まずは、2008年秋冬モデルのREGZA7000シリーズについて、ラインナップの概要を紹介しておこう。
今回のホットトピックは東芝REGZAの映像エンジン、「メタブレイン」が「メタブレイン・プレミアム」へと進化した。ちょっとややこしいので整理しておくと、「メタブレイン」→「メタブレイン・プロ」→「新メタブレイン・プロ」→「パワー・メタブレイン」→「メタブレイン・プレミアム」という様に進化してきている。「メタブレイン・プレミアム」の最大の特長といえるのが、民生向けテレビとしては世界初(※)となった「超解像技術」を実装している点。この超解像技術の詳細については、筆者のAV WATCH連載記事である大画面☆マニアの「超解像技術とはなにか」などを参考にして欲しい。
この超解像技術を実装したメタブレイン・プレミアムを搭載しているREGZAは、ZH7000、Z7000、FH7000の3モデルで、全てが倍速駆動フルHDパネルのモデルとなる。
ZH7000とZ7000は基本機能は同じだが、300GBの録画用内蔵ハードディスク(HDD)があるのがZH7000、ないのがZ7000。ただし、ZH7000、Z7000ともにUSB/LAN接続の外部HDDに録画は行える。
FH7000は300GBの録画用内蔵HDDを搭載しeSATA接続の外部HDDに録画が行えるが、ZH7000、Z7000のDLNA、アクトビラ、インターネットなどのネット連動機能が省略されている。
H7000とC7000は超解像技術には対応しないモデルで、42V型と37V型はフルHDパネル採用モデルだが32V型はワイドXGAパネルとなる。H7000は300GBの録画用内蔵HDDとeSATA録画に対応し、42V型のみ倍速駆動に対応する。そしてC7000は倍速や録画関連機能は省略されたモデルだ。
こうしてみてくると、個人的には、FH7000が特に魅力的に仕上がっていると思う。テレビでのネット機能活用にこだわりがなければ、FH7000は上位Z系の画質と録画機能を兼ね備えているわけで、非常にコストパフォーマンスに優れている。まさに「狙い目モデル」といったところだ。
なお、今回の評価では、REGZA7000シリーズの全機能を試すべく最上位ZH7000の46V型モデル「46ZH7000」を試用した。
ZH7000は、基本デザインは先代ZH500をほぼそのまま踏襲しているが、スタンド部がZH500の平板タイプから、ZH7000ではおしゃれなブーメラン型に変更されている。外観面の変更点はこれくらいで、ディスプレイ部は完成度の高かったZH500とほぼ同じだ。
今回試用した46ZH7000は46V型モデルで、横幅は101.8cmあり、迫力の大画面だが、スタンド部の奥行きはわずか45.5cm。さすがは薄型の液晶テレビ。省スペースに設置できる。また、プラズマTVと違いガラス部材が少ないためスタンドを含めても29.5kgと軽量だ。同サイズのプラズマTVと比べると10kg以上も軽い。ちなみにテレビ台からおろしたり上げたりは筆者一人でも行えた。
消費電力は320W。こちらも同サイズのプラズマTVと比較すると200W近くも低消費電力。電気代も高くなったこのご時世には低消費電力性能は重要。ありがたい。
いまや、テレビは様々な映像メディアを映し出すためのディスプレイモニターとしての機能も強く求められている。ハイビジョンレコーダー、DVDプレイヤー、ブルーレイプレイヤー、ゲーム機、パソコン…挙げればきりがないほどだ。だからこそ、接続性が重視される。
ZH7000は、そうした要求に応えるべく、時代のニーズを汲んだ接続性を獲得している。
まず、いまやデジタルメディアを繋ぐ上で欠かせないHDMI端子を、ZH7000は合計4系統を装備している。背面に3系統、画面右側面に1系統あり、恒久的に接続する機器は背面HDMI、ゲーム機などの脱着頻度が高い機器は側面HDMIを利用することになるはずだ。ちなみに側面、背面ともにHDMIはVer.1.3aに対応する。HDMI Ver.1.3aは24fpsの1080p、広色域のx.v.COLOR、ハイダイナミックレンジのDEEP COLORに対応。PS3とはフルスペック接続が可能だ。
先代ZH500では、パソコンとHDMI接続したときにもビデオ信号と認識していたため、映像をYUV=4:2:2処理してメタブレインの映像処理ロジックに流していた。このためノイズリダクション処理などが入りPC映像が滲んで見えることがあった。ZH7000では「新PCモード」と呼ばれる機能を新搭載することでこの問題に対応。PC接続時はYUV=4:4:4のフルレンジ処理をしてメタブレイン・プレミアムの映像処理をバイパスして表示するようになっている。つまり、PCモニターと同等の表示が可能となったのだ。
