TOSHIBA REGZA Z3500 Series「オリジナルよりキレイ」な映像美、これが新REGZA<レグザ>の実力  〜こだわりの画質モード、これだけの理由〜

新REGZA<レグザ>で画質のこだわりを検証

以前から思っていたのは、東芝REGZA<レグザ>は「IT」にやたら強いテレビであるということだ。以前からIPv6を使ったVODサービス「4th Media」に対応していたり、ホームネットワーク上のLAN HDDに録画できたりといった機能を搭載してきた。そして今回の新シリーズでは、USBにHDDが直結できてレコーダとしても使えるなど、家電の領域を超えたIT機器という側面も持ち合わせている。

レグザリンクで様々な機器との連携を管理

またHDMIのCEC(Consumer Electronics Control)にも対応、新たに「レグザリンク」としてお目見えした。ただレグザリンクの範囲は、HDMIのみに限定されない。LAN HDDやUSB HDDも、ここに統合されているのだ。ホームネットワークを始め、REGZA<レグザ>に繋がるハードウェアは、すべてレグザリンクからアクセスできるようになった。

もちろんテレビの本質である画質に対して妥協がないのは、すでにお伝えした通りである。REGZA<レグザ> Z3500シリーズでは新たに120Hz倍速駆動に対応し、パネルも10bit、x.v.Color対応のものへと進化した 。前回はREGZA<レグザ>の画質を決定するキーパーソンお二人にお話を伺ったわけだが、今回は新REGZA<レグザ>のZ3500シリーズのうち、42V型モデル「42Z3500」をお借りすることができた。この実機を使って、実際にその絵作りを確認してみたい。

※VODサービス「4th Media」 … 東西NTTのIPv6網を使ってぷららネットワークスが提供する、ビデオ・オンデマンド・サービス。セットトップボックスをルータとREGZA<レグザ>に接続することで、専門チャンネルや映画などのコンテンツが視聴できる。

画質モードに隠された秘密

これら画質モードにREGZA<レグザ>の秘密が集約されている

前回の最後に、いわゆる「店頭モード」をやめたというお話を書いたわけだが、新REGZA<レグザ>の画質モードはプリセットが5、メモリー1という構成になっている。PC接続モードを除けば、おそらく普通の人が使うのは、上位3つ、「あざやか」、「標準」、「映画」の3つだろう。

この中の「あざやか」モードは、高輝度、高コントラストで色温度も高く設定されている。これは昼間のリビングでテレビを見るときに使用するモードだ。というのも、テレビは大型化することで、置き場所が変化した。これまでは部屋の角に置かれていたものが、外光の影響を受けやすい壁側に置かれるようになったのだ。この場合に、外光に負けず視聴できるようにしたものが、この「あざやか」モードの意味である。

これまで多くの「ダイナミックモード」は、輝度をめいっぱい上げてドライブさせるために、映像信号の100%を超える部分がクリップしてしまうものが多かった。映像信号が100%を超えたら、そこはもう白飛びしているものと見なすという考え方である。

だが実際の映像信号には、100%を超える部分にも階調が存在する。実際プロ機のキャパシティとしては、110%から115%ぐらいまでは許容されているのである。

REGZA<レグザ>の「あざやか」モードは、デジタル放送規格の輝度の上限値である109%の白でも、ヒストグラム分析してそこに階調があるならば、クリップせずに出していく。その分他社に比べれば明るさで損するのだが、あざやかモードでも絵を壊さないという思想が根底にある。

一方「標準」、「映画」モードは、夜に一般的な照明の下で観るためのモードだ。照度にして150〜200Luxぐらいを想定しているという。ただ明るさセンサーが働くので、厳密にこの範囲でなくても、それぞれの環境に応じて、最適な画質になるようバックライトが調整される。

さらに「テレビプロ」、「映画プロ」というモードがある。これはもっと室内の照明を落として、だいたい20〜30Luxぐらいの部屋を想定している。映像を見るために照明を落とすということを、意識的にやる人のためのモードと考えればいいだろう。

アナログの品質をデジタルに

映像のトーンを握る大きな要素の一つが、色温度である。放送規格をはじめ、多くの世界規格ではデイライトの基準を6500K(ケルビン)に設定している。ただ日本のテレビのみ、肌の発色をピンクがかった白として表現するために、標準を9300Kと定めている。

