このRPG、はたして「全部入り」か!?

突然だが、みなさんがRPGに求めるものは、なんだろうか。魅力的なキャラクター? 作り込まれた世界観? どんどん先をプレイしたくなるようなシナリオ? もちろん、手に汗握る戦闘ややりこみ要素を求めるプレイヤーも多いだろう。筆者としては、ここであえて「それ、全部ください!」と言いたいところだ。

去る11月17日に発売されたPlayStation®3対応ファンタジーRPG「二ノ国 白き聖灰の女王」は、ゲーム業界のみならず広い分野で話題をさらうパブリッシャーであるレベルファイブが、それらの要素を高いレベルでまとめあげたタイトルだ。国内のみならず世界中で高い評価を受け続けるスタジオであるスタジオジブリが劇中に挿入されるアニメーションを制作しているのも注目度が高い。

「二ノ国 白き聖灰の女王」は一見、ライトユーザーをターゲットにしたようなビジュアルではあるが、実際は大人から子供まで、ライトからコアゲーマーまで視野に入れた、ある意味野心的なRPGだという。さっそく、実際にプレイしてみながら、気になるポイントをチェックしていこう。

目次

表裏一体、二つの世界をめぐる冒険の旅

まずは、「二ノ国 白き聖灰の女王」のストーリーとキャラクターを軽く紹介してみよう。

■ストーリー

主人公、オリバーは車産業が盛んな町ホットロイトに暮らす、心が清く穏やかな少年。穏やかな大人たちと仲の良い友達、そして母親のアリーと共に平和に暮らしていた。

オリバーはある日、親友のマークとともに試作した車の運転中、事故に遭い、川へ転落してしまう。そこへ駆けつけた母親のアリーだが、心臓の弱いアリーは川に入ったことで病状を悪化させ、死んでしまう。

大事な母を自分のせいで失い、悲しみに暮れるオリバーは、アリーから贈られたぬいぐるみを抱きしめて涙する。すると、涙が落ちたぬいぐるみが突然動き出し、自らを「大妖精シズク」だと名乗り、オリバーを救世主と呼んで「二ノ国」に誘う。

一度は拒否をするオリバーだったが、シズクに二ノ国に来れば母を助けられるかも知れないと言われ、未知の世界である二ノ国へと足を踏み出すのであった……。

■主な登場キャラクター

さて、冒険の舞台となる世界観がRPGのキモともいえる部分だが、「二ノ国 白き聖灰の女王」はなかなか凝ったつくりになっている。

本作は二つの世界から構成されていて、まず、主人公であるオリバーが居る世界を「一ノ国」と呼び、オリバーが救世主として召喚される世界が「二ノ国」と呼ばれているのだ。この二つの世界は表裏一体であり、パラレルワールドになっている。たとえば、「二ノ国」の世界で誰かが危機に陥れば、「一ノ国」の国で魂を共有している存在が影響を受けることになる。

オリバーは妖精であるシズクから受け取った魔法の書物「マジックマスター」に記された魔法「ゲート」を使うことによって、他世界に渡るための門を作り出し、「一ノ国」と「二ノ国」二つの世界をまたいで活動することになるのだ。

     

一ノ国と二ノ国には、魂を共有した同一存在とでもいうぺき住人がいる。二ノ国のゴロネール王国の国王、ニャンダール14世は一ノ国では実は…?

魔法の書物マジックマスターを手に入れたオリバーは、一ノ国と二ノ国を行き来できるようになる

また「一ノ国」と「二ノ国」と違いとしては、「一ノ国」は現代的な物が多く存在しているという点だ。魔法などは存在せず、機械的な文明が発達している。オリバーの住む街ホットロイトは車産業が賑わっていることからも分かるだろう。

対して「二ノ国」は魔法などが発達した、いわゆるファンタジー世界だ。広大な自然に、厳しい山々。自然の動物と同じように潜むモンスターなど、「一ノ国」からは考えられないような世界が広がっている。

     

一ノ国は近代文明が発達した、オリバーがもともといた世界だ

対する二ノ国は、雄大な自然と凶暴なモンスター、剣と魔法のファンタジー世界

この世界のあいだを行き来し、調査することによりオリバーはさまざまなイベント、事件を解決していくことになる。「一ノ国」と「二ノ国」の二つの関連性を探っていくことこそ、事件を解決に導く鍵となるわけだ。

