高性能なドライブで、PCが多用途AVマシンに化ける

 従来から読み込み/書き込み精度の高さや、防塵・静音メカニズムの搭載など、高品質で知られるパイオニアのBDドライブ。「BDR-S07J」は、その最新にして最上位のフラッグシップモデルだ。今回は、実際に「BDR-S07J」を組み込んだPCをお借りして、そのAV性能をじっくりと検証してみることにする。

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 PCはVGAにHDMI出力が搭載されていたので、接続はHDMIでAVアンプを経由し、50V型のプラズマテレビに接続して検証することにした。ひととおり配線を済ませてから、「BDR-S07J」をじっくりと見ていく。使用したBDR-S07Jはつや消しブラックのモデルで、外観は落ち着いた雰囲気。EJECTボタンを押すと、ガッと素早くトレイがせり出してきた。トレイをよくよく見ていると、表面は滑り止めのような加工が施されていたり、奥側には空気の通路と思われる穴開け加工、フロントベゼルの裏側には静音性を増すための制振材が見られるなど、目に見える範囲だけでも一般的なドライブとは細かい部分が随分違う。安定性と静音性を高めるための仕掛けが随所に施されているほか、構造的にも剛性が高められており、しっかりと頑丈なものになっている。

 さすがに高性能なドライブだけに、つくりもしっかりとしていとわかる。オーディオ、ビジュアルの視聴用途で使う今回の場合は、そんなつくりの良さが「いかにも良い画と音が楽しめそうな」期待をさせてくれる。

 

ドライブのフロントベゼルはBDロゴとPioneerロゴのみのシンプルなもの。金属製のEJECTボタンなど、質感は高い

 

トレイのモールドや穴はドライブ内のエアフローを制御するためのもの。フロントベゼル裏には制振用素材も

 

剛性を高めるためのハニカム(蜂の巣)モールドや、静音・制振用の特殊素材シールなど、おなじみの装備も健在

 パイオニアの上位ドライブは、専用のユーティリティで設定を細かくカスタマイズできるのもウリのひとつだ。さっそくBDR-S07J付属の「パイオニアドライブユーティリティ」を使って、詳細な設定を見ていく。ひとつひとつの設定を細かく好みで設定していってもいいが、AV鑑賞用ならば「ビデオ&オーディオモード」に切り替えるのが簡単だ。これを選ぶと、静音モードをはじめとする各種の動作モードが最適な設定に切り替わる。

 面白いのは、トレイの開閉スピードまで、AV機器ライクななめらかな動作になること。これまでは、わりと勢いよく飛び出してきたトレイが、すっと出てすっと戻るといった感じの品のいい動きになる。開閉の速度が明らかに変わるというものではないが、トレイが出てくるときの雰囲気が確かに単品コンポーネントのBDプレーヤーのようなムードになる。こういった演出も、趣味のオーディオ、ビデオ鑑賞には好ましいものだ。

ドライブに付属する「パイオニアドライブユーティリティ」でカスタマイズ。ドライブ内のメモリーに設定を保存することもできる

CD再生で、音の実力をじっくりと確かめる。リッピングの精度もチェック

 まずは、CD再生で音の実力を確かめてみた。CD再生では、ラスマス・フェイバーによるアニメソングのジャズアレンジ第3作から「銀河鉄道999」を聴いてみたが、楽しげで軽快なムードの演奏に乗せて、ニコラス・ガブリエソンが歌う様子がよく伝わってきた。8人の演奏は曲が進むにつれてだんだんと盛り上がっていき、音の数も増えていくが、混濁感はなく、全員が同じ場所で演奏したというスタジオの響き感までしっかりと再現できた。情報量の豊かさやS/Nの良さなどはドライブの読み取り性能の高さを示すものと考えていいだろう。

