東芝 REGZA ZH7000 シリーズ
東芝の液晶テレビ「REGZA」シリーズがまたまたモデルチェンジを行った。   2008年春夏モデルでは、それまで3500番台だった型番を3桁の500とし、心機一転のスタートを切ったREGZAシリーズだったが、今回新登場した2008年秋冬モデルでは、またまた4桁の型番に戻された。それも、なんと先々代3500の二倍の数字となる7000型番!   開発グループによれば、「ただならぬ気合いの込めらたモデルチェンジであることを表現している」とのこと。   しかも、かなりの自信作だとのことで、大画面☆マニアであり、画質マニアでもある、ボク、西川善司の元に、挑戦状のような感じで、フラッグシップモデルの46V型のZH7000が送られてきたのである。   筆者は、実はつい数ヶ月前に2008年春夏モデルのREGZA、ZH500を購入したばかり。 なんて残酷な挑戦状だ…! 2008年9月18日現在。民生用デジタルテレビにおいて再構成型「超解像技術」を採用し、東芝グループとして全世界で展開。
 

どれにする? 2008年秋冬のREGZA!

ZH7000シリーズ

Z7000シリ−ズ

FH7000シリ−ズ

まずは、2008年秋冬モデルのREGZA7000シリーズについて、ラインナップの概要を紹介しておこう。

 今回のホットトピックは東芝REGZAの映像エンジン、「メタブレイン」が「メタブレイン・プレミアム」へと進化した。ちょっとややこしいので整理しておくと、「メタブレイン」→「メタブレイン・プロ」→「新メタブレイン・プロ」→「パワー・メタブレイン」→「メタブレイン・プレミアム」という様に進化してきている。「メタブレイン・プレミアム」の最大の特長といえるのが、民生向けテレビとしては世界初(※)となった「超解像技術」を実装している点。この超解像技術の詳細については、筆者のAV WATCH連載記事である大画面☆マニアの「超解像技術とはなにか」などを参考にして欲しい。

 この超解像技術を実装したメタブレイン・プレミアムを搭載しているREGZAは、ZH7000、Z7000、FH7000の3モデルで、全てが倍速駆動フルHDパネルのモデルとなる。

 ZH7000とZ7000は基本機能は同じだが、300GBの録画用内蔵ハードディスク(HDD)があるのがZH7000、ないのがZ7000。ただし、ZH7000、Z7000ともにUSB/LAN接続の外部HDDに録画は行える。

 FH7000は300GBの録画用内蔵HDDを搭載しeSATA接続の外部HDDに録画が行えるが、ZH7000、Z7000のDLNA、アクトビラ、インターネットなどのネット連動機能が省略されている。

 H7000とC7000は超解像技術には対応しないモデルで、42V型と37V型はフルHDパネル採用モデルだが32V型はワイドXGAパネルとなる。H7000は300GBの録画用内蔵HDDとeSATA録画に対応し、42V型のみ倍速駆動に対応する。そしてC7000は倍速や録画関連機能は省略されたモデルだ。

 こうしてみてくると、個人的には、FH7000が特に魅力的に仕上がっていると思う。テレビでのネット機能活用にこだわりがなければ、FH7000は上位Z系の画質と録画機能を兼ね備えているわけで、非常にコストパフォーマンスに優れている。まさに「狙い目モデル」といったところだ。

 なお、今回の評価では、REGZA7000シリーズの全機能を試すべく最上位ZH7000の46V型モデル「46ZH7000」を試用した。

 

リファインされたZH7000のデザイン。省スペースで省電力

今回試用した46ZH7000

スタンド部はZH500の平板タイプから、ブーメラン型に変更

ZH7000は、基本デザインは先代ZH500をほぼそのまま踏襲しているが、スタンド部がZH500の平板タイプから、ZH7000ではおしゃれなブーメラン型に変更されている。外観面の変更点はこれくらいで、ディスプレイ部は完成度の高かったZH500とほぼ同じだ。

 今回試用した46ZH7000は46V型モデルで、横幅は101.8cmあり、迫力の大画面だが、スタンド部の奥行きはわずか45.5cm。さすがは薄型の液晶テレビ。省スペースに設置できる。また、プラズマTVと違いガラス部材が少ないためスタンドを含めても29.5kgと軽量だ。同サイズのプラズマTVと比べると10kg以上も軽い。ちなみにテレビ台からおろしたり上げたりは筆者一人でも行えた。

 消費電力は320W。こちらも同サイズのプラズマTVと比較すると200W近くも低消費電力。電気代も高くなったこのご時世には低消費電力性能は重要。ありがたい。

 

HDMI4系統装備!、新PCモードでPC映像を高品位表示可能に!

