今回発売となった「Extreme III 30MB/s エディション SDHC カード」。リード/ライトともに30MB/sの速度を実現した、SDHCカード最速の製品だ
今回インタビューに快く応じていただいた、米SanDiskのジョナサン・フバート氏とスーザン・パーク氏
「Extreme III 30MB/s エディション SDHC カード」と時を同じくして発表されたニコン製デジタル一眼レフ「D90」
毎秒4.5コマの連写性能を持つニコンD90は、小型軽量化にともない、メモリーカードスロットがSDHCカード対応になった
ニコンD90とExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード のマッチングで連写枚数は大幅にアップする
 ニコンD90と同時期に発表されたサンディスクの新製品は、転送速度の頭打ち状態であったSDHCカードの壁を打ち破る、衝撃的な30MB/s書き込みを可能にした「Extreme III 30MB/s エディション SDHC カード」であった。今回はこのカードについて米サンディスク コンシューマー製品部門マーケティング ディレクターのスーザン・パーク氏と、同コンシューマー製品部門 シニアディレクターのジョナサン・フバート氏に、新製品の開発から製品仕様などについて話を聞いた。

高速化の秘密

森脇 20周年記念!おめでとうございます。また素晴らしいSDHCカードの発表で少々興奮ぎみです。さっそくですが今回発表されたExtreme III 30MB/s エディション SDHC カードについてお聞かせ下さい。

まず、高速な連写性能を持つデジタル一眼レフカメラはCFカード(コンパクトフラッシュ)を使用するものが多いわけですが、一般的にSDHCカードの高速記録は20MB/s〜22MB/sで頭打ち状態だと思っていましたが、従来のExtreme IIIも20MB/sでした。ここに来て一気に50%アップの30MB/sになったのはいったいどの部分が進化したのですか?

フバート氏 この質問は私の方からお答えさせてください。専門的なことは企業秘密の部分が多いため、正確にはお答えできませんが、弊社はフラッシュメモリとコントローラをそれぞれ自社開発しておりますのでメモリーを最適化し、速度を最大化した製品の開発が可能になり、安全に使用できると判断したら製品化するわけです。特にSDHCカードは比較的小さなホストデバイス、コンパクトデジタルカメラやミュージックプレイヤーのように、それほど高速な仕様のものがなく、20MB/sのものでも十分だと思われていました。しかし今回のニコンD90の様にコンパクトでもより高画素でより速い連写性能を持つものがこれからは求められると考え研究していました。というより今現在も高速化の研究はつづいているのです。

ホストデバイスメーカーとの協力関係

森脇 昨年ニコンD3が発表されたとき、推奨メモリーカードがサンディスクのExtreme IV CFカードでした。今回のD90も推奨メモリーカードはサンディスクのExtreme III SDHCカードだと聞いています。サンディスクとニコンは共同で開発にあたっているのですか?

フバート氏 それはありませんが、我々サンディスクはあらゆるホストデバイスメーカーと連絡を取り合っています。ニコンもその1つです。今回のD90はExtreme III SDHCカードを使用することで最高画質で約26コマの連続撮影が可能ですが、ニューモデルのExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード を使用することで約39コマの連続撮影が可能になります。記録メディアの性能アップがカメラ自体の性能を上げた良い例になったと考え、サンディスクの技術が貢献でき大変喜んでいます。

コントローラーチップを自社開発する強み

森脇 技術と言うお話がでましたのでサンディスクのExtremeシリーズのことをうかがいます。 一般的にはあまり知られていませんがフラッシュメモリを使用する記録メディアは記録するメモリー(NANDフラッシュ)の性能もさることながら、データの受け渡し場所であるコントローラーチップの性能が重要なはずです。そのあたりの話をお聞かせ下さい。

フバート氏 おっしゃる通り、コントローラーチップはもの凄く重要な部分です。我々サンディスクは1999年から東芝と合弁で三重県の四日市にNANDフラッシュの工場を構えています。つまりフラッシュメモリを自社で生産しているわけですが、それだけではなくコントローラーチップ自体も自社開発しているメーカーなのです。日本国内に流通している多くの記録メディアはコントローラーチップをコントローラー製造メーカーから購入し、NANDフラッシュも製造メーカーから購入してアッセンブル(組立)したものを販売しているのです。特にコントローラーチップは技術が必要な部分だけにブラックボックス的要素が大きく、購入しただけでは中身を解読するのは難しいものです。サンディスクのExtremeは独自のコントローラー技術を採用しているため、どこよりも正確で安全なデータの受け渡しが可能です。