シナリオの見所はなんと言っても、オリバーを中心とした数々の冒険。

童話チックな世界観だが、ところどころの展開は意外なほどハードだ。そもそもオリバーが「二ノ国」へと行く動機となるのは「母の死」であり、ほんわかした世界観だな、という最初の印象を裏切ってくれた。

「一ノ国」、「二ノ国」、密接にリンクする世界であり、なにがどう関係しているのか、ある種の推理ゲーム的な楽しみも味わえる。また、オリバーの前にときどき現れる、「ココル」という謎の少女は、オリバーのために涙し、時には助けになってくれる。彼女の正体に関する謎も、ストーリーを追う大きな動機になってくれた。

     

オリバーは母を、そして世界を救えるのか

謎めいた少女、ココルの正体は

もちろん、RPGならではの仲間との出会い、強大な敵との対峙、などの要素もばっちり登場し、心躍らせてくれる。世界を管理する仮面をした者達、「エルダードゥーク」は異様な重圧を放ち、世界を闇に染めんとする「灰の女王」は強大な存在感を示す。そして漆黒の魔導師「ジャボー」。彼に逆らい、心の欠片を奪われ無気力になった「ヌケガラビト」という人々がゲーム中でたびたび登場し、物語に緊張感を添えている。

   

灰の女王とエルダードゥークは、オリバーを監視し続ける

「漆黒の魔導士」ジャボー。暗躍する彼の目的は?

心の欠片を奪われた「ヌケガラビト」は、ナイトメアに取り憑かれて襲いかかってくることも

ゲームを進めるにつれ、、厳しい冒険の中でも人を思う心を忘れず、勇敢に立ち向かっていくオリバーの姿、そしてオリバーと母の絆。母を助ける旅の中で出会っていく人々、仲間。そうした人間ドラマにひきこまれ、目を離せない展開の連続に、思わず寝る時間も忘れてストーリーを追ってしまった。王道といえるストーリーだが、王道ならではの良さを再確認させてくれるシナリオだ。

冒険心を刺激する、3D CGグラフィックとアニメーション

「二ノ国 白き聖灰の女王」の見所のひとつとされるのが、二つの世界の美麗かつ雄大なグラフィックだ。

この記事を読んでいる読者の皆さんは、ファンタジー世界のRPGに親しみを持つ人が多いと思うが、「冒険」という言葉からどんな情景を思い浮かべるだろうか。たとえば筆者なら、ファンタジー世界の冒険ならば、広大な自然、それも時には優しく包みこむような木々から、暗く不気味な森林、おどろおどろしい洞窟、プレイしている今にも火傷してしまいそうな砂漠や、見上げてその雄大さを感じるような山を想像する。そして、たどり着いた瞬間に安堵のため息がもれるような牧歌的な街々、見上げて胸が高鳴るような大きな城も定番だ。

今作は、そんなファンタジー世界を冒険することへの期待感を見事に満足させてくれた。まさに「これぞ冒険だ!」というグラフィックは、厳しく、時にはほっとした気持ちにさせてくれるファンタジー世界の醍醐味を、これでもかと味あわせてくれる。

ただ歩くだけで楽しいRPGというのは貴重な部類に入るが、「二ノ国」はまさにそれだ。マップに広がる自然、探索ポイント、そして街や城。それらを眺めながらキャラクターを操作するだけで時間が過ぎていってしまう。まずはこの広い世界を歩きまわり、美しく表現された世界で充実した時間を過ごすのがおすすめだ。 

   
   

美しい世界を縦横無尽に歩き回れる

また、スタジオジブリの手による随所のアニメーションパートも美しい。キャラクターの表情の細やかさ、どこかレトロな雰囲気のある車や街並みは、やはりスタジオジブリならでは。

   

随所で挿入され、物語を盛り上げるアニメーションパート

煩雑さを感じさせないゲームシステム、戦略性のある戦闘

本作のシナリオや世界観、それらを実際に表現しているグラフィックのすばらしさは、ここまでのスクリーンショットを見てもらえればある程度伝わるだろう。では、ここからは実際にプレイを進める上で気になるゲームシステムの部分について見ていきたい。