画面右側面の接続端子

背面部の接続端子。HDMIだけでなく従来のアナログビデオ端子も充実

いまや、テレビは様々な映像メディアを映し出すためのディスプレイモニターとしての機能も強く求められている。ハイビジョンレコーダー、DVDプレイヤー、ブルーレイプレイヤー、ゲーム機、パソコン…挙げればきりがないほどだ。だからこそ、接続性が重視される。

 ZH7000は、そうした要求に応えるべく、時代のニーズを汲んだ接続性を獲得している。

 まず、いまやデジタルメディアを繋ぐ上で欠かせないHDMI端子を、ZH7000は合計4系統を装備している。背面に3系統、画面右側面に1系統あり、恒久的に接続する機器は背面HDMI、ゲーム機などの脱着頻度が高い機器は側面HDMIを利用することになるはずだ。ちなみに側面、背面ともにHDMIはVer.1.3aに対応する。HDMI Ver.1.3aは24fpsの1080p、広色域のx.v.COLOR、ハイダイナミックレンジのDEEP COLORに対応。PS3とはフルスペック接続が可能だ。

 先代ZH500では、パソコンとHDMI接続したときにもビデオ信号と認識していたため、映像をYUV=4:2:2処理してメタブレインの映像処理ロジックに流していた。このためノイズリダクション処理などが入りPC映像が滲んで見えることがあった。ZH7000では「新PCモード」と呼ばれる機能を新搭載することでこの問題に対応。PC接続時はYUV=4:4:4のフルレンジ処理をしてメタブレイン・プレミアムの映像処理をバイパスして表示するようになっている。つまり、PCモニターと同等の表示が可能となったのだ。

 液晶テレビをPCモニター兼用で活用したいユーザーは増えているのに、PC接続対応のDVI端子を搭載した液晶テレビ製品が少なくなってきている。ZH7000のこの改良は時代を読んだ対応として高く評価したい。

 

ネイティヴコントラスト3000:1の高画質VAパネル採用〜色空間ワイド設定が鮮烈な色表現をもたらす

今回評価した46ZH7000の液晶パネルは、コントラスト性能に優れる垂直配向(VA)液晶パネルを採用している。今世代のREGZAはモデルによってVAパネルを使用していたり、横電界(IPS)液晶パネルを採用していたりするが、ZH7000では52V型と46V型がVAパネル、42V型がIPSパネルを採用している。一応、VAパネルが暗部表現に長けており、IPSパネルは広視野角性能に長けているという特徴があるとされるが、昔ほどそれぞれに性能差があるわけではない。

 今回の視聴で、まず感心したのが、コントラストの高さ。

 46ZH7000のVAパネルのネイティヴコントラストは3000:1もあるそうで、実際、映像に高輝度な領域と低輝度な領域があったときにも明るい部分はしっかりと明るく、暗い部分はずっしりと沈んでいた。液晶なのでコントラストは高輝度の伸びで稼いでいる感じはあるが、黒の浮きは平均的な液晶よりもだいぶ押さえられている。  もう、「液晶は黒が薄明るい」という陰口は過去のものとなりつつある。

 動作原理の違いからプラズマよりも液晶の方が優れている部分の1つに、暗部の階調特性がある。46ZH7000はこの暗部階調表現も優秀であった。特に漆黒から始まるような最暗部付近のグラデーション表現が美しい。液晶は黒浮きの阻害によって、どんな色の暗部階調表現もグレーに破綻してしまうことが多いのだが、46ZH7000では正確に暗く、そしてその色の暗いグラデーションを的確に描けている。これはVAパネル元来の暗部性能はもちろんのこと、表示する映像をリアルタイム解析して必要な輝度を算出し、その都度バックライト輝度を変化させる動的バックライト駆動の恩恵だろう。

 発色も良好だ。純色は鋭く、肌色はハイライト周辺の白色→肌色のグラデーションも驚くほど自然でリアリティがある。

バックライトの蛍光体を変更すること、で原色の色純度を改善し色再現範囲を拡大した

 ZH7000シリーズは液晶パネルが広色域に対応しており、ハイビジョン放送の標準色域ITU-R BT709(sRGB相当)と比較してカバー率114%を達成している。HDMIの話題のところでも前述したように、この広色域性能を最大限に生かすためにはx.v.ColorとDeep Colorの両用で初めて最大発揮されるのだが、現行規格の映像を視聴する際にも、その恩恵を授かることはできる。それが「色空間」の設定で、通常「オート」となっているこの設定を「ワイド」と設定することで、自然な形で現行映像を広色域カラー表現で楽しめるようになる。