高速化を実現するサンディスク独自技術「ESP」

森脇 サンディスクだけのESPテクノロジーはすごいと聞いていますが、詳しく教えて下さい。

フバート氏 ESPテクノロジーはサンディスクの最高機密事項なので詳しくはお答えできませんが、デジタルカメラを例に上げて簡単に説明すると、撮影された画像データは一度カメラ内のバッファメモリーに蓄えられます。そこから記録メディア内のバッファメモリーに移されます。このバッファメモリーからデータを1つのパイプラインを通してメモリーチップに書き込みするわけですが、ExtremeのESPテクノロジーは記録メディア内にデータを貯めず複数のパイプラインを使用して一気にメモリーチップに書き込みしてしまいます。よって複数のパイプラインのおかげでどんなに重く大きなデータでもストレスなくカードに記録できるわけです。1本のパイプラインしか持たない記録メディアの場合軽く小さなデータの場合は良いのですが大きく重いデータが連続してやってきますと書き込みスピードが一気に遅くなってしまい。最終的には連続撮影枚数の低下や書き込み終了まで時間がかかってしまい直ぐ撮影できない事態を招く結果になります。ESPテクノロジーを採用したExtremeカードは他社では絶対真似のできない最高の技術だと考えています。

サンディスク Extreme III/IVに採用されている「ESP」テクノロジーは複数のパイプラインを使用しデータを貯めず、一気に書き込むことを可能にした他社には真似のできない技術だ。
森脇 大変よく分かりました。だからExtremeと名前の付いたカード達が高速なのですね。 もう1つ、サンディスクのExtremeカードはリードとライト(読み取り/書き込み)スピードが同じな、数少ない記録メディアですがこれはESPテクノロジーのおかげということになりますね。

フバート氏 はい、そうなりますが、記録メディア内の重要な部分を自社で開発生産していることが一番大きいと思います。またこの技術を使うことでリード/ライト(読み込み/書き込み)のスピードのバランスを保っています。

森脇 日本国内で販売されている記録メディアにはリード(読み取り速度)のみ高速で、ライト(書き込み速度)の遅いものも多く存在しています。デジタルカメラからの大きく重い画像データを扱う場合はサンディスクのExtremeシリーズが速くて安全な理由がわかりました。

パーク氏 プロフェッショナルユースのExtreme IVも良いですが、今回発表したExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード も一度使用していただければその良さは必ず伝わると考えています。

パッケージングが変わった理由

森脇 それでは、今回の30MB/s エディションSDHCカードのパッケージについてうかがいたいと思います。今回は随分簡単なブリスターパッケージになりましたが、これは海外製品との差別化とか偽造品対策なのでしょうか。

パーク氏 記録メディアの種類がたくさん販売されている日本の環境を考えてこういった形になりました。以前の商品は海外も含め同じパッケージを使用して言語表記のみ変更して販売しておりましたが、日本国内の販売店様からパッケージが大きいので他社の商品が並ばないとご指摘をいただきました。またパッケージ内容を簡素化したことにより多少ですがコストの削減ができ、よりリーズナブルな価格でご提供できると考えています。販売価格はオープンプライスになっています。それと偽造品に対しては水際の対策を実施しておりますし、カード自体にも偽造防止対策をしています。

   
今回販売されるExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード は4GB 8GB 16GBの3種類になる。
 
イメージを一新したスリムなブリスターパッケージ。これから日本国内販売モデルは全てブリスター化が図られるようだ。
 
SDHCカードの裏面は一部を半透明にした手の込んだ仕様になっていて偽造品防止に一役かっている。

30MB/sを達成したExtreme IIIファミリー

森脇 そう言えばExtreme IIIシリーズはCFカードやメモリースティックPRO-HGデュオカードなどすでに30MB/s化されていますね。

パーク氏 サンディスクではExtreme IIIの商品群達をExtreme IIIファミリーと呼んでいて、コンシューマー層からプロシューマー層の方たちをターゲットに商品開発をしてます。