さらに過去には高輝度を表現する手段として、日本のテレビはどんどん色温度が高くなっていったという経緯がある。現在では色温度が12000Kなどという設定も、標準的に使われるほどだ。

REGZA<レグザ>の各画質モードは、表示するコンテンツの特性、また過去のテレビの経緯と国際規格とのバランスを考慮して、色温度が細かく設定されている。

画質モードと色温度の設定は綿密な関係がある

画質モード
色温度
あざやか
12000K
標準
10000K
映画
8400K
テレビプロ
9300K
映画プロ
6500K

色温度の設定は、プリセットの画質モード内でも、「詳細調整」から高・中・低を選択できるようになっている。高が12000K、中が9300K、低が6500Kだ。

さらにこれらの設定の次には、Gドライブ/Bドライブの値が調整できる。したがってこの3段階からさらに微妙な色温度に設定できるわけである。「標準」や「映画」の色温度は、こうして作られているわけだ。

ただGドライブ/Bドライブを使っての色温度は、見た目で設定できるようなものではない。もしコンテンツを基準の色温度で見たいというならば、「テレビプロ」や「映画プロ」が役に立つ。我々見る側も、制作者の意図通りの色で映像を見るということにこだわりたいものである。

カラーイメージコントロールの詳細も、ユーザーが変更可能

もちろん色温度だけでなく、ダイナミックガンマやシャープネスの値も、それぞれのプリセットごとに変更されている。REGZA<レグザ>では、カラーイメージコントロール・プロなども含めてかなりの部分まで、ユーザーに開放している。

これらは好みに応じて設定可能だが、多くのシーンで破綻なく表示させるには、REGZA<レグザ>開発陣が行なってきたような膨大な時間をかけた調整が必要である。まずは高輝度、高コントラストだけに気を取られず、階調のなめらかさやディテール潰れの少なさなど、映像コンテンツに込められた本当の質感を、2つのプロモードでよく見て欲しいと思う。

※Gドライブ/Bドライブ … テレビの映像はRGBによって成り立っているが、このRGBのバランスを変更することで、カラーバランスを変更することができる。Gドライブは緑を、Bドライブは青の出力を制御する。

隙のないオーディオ設定

厚みを押さえた新設計のスピーカーユニット

新開発の「パワージェットスリットスピーカー」

背面スリットからも音を放出、自然なサラウンド感を実現する

多彩な音声モードを用意

テレビで5バンドEQを装備するのは珍しい

低域補正も装備した

テレビに求められる要素のうち、いつも後回しになってしまうのが、音だ。すっきりしたデザインが求められる薄型テレビの世界は、容積が絶対に必要条件となるオーディオの世界とは相反するのである。

どうしてもいい音で、ということになれば、外部に別途AV用サラウンドシステムなどを用意すべきだ。だが多くの人は、そこまでは抵抗があるだろう。そんな条件下で、少しでも標準でいい音を提供すべく、新REGZA<レグザ>のオーディオ設計にも数多くの秘密がある。

低音の量感や音量まで含めて、トータルでバランスの取れた音を出すためには、スピーカーの口径を大きくして、大型のマグネットでドライブさせるしかない。しかし薄型化が求められるテレビの内部には、ユニットそのものを入れる厚みがない。

そこで東芝では、新REGZA<レグザ>用に新しい薄型スピーカーを開発した。写真を見ていただければおわかりかと思うが、通常のスピーカーと比較すると、コーン紙の向きが逆になっている。振動板としての強度を高める上で、円錐状にすることが基本なわけだが、通常は筒の広がりを外側に向けているので、その広がった高さ分だけ厚みが増す。だがこのコーンの向きならば、ボイスコイルなどの部分に傘のように被さるため、厚みが低減できるわけだ。まさに逆転の発想である。

