進化した映像エンジンが織りなす  "リアル"な高画質フルハイビジョン
東芝 / REGZA H3000シリーズ

 去年から今年にかけて、筆者のまわりでREGZAを購入する人が増えつつある。ここ数カ月だけでもう数人。「筆者のまわり」というといわゆる"玄人筋"が多いワケなのだが、そうした画質にこだわりを持つマニアがREGZAを選びつつあるというのはちょっとした"現象"だといえる。

 REGZAシリーズは売り場で表示映像をパッと見ただけでは他メーカーの画と比べて派手さがないことに気が付くと思う。しかし、しばらく見続けていると表示映像の情報量が多いことに気が付く。色も地味というよりは、他メーカーの方が店頭ウケを狙って派手すぎるため相対的に地味に見えるだけで、実際には"リアル志向"であることにも段々と分かってくる。

「なるほど、こういうことか」

そんなタイミングで、偶然にもREGZAの今年の2007年夏モデル「42H3000」を自宅に持ち込んで評価するという機会に恵まれた。

"テレビ"としてのREGZA 42H3000

東芝REGZA 42H3000
額縁フレームはつや消し。周囲の光を拡散してくれるので表示映像の光だけが目にやってくる理想形
リモコンは、薄く、片手で軽く握れる大き過ぎない手頃サイズで、文字表示がボタン一杯に描いてあって見やすい
7チャンネルの番組表が1画面内で見られる「レグザ番組表ファイン」
表示映像(入力映像)に関係なく、いつでも"今の時間帯"の番組表が呼び出せる「ミニ番組表」機能も搭載

 REGZA H3000シリーズは32V型、37V型、42V型、46V型、52V型と全5サイズのラインナップからなっている。REGZAは60V型を超える超大型モデルはないが、現実的な30〜50V型モデルについて他メーカーよりも細かくサイズを設定しているのが特徴だ。これならば設置環境に最適な画面サイズが選べることだろう。

 画面を見たときに、なんとなく「落ち着いているな」と感じたのだが、これはどうやらボディのデザインとカラーに原因があるようだ。

 最近の液晶テレビでは高級感を出すために銀色のアルミカラーや光沢をアピールしたピアノ塗装のものが出てきているが、REGZAシリーズは「つや消し黒」なのだ。これは、画面内表示の黒との一体感を演出するため。また「つや消し」なので、天井照明や画面に相対する位置の窓からの光があっても額縁部が光ったりしない。ユーザーは浮かび上がる映像表示に集中ができるのだ。

 リモコンも薄く、片手で軽く握れる大き過ぎない手頃サイズで、文字表示がボタン一杯に描いてあって見やすい。

 リモコン操作の感度も良好。なにしろメニューのレスポンスも驚くほど早い。こうしたテレビのメニューの表示はモッサリとしている機種が多いものだが、PC画面並みにキビキビと動いて小気味いい。

 電源オフの状態から電源を投入して画面が表示されるまでの待ち時間ストレスは感じない。これほど速い機種は珍しい。

 新REGZAでは番組表が一新され「レグザ番組表ファイン」として生まれ変わっている。開発陣が目指したのは「新聞の番組欄ページの再現」だったそうで、あの「一覧性」と「情報量」を両立することを目指したのだという。

 H3000シリーズの番組表は7チャンネル6時間表示に対応しており、確かにこの情報量の多さは新聞の番組欄に肉迫している。7チャンネルというと関東圏ならば、NHK総合、NHK教育、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京というメジャー7チャンネルの番組表が1画面内で見られると言うことだ。テレビの番組表機能は番組タイトルだけでその内容が分かりにくいことも多かったが、レグザ番組表ファインでは、番組の内容説明までこの一覧表で読めてしまう。

 表示映像(入力映像)に関係なく、いつでも"今の時間帯"の番組表が呼び出せる「ミニ番組表」機能も搭載。REGZAでPCを使っていたり、ゲームプレイをしているときにでも、テレビの番組表をポップアップ表示できるのだ。これは便利である。

シームレス録画機能が実現する新感覚テレビ活用スタイル

 既に何らかのビデオレコーダを持っている人であっても、「これは便利」として感じられるのがH3000シリーズ特有の録画機能だ。

 リモコンの[録画]ボタンを押すだけで録画が開始される。デジタル放送の録画はもちろん、ハイビジョンクオリティにて画質の劣化なしでそのまま録画されるビットストリーム録画に対応(アナログ放送も録画可能)。録画開始と停止のレスポンスも本当にキビキビしていて小気味よい。

