◆quanp.on

 quanp.net(ベータ版)、quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007の追加、そして今回のクライアントソフトquanp.onのバージョンアップ(quanp.on v1.1)と、リコーが提供するWebサービス「quanp」の進化がめざましい。

 quanpは、パソコンの写真や文書などをオンラインにアップロードすることでさまざまな活用をすることができるWebサービスだ。「file your life.」というコンセプトのもとに、写真や文書などのデジタルデータを、言わば人生のコピーとして蓄えるための世界(オンラインストレージ)を提供しつつ、その仮想世界と現実世界をつなぐ独特の世界観を、「quanp.on」というアプリケーションで提供するユニークなサービスとなっている。

 このquanp.onは、直感的に操作できるなどの工夫がなされており、非常に扱いやすいという特徴を持っていたが、今回のバージョンアップでさらに機能が強化されたうえ、6月にリリースされたブラウザ版のユーザーインターフェースである「quanp.net」(ベータ版)、および「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007」の追加によって、マイクロソフトオフィスから直接quanpにアクセスできるなど、様々なシーンで進化している。

 言わば、「quanp」という1つの大きなビジョン(世界観)を実現するために、quanp.on、quanp.net、quanp Add-inという、複数のオペレーション方法を提供し、それを進化させ続けていると言えるだろう。

◆quanpの入り口である「プレイスマップ」

 今回のクライアントソフトであるquanp.onのバージョンアップは、言わば、オンラインサービスとしての次のステージへのステップアップと表現できるだろう。

 quanpのようなオンラインサービスをユーザーが利用する場合、一般的にはそのオペレーションは大きく3つのフェーズに分けて考えることができる。1つはファイルを保存する操作、もう1つは保存したファイルを管理する操作、最後は管理されているファイルを活用する操作だ。

 quanpのクライアントソフトは、高性能な検索機能と直感的に操作できる「3Dビュー」などにより、特に整理をしなくても、アップロードしたファイルの中から目的のファイルに容易にたどり着けることができるのが特徴である。その優れたファイルの管理機能に加え、ファイルが保存された「プレイス」をさまざまなユーザーと共有することもできる機能を備えた活用できるオンラインサービスだ。

 しかし、今後を考えると、ユーザーは単にファイルを管理するだけでなく、ファイルをどんどん活用するというフェーズを発展させていく段階にきている。

 そこで、この発展に対応するために今回行われたのが、このクライアントソフトのバージョンアップだ。quanp.on v1.1へクライアントソフトを進化することにより、ユーザーに新たな価値を提供しようというわけだ。

 quanp.on v1.1で新たに追加された機能は以下の通りだ。

1.ファイルのフルスクリーン表示
2.ソート機能と検索機能の向上
3.ユーザーアイコンの設定

 追加された機能は、いずれも保存したファイルをquanp.on上でさらに便利に管理し、活用するための機能だ。ファイルの検索性はさらに向上し、フルスクリーン表示のような新しい使い方ができるようになるなど、バージョンアップにより使い勝手をさらに向上させることに成功したようだ。これにより、quanpは保存したファイルを活用するオンラインサービスへとさらなる進化を遂げたというわけだ。

 以下、quanp.on v1.1で新たに追加された機能について詳しく見ていこう。

 今回追加された機能の中でも、特に便利なのはやはりフルスクリーン表示への対応だろう。

 プレイス内に保存されている文書や表、プレゼンテーションファイルをダブルクリックしてファイルビューで表示後、フルスクリーン表示に切り替えると、ファイルの内容を全画面で表示できる。

 写真を全画面で次々に表示するといった使い方もできるが、複数ページの文書も全画面表示しながらページを切り替えることができるので、場合によってはそのままプレゼンにも利用できてしまうというわけだ。

 quanpされたファイルの内容をフルスクリーン表示できるため、PCに作成元のアプリケーションがインストールされていない場合でも中身を表示することができるようになっているのも特徴だ。

 プレゼン用のファイルは必ずquanpに置いておくという使い方をすれば、外出先にうっかりプレゼン用ファイルを持って行くのを忘れたり、古いバージョンのファイルでプレゼンしてしまうなどといったミスを防ぐこともできる。まさにデータの出口まで考えたファイルの一元管理を実現できるというわけだ。

 
◆ファイルビューからフルスクリーン表示で、プレゼンにも利用できる
 一方、ファイルのソート機能と検索機能の強化により、ファイル管理が容易になった。

 今回のquanp.on v1.1からは、ファイルの並び方をこれまでのファイル日時(ファイルの更新日時)や更新日時(quanpでファイルを登録、コメント編集した日時)に加え、ファイル名やサイズや種類などでソートすることが新たに可能となった。

 過去から未来へという時間軸がひとつのコンセプトとなっているquanpだが、そうは言ってもファイル名などで素早く必要なファイルを探したいという場合もある。名前やサイズで並べ替えたサムネイルを見ながら、パッと頭に浮かんだファイルを直感的に探し出せるようになったのは非常に便利だろう。

 また、ファイルを右クリックすることで、同じ作成者、同じ拡張子、同じタグのファイルを手軽に検索できるようになったのもありがたい。これにより、現在手元にあるファイルに関連する他のファイル、たとえば同じプロジェクトのタグが付いたファイルを一気に検索することができる。

 これらは細かな改善点だが、かゆいところに手が届くようになったという印象で、より直感的なファイル検索ができるようになったのが特徴だ。

◆ファイルのソート方法も、新たにファイル名やサイズ・種類などが選択可能になった
(画面はサムネイルビュー表示)
 
