im_office_kawasaki 新川崎のパイオニア本社に突撃!

 パイオニアのBD/DVD/CDライター「BDR-XU02J」は、世界最小最薄サイズを実現した、ポータブルサイズのハイエンドモデル。新開発のマグネシウム筐体の採用でシンプルでモダンなデザインに仕上がっているほか、PC用ドライブとしては珍しいスロットローディングメカの採用など、いくつものユニークな特徴を備えている。

 BDR-XU02Jの開発には、パイオニアならではの技術が詰まっているという。ならば、その開発者たちにその技術や開発の際の苦労について是非とも聞いてみたい。早速、パイオニア本社に出向き、BDR-XU02Jの開発メンバーに会うことにした。

「BDR-XU02J」レビューはこちら↓
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ウルトラブックにもぴったりの
スタイリッシュな外付けドライブを!

 まずは、商品企画を担当したパイオニア ITペリフェラル部 企画部の山崎浩司氏に、BDR-XU02Jの誕生の経緯を聞いてみた。

 もともとパイオニアは、DVD時代から継続してスリムドライブの製造や製品開発をしており、PCメーカー向けのOEM供給のほか、5年ほど前には初のBlu-ray スリムドライブを発売した。

 ちなみにPC用ドライブの規格として、厚さが12.7mmのものを「スリムドライブ規格」、そして最新の厚さ9.5mmの規格を「ウルトラスリムドライブ」と呼んでいる。

パイオニア ITペリフェラル部 企画部の山崎浩司氏

【山崎氏】ウルトラスリムドライブは一昨年くらいからOEM供給を行っていました。しかし、ちょうどその頃からドライブレスのノートPCが増え始めました。現在のウルトラブックと呼ばれるノートPCもボディの薄さを追求するため、ほとんどがドライブレスです。そのため、ユーザーのあいだでは外付けドライブの需要が増えてきました。パイオニアとしても、そこにめがけて、9.5mm厚のウルトラスリムドライブを採用した外付けドライブの製品化をしてきました。

 パイオニアは、2012年1月に「BDR-XD04」というウルトラスリムドライブ採用の外付けドライブを発売した。こちらは2013年現在も世界最軽量を誇るモデルで、人気は高い。それを超えるモデルとして、パイオニアが次に考えたのは、より薄く、より小さい外付けドライブ。

【山崎氏】ウルトラブックなど、薄型のPCは今後も増えると思います。そこで、そうしたスリムでスタイリッシュなPCとの組み合わせに合う外付けドライブを作ろうと考えました。パイオニアの最上位モデルとして、所有欲を満たす作りやデザインなどにもこだわったモデル。それが、「BDR-XU02J」です。

xd04 BDR-XU02J(左)とBDR-XD04(右)

9.5mm厚ウルトラスリムドライブのために
アクチュエーターを新規開発

 やや話をさかのぼり、BDR-XU02Jで採用されている厚さ9.5mmのウルトラスリムドライブ開発について聞いてみた。

 ウルトラスリムドライブの開発にあたって、ゆずれない点があった。それは、薄型化したからといって、スペックダウンがあってはいけないということ。BD-RE(TL/QL)への記録対応やBD-R6倍速記録などのスペックはそのままに、9.5mm厚のウルトラスリムを実現することだ。

 パイオニアのドライブを企画・開発しているパイオニア デジタル デザイン アンド マニュファクチャリング、通称PDDMにおいて、ウルトラスリムドライブの光学ピックアップ開発などを担当したPDDM 技術統括部 第5技術部の渡辺浩幸氏はこう言う。

PDDM 技術統括部 第5技術部の渡辺浩幸氏

【渡辺氏】光学ピックアップの開発では、性能を落とさず、コストを上げず、しかもさらに薄くするのが目標でした。かなり困難な要求ですが、ただ薄くするだけでは意味がありません。それがパイオニアのこだわりです。

 実物を見ると驚くが、たった9.5mmの厚さしかないドライブには、ぎっしりとパーツが詰まっている。ディスクに記録された信号に追従するためのアクチュエーターは新設計となっている。

【渡辺氏】ピックアップはドライブの厚さの約7割を占める部品ですから、これをどう薄くするかが鍵になります。しかもただ薄くしただけではなく、発生する熱を逃がしやすくしなければいけません。放熱はピックアップの寿命や信頼性を大きく左右する要素ですから。