 この基本機能だけでも、相当便利なのだが、東芝はさらにH3000シリーズに対し、テレビとの接し方を拡張するような、ユニークな機能も持っている。

毎日やる番組、毎週やる番組を自動的に認識して録画してくれる「簡単連ドラ予約」機能
「今すぐニュース」機能は、設定したニュース番組を時間帯ごとに定期的に自動的に上書き録画をしてくれる
テレビを見ているときの突然の来客や、電話が掛かってきてしまったときに便利なタイムシフト機能を実現する「ちょっとタイム」機能
取り外し可能なハードディスクユニット。交換用のハードディスクユニットは純正オプションとしても設定されている
eSATAインターフェースを持っているので、市販の外付け型ハードディスクを接続できる
一般的なeSATAハードディスク機器であれば全てが繋がる(株式会社アイ・オー・データ機器 HDC-UXシリーズなど)

 1つは「簡単連ドラ予約」機能だ。今見ている番組が気に入って、これを来週も続けて見たいと思ったら、[連ドラ予約]ボタンを押せばいい。するとこの番組を次回から自動的に録画してくれる。毎日やる番組、毎週やる番組…これを自動的に認識して録画してくれちゃうのだ。「連ドラ」は「連続ドラマ」の略語だが、別にドラマじゃなくてもこの機能は使える。バラエティ番組でも、「これを毎回見たい」と思ったら[連ドラ予約]が効くのだ。

 二つ目は「今すぐニュース」機能だ。これは設定したニュース番組を時間帯ごとに定期的に自動的に上書き録画をしてくれるものだ。夜帰宅したときや就寝前など、その時々の時点での最新ニュースを視聴することができる。

 3つ目はテレビらしい録画機能の使い方である、タイムシフト機能を実現する「ちょっとタイム」機能。[ちょっとタイム]ボタンを押した瞬間から録画が始まり、再び[ちょっとタイム]ボタンを押すことで押した時点からの続きを見られる。テレビを見ているときに突然の来客や電話が掛かってきてしまったとき、[ちょっとタイム]ボタンを押してから席を外れれば、戻ってきたときには[ちょっとタイム]ボタンで、何事もなかったかのようにちゃんと番組の続きを見ることができる。

 内蔵ハードディスクの容量は300GB。ハイビジョン番組ならば28時間の録画が可能な容量だが、忙しい人はこれでは心許ないという人もいることだろう。オリンピックやワールドカップのようなスポーツイベントが開催されている期間や、特定の俳優や監督の映画特集期間などでは、長時間番組が連続(あるいは毎週)放送されることもあってなかなか見る方が追いつかないということもある。

 そうしたユーザーの不安を解消するべく、H3000シリーズのハードディスクユニットはデタッチャブル(取り外し可能)構造になっている。有名メーカ製としては珍しく、ユーザーによる換装に最初から対応しており、交換用のハードディスクユニットは純正オプションとしても設定されているのだ。取り外し方は簡単で、画面左側の側面の扉を外せば、デジカメのメモリカードの出し入れとさほど変わらない感覚で交換が可能だ。

 また、パソコン周辺機器のハードディスク製品で標準的に活用されているeSATAインターフェースを持っているので、市販の外付け型ハードディスクをH3000シリーズに接続して、これを録画メディアとして利用できる。直接eSATAハードディスクには録画できないのでビデオファイルのバックアップ用途…ということになるが、それでもこのエコシステムはユーザーにとってはありがたい。

 なお、撮り貯めた番組はDVD等のメディアにエクスポートすることはできない。しかし、外付けHDDを最大4台まで登録することに対応しており(ただし同時に接続できるのは1台まで)、気に入った番組は外付けHDDへムーブ(移動)して保存…という活用スタイルは実現できるはずだ。基本的には一般的なeSATAハードディスク機器であれば全てが繋がるので、PCユーザーならば市販されている「自作eSATAハードディスクケース」等を購入してオリジナルの大容量ハードディスクドライブを構築し、これをH3000シリーズで活用する…というマニアックな楽しみ方もできそうだ。

 東芝は「H3000シリーズの録画機能は見たら消すが基本なので既存のビデオレコーダ機器に置き換わるものではない」としているものの、この拡張性と組み合わせれば、もはや「保存派ユーザー」のお眼鏡にすらかなうシステムも構築可能だろう。

人為的な高画質ではない自然な高画質を具現化する〜それが東芝が誇る映像エンジン「メタブレイン」

 なにはともあれ、REGZAといえば、やはり映像エンジン「メタブレイン」が最大の特徴といっていいだろう。画質マニアの間でも高い評価を得ている独自の映像エンジンは、「やりすぎ」とも言う呼び声もあるほどこだわり抜かれている。

