手のひらサイズなのに、本格的なスペックと機能――。そんな特徴を備えて登場した、アドトロンテクノロジーのプロジェクター「Qumi Q2」は、普段プロジェクターを使用するイメージが無い人たちに、新しい使い方を提案してくれる製品だ。気軽に持ち運べるサイズに加えて、PCはもちろんiPadやゲーム機などをつなぎ、場所を問わずに映し出すことができる。今回は、そんな「Qumi Q2」の魅力を紹介しよう。

手のひらサイズに凝縮された本格スペック

 Qumi Q2の特徴は、まずなにより「小さい」ことだ。本体のサイズは、幅162×高さ32×奥行き102mm。具体的には、新書の本や、3.5インチハードディスク、ゲーム機のPSPと同じぐらいの、片手におさまりそうなサイズだ。重さは、実際に測ってみたところ495gだった。iPad2のWi-Fiモデルが601gなので、それよりだいぶ軽いわけだ。ACアダプタも実測264g(ケーブル部分含む)で、本体と合わせても700g台。この重量ならば、常にバッグに入れて持ち歩くのも苦にならないだろう。本体デザインもなかなかスタイリッシュで、iPadと並べても違和感がない。

Qumi Q2 手のひらに収まり、非常に持ちやすいコンパクトなサイズ Qumi Q2と新書、3.5インチハードディスク、PSP、ボールペンを並べたところ。コンパクトさが分かる

 入力としては、VGA端子やHDMIミニ端子を備えており、PCからの出力はもちろんのこと、HDMI端子を利用することで、ゲーム機やタブレット端末、スマートフォンからも映像を出力することができる。手元にあったiPad2、PS3、Xperia arcで試したところ、特に問題もなく画面が投影された。

 特にiPadやiPhoneについては、「Made for iPod・iPhone・iPad」の認定を取得している。Apple純正の「Apple Digital AVアダプタ」を別途用意してHDMI接続すれば、iPad2やiPhone4Sなどビデオミラーリングに対応している機種は画面をそのまま投影できる。それ以外の機種でも、プレゼンツールや動画などの対応アプリケーションであれば投影できる。

 価格はオープンプライス。執筆時点では5万円前後で販売している店が多く、このクラスのLEDプロジェクターとしてはリーズナブルな価格といえる。

 コンパクトでありながら、輝度は300ルーメンを実現しており、LED光源とDLP方式により、同じ輝度のランプ方式より明るく高精細に映る。3万時間という、ほぼ交換不要な長寿命もLED光源の魅力だ。表示の解像度は1280×800ドットで、ビデオ映像では720pのHD映像も投影できる。また、投影サイズは30インチ(距離1m)から90インチ(3m)だ。狭い会議室での壁面投射から、一般的なスクリーンへの投射までカバーできるサイズだ。

 そのほか、キーストーン補正(台形補正)や上下左右の反転など、プロジェクターとしての基本的な補正機能も用意されている。天井吊りで設置するときなどに補正が威力を発揮するだろう。なお、Qumi Q2の底面のシールを剥がすと、三脚の穴が現れる。ここにミニ三脚を取り付けると、Qumi Q2を自由な向きに向けて設置できて便利だ。

背面のフタを開けると端子が並ぶ。左から、電源端子、オーディオ出力端子、AV入力端子、USBスロット、microSDスロット、ミニHDMI端子、VGAケーブルなどを繋ぐユニバーサルI/O端子 メニューキーと方向キー、決定キーがタッチ式のボタンになっている 側面には、フォーカスリングとスピーカーを備える。スピーカーは1Wなので、音質を求めるのであれば、PCや外部スピーカーを使ったほうがいいだろう
付属品としては、ACアダプターとリモコンのほか、収納ポーチが含まれる。さらにケーブルとして、VGAケーブル、ミニHDMI-HDMIケーブル、ミニHDMI-ミニHDMIケーブル、RCA 3ピン端子のAVケーブル(国内モデルのみ)が付属している 底面に三脚を取り付けて固定できる 本体色は黒も用意されている
iPad2で投影した画面。iPad2で見ている画面がそのまま投影される キーストーン補正(台形補正)で、真正面からの投影でなくても画面を補正できる

ビジネスバッグに入れてどこでもプレゼン

 次に、Qumi Q2がビジネスシーンでどう活躍するのか、実際の例を見てみよう。

 普段客先を回って自社の製品を説明することが多いビジネスマンは、パンフレットよりも効果的な説明のために、ノートPCを持ち歩いていることが多いという。しかし、一日中ノートPCを持ち歩くと、ビジネスバックも重くなり、疲労がたまる。さらに、客先で通された部屋にプロジェクターがないことも多く、客先の人達と1つの画面をのぞき込むことになる。これでは、小さい画面を複数人で見なければならなかったり、画面を見せるたびに席を移動したりしなければならなかったりと、効率的ではない。

 そこでQumi Q2を導入すると、PSPなどとさほど変わらないコンパクトなサイズと軽さで、ビジネスバッグに入れてもさほど苦にならずに持ち歩ける。客先を回って説明することの多いビジネスマンにとって、このコンパクトさは武器だ。加えて、Qumi Q2はノートPC用の外付けバッテリーからも給電できるので、ノートPCとセットで持ち歩く場合には、Qumi Q2のACアダプタを持ち歩かずに利用することもでき、モバイル性を高めることができる。

 また、iPad2やスマートフォンを利用するビジネスマンも最近では増えており、Qumi Q2のHDMI入力を利用して、WebサイトやPDFファイルなどでプレゼンするのにも最適だ。小さい画面を大勢でのぞき込む必要もなくなり、効果的にプレゼンすることができるだろう。iPad2とQumi Q2、ACアダプタの合計重量は約1300g強。一般的なモバイルPCを持ち歩くのと同じくらいの重量で、プロジェクターを利用した効果的なプレゼンが可能になるのだ。