 そこで、ピックアップやアクチュエーターを支えるベースにはマグネシウムを採用。強度が高いので薄型化でき、しかも熱を逃がしやすい素材だ。ここだけで、従来のスリムドライブに比べて厚さは約7割を実現したという。そして、各部品の配置を再設計し、必要な要素を規格に収まるサイズに入れ込んでいった。性能を確保しつつコストを抑えるために光路系はスリムドライブを踏襲し、パーツも可能な限り共有しているという。12.7mmのスリム用ドライブの部品だから、それをどう収めるかも苦労したそうだ。

pickup1 pickup2 ドライブに採用されるピックアップ。左から9.5mm厚ウルトラスリムドライブ用、12.7mm厚スリムドライブ用、5インチベイ用フルハイトドライブ用。12.7mm→9.5mmの薄さの違いのほか、素材にも注目

マグネシウム筐体採用と
正方形ボディの秘密

kobayashi PDDM 技術統括部 第3技術部の小林勝之氏

 こうして、9.5mm厚ウルトラスリムドライブは完成した。そして、このドライブを用いた「最薄」外付けドライブを実現せんと、BDR-XU02Jの開発がスタートしたわけだ。

 まず、ウルトラスリムドライブを収める筐体も薄型化には重要だ。BDR-XU02Jの筐体や機構設計を担当したPDDM 技術統括部 第3技術部の小林勝之氏は、検討の結果、マグネシウムボディの採用を決めた。実際には、マグネシウムの鋳造パーツに一部切削加工を加えている。そうしたBDドライブは他に例がない。

【小林氏】薄さと軽さはポータブルドライブでは重要な要素です。いくつかの素材を検討した結果、BDR-XU02Jではマグネシウムを採用しました。マグネシウムは強度が高いのでボディの肉厚を薄くできますし、適度な内部損失を持つのでドライブの振動を伝えにくいという効果もあります。

 取材の現場にて、アルミニウムで試作された筐体も見せていただいたのだが、持ってみると明らかにマグネシウム筐体のほうが軽い。

alumi BDR-XU02Jのマグネシウム筐体による製品版(左)とアルミニウム筐体による試作品(右)
sonshitsu 製品版(左)と試作品(右)にピンポン球を落としてみると、マグネシウム採用の製品版のほうが内部損失が高いため、球のバウンド量が少ない。これは、制震性が高いことを意味する

【小林氏】マグネシウムはアルミニウムに比べて比重が3分の2ほどで、パーツにすると37gくらい軽くなります。ポータブル型で37gは大きな差です。

 当然、マグネシウムの方がコストは高くなる。しかし、高性能と薄さ・軽さを両立するためにはマグネシウムが欠かせなかった。

 また、BDR-XU02Jは、横幅・奥行きともに約133mmであることにも注目してほしいと、電気系と製品の取りまとめを担当したPDDM 技術統括部 第4技術部の笛木廣之氏は言う。

fueki PDDM 技術統括部 第4技術部の笛木廣之氏

【笛木氏】BDR-XU02Jで搭載しているウルトラスリムドライブ自体は、他社へOEM供給しているものと同じサイズです。ただ、ウルトラスリムドライブのネイティブのSATAから、外付け筐体用のUSBに変換するブリッジチップが必要になります。この部分に既存のものを利用すると、チップの分だけサイズが大きく、奥行きが長くなってしまうのです。パイオニアではこのUSBブリッジチップも、BDR-XU02Jのために専用設計したメイン基板にオンボート化して搭載しました。これで正方形のフォルムが実現できたのです。すべての部品を内製しているパイオニアの強みですね。

 正方形のフォルムは、BDR-XU02Jだけでなく、BDR-XD04でも同様だが、確かに、パイオニアのドライブをOEM採用しているところも含め、他社の外付けドライブで正方形というのは例がない。しかもBDR-XU02Jは、シンプルなデザインと正方形の相乗効果で、よりスマートな印象が際立っている。

usb BDR-XU02Jの縦横サイズは133mm x 133mmの完全な正方形。その秘密は、オンボード実装されたUSBブリッジチップにある

【小林氏】デザインにもこだわったという点では、ネジが見えないように配慮しているところも自慢です。1箇所だけ外側にネジがあるのですが、それも後面の目立たない場所で、製品番号のシールで隠しています。ですから、タテ置きでもヨコ置きでもすっきりとした印象になっているのです。

 そんなところにまで! 聞けば聞くほど、BDR-XU02Jにはさまざまな工夫が詰まっているとわかる。

ただ薄いだけでは意味がない。
性能と信頼性の確保はパイオニアでは当たり前

 BDR-XU02Jは、筐体の厚さ12mmを実現しているが、これは最初から数値目標があったわけではなく、どこまで薄くできるかに挑戦した結果、達成できたものだそうだ。しかも、正方形フォルムやネジが目立たない組み立てにまでこだわっているように、ただがむしゃらに薄型化のみを追求したわけではない。