 ここでいう現行映像というのはDVD、テレビ放送、ゲーム機などの映像のこと。普段視聴している映像に対しても色空間ワイド設定は結構効くのだ。色空間ワイド設定にすると、緑の色純度が増し、青に深みが増すようになる。植物がみずみずしく、空や海に広がりが感じられるため、一度、ワイド色空間になれてしまうと、通常モードが物足りなく感じられてしまうほど効果が高い。なお、赤や肌色には影響が少ないので、不自然さはほとんど感じない。

 

超解像技術搭載でさらに進化した映像エンジン「メタブレイン・プレミアム」〜まるで視力が上がったような映像美

ZH7000の画質性能面での最大のトピックは、「超解像技術」の搭載ということになるだろう。

 詳細については別記事を参照願いたいが、簡単に言うと、「超解像技術」とは失われた解像度情報を復元すること。

 REGZAの液晶パネルが1920×1080ドットのフルHDパネルであっても、DVD映像は720×480ドットなので縦横拡大されての表示となる。「ハイビジョン」ともてはやされている地デジ放送の映像も実は映像解像度は1440×1080ドットで横方向の解像度は圧縮されているので、フルHDパネルへの表示時は横方向に拡大して表示している。


地上デジタル放送やDVDソフトなど、
画素数がフルハイビジョン(1920×1080)に満たない映像コンテンツは拡大して表示される

 つまり、逆に1920×1080ドットのパネル側の視点で言えば、表示映像の方が720×480ドットだったり1440×1080ドットだったりと情報が欠損しているわけで、ただ解像度の変換をするのではなく、できるだけ欠損する前の元の状態に復元しようというのが超解像技術になる。解像度変換技術は、ぼかさずに拡大する技術なので、実は両者は似て非なる物なのだ。

 実際によく視聴する評価用のDVD映像を見てみたが、通常では自信なさげなぼやけた陰影になってしまうような細かい凹凸を含んだディテール表現が、きっちりと力強く詳細に描かれていることが分かる。これは少々衝撃であった。よくある高品位解像度変換に見られるようなエッジ強調ではなく、模様が細かく描き出されたようなイメージだ。

超解像オフ

超解像オン

 また、肌の陰影部や広がる空などの微妙なグラデーション表現では逆に不用意な処理は行われずに美しい面表現がそのまま維持されていることも分かる。

 これはメタブレイン・プレミアムがシーン内を的確に把握し、どこにディテール表現があるか、どこがグラデーション表現かを認識して、そのエリアごとに的確な処理をしているからだ。具体的にはディテール表現に対しては超解像技術を適用し、グラデーション表現部には高画質化技術である「新パワー質感リアライザー」「シャープネス・オプティマイザー」が適用される。

 この超解像技術と「新パワー質感リアライザー」「シャープネス・オプティマイザー」の適材適所の高画質化処理がDVD映像だけでなく、地デジ放送の1440×1080ドット映像にも効いてくるのも特筆すべき点だ。

 とはいえ、筆者の感想ではあるが、わざとらしさはなく、タレントの着ているセーターの編み目がよく見えたり、植物の葉の細部がよく見えたりという感じの、視力が20〜30%増しによくなったような視覚が得られる。

 先代REGZAより搭載されたコンテンツの種類や周囲の環境光量に応じてREGZAが画調を自動調整する「おまかせドンピシャ高画質」機能が、REGZA7000シリーズでは超解像技術と連動させたチューニングが施され「おまかせドンピシャ高画質・プロ」へと進化した。

 先代の「おまかせドンピシャ高画質」ではコンテンツの種類や環境光量に合わせてバックライト輝度や階調特性、色温度調整を行っていたが、7000シリーズの「おまかせドンピシャ高画質・プロ」では、それらに加えて、表示シーンの輝度レベルに合わせた超解像処理の適用レベルを決定する仕組みを取り入れている。

 BD、PC、ゲームなどの、あらかじめどんな映像を表示しているかわかりきっている場合は、自分好みの画調モードを固定設定してもいいが、テレビ放送を見る場合などは適宜AI的に画質調整をしてくれる「おまかせドンピシャ高画質・プロ」を有効にしておけば失敗はない。常にREGZA7000シリーズのポテンシャルをフルに活用した映像表示をしてくれるため、満足度の高い視聴が楽しめる。

 今回の一連の超解像技術の搭載で新発見だったのは、プレイステーション2やWiiといった"非"ハイビジョンのゲーム機の映像が美しく見えたことだ。さすがにハイビジョン画質になるとは言わないが、ぼやけ気味の低解像度テクスチャのディテールがしっかりと見えるようになり、映像の情報量が向上するのだ。超解像技術はゲーム機の映像と組み合わせてもおもしろいので是非試してみて欲しい。

 

開けた録画機能〜ついにREGZAで録画した番組をVARDIAを介して共有できるようになる!