 なぜ映像エンジンにここまで情熱を燃やすのか…。

 ご存じの人も多いと思うが、東芝は液晶テレビの液晶パネルを自社生産していない。そこで、テレビ製品としての性能性の本質である「画質」の向上を、液晶パネルの駆動系までを絡めた、統合型の映像エンジン側で実現する道を選んだのだ。

 実は、H3000シリーズの中でも液晶パネルのタイプがモデルごとに異なっている。フルHDモデルに限ってみても、46V型、52V型はフルHD型のVA(垂直配向液晶)パネル、37V型、42V型はフルHD型のIPS(横電界駆動液晶)パネルを採用しており(カタログにも記載されている)、実際この2つのパネルは供給メーカーが異なっている。それでいて、ほぼ同一品質の高画質を実現しているのは、メタブレインの威力なのだ。

 もともとはパネルを自社生産している競合メーカーに詰め寄るためだったこの技術は、いつのまにやら、競合を追い越し圧倒するまでの画質を実現するまでになってしまった。いわば、メタブレインは、パネルスペックを超えた画質を提供する技術として確立されたといっていい。

 映像エンジンに凝るということは、イメージ的には「あれこれ加工してしまうから、元の映像とは似ても似つかぬ画になってしまいそう」というイメージを持つかも知れない。

 実はこれは誤り。

 普段、何気なく見ているカラーの液晶パネルだが、映像データが持つ各画素の色データを、本来その映像が伝えたい状態で表示するのは非常に難しいとされる。

 液晶画素の中の液晶素子は非線形な状態変化をすることがあるし、階調はこの液晶の状態とバックライトの連携によって生み出されるので複雑性はさらに増す。液晶パネルというデバイスは原理特性上、意外にも結構なじゃじゃ馬なのだ。実際のところ、自社生産パネルでテレビを製造する競合他社もここで苦労する点は変わらない。自社製造パネルを持たない、もともとスタートラインが逆境だった東芝はこの問題についての取り組みが真摯だったために、この方面の技術蓄積が競合他社を上回るものになったようだ。

※写真はZ2000シリーズ用の基板。

 さて、H3000シリーズには、「新メタブレインプロ」として生まれ変わった最新バージョンが搭載されている。

 メタブレインの高画質化アルゴリズムはとても本稿だけで語り尽くせないので、ここでは先代までのメタブレインからH3000シリーズで何がどう変わったかを手短に解説していきたいと思う。これらはカタログに掲載されていない情報も多いので、是非とも参考にして欲しい。

映像が本来持っていた情報を再現する〜「質感リアライザーVer.2.0」

 表示映像をリアルタイムにヒストグラム解析し、その映像に最適な発色制御と階調表現を行うのが「質感リアライザー」だ。これは数あるメタブレインの高画質化機能において、最重要かつ最もユーザーに対する恩恵が大きい部分でもある。

肌色質感表現


※画像は効果を分かりやすく説明するためのイメージです。

 人間の視覚が最もシビアに反応すると言われる肌色表現。質感リアライザーの「肌色質感表現」では、肌色が自然に見える階調特性に補正する機能を提供してくれる。

 暗いシーンでは、肌色が黒ずんだり、背景が明るいシーンでは肌色の階調が疎かになりがちだが、これを防止するために「肌色質感表現」では、肌色を認識したうえで、肌色に不利なシーンであることを認識すると、肌色の輝度ヒストグラムを低い輝度ヒストグラムに再配分する。こうすることで肌色暗部の過度な沈み込みを抑え、肌色のグラデーションが美しく出るようになる。

 H3000シリーズでは、このアルゴリズムを様々なシーンにおいての動作安定化を進めたとしている。

中間輝度質感表現

 自然情景を捉えたパノラマビュー的なシーンでは、空などの中間輝度領域が画面の大きな割合を占めることがある。この場合、明るい領域が少ないためにシーン全体が暗く見えてしまう。本来は中間輝度の面積が広いのだから、視覚上はもっと明るい方が自然なはずなのだ。

 そこで、「中間輝度質感表現」では、中間輝度の面積割合を自動検知し、最も自然に見える階調特性に補償する。

 しかし、ただ、闇雲に階調を持ち上げたのでは暗部が浮き上がったり、ノイジーな映像になってしまう。そこで、中間輝度の面積領域に応じて動的に補償ゲインを制御する。しかも、狭い輝度範囲の面積が極端に大きい場合は、その領域の階調補償を控えめにしてS/N感を維持するのだ。