◆ファイルを右クリックすることで検索できるようになった
(画面は3Dビュー表示)
 
◆quanp上の画像ファイルを直接、プレイスアイコンに設定したり、デスクトップの背景に設定したりすることも出来る
(画像はリッチビュー表示)
◆「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2007」。インストールするとリボンに追加され、officeアプリケーション上からシームレスにquanpを利用できる
◆コメントの追加・表示なども直接行うことができるため、quanp経由のコミュニケーションもスムーズ

 このように、新バージョンのクライアントソフトによって使いやすく進化したquanpだが、アドインの提供によりクライアントソフトを立ち上げなくてもquanpが利用可能になった点も見逃せない。すでに提供が開始されている「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007」だ。

 「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007」は、文字通り、Microsoft Office製品のアドインで、Word、Excel、PowerPointに対してquanpの機能を追加することが可能なアプリケーションだ。具体的にはWordやExcel、PowerPointで作成中の文書のquanpへの直接アップロード、quanpにアップロード済みの文書のダウンロード、そして文書に対して付加されたコメントの表示が可能となっている。

 これにより、Officeアプリケーションからquanpをシームレスに利用することが可能となった。これまで、Office文書をquanpに保存するためには、ローカルで文書を作成後、クライアントソフトを利用してアップロードする必要があったが、quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007を利用すれば、リボンに追加されたquanpアイコンから、文書のアップロード、ダウンロード、さらにコメントの表示などが直接できるようになる。つまり、quanpをローカルのストレージと同様に活用することが可能となるわけだ。

 これは、実際に使ってみると非常に便利だ。ローカルから開くときと同様に、quanpのプレイスを指定して必要な文書を開き、参照や編集が終わったら、再びquanpにアップロードして情報を更新することができる。

 データの参照や保存にかかる手間が大幅に削減されるうえ、ローカルとquanp上に二重にデータを管理する無駄もなくなるというわけだ。


 このように、ローカルハードディスクの代わりとして、Officeアプリケーションを利用してどこからでも自分のデータにアクセスできるようになるのもメリットだが、同時に他の人とのデータ共有もスムーズに行えるようになるというメリットも見逃せない。

 quanpの有料サービス(Standard:10GB 300円/月、Quantum:100GB 980円/月)では、他のユーザーとデータを共有することができる「シェアプレイス」を開設することができる。たとえば、特定の業務やプロジェクトなどのシェアプレイスを開設し、そこにメンバーを招待すれば、プレイス内のデータを他のユーザーと一緒に参照、編集することができるようになるわけだ。
quanp利用コース
Quantum Standard Trial
月額料金(消費税込み) 980円/月 300円/月 無料
最大利用容量 100GB 10GB 1GB
シェアプレイス ●(開設/参加) ●(開設/参加) ▲(参加のみ)
テレフォンサポート
 この機能と、前述した「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007」を併用すると、Excelを使って複数の人のスケジュールや工程表を共同で作成したり、Wordを使って取引先との間で文書の校正作業をしたりすることが簡単にできるようになる。

 たとえば、ある人がExcelでベースとなるスケジュール表を作成後、アドインを使ってquanpのシェアプレイスにそのままファイルをアップロードする。そして、シェアプレイスに参加する他のユーザーがスケジュールを確認し、必要な箇所を訂正すると同時に、その訂正箇所についてコメントを追加して再びアップロードする。このフィードバックを受け取った作成者が再び内容を確認するといったように、quanp経由でのコミュニケーションが手軽にできるわけだ。

 通常、このような文書のやり取りはメールで行われることが多いが、メールでは複数のバージョンの文書が散在する可能性が高く、やり取りが多くなるほど複雑さが増していく傾向にある。

 これに対して、quanpによるコミュニケーションは、quanp上にある唯一のデータをベースに行われるうえ、コメントもquanp上ですべて管理されるため、非常にスムーズに行うことができる。

 ここまで進化すると、もはやストレージと言うよりは、コミュニケーションツールと言っても過言ではないだろう。

 このようにquanpは、バージョンアップしたクライアントソフト「quanp.on v1.1」、および「quanp Add-in for Microsoft Office(R) 2003/2007」の登場によって、より実用性を向上させることに成功している。

 これまでのサービスでも、いつでも、どこでも、誰とでもデータを利用することができるWebサービスであったが、その敷居が下がったうえ、より実用的になったと言って良いだろう。

 容量の大きさなどを特徴とし、単にファイルを保存するだけのオンラインストレージサービスが多い中、どのようにデータを活用するかという具体的な提案までを行っている希有なサービスが「quanp」と言える。これから、さらなる発展も期待できるだけに、ぜひ一度、その快適さを試してみて欲しいところだ。

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清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ

関連リンク
■quanp
http://www.quanp.com/
■quanp Add-in for Microsoft(R) Office 2007
http://www.quanp.com/about/addin/
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■サイズや拡張子などでソート可能になった無料ファイル共有ソフト「quanp.on」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/08/05/quanpon11.html
■リコーのオンラインストレージ「quanp」がフルスクリーン表示に対応
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2008/08/05/8977.html
■リコー、オンラインストレージ「quanp」クライアントを機能拡充
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/22731.html
■リコー、「MS Office」とファイル共有サービス“quanp”を連携できるアドイン
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/07/08/quanpaddinoffice.html
■リコー、オンラインストレージ「quanp」でOffice用ツール公開
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/08/20182.html
■リコー、オンラインストレージ「quanp」のOfficeアドインツール
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/22398.html
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