがない。
そして、ユーザーの好みに合わせて案内地図の表示方法をカスタマイズできるのもCN-HW830Dの特徴となっている。
初めて走る場所などでは、全体的なルート進行を把握するための広域地図と、現在走行している周辺の情報を詳しく知るための詳細地図とを両方を表示したいと思うはず。CN-HW830Dには液晶画面のワイド性能を活用して画面2分割して異なる縮尺で地図を表示できるのだ。
2画面表示にした地図のそれぞれを異なる縮尺に設定できるだけでなく、2D地図と3D地図を組み合わせた2画面表示も可能となっている。筆者的には、広域は2D表示、周辺詳細は3D表示として活用すると使いやすいと感じた。なお、2画面共に2D、あるいは3Dという組み合わせも可能だ。2画面分割しての表示でも液晶パネルの解像度が高いので、分割表示した状態でも解像感は一般的な同クラスカーナビと同程度の情報量がある。
なお、実際に曲がる場所が近づいてきた場合には、1画面表示でも2画面表示でも、画面右側に交差点拡大案内図が表示される。曲がるところは確実に曲がるように、通常時とは違う案内をポップアップ表示して注意を引いてくれる。ポップアップされる交差点拡大案内図には、自車位置が描かれているだけでなく、曲がるポイントまでの距離が青色のゲージで表示されているので、いつ曲がればいいのかが直観的に分かりやすい。
今回の旅では高速道路を活用したが、この高速道路走行時の案内もCN-HW830Dは懇切丁寧であった。
まず、嬉しいのが、高速道路の料金所のETCレーンと一般窓口レーンを事前に表示してくれる点。ETCレーンは、高速道路入り口によっては中央にあったり、端にあったりするので、できるだけスムーズに抜けるためにも、こうした情報はありがたい。今回の広報車は、パナソニックの対応ETC車載器を搭載していたので、支払った通行料金はCN-HW830Dの画面に表示されていた。ETC車載器は世代を超えてパナソニック製カーナビに広く対応しているので、万が一、今後、ナビの買い換えをする場合でも、またStradaを選ぶというのであれば、ぜひとも対応ETC車載器の導入をオススメする。
普段、使い慣れていない高速道路を走行していて気になることといえば、降りるタイミングやインターチェンジの際にどの車線にいればよいのかという情報。
高速道路は交差点はないので気持ち的に安定したドライブが楽しめる反面、高速で移動してるからこそ、インターチェンジの乗り降りを失敗するとダメージが大きい。CN-HW830Dでは、高速道路通行時には、これから到達するいくつかの高速出口やサービスエリアまでを、そこまでの距離情報と合わせてポップアップ表示してくれる。
そして、交差点拡大案内図のときのように、降りるべき出口や乗り換えるインターチェンジが近いならば車線移動の案内があるし、また、乗り換えるべきでないインターチェンジがある場合は直進すべきであることを"あえて"促してくれる。都市内高速道路では、分岐合流が複雑であるため、どちらが本線か分かりにくいことが多々あるが、高速道路走行中での至れり尽くせりの案内をしてくれるCN-HW830Dではそういう失敗は起こりにくい。
CN-HW830Dでは渋滞に対して3段構えの対応力を持っている。
CN-HW830D本体内には、財団法人道路交通情報システムセンターの過去の渋滞情報データベースを内蔵しており、日時に対応した渋滞を想定したルート案内をしてくれる。これが一段目だ。なお、案内画面の左上最上段部に「渋滞D」というロゴが表示されている場合は、このデータベースに基づいた渋滞回避ルート案内が行われている証拠だ。
第2段目はオプションのVICSビーコンユニットを接続することで得られるリアルタイム渋滞情報を活用した渋滞回避機能だ。VICSビーコンユニットを接続すると、高速道路や幹線道路に設置されているビーコン発信器からの渋滞情報をキャッチすることが可能となり、内蔵の渋滞データベースでは得られない「生の渋滞情報」が獲得できるようになる。現在走行しているルート上に渋滞が発生していることを察知し、なおかつこの渋滞を回避した方が早く到着できると推察された場合に限り、別ルートを自動的に探索してくれる。今回のドライブでも、都内の一般道路を走行しているときには、何度か渋滞回避の再ルート探索が行われた。
そして、この二段構えの渋滞回避性能を使っても渋滞につかまってしまったときには、「現在地メニュー」から「周辺迂回」を選択することで単発的で局所的な渋滞迂回ができる。今回のドライブではこの機能を活用するほどの渋滞にはつかまらなかったが、この機能は、普段走っている地元のドライブにおいても、突然の事故渋滞回避などに威力を発揮しそうだ。
CN-HW830Dの設置には2つの小型アンテナをフロントガラス等に設置するが、この2つのアンテナはそれぞれ別のチューナーに接続されており、この2つのチューナーが相互にエラーを補正し合って正しい放送データを再構築するシステムを採用している。この仕組みにより、テレビを美しい映像で見ることができる。
実際に運転を編集スタッフに代わってもらい、後部座席に設置されたリアモニターで地デジ放送をチェックしたが、今回のドライブでも電波状態によってワンセグ映像になったり、12セグ映像になったりしても、その切換は高速かつ自然で、気に触ることはなかった。
なかでも12セグ映像は特に高精細で美しい。まさにパナソニックの薄型テレビ「VIERA」に迫る高品位表示だ。これはCN-HW830Dに搭載されたVIERAシリーズ譲りの高品位映像エンジン「新PEAKSプロセッサ」と、ワイドVGAの高精細液晶モニタの相乗効果によるものだ。