【山崎氏】ユーザーアンケートなどでBDR-XD04ユーザーの声を聞くと、さらなる静音性や防塵性を求める意見がありました。BDR-XU02JをBDR-XD04の上位モデルとして出すからには、そういった声に応える必要がありました。

 そこで採用したのがスロットローディングの採用だ。スロットインメカ自体は、パイオニアでも長い実績があり、そのメリットもデメリットもよくわかっていた。

 メリットは、開口部を小さくできるので、静粛性や防塵性に有利ということ。デメリットは、ローディング時にディスクのレーベル面を傷つける可能性があることや、ディスクが一部しか排出されず、取り出すときに記録面に指が触れてしまいやすといった使い勝手の問題だ。

 スロットローディングのデメリットを解消するため、ローディング機構が新規に開発された。ポイントは、「レーベル面をつかんで」スライドさせるのではなく、2本のアームを使い、「ディスクの側面だけをつかんで」ローディングするようにしたこと。しかも、ディスク排出時に、ディスク中央の穴までが露出するようにすることで、取り出しやすくしている。

 このメカの仕組みは驚きの一言で、ぎっしりとメカや基板が詰まった内部で2本のアームが動き、モーター部分がシーソーのように可動してディスクをロックする様子を見ると、ちょっと感動する。これだけぎっしりとメカや基板が詰まっていると、中に収めるだけでも大変だということがよくわかる。

2本のアームがディスクの側面だけを押さえ、中に引き込む。記録面やレーベル面に直接触れることはない

【笛木氏】ボディに収めるのはとても苦労しましたが、機構やドライブ、基板等の各設計担当者が意見交換をしながら足並みを揃えて進めましたね。現在は、開発から営業まで本社の同じフロアにいますので、そういった意見のすり合わせなどはやりやすい環境になりました。

【渡辺氏】ピックアップ担当としては、ぎっしりとメカが詰まってしまうと、熱の問題が出やすくなるので、その点も苦労しました。少ない容積ではありますが、エアフロー(筐体内部での空気の流れ)まできちんと設計しています。

USBバスパワーで動くための緻密なプログラム設計

 薄型化や軽量化においては、機構や基板などの開発がクローズアップされがちだが、まだまだ見逃せない部分も多い。それがソフトウェアによる制御プログラムだ。

 先ほど説明したローディング機構も、メカニカルな設計だけでなく、ソフトウェア(ファームウェア)による緻密な制御でディスクに傷をつけず、しかも取り出しやすくしている。それを担当したのが、PDDM 技術統括部 第6技術部の蓮沼喜高氏だ。

hasunuma PDDM 技術統括部 第6技術部の蓮沼喜高氏

【蓮沼氏】2本のアームの動きやスピードは、ディスクをスムーズに出し入れするために、機構と一緒に細かく調整しましたね。ほかにも、ソフトウェア上での苦労としては、バスパワーで駆動するための制御がありました。

 BDR-XD04やBDR-XU02Jは、USBのバスパワー駆動を前提に設計されている。ポータブル型でACアダプター不要で使えるというのは使い勝手の上でありがたいが、それを実現するのも決して簡単ではない。単体の部品ごとに省電力を実現したとしても、ドライブ全体のピーク電流を抑えなくては意味がない。とりわけ、ディスクを回転させるモーターなど、駆動部分の多いドライブメカは大きな電力が必要だ。

【蓮沼氏】重要なのは、ピーク電流を下げることです。例えばローディング時に、ディスクを回すスピンドル制御と、ピックアップ制御を同時にやると、ピーク電流が上がってしまいます。処理の順番を決めて、同時には動かさず、どちらかだけを動かすようにすることで、ピーク電流を抑え、USBバスパワーの電力供給でも動作するようにできます。

 こうしたバスパワー駆動を実現しながら、実はディスク認識までの時間もBDR-XD04よりも高速化している。ディスク認識までの時間を高速化すると消費電力が高くなりやすいが、ソフトウェアの工夫で実現したという。もちろん、ディスクの読み出しだけでなく、書き込み時の制御も緻密に行っている。書き込み品質の高さで定評あるパイオニアだけに、その点も抜かりはない。BDR-XU02Jには、万一、通常のUSB接続だけでは電力が安定しない場合のため、電力供給用の追加のUSB端子を加えた二股のUSBケーブルを同梱おり、別売のACアダプターも用意されているが、実際にはほとんどのPCでUSB1本で動作可能だそうだ。

power USBケーブル一本で駆動することを基本とするBDR-XU02J。ACアダプターも使用可能だが、あくまで保険だ

【蓮沼氏】特に書き込みの場合、書き込みを始めてから電力不足になって失敗してしまうと、ディスクがムダになります。ですから、BDR-XU02Jの新機能として、添付のユーティリティソフトを使い、事前に十分な電力供給が行えるかどうかをチェックする機能を盛り込みました。