 では、満を持して「PureRead 3+」の実力を試してみることにしよう。前回も解説したとおり、パイオニアの純正ドライブ独自の機能「PureRead」は、キズや歪みのあるCDをリッピングする際に、エラー訂正に頼らずに可能な限り正確な読み込みを試みることで、より忠実なデータ再現を試みるもの。「PureRead 3+」はその最新進化形だ。

   

極力「補間」を発生させずに「忠実なデータ読み込み」を試みるのがPureReadの基本概念だ

 検証の方法としては、CDをリッピングし、データをNASに保存。ネットワークオーディオプレイヤー(LINN MAJIK DS)経由で、以前に別のドライブでリッピングしておいた同曲と聴き比べることにする。CDリッパーはExactAudioCopy。音源は圧縮せず、WAV形式とした。

パイオニアドライブユーティリティでPureReadの動作モードを変更可能

実際に取り込んだCDの記録面。細かいキズがたくさんあるが、こうしたディスクもPureRead 3+を使えば元のデータに忠実に読み取れる可能性が高くなる

 なお、「PureRead 3+」の読み込みモードは「マスターモード」と「パーフェクトモード」の2種類があり、前者はPureReadでも読み込み切れないエラーが発生した場合は処理をあきらめてデータ補間を行うモードで、後者は読み込みきれないエラーが発生した場合に処理自体を中断するという、その名の通り完璧主義なモードだ。

 まずはパーフェクトモードに設定し、もっとも正確にディスク情報を取り出せるようにしてみたところ、ディスクがほぼ新品に近い状態だったため、問題なく取り込めた。以前のデータとの音質差だが、なんとなく音の厚みが増したような気もするものの、ほとんど差は感じなかった。筆者は基本的に購入したCDは最初にリッピングを済ませることにしているので、以前リッピングした際にはディスクの状態もよく、十分に精度の高いデータを取り出せていたためだろう。

 これでは、「PureRead 3+」の実力が確認できないので、10年以上前に購入したドナルド・フェイゲンの「カマキリアド」のCDを引っ張り出してきた。このディスクは昨年、NASに保存するためリッピングしなおしたのだが、保存状態が悪く、ホコリで表面が曇っているのがわかるほどだった。台所洗剤で洗って曇りは落ちたが、細かいキズも多く、実際にリッピングしてみると、音質的にもやもやとした不鮮明さが感じられる状態になってしまったものだ。

 このディスクは、さすがにパーフェクトモードでは心配だったので、通常のマスターモードでリッピングを行った。これを以前リッピングした同じ曲と聴き比べてみると、気になっていたもやもや感が晴れ、すっきりとクリアな音が蘇った。音の厚みも増すし、ボーカルをはじめとする個々の音が生き生きと再現される。以前のリッピングデータの場合、シンバルの音がギラつくなど、もやもやしつつも音に不自然なエッジ感が伴うなど、人工的でいわゆるデジタル臭い音になってしまっていたと気付く。

 これが、CD固有のエラー訂正では処理しきれなかった補間の多いCDの音だとあらためて実感する。もちろん、その場で古いデータは削除し、BDR-S07Jでリッピングしたデータに入れ替えた。私が所有しているCDには状態が良くないものが他にもあるので、そういったディスクは優れたドライブでリッピングする必要があることを実感した。ベテランのオーディオマニアの方には、昔から愛聴してきたディスクがたくさんあると思うが、パイオニアによれば、一見きれいに見えても、古いCDは目に見えないキズや汚れ、歪みなどでかなり読み取りにくくなっているという。そんなディスクを限りなく新品に近い状態に蘇らせたいと思うなら、「BDR-S07J」は力強い味方になってくれるだろう。

鮮明なディテールに驚かされる! ~BDプレーヤーとして活用

せっかくBDドライブを搭載したのだから、PCをBlu-ray再生機として活用してみたいところ

 次に、同梱ソフトとして付属する「PowerDVD」を使ってBlu-rayでの映像鑑賞をしてみた。ちなみにPCのVGAはATI RADEON HD 6750チップ搭載のものを最新ドライバーにて使用している。