液晶テレビをPCモニター兼用で活用したいユーザーは増えているのに、PC接続対応のDVI端子を搭載した液晶テレビ製品が少なくなってきている。ZH7000のこの改良は時代を読んだ対応として高く評価したい。
今回評価した46ZH7000の液晶パネルは、コントラスト性能に優れる垂直配向(VA)液晶パネルを採用している。今世代のREGZAはモデルによってVAパネルを使用していたり、横電界(IPS)液晶パネルを採用していたりするが、ZH7000では52V型と46V型がVAパネル、42V型がIPSパネルを採用している。一応、VAパネルが暗部表現に長けており、IPSパネルは広視野角性能に長けているという特徴があるとされるが、昔ほどそれぞれに性能差があるわけではない。
今回の視聴で、まず感心したのが、コントラストの高さ。
46ZH7000のVAパネルのネイティヴコントラストは3000:1もあるそうで、実際、映像に高輝度な領域と低輝度な領域があったときにも明るい部分はしっかりと明るく、暗い部分はずっしりと沈んでいた。液晶なのでコントラストは高輝度の伸びで稼いでいる感じはあるが、黒の浮きは平均的な液晶よりもだいぶ押さえられている。 もう、「液晶は黒が薄明るい」という陰口は過去のものとなりつつある。
動作原理の違いからプラズマよりも液晶の方が優れている部分の1つに、暗部の階調特性がある。46ZH7000はこの暗部階調表現も優秀であった。特に漆黒から始まるような最暗部付近のグラデーション表現が美しい。液晶は黒浮きの阻害によって、どんな色の暗部階調表現もグレーに破綻してしまうことが多いのだが、46ZH7000では正確に暗く、そしてその色の暗いグラデーションを的確に描けている。これはVAパネル元来の暗部性能はもちろんのこと、表示する映像をリアルタイム解析して必要な輝度を算出し、その都度バックライト輝度を変化させる動的バックライト駆動の恩恵だろう。
発色も良好だ。純色は鋭く、肌色はハイライト周辺の白色→肌色のグラデーションも驚くほど自然でリアリティがある。
バックライトの蛍光体を変更すること、で原色の色純度を改善し色再現範囲を拡大した
ZH7000シリーズは液晶パネルが広色域に対応しており、ハイビジョン放送の標準色域ITU-R BT709(sRGB相当)と比較してカバー率114%を達成している。HDMIの話題のところでも前述したように、この広色域性能を最大限に生かすためにはx.v.ColorとDeep Colorの両用で初めて最大発揮されるのだが、現行規格の映像を視聴する際にも、その恩恵を授かることはできる。それが「色空間」の設定で、通常「オート」となっているこの設定を「ワイド」と設定することで、自然な形で現行映像を広色域カラー表現で楽しめるようになる。
ここでいう現行映像というのはDVD、テレビ放送、ゲーム機などの映像のこと。普段視聴している映像に対しても色空間ワイド設定は結構効くのだ。色空間ワイド設定にすると、緑の色純度が増し、青に深みが増すようになる。植物がみずみずしく、空や海に広がりが感じられるため、一度、ワイド色空間になれてしまうと、通常モードが物足りなく感じられてしまうほど効果が高い。なお、赤や肌色には影響が少ないので、不自然さはほとんど感じない。
ZH7000の画質性能面での最大のトピックは、「超解像技術」の搭載ということになるだろう。
詳細については別記事を参照願いたいが、簡単に言うと、「超解像技術」とは失われた解像度情報を復元すること。
REGZAの液晶パネルが1920×1080ドットのフルHDパネルであっても、DVD映像は720×480ドットなので縦横拡大されての表示となる。「ハイビジョン」ともてはやされている地デジ放送の映像も実は映像解像度は1440×1080ドットで横方向の解像度は圧縮されているので、フルHDパネルへの表示時は横方向に拡大して表示している。
地上デジタル放送やDVDソフトなど、
画素数がフルハイビジョン(1920×1080)に満たない映像コンテンツは拡大して表示される
つまり、逆に1920×1080ドットのパネル側の視点で言えば、表示映像の方が720×480ドットだったり1440×1080ドットだったりと情報が欠損しているわけで、ただ解像度の変換をするのではなく、できるだけ欠損する前の元の状態に復元しようというのが超解像技術になる。解像度変換技術は、ぼかさずに拡大する技術なので、実は両者は似て非なる物なのだ。
実際によく視聴する評価用のDVD映像を見てみたが、通常では自信なさげなぼやけた陰影になってしまうような細かい凹凸を含んだディテール表現が、きっちりと力強く詳細に描かれていることが分かる。これは少々衝撃であった。よくある高品位解像度変換に見られるようなエッジ強調ではなく、模様が細かく描き出されたようなイメージだ。