「二ノ国 白き聖灰の女王」は最近のRPGらしく、普通にゲームを進める上ではかなり親切かつスムーズで、迷いにくい構成になっている。

まず、フィールド画面にはミニマップが付いており、そこに次の目的地が☆マークで表示されているので、目的地にすぐにたどりつきたいときは一直線に向かえるし、しばらく寄り道して周囲を探索したいときも、目的地がわかっているので安心感がある。また、マップやメニュー画面を開く度に次の目的がメッセージ上で表示されるので、「あれ?次にどこへ行くんだっけ?」となったときは、そこを確認しさえすれば、つぎにすべきことがわかるわけだ。

ゲームを進める上では、魔法指南書「マジックマスター」を活用していく。マジックマスターでは、武器や防具、仲間にしたイマージェン(後述)の情報が閲覧できるほか、抜け落ちたページを集めていくことで、オリバーが新たな魔法を使えるようになっていく。

   

メニュー画面から閲覧できるマジックマスターには魔法やイマージェンの情報のほか、二ノ国に関する知識がおさめられている

メインストーリーで迷うことはまずないだろう

基本的にはそれらを助けにしながら、シナリオに沿ってメインストーリーを進めていく。大きな最終目的に向かって多くの人々を助け、助けられ、時にはギルドや人の依頼をクエスト形式で受けることによってサブストーリーを楽しみながら、次々襲いかかる難事件を解決していくわけだ。

もちろんその度に、立ちはだかる強大な敵や、オリバーを信頼し助けてくれる仲間も登場する。黒幕の野望を打ち砕くために仲間と強力しあい、戦闘をこなし、ダンジョンに潜り、街を探索する。そこにはRPGの魅力のすべてが詰まっている。

そしてRPG好きとしては気にせざるをえないだろう戦闘システムだが、、シンプルながらも、非常に戦略性の高いものとして仕上がっている印象だ。

プレイヤーキャラクターは戦闘フィールドを自由に動き回ることができ、戦いの緊張感と臨場感が同時に演出されている。敵との距離によって攻撃や回避などの行動に繋がるので、敵のモーションを観察しつつ、つぎにどう動くか、攻めるのか守るのか、その都度判断していく必要がある。

     

戦略性の高いバトルシステム

戦闘中、緑色の玉と青色の玉、「ソウル」というアイテムを敵が落とすことがある。緑色の玉に触れるとHP回復、青色に触れるとMP回復する。これらは一定時間経つと消えてしまうので、いかに敵の攻撃をかいくぐりつつ、ソウルを効率的に集めるかで戦闘の風向きが変わってくる。

物語序盤で得た魔法により、「心の戦士」イマージェンを具現化できるようになる

さて、今作の最大の特徴と言えるのが「イマージェン」だ。これは心の中から生まれる戦士の名称で、オリバーの代理として戦闘を行なってくれる。戦闘中は、オリバーとイマージェンを切り替えながら戦っていくことになる。

イマージェンとオリバーのHP、MPは共有されており、代理として出しているイマージェンが攻撃を受けると、オリバーの体力も減っていく。また、イマージェンには活動時間というものがあり、それは戦闘中にゲージ(CT)として表示されている。このゲージがなくなってしまうとイマージェンは行動ができなくなってしまうので、ずっと同じイマージェンで戦い続けるのは難しく、上手くオリバーや別のイマージェンと交代させる必要がでてくる。

そして重要なのは、イマージェンと敵はそれぞれ「属性」を持っており、それぞれの属性には相性関係があること。敵の弱点属性をうまく突けるイマージェンを戦闘に出すことによって、戦局を有利に運ぶことができるし、逆にイマージェンが不利な属性を突かれて、危機に陥ってしまうこともあるわけだ。

   

イマージェンもオリバー同様操作が可能なほか、イマージェンならではの技を使うこともできる。ただし赤丸で示したCTゲージが切れるとそのイマージェンは一時的に使用不可能に

敵とイマージェンのあいだには相性関係がある

相性によっては敵の攻撃を受け付けない

イマージェンをいかに上手く使いこなすか。どの局面でイマージェンやオリバーを交代していくか。それなりに頭を使う必要がある戦闘になっており、「RPGといえばやっぱりバトルでしょ!」というプレイヤーも安心だ。