 まずはテストディスクなどで解像感や暗部の再現を見ていくと、解像感の高さはかなりのもの。暗部の再現性もかなりしっかりしており、しかもS/Nが良くザラザラとしたノイズの発生が少ない。正直なところ、画質に関してはエントリークラスの安価なBDプレーヤーは歯牙にも掛けない。10万円前後のミドルクラスのモデルに匹敵する実力だ。

 BDソフトでは、ここ最近のお気に入りの「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」を見てみたが、精細感の高い映像が存分に満喫できた。オプティマス・プライムの赤や青、バンブルビーの黄色といった鮮やかな色彩を濃密に、さらに各所が汚れやキズの細かいディテールも精密に再現する。画質に関してはPCのスペックや使用プレイヤーソフト等によっても変化するだろうが、Blu-rayの高画質を再現する上で、一番はじめの「映像をディスクから読み込む」プロセスの重要性は言うまでもない。今回はかなり満足度の高い映像を見ることができ、正直驚いた。

 音質については、情報量も十分で爆発音をはじめとするさまざまな効果音をクリアに描き分けるし、サラウンドの移動感や自分を包み混むような空間再現も十分に優秀。ただし、ロボットたちの身体を震わせるような重低音たっぷりの足音はやや軽くなる。筆者が所有するソニーのBDレコーダー「BDZ-AX2700T」に比べると、音の厚みや重量感などわずかではあるが、映画の迫力をダイレクトに伝えるような勢いなどが不足するように感じる。もっとも、BDZ-AX2700TはHDMIケーブル2本を使用して映像と音声を独立して出力するなど、音質に効果の高い数々の技術を備えているわけで、汎用PCにここまでを期待するのはさすがに厳しいだろう。

 夜のシーンがとても多い「SUPER8」では、しっとりと沈む黒い夜空とうっすらと浮かぶ雲がきちんと再現され、広々とした空間が描かれる。映画撮影を行っている少年たちは肌の質感もしっかりと出ており、表情がより豊かに感じられる。比較的物静かなシーンでの細かな音や、残響感などはよく再現できているので、ポテンシャルは十分に高いと思われる。

 ちょっと気になったのは、BDソフトの再生中にディスクドライブ前面のアクセスランプの点滅が少々目障りだったこと。PCの置き場所に気を使えば問題ないことではあるが、「ビデオ&オーディオモード」ではアクセスランプの点滅をオフにできるとありがたいと思った。そうなれば、コンパクトなサイズのPCと組み合わせてリビングに設置するような使い方もしやすくなるだろう。

 AV機器的な使い勝手としては、ドライブの動作音がかなり静かだったことも印象的。BDソフト再生中のディスクの回転音はドライブのそばまで耳を近づけてやっと聞こえるレベルだし、わりと耳に付く音を発するヘッドのシーク音もかなり抑え込まれており、パイオニア独自の「アドバンスド静音ファームウェア」が効いていると考えてよいだろう。PC本体のファンノイズにまで気を配れば、PCとはいえどもかなり静音性の高い再生機器として使えるだろう。

 このほか、個人的に楽しみだったのは、ドライブに付属している「ビジュアルマテリアル」。これは、火山の空撮から、海や山などの自然、美しい花や電波天文台の広大な景色などを収めた映像集で、面白いのは標準的な画質のもの(固定ビットレート 20Mbps ファイル容量約661MB)と、高画質のもの(可変ビットレート 最大70Mbps ファイル容量2.25GB)の2種類があること。圧縮形式はどちらもH.264で解像度はフルHDだ。高画質のものは、BDの規格以上の情報量を詰め込んだもので、ファイル容量も約4倍となる。