ZH7000は、もはや完成形ともいえるREGZAの録画機能をフルスペックで搭載している。

 録画メディアとして300GBのHDDを内蔵しているが、これはユーザーの手で交換が可能だ。さらに、外付けのUSBのHDDに対応している。外付けのUSB-HDDには直接録画ができるのはもちろん、公称値2TBの大容量モデルにまで対応しているので、内蔵HDDの録画ファイルの保存用ダビングスペースとしても活用できるのもうれしい。

最新のVARDIAをつなげることで、DVDに書き出して保存することもできる

 とはいっても、著作権保護の関係から録画番組は録画したREGZA自身でしか再生できない。これがこれまでのREGZAの録画機能の制約だった。ところがどっこい、今年秋冬モデルとして発売された東芝のハイビジョンレコーダー「VARDIA」シリーズの最新モデル「RD-X8」「RD-S503」「RD-S303」とLAN接続(ネットワーク接続)してREGZA側の録画番組をそちらに移動すれば、今世代REGZA ZH7000、Z7000、先代REGZA ZH500、ZV500で共有して再生できるようになる。しかも、そのVARDIAに移動した録画番組はVARDIA側でDVDに書きだして保存することも可能となったのだ。この充実した録画番組の活用機能は東芝プラットフォームの特権的機能なので、ZH7000とVARDIAを同時にセット購入するのもありだ。

 

見やすい高解像番組表〜放送時間変更に柔軟に対応できる録画予約!

ZH7000に付属してくるリモコン

番組表の表示は1920×1080ドット解像度をフル活用した7放送局6時間分の一挙表示が可能となっており、新聞のラテ欄に迫る情報量なのも嬉しい

録画の仕方も簡単でわかりやすいのも好感触だ。

 最も基本的なのが、見ている番組をそのままテレビのリモコンの録画ボタンを押して録画する方法。番組視聴中に突然の来客があったときにでも録画ボタンを押してから席を立てば、戻ってきたときにはその場面からタイムシフト視聴が可能となる。

 予約録画もGコード入力などは不要で、画面に番組表を出して録画したい番組を予約設定すればいいだけ。

 実際に使ってみてとても感心したのが「連ドラ予約」機能。

 本来は毎週あるいは毎日やっている連続ドラマを確実に録画するための機能なのだが、別にドラマだけでなくバラエティ番組などでもOK。番組名をキーワードにして検索して録画する仕組みなので、放送時間を拡大したスペシャル番組となったときにも対応するし、さらに直前の野球放送延長などによって突然、放送時間が変更されたとしても、番組表の更新に追従して確実に録画してくれる。もちろん春秋の番組変成期でレギュラー番組の放送休止中のときは自動的に録画を控えてくれる賢さも持ち合わせている。もう、これで、録画が番組途中で終わっているとか、別に見たくもない番組が録画されている…といったことから解放される。

 

まとめ

筐体下部にスピーカーが内蔵。「おまかせドンピシャ高音質」「AUDYSSEY EQ」を新たに採用

ZH7000は音質面でも進化している。先代から搭載された、随時適正な音量に調整してくれる「ドルビーボリューム」機能が継承され、さらに映像だけでなく音声についても視聴コンテンツに最適な音質に自動調整してくれる「おまかせドンピシャ高音質」機能が新設されている。また、ZH7000では、サウンド出力の設計をAUDYSSEY EQテクノロジーによって補正しており、スピーカー回りの設計は先代と同じながらも音質ポテンシャルを向上させている。

 今回の評価で感心させられたのはなんといっても超解像技術の効果だ。

 この超解像画質に見なれてしまうと、従来の液晶テレビで地デジ放送を見たときにフルHDパネルのテレビなのに何となく眠い感じがして、720pパネルで見ているのか?と思えてしまう。これは、ある意味怖い体験でもあった。

 輪郭がキッチリと見えるだけでなく、細部がよく見えてくるので、目がよくなったのではないかと錯覚してしまう感覚はこれまでのテレビにはなかった高画質性能だ。これは一度、店頭などで実感して欲しい。  もう一つ、感銘を受けたのは、録画機能をおまけ機能ではなく、テレビの楽しみ方を広げるためのコアな機能として東芝が本気で拡張しようとしている姿勢。

 「録画できる薄型テレビ」は他社製にもあるが、多くの競合製品は録画した番組を本体のみで完結させた活用しかできずいわば「閉じた録画機能」となっている。このため内蔵HDDの容量を使いつぶしてしまったら録画ファイルを消すしかなかった。しかし、ZH7000の録画機能には高い拡張性があり、これがREGZAの…もっといえば東芝プラットフォームの強みとなっている。言うなればREGZAの録画機能は「開けた録画機能」を獲得している。

 REGZA7000シリーズ、2008年秋冬モデルの本命だ。

(トライゼット西川善司)