場所を選ばずにiPadでスマートにプレゼンできる 持ち運ぶのに苦にならないサイズで、気軽にビジネスバッグに入れて持ち歩ける

 そのほか、USB端子とmicroSDカードスロットがあるので、PCやiPad2なども使わずに、本体だけでプレゼンすることもできる。USBメモリやmicroSDカードにOffice文書やPDF、写真などを入れて本体内で再生できるのだ。microSDカードが利用できることで、外回り中にスマートフォンで撮った写真や、スマートフォンでダウンロードしたファイルをQumi Q2でそのまま投射するといった使い方も可能だ。客先で利用するファイルが決まっていたり、必要最低限の荷物にしたいというビジネスマンなら、持ち歩くのはQumi Q2だけにして、さらに荷物を減らすという使い方も便利だろう。

 いままでの小型プロジェクターと違い、300ルーメンの輝度も安心だ。これだけあれば、部屋の電気を消さなくても、また真っ白な専用スクリーンでなく壁でも、投射した画面を読みとるのに充分な明るさだ。そして、LED光源なので、起動時のウォーミングアップや電源オフ時のクールダウンに時間がかからず、さっと取り出してプレゼンし、終わったらまたさっとビジネスバッグにしまえる。客先で、場所を選ばずに自分のペースでプレゼンができるのは、心理的にも余裕を持てることだろう。

 Qumi Q2は、社内会議や仲間内での勉強会などでも活躍する。資料の印刷が不要になり、社内のエコにも貢献でき、画面を参加者で見ながら効果的に会議を進めることができるのだ。

 持ち運べる本格スペックのプロジェクターという新コンセプトのQumi Q2は、ビジネスの現場にとってワークスタイルを変えることができるアイテムといえるだろう。

USBメモリ、microSDカードに入れたOffice文書やPDFファイルを、Qumi Q2本体で直接投影することができる

映画やゲームもコンパクト高性能で楽しむ

 Qumi Q2のコンパクトなボディは、ビジネスシーンだけでなくプライベートシーンでも、いままでになかった可能性を拓いてくれる。

 たとえば、休日に映画のDVDやBlu-rayを観たり、ゲームをしたりするということは、読者でもよくある状況ではないだろうか。より大画面で、高音質で楽しみたいと考えているが、数十万円かけて本格的なホームシアターを作るほどではなく、ワンルームマンションの部屋では、なかなかスペースも厳しいというのが現実だ。

 そんなときにQumi Q2なら、コンパクトなサイズなのでスペースを取らずに設置できる。投射距離1mから対応するので、狭い部屋でも大画面を楽しめる。もし、映像を投射する壁がなくても、ホームセンターなどで売っている遮光ロールスクリーンなどを利用することで、安価にスクリーンの代わりにすることができる。もちろん、価格もリーズナブルで手を出しやすいのも魅力だ。

 Qumi Q2は、HDMIミニ端子が備えられているので、Blu-rayプレイヤーやゲーム機を接続できる。しかも、Qumi Q2には、前述のとおりミニHDMI-HDMIケーブルとミニHDMI-ミニHDMIケーブルが付属しているので、別途ケーブルを用意する手間が無い。投射する映像も、DLP採用により高精細で色再現性が高く、残像がないなど、アクション映画やゲームでは液晶TVよりキレイに見えるのもうれしい。

AV機器やゲーム機がそのままつながる コンパクトな付属リモコン

 コンパクトなサイズを活かして、友達の家などでのちょっとしたホームパーティーでもQumi Q2は便利だ。大きなプロジェクターを持ち込むと、参加者が引いてしまうかもしれないが、Qumi Q2のサイズなら手荷物に入れて気軽に持っていける上に、設置場所をさほど気にする必要がなく、本体の存在もその場になじむ。

 パーティーでは、友達の家のPS3を接続し、格闘ゲームやレースゲームなどの対戦プレイをしたり、みんなで旅行に行ったときの写真をUSBメモリに入れて持ってきて写真鑑賞をするなど、パーティーの盛り上がりにいろいろ活躍することが期待できる。

 いままでプライベートシーンで自分がプロジェクターを買うことも、ましてやプロジェクターを持ち歩くことも考えていなかったユーザーにとっても、Qumi Q2は趣味にも遊びにも新たな可能性をもたらしてくれることだろう。

USBメモリに写真を入れて、写真鑑賞するなどお手のもの USBメモリ、microSDカード内のファイル再生メニュー。動画、写真、音楽、Offieファイルの再生ができる

“プロジェクター”を使いたくなる「Qumi Q2」

 プロジェクターというと、大きな会議室に常設されていて、そこに行って使うもの、というイメージがあった。つまり、自分のペースで使いにくい。しかしQumi Q2のコンパクトさには、プロジェクターのほうが自分といっしょについてくる親近感がある。といって、部屋を真っ暗にしないと見えないようなことはなく、据え置き型と同じスペックを提供している。HDMIに対応し、iPadやAV機器、ゲーム機器などをそのまま表示できる点も実用的だ。Office文書やPDF、動画などを本体だけで投影できるのも、行動範囲を広げてくれる。

 コンパクト、本格スペック、手を出しやすい価格、キュートなデザイン。これらがうまくバランスして、いままで縁遠く感じていたプロジェクターも、一気に身近なものに感じられる。プロジェクターは会社やAVマニアだけのものでなく、個人でも持ち歩いてアイデアしだいで仕事からホビーまで行動をサポートしてくれる。そんな気にさせる製品だ。

(高橋正和)

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