 この工夫により、暗部の沈み込みや暗部階調のリニアリティを維持したまま、中間輝度を豊かに描き出せる。  H3000シリーズではこのアルゴリズムをさらに最適化。低輝度画像のコントラスト感の改善、肌色階調を豊かにすることを達成している。

白質感表現

 雪景色や南国の屋外シーンなど、映像中の高輝度領域の面積が広いと、高輝度部のディテールが飛んで見えてしまい、映像の情報量が減ってしまう。

 「白質感表現」では面積の広い高輝度部を認識したときには、この高輝度のヒストグラムを周辺輝度に再配分して、高輝度付近の階調表現を不自然に見えない程度に変更し、明部の陰影を的確に描き出す。

 潰れてしまって見えていなかった雪原の陰影、白い雲のモコモコ感、明色の壁の凹凸などが見えてくるようになり、映像のリアリティが増す。

 H3000シリーズではヒストグラムの分散処理をさらに最適化。こちらも様々なシーンへの適応力が高められている。

黒質感表現

 暗いシーンが多い映画では、暗部階調付近での情報量が多く、画面に占める面積の割合も大きくなる。そのまま表示したのではただただ暗いだけで映像が見にくい。

 そこで、「黒質感表現」では、暗部階調のヒストグラム分布を分析し、その分布状況に応じて、暗部の20IRE付近の輝度を補償して暗部表現を不自然にならない程度に持ち上げて暗部ディテールを描き出す。暗部面積に応じた動的補償を行うので黒が不用意に浮いたり、暗部階調がやたら明るく見える不自然さはなく、暗部階調表現とコントラスト感を両立するのが特長だ。

 H3000シリーズでは、最暗部付近の0IRE領域についてもこのアルゴリズムを展開し、暗いシーンの再現品質をさらに向上させている。

細やかさと滑らかさの両立〜「ディテール・リアライザーVer.2」

 メタブレインにおいて、質感リアライザーの良き相棒といえるのが「ディテール・リアライザー」だ。H3000シリーズでは質感リアライザーと同様にVer.2となった。

 質感リアライザーは動的にシャープネスを調整して、ディテールが埋もれていればこれをあぶり出し、なだらかのグラデーション表現のような領域では逆に滑らかさを維持する。

 通常、映像機器ではディテール表現と滑らかな表現の調整は相反するものであり、両要素が一番無難と思えるところに落ち着かせるというのが画質チューニングの常識だった。質感リアライザーはこの相反する二つの要素を共に最良の状態になるように、適応型の調整をリアルタイムに行う仕組みなのだ。


※画像は効果を分かりやすく説明するためのイメージです。

 具体的にはヒストグラム中、急激な変化を見せている輝度領域を認識すると、これは広範囲なグラデーション領域として捉え、この輝度付近についてはシャープネス処理を抑制する。これにより不用意なディテールのあぶり出し(SN低下の原因)を抑制でき、滑らかな表現の維持と高いSN感を達成できる。それ以外の部分では通常のシャープネス処理を行うことで、ディテール感と滑らか感の双方が最大限に達成できるというわけだ。

 H3000シリーズではヒストグラム処理の最適化を奨めており、ディテール感と滑らか感の両立化をより一層強化できている。

 こうしてみてくると質感リアライザー、ディテールリアライザーは人間の視覚の再現に近いことが分かる。  そう、人間は、普段、目で見る情景を「一番見やすいと思える」形で脳内で認識して見ているのだ。

 例えば、肌色は社会生活を送る人間にとって一番目にする色になる。だから脳内で一番敏感に反応する。肌色質感表現機能はまさにこれに相当するわけだ。

 また、人間は瞳を動的に絞ったり開いたりすることでその情景を適正な輝度で見るようにしている。現実世界の全ての輝度や色をいっぺんに捉える能力が人間の目(脳)にはないためで、その情景が一番見やすくなるように瞳を調整しているのだ。暗い環境では瞳を開いてより光を捉えられるようにし、明るい環境では瞳を絞って網膜に照射される光を減量している。中間輝度質感表現、白質感表現、黒質感表現といった機能はまさにこれに相当する働きだ。

 そして、人間は人物の顔、建物、模様、文字…といった細かい表現には意識を集中させて見るが、そうでない単色の壁、空といった大局的な情景は全体で見る傾向がある。これはディテールリアライザーの働きに近い。

 デジタル映像を、「もし実際にその場面に自分がいたらこう見えるはず」…こうした"if"のアシストをメタブレインは行ってくれている…と考えると、メタブレインへの機能への理解が深まるはずだ。