 これらを見てみると、標準画質の方でも十分に美しく、不要なノイズなどのない美しい映像が楽しめた。これが高画質版となると、ディテール感がさらに増す。潰れがちだった山林のシーンの樹木の葉も鮮明になるし、浜辺の亀はその姿より生々しく映し出される。基本的には同じソースでもあるし、画質的な差はわずかではあるのだが、印象としてはより映像の深みが増したと感じる。特に終盤の電波天文台の夕景は感動的と言える美しさだ。このソースは、再生環境の画質チェックにも有効だし、一見の価値のあるものだ。

 ただ、高画質版はさすがにPCへの負荷が大きく、今回PCで再生しようとしてみたところ、コマ落ちが発生したギクシャクとした映像になることもあった。このあたりは、PC側のグレードアップも必要となるが、PCで高画質・高音質を満喫するなら、CPUなどのスペックも気にした方が良さそうだ。

録画機能付きテレビの番組を、ネットワーク経由でBDに保存

 最後に、付属ソフトである「DiXIM BD BURNER 2011 for Pioneer」を試してみた。これは、ネットワーク経由のDTCP-IPダビングを可能にするBD記録ソフトで、手っ取り早く言えば、録画対応の薄型テレビなどで内蔵HDDや外付けのUSB HDDなどに録画したテレビ番組を、BDR-S07J経由でBDに保存できるというもの。

 東芝や日立の薄型テレビなどネットワーク経由のダビングに対応しているモデルでないと使えないが、BDドライブ非搭載の薄型テレビでHDDに保存した番組をBDに保存するには、別途BDレコーダーを使う必要があり、コスト的な負担が多かった。その点「BDR-S07J」ならば、「DiXIM BD BURNER 2011 for Pioneer」が付属するので、BDドライブを追加するだけで、消すに消せなかった録画番組をBDに保存できるようになる。

 BD BURNERをインストールしたPCがサーバーとして動作するので、PCと録画元機器が同一ネットワークにありさえすれば下ごしらえはOK。「DiXIM BD BURNER 2011 for Pioneer」を起動して記録用のBDをセットすれば準備完了だ。録画テレビ側で、保存したい番組を選んでダビングを行うと、録画先としてBD BURNERが現れるので、それを選んでダビングを開始するだけだ。筆者は所有する東芝の26ZP2で試してみたが、きちんと録画番組をBDにダビングすることができた。

DTCP-IPで対応する録画機器から番組を転送、BDに記録することができる

DiXIM BD BURNERをインストールし、ドライブに書き込み可能なBDを入れれば準備は完了

 

続いては、番組を録画してある機器からの操作。ネットワークダビングのダビング先としてDiXIM BD BURNERが表示されるので、それを選択

問題無ければDiXIM BD BURNER側でBDへの書き込みが開始される

 以上、「BDR-S07J」を搭載したPCを使ってきたが、BDやDVD、CDなどの再生はもちろんのこと、ネットワーク経由のBD保存など、「BDR-S07J」のAV用途はかなり広い。さらに、記録速度/記録品質ともに現在最高クラスのドライブなので、安心感はひとしおだ。

   

ディスクの共振を防止し、ディスク外周に至るまで高い精度で記録できる
「ディスク共振スタビライザー」を搭載。容量の巨大な動画データを記録するのにも安心だ

 しかも同梱のソフトには、このほかにもビデオ編集ソフトやBD/DVDオーサリングソフト、レーベル作成ソフトもある。テレビ録画機能を追加すればBDレコーダー以上の機能性と言えるし、すでに十分なスペックのPCを持っているならば、ドライブを追加するだけでいいのでコスト的にもメリットは大きい。

 ビデオソフトの鑑賞やビデオ編集、BD作成など多彩に使えて、しかも優れた読み取り/書き込み性能、静粛性や防塵性も優秀と、その実力はかなりのものだ。筆者自身、ちょうど1080/60p動画のビデオ編集をこなせるハイスペックのPCの必要性を感じていたところなので、ここに「BDR-S07J」を追加することを真剣に考えている。「BDR-S07J」は、PCをマルチAVマシンとして幅広く活用するならばマストなアイテムと言えるBDドライブだ。

(Reported by 鳥居一豊)

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