森脇 日本国内のデジタルカメラ愛好家…言い直すと、アマチュアからハイレベルアマチュアまでの人たちのことですね。

30MB/sに高速化されたExtreme IIIファミリーの製品達!
パーク氏 はい、そうなりますね。つまり一番デジタルカメラを使用している人の多い層ということになりますね。私もそうですがコンパクトデジタルカメラから小型の一眼レフデジタルカメラに買い替えをしようと考えている方たちです。それでも今回のニコンD90のように1200万画素もある大容量のデータを記録するわけですから、記録メディアはスピードが速い方が有利だと考えています。先にも述べたかもしれませんが、今回はD90と言う私どものExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード の性能をフルに発揮してくれるカメラの発表があるということで、良いタイミングと考え日本で発表会をさせていただきました。これでExtreme IIIファミリーは全て30MB/sの速度を達成したことになります。高速な記録メディアを使用して今まで以上にたくさんの傑作写真を撮影してもらいたいと考えています。

30MB/sの実力をフルに発揮できるカードリーダーも登場

森脇 Extreme III 30MB/sエディション SDHCカードの性能を活かすカメラがD90としますと、その画像データを高速で安全にパソコン内に転送するためには高速転送が可能なカードリーダーが必要になりますが、今秋発売予定のカードリーダーのことを聞かせて下さい。

Extreme IIIファミリーの性能をフルに活かすことができる30MB/s高速転送を可能にしたカードリーダー「ImageMate」
パーク氏 今回の発表会には間に合いませんでしたが、Extreme IIIファミリーの性能を活かす30MB/s対応のImageMateという名前のUSB2.0マルチカードリーダー/ライターを発売する予定です。このカードリーダーはExtreme III 30MB/s エディション SDHC カード の性能をフルに発揮できるホストコントローラを搭載していますのでご期待下さい。

森脇 受け取るパソコンの性能にも左右されるでしょうが、これでニコンD90から送られる30MB/sのデータをExtreme III 30MB/sエディションSDHCカードで受け30MB/s対応ImageMateカードリーダーでパソコンに30MB/sで送るという、30MB/sの高速な環境が整ったことになりますね。USB2.0環境としても初めての30MB/sの転送速度なので期待しています。それでは、フォトキナにて新たな新製品の発表を期待しつつこれでインタビューを終わりにしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

Extreme III 30MB/s エディション SDHC カードをニコンD90で使ってみて

ニコンD90は、デジタル一眼レフ入門者から中級者までをターゲットにしたカメラだ。しかし、実際の撮影においては入門者も中級者も関係なく、撮影する被写体に応じて撮影方法が変わってくる。まして、JPEG画像では物足りない人はRAWデータ記録も併用し、自分でRAW現像をして、最良の1枚に仕上げていくはずだ。そうなると、ますます記録メディアの負担は大きくなってくる。RAW+JPEGの画像がドンドンやってくることになるわけだから、記録メディアの書き込み能力が高い方が、撮影時は断然有利になる。よって、これぐらいのスピードで書き込みできれば良い、といったことはなく、速ければ速い方がありがたいわけだ。

ニコンD90 Ai AF Zoom Micro ED 70-180mm F4.5-5.6D 20mm中間リング使用で拡大撮影
動画ダウンロード(Motion JPEG・12秒・30.9MB) 】
早速、Extreme III 30MB/s エディション SDHC カードでD90を使用してみる。まずカードのフォーマットが速い。野外で連写撮影を試みたい気分だが、あいにくの天候なので、室内にて新しい機能の「動画」撮影を試みた(1280x960)。高級腕時計の、美しい仕上げのスケルトンバックからテンプ部分をアップにして撮影。奥にあるガンギ車の動きまでスムーズに撮影できて、大変満足できる動画能力だ。記録メディア自体の書き込みスピードが追いつかない場合などは、一瞬、動きが引っ掛かる感じが記録されることがあるが、エクストリームIII 30MB/s エディション SDHCカードではそういったことがなく、あくまでも動きがなめらかに録画できていて、使用感は良好だ。

これからまだまだデジタルカメラ高画素化の波はおさまらないだろう。そんな中で、今回使用したExtreme III 30MB/s エディション SDHC カードを体感してしまうと、20MB/sには戻れない気分になってしまう。やはり速い、そしてスムーズなのだ。

カードへの書き込みがスムーズだと、テンポ良く撮影できることが一番のメリットだと感じながら、今回のインタビュー及びレポートを終わりにしたい。SDHCカードを使用する全てのデジタルカメラにExtreme III 30MB/s エディション SDHC カードを差して、もう一度撮影に行きたい気分で一杯だ。

■筆者プロフィール
森脇章彦(もりわきあきひこ)
1956年生まれ 岡山県出身 コマーシャルフォトを中心に活躍する写真家。デジタルカメラは創世記から積極的に仕事に取り入れ、カメラ周りだけでなくカラーマネージメント機器やモニター、記録メディアなどに詳しい。