次の問題は、開口部だ。画面をテレビの主役であると考えると、スピーカー部分の開口部が広く取れないデザインとなる。そこで新REGZA<レグザ>では、スピーカーユニットで圧縮した空気を前面のダクトから出す「パワージェットスリットスピーカー」をオーディオ機器メーカーのONKYOと共同開発した。露出しているのは細いダクト部のみだが、ここからパワフルな音が圧縮されて飛びだしてくるわけだ。さらにテレビ背面にも開口部を設け、壁の反射を使って自然な広がり感を得ることに成功した。

そしてDSPサウンドイコライジングシステムにより、迫力あるサラウンド音声を楽しめる。音声も画質モード同様、5つのプリセット+メモリー1という構成だ。このうちテレビプロと映画プロは、メモリーと同様、自分の好みに合わせて設定すれば、その状態が記憶されるようになっている。

音声モード
効果
ダイナミック
躍動感あるくっきりとした張りのある音
標準
聴き心地の良い自然な音
映画
臨場感あふれる迫力のある音
テレビプロ
初期設定は「標準」と同じ
映画プロ
初期設定は「映画」と同じ

イコライザーは、従来のテレビのように高音・低音だけといったものではなく、5バンドイコライザーを搭載した。100Hz、330Hz、1KHz、3.3kHz、10kHzの5バンドで、±20ステップの可変ができるようになっている。

また不足する低域感を補うために、低域補正機能も搭載した。カットオフ周波数を3段階で設定でき、補正レベルも3段階用意されている。

さらに、デコーダ機能も威力を発揮している。HDMIからのDolby DigitalやAAC信号にも対応し、その信号を光デジタル端子に出力できるようになっている。別売のアンプ等との組み合わせでより迫力のある音をお楽しみいただけるわけだ。さらにテレビ本体に内蔵のDolby Digitalデコーダとの使い分けにより、幅広い使用が可能となっている。おそらくここまで音声だけでいろいろ設定できるテレビは、他にないはずだ。

総論

REGZA<レグザ>のこだわりは、設定メニューの深さによく表われている。簡単に設定を変えて効果を楽しみたい場合は、階層の浅いメニューで変更すればいい。だがその先がどうなっているのか知りたい人には、いくらでも奥行きがある。

本当に奥のメニューになると、きちんと設定するためには測定器が必要になるものも少なくない。しかしそれぞれの画質モードも、これらのパラメータを駆使して作られているのだ。テレビとはどのような映像なのか、映画とは、といったことを調べていくだけでも、相当勉強になるはずだ。

だがまあ、みんながみんな難しく考えることはない。なによりも、映像コンテンツに含まれる微細な感性まで楽しめるテレビというだけで、REGZA<レグザ>の魅力は十分だ。筆者は今、部屋の明かりを落として、これまで録画したハイビジョンの映画をREGZA<レグザ>でもう一度見直している。

これまでのテレビではコントラストが強すぎてディテールがよく見えなかったシーンや、逆にこれまでアラが目に付いていたところがスムーズに表示され、これまでの放送のMPEG-2圧縮に対するガッカリ感が一掃された。また動きのなめらかさも特筆すべき点だ。これまで映画などの比較的ゆっくりパンするシーンなどでは、動きのパラパラ感が気持ち悪かったものだが、そのあたりが解消されており、スクリーンに迫る動き感となっている。

今映像は、すべて圧縮が基本となってしまっている。ハイビジョン放送も、圧縮された映像に見慣れてくれば「あれ? こんなもんだっけ?」と思う方も多いだろう。だが圧縮の中に埋もれたハイビジョンという規格の、真の実力が引き出せるのが、REGZA<レグザ>なのだ。

初めて映画をスクリーンで見たとき、初めてアナログハイビジョンを見たとき、初めてDVDを見たときは、誰しもが新しい映像体験に感激したはずだ。その感激を、REGZA<レグザ>でもう一度体験しよう。

■関連情報
□東芝 http://www.toshiba.co.jp/
□東芝 REGZA http://www.regza.jp/product/tv/top.html
□東芝直販サイトShop1048 http://shop1048.jp/

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 開発者に聴く、「本物」のストーリー
 http://ad.impress.co.jp/special/regza0711/

□東芝、倍速/USB HDD録画対応のフルHD液晶テレビ
  −レグザリンク対応37〜57型「REGZA Z3500」
 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070820/toshiba2.htm

小寺信良
テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。