 このほか、ディスクユーティリティには、ディスク取り出しのための機能も盛り込まれている。スロットイン方式のため、ディスク取り出しはPCを操作して行う必要があるが、これをより手軽に行えるように、ツールバーから取り出し操作ができるようにもなっている。

13 パイオニア純正ドライブならではのユーティリティソフトは是非活用したい

ユーザーの声は、開発メンバー全員が目を通す。
新機能のアイデアになることも!?

 取材では、実にたくさんのエピソードを聞くことができた。付属するタテ置き用スタンドのデザインも、20〜30個ほどのデザインから選び、決定まではかなり熱い議論が展開したとか。

【山崎氏】斜めに傾けたのは、ディスクの取り出しやすさに加えて、ピックアップの動きやすさなども考えています。同時に、机に置いて格好よく見えることも意識しています。

【小林氏】デザインという点では、ボディのPioneerロゴも質感高く見せるため、アルミニウムのプレートを使っています。ボディの白に近いシルバーもいろいろと検討して決めましたね。

stand logo スタンドに立てたスタイルでの機能性とたたずまい美しさにこだわった。Pioneerロゴもシックな装い

 BDR-XU02Jの内部はメカや基板とともに、パイオニアのスリムドライブへのこだわりや情熱もたっぷり詰まっているようだ。

 また、同梱される「Sound Material」もぜひ聴いてほしいとのこと。パイオニアが映像や音のテストのために世界中を回って収録した環境音楽集で、密林の中の鳥のさえずり、小川の流れる音などが入っている。好きな音楽とミックスして聴くと気持ちいいそうだ。

 実績のある「PureRead 2+」の搭載など、これまでのパイオニアの技術もすべて盛り込まれ、多彩に使える点も含め、最上位モデルにふさわしい内容。こんな製品作りができるのは、長い実績を持つパイオニアならではとも思えるが、実はここにはユーザーも少なからず貢献しているようだ。こうしたユーザーと開発陣の橋渡し役となっているのが、パイオニア ITペリフェラル部で営業を担当する磯崎篤氏だ。

isozaki パイオニア ITペリフェラル部 営業部 磯崎篤氏

【磯崎氏】ユーザーからの声は、開発メンバー全員が目を通しています。実際に使っている方の声というのは、開発している我々とは視点が違いますし、ユニークなアイデアもあります。BDR-XU02Jのように、要望や不満はこれからの製品に反映していきますし、逆に言えば「こんな機能が欲しい」という声があれば、新製品に採用されることがあるかもしれません。ぜひとも、さまざまな意見をお聞かせしてほしいと思います。

 ということで、僕も取材の場で個人的な要望を述べさせてもらった。メインマシンがMacなせいもあるが、BDR-XU02Jはウルトラブックとの相性はもちろんだが、Mac Book Airと一緒に使いたいという人も多いのではないかという点だ。

 ところが、もともとBDR-XU02JのMac対応版もしっかりと検討されており、近日発売予定だという。しかも、BDR-XU02JのWindows版と共通のファームウェアアップデートが行われる予定で、驚きの機能の追加も検討中とのこと。

 取材の際には詳細は明かされなかったが、去る3月13日、BDR-XU02JのMac版が発表されるとともに、「驚きの機能」とは、CDを直接再生する際にも「PureRead」を適応する「RealTime PureRead」であることも明らかになった。

 このほか、ポータブルドライブの新製品も開発が進んでいるという。BDR-XD04とBDR-XU02Jの中間あたりの価格帯で、パイオニアらしい、他社にはできそうにない製品を目指しているとのこと。そして、9.5mmよりも薄い8.5mmドライブ規格へ向けての開発も進んでいるそうだ。近い将来には「ドライブ内蔵なのに激薄」なウルトラブックが登場する日が来るのかもしれない。

 ポータブルドライブの需要増に合わせ、製品ラインアップもますます充実していくが、今後しばらくのあいだその頂点に立つであろうBDR-XU02Jは、軽量なウルトラブックやスリムPCを持ち運ぶ人には、必須と言っていいアイテムだと思う。これだけの徹底したこだわりを持ち、ユーザーの声にも精一杯応えた製品というのも最近ではなかなか珍しい。性能や機能だけでなく、デザインや質感にまでこだわる目の高い読者ならば、ぜひとも注目して欲しい。

(Reported by 鳥居一豊)

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