イマージェンの育成、クエストなどやりこみ要素も多い

どうせゲームを買ったなら、ガッツリ骨の髄まで遊びたい! というのは正直なところだ。本作のようにライトなイメージのゲームは「あっさりクリアしちゃうんじゃないの?」という要らぬ心配をしてしまいがちだが、本作には時間をかけて楽しめるやりこみ要素がちゃんとある。

まずは前述のイマージェン。相性をもとに戦略性の高い戦闘を行うことを可能にするイマージェンだが、仲間になるイマージェンの数は非常に豊富。メインストーリーを進行していく上で勝手に仲間になるイマージェンのほかにも、サブストーリーをこなすなどして自分から探していく必要があるイマージェンも多いようだ。

   

イマージェンの種類は多彩。使いこなす技もそれぞれ

ちなみに、外見などが気に入ったイマージェンがいるのに、戦闘時の相性の関係で使いづらかったりして、「このイマージェンを使いたいのに!」と思うプレイヤーもいるかもしれない。というか、筆者がそうである。

そこで紹介したいのが、イマージェンの成長システムだ。イマージェンは、プレイヤーが育成して強くしていくことができるのだ。ケーキやクッキーなどといった「おやつ」を与えることにより、イマージェンはどんどん強くなり、さらには、新たな技も覚えさせることができる。覚えられる技は8個までで、どの技を憶えさせ、どの技を捨てるか、育成にも戦略が必要となってくる。

イマージェンを集め、育てていく過程でイマージェンにはどんどん愛着がわくようになる。たくさんのイマージェンを仲間にして、お気に入りのイマージェンを見つけ、育てるのが本作の最大の楽しみのひとつだと思われる。

そうして集め、育てたイマージェンたちは、もちろんメインストーリーの中で大活躍してくれるが、さらなる歯応えを求めるプレイヤーには「討伐クエスト」が用意されている。これはいわゆるサブクエストの一種で、文字通り、モンスターを倒すことで達成する。

討伐クエストに登場するモンスターは、実に曲者ばかり。普通にメインストーリーを進めているだけでは、かなり苦戦する相手ばかりが揃っているようだ。ここでイマージェンの選択や育成が大きく関わってくる。日頃育てている自慢のイマージェンを思う存分活躍させるもよし、討伐のためだけに戦略的にイマージェンを育成するもよし。イマージェンの育成が十分でなくともプレイヤースキルによって突破できる場合もあった。様々な方法、戦略・戦術を取って臨んでみてはいかがだろうか。

   

人に迷惑をかける凶悪モンスターを倒す討伐クエスト

討伐クエストで登場するモンスターはみな手強い

討伐クエストに限らず、サブクエストを達成すると「スタンプ」がもらえる。スタンプを集めて「えいゆうライセンス」を取得すると、さまざまな特典・特殊能力が得られる

救世主たるもの、人助けは進んでしましょう

やりこみ要素といえば、「たのみごと」と呼ばれるサブクエストもある。二ノ国の人々はみな様々な悩みを抱えているので、救世主としてやってきたオリバーにとって、そういう人たちのお願いを聞くのも大事な仕事の一つなのだ。

その「たのみごと」は、数もさることながら種類も豊富で、或るモノを取ってきて欲しい、子供を探してきて欲しい! などのお手軽なものからちょっと骨が折れるモノまである。冒険の合間に、ちょっと一休みがてら受けてみたり、あえて優先して取っていくのもアリだろうか。いずれにせよ、すべての「たのみごと」をコンプリートするのにはかなりの時間が必要だろう。

今冬、じっくり腰を据えて遊べるRPG

以上で見てきたように、「二ノ国 白き聖灰の女王」は、誰もがかつて夢見たような壮大な冒険を、作り込まれた童話のような世界を、最新のグラフィックによって思う存分堪能できるタイトルだと感じた。

もちろん、洗練されたゲームシステムや、イマージェンの収集や成長要素などの「やりこみがいのある」ゲーム要素も配置されており、タイトルを遊びつくしたいゲーマーにもうれしいゲームに仕上がっている。

魅力的なストーリー、ゲームシステム、美麗なグラフィックとそれが表現する世界観、そのどれもが魅力的。この冬の夜長を充実したゲームで過ごしたいと思っている方は、ぜひとも本作を手にしてみてほしい。

   

冒険の先々で得られる驚き、感動を味わおう

(Reported by 眞条 崇司)

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二ノ国 白き聖灰の女王 製品情報

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