フル・ハイビジョンの情報量にさらに"+α"があるREGZA画質

 実際にHD DVDソフトの「ワイルドスピード3」やBDソフト「007カジノロワイヤル」「エラゴン」などを視聴して画質の評価をしてみた。

 1920×1080ドットのフルハイビジョン映像を1920×1080ドットパネルに過不足なく表示できるために解像感は圧倒的だ。

 映像を見て一目感じるのが、そのフルハイビジョン映像を超えたような、画面全体から訴え出てくる情報量の多さだ。これは、常にリアルタイム適応処理によって最適な階調表現とディテール表現を実現してくれる質感リアライザーとディテールリアライザーの効果に他ならない。

 美しい肌のグラデーションと克明に描き出される衣服の繊維感、緩やかな色の変化を見せる空の色と、細やかな陰影すらもはっきりと感じられる木々の葉々や海面のさざ波…グラデーション表現とディテール感の両立も見事だ。

 言ってみれば、かなりアグレッシブなデジタル映像処理を行ってから出力している映像のはずなのに、技巧的な感じは全くない。前述したメタブレインの高度なアルゴリズムを知ったうえで見ていても、非常に自然に見える。  明暗が激しく変わるシーンでも、その移り変わりに不自然さはなく、あらゆる表示映像で一定のコントラスト感が維持できている実感もある。液晶はその原理上、どうしても暗いシーンが苦手であり、黒浮きが目立ちコントラスト感が欠如しがちなのだが、それが映像を見ている限りではほとんど気が付かない。

 逆に明るいシーンでは、高いコントラスト感がありながらも、陽光に照らされる白いTシャツのシワの陰影のような最明部付近の陰影もちゃんと見せてくれる。

 人間が一度に感じられる"明"と"暗"の振り幅を最大限に使い切るような映像を表示している…そんな印象を筆者は持った。

 お勧めのプリセット画調モードは「映画」モードだ。似たモードに「映画プロ」があるが、こちらは色温度が下がりすぎて色味に赤が乗り、輝度も落ちるので完全暗室向き。「映画プロ」はシャープネスが下げ気味でディテール感よりもしっとり感重視なのだが、「映画」はこのあたりのバランスがうまい。「標準」も万能性が高いが、やや暗部を沈み込ませ気味にしてコントラストを稼ぐ意図を感じる。迷ったら「映画」にしておけばいいだろう。

 発色の傾向はナチュラルな印象で、派手さはあえて排除している意図を感じる。息を飲むような「艶やかな記憶色再現」よりは、現実志向な、いうなれば写実志向のコンセプトになっていると思う。その意味ではディスプレイモニタとしてのポテンシャルも高いと感じた。

REGZA H3000シリーズの位置付けとは?


H3000/C3000シリーズラインナップ

 最後にREGZAシリーズのラインナップについて整理しておこう。

 REGZAシリーズは、現在、Hシリーズ、Zシリーズ、Cシリーズの3ラインナップが走っている。Cシリーズはコストパフォーマンス重視、Zシリーズは画質重視の主力製品、Hシリーズはハードディスク内蔵の録画対応モデルということになっている。

 この夏にラインナップを一新したのはCシリーズとHシリーズで、世代を表す型番数値が3000番となった。先代からどう変わったかという点は一言では語り尽くせないが、REGZAシリーズの根幹を支える映像エンジン技術である「メタブレイン」システムがさらに進化した部分がホットトピックだといえるだろう。

 今回の夏モデル投入ではハイエンド/主力製品であるはずのZシリーズのモデルチェンジが行われていないことを不思議に思うかも知れないが、「Zシリーズの開発は今後も続く」とのことなので、秋から年末には3000番型番の新Zシリーズの姿が拝めるのかも知れない。

 ということは、現時点においてはH3000シリーズが事実上のハイエンドラインナップに相当する。ハードディスク搭載モデルというと、「イロモノ」というイメージを持つ人もいるかも知れないが、高機能/ハイエンドモデルに、活用の幅を広げる録画機能が搭載された…と考えれば問題ない。

 ハードディスクが搭載されたことによって画質性能面が疎かになったわけではなく、新世代メタブレインを搭載して画質に磨きを掛けたうえで、さらに録画機能までを搭載した…というイメージの方が正しい。

 つまり、画質性能と利便性の全方位武装をしたのがREGZA H3000シリーズというわけなのだ。

(トライゼット西川善司)

■関連情報
□東芝  http://www.toshiba.co.jp/
□東芝 REGZA  http://www.regza.jp/product/tv/top.html
□東芝直販サイトShop1048  http://shop1048.jp/

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