また、ドライブの最中によくあるのだが、地デジを視聴中に移動によって受信状態が悪くなり受信が困難になることがある。CN-HW830Dではオート中継局スキャン機能が付いており、中継局が切り替わる際にも面倒なボタン操作不要で、自動的に新たな中継局を探し出し、見ていた番組を続けて楽しむことができる。
続いて、楽しんだのは音楽。
前回は筆者の愛車で音楽CDを中心に楽しんだので、今回の評価ではiPodを楽しむことにした。
CN-HW830DとiPodの連携は簡単だ。CN-HW830Dに付属してくる中継ケーブルにiPodのUSBケーブルで接続し、[AUDIO]メニューでそのものずばりの「iPod」を選択するだけ。以降は、iPod側に収録された楽曲選択から再生制御までをCN-HW830D側で行うことができてしまう。
今回のドライブに使用したエスティマは車内が比較的静かなので、前回の評価で用いた筆者の愛車のスポーツカータイプのRX-7とは違って、iPodの楽曲もクリアに聞こえる。
RX-7の時は、サウンド再生を増強して聞きやすくするSRS CS Autoを積極活用したが、車内が静かなエスティマではこれをオフにして、「音の匠」モードを選択した方が自然に聞こえた。ちなみにこの「音の匠」モードとは、音楽エンジニアリングのプロ集団MIXER'S LABが手がけた特別なサウンドプログラム。エスティマは車内が広いミニバンなので、車内の四隅に設置されたスピーカーからの音声は運転席から聞くと微妙にバランスが悪い。左右のステレオサウンドのうち、右側の音声が近くて強く、左側の音声が遠くて弱いのだ。
同乗者が多い場合はこのままでも別にいいが、運転者だけが自分本意に音楽を楽しみたい場合などは、再生特性を自分好みに調整したくなる。CN-HW830Dには、かなり充実したサウンド再生特性のカスタマイズ機能が搭載されているため、こうしたわがままな要求にも応えてくれる。活用するのは「バランス/フェーダー」設定。この画面でセンター位置を運転者側に移動させればいい。
さてさて、音楽鑑賞に夢中のあまり、ナビの音声案内を聞き逃しては、本末転倒。ただし、案内音声の音量を闇雲に上げたのでは、同乗者に不快な思いをさせてしまうかもしれない。そこで、確実に案内音声を運転者だけが聞けるようにと、音声案内を運転者側のスピーカーだけで再生するという設定も用意されている。これは実際に使ってみると予想以上に便利。前述したサウンド再生のセンター位置設定と合わせて設定したい。
今回のドライブで、最後に試したのは、CN-HW830DのBluetooth機能の活用。Bluetooth経由で携帯電話と完全無線接続し、ハンズフリー通話を試してみた。
電話機を一度Bluetooth設定画面で登録し、CN-HW830D側を「ハンズフリー自動接続」設定にして、なおかつ携帯電話側もハンズフリー接続待機状態に設定しておけば、自動的にBluetooth接続が成立する。最初の設定だけしておけば、以降は携帯電話を車内に持ち込んだ段階で自動接続されるのだ。ちなみに携帯電話は5台まで登録可能。と言っても同時に通話ができるのは一台まで。一般的にはその車を運転する家族それぞれの携帯電話を登録するような活用となるだろう。
電話をかける場合は、CN-HW830Dの画面上に映し出されたダイヤルをタッチして押すことで行える。電話が掛かってきた場合は、その電話に出るか出ないかをタッチパネルで選択する。通話時は、向こうからの音声は車内スピーカーから、こちらの音声はCN-HW830Dに付属してくるマイクが拾ってくれる。携帯電話に触れることなく通話ができる感じは、ちょっとした近未来気分だ。
ちなみに、携帯電話側の電話帳をCN-HW830D側の電話帳データベースにBluetooth伝送することも可能。これを行っておくと、電話をかけるときはCN-HW830D側の電話帳画面からタッチパネルで選んでかけることができるし、電話が掛かってきた場合は電話帳と照合して誰からの電話かをCN-HW830Dの画面に表示してくれる。
自分の携帯電話の電話帳をバックアップしておく意味合いでも、CN-HW830Dに転送しておくのはいいかも。
今回のCN-HW830Dの評価では、自分の愛車のスポーツカータイプにも搭載して活用したり、さらにはミニバンタイプのデモカーにも試乗した。
こうして長きにわたって深く活用して見えてきたCN-HW830Dの魅力を、あえてシンプルに言い表すとしたら「妥協のないカーナビ機能」「時代が求めたAV機能の全搭載」と言うことになると思う。
カーナビに求められる、最も基本的かつ重要な「ナビゲーション機能」について、CN-HW830Dは、実は上位モデルのFクラスモデルCN-HW1000D/CN-HX1000Dと同等のものを備えている。つまり、はっきりいってしまうと、上位モデルとカーナビ機能は同等なのである。これがCN-HW830Dの第一の魅力だ。
そして、上位Fクラスとの差の多くはオーディオ/ビジュアル機能に与えられているが、CN-HW830DでもDVD再生はちゃんとできるし、CDのハードディスク録音機能も搭載されている。今回試したように高品位な地デジテレビ視聴やiPod連携のような、時代が求める機能も網羅されており、期待以上の機能を備えている。これが第二の魅力だ。
ナビゲーション機能に重点をおいて機種選定をしている人にとって、上位Fクラスと同等のナビゲーション機能を身に付け、なおかつ水準以上のオーディオ/ビジュアル機能を搭載していいるCN-HW830Dは、最上の選択肢となることだろう。
(トライゼット西川善司)
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