現在のオーディオシーンを見ると、「パソコン+音楽データ」中心になっているのは明らかだろう。CDの音源はパソコンでリッピングして内蔵HDDやNASなどに保存し、データはPC上で管理するのが一般的となった。カジュアルな楽しみ方ならパソコンで直接再生すればよく、ピュア・オーディオで楽しむ場合もネットワークオーディオプレーヤー経由でHi-Fiコンポーネント機器と組み合わせて再生する人が増えてきている。また、パソコンのUSB出力からオーディオ信号をデジタルで取り出し、USB DAC経由でオーディオ機器と接続する方法など、そのアプローチも多種多様化している。

ビジュアルシーンでも、映像視聴向けの高性能を謳う液晶ディスプレイが増えたこともあり、DVD/BDソフトをパソコンの高精細な画面で直接再生することが増えている。HDMI出力を備えるパソコンならば、プレーヤーとしてテレビと接続も可能。オーディオ/ビジュアルの両面で、パソコンは優秀なマルチメディアプレーヤーとなっている。

その核とも言えるのが、PC用光学ドライブだ。オーディオ/ビジュアルにこだわるユーザーは以前から、優れた信号読み取りと記録精度を備えたドライブはを求め続けている。その中で、長年変わらず熱い支持を得ているのがパイオニア製のドライブだ。

そのパイオニア製Blu-ray Discドライブの最上位モデルとなるのが、今回発表された内蔵型の「BDR-S07J」。ここでは、これまでの技術に加え、さらに数々の進化が加わったこのドライブの進化にじっくりと迫っていこう。

パイオニアの最新フラッグシップドライブ、BD/DVD/CDライター「BDR-S07J」。上の写真はピアノブラック「BDR-S07J-BK」

BDXL6倍速記録など
随所でパワーアップ

「BDR-S07J」は、パイオニアのフラッグシップモデルに代々受け継がれる優れた防塵・静音メカニズムといった特長を継承しながら、最新機として数々の進化が加わっている。

第一の進化は、大容量BD規格「BDXL」の高速記録。BD-Rの12倍速記録は従来のままだが、3層(100GB)、4層(128GB)のBDXLディスクでも6倍速の記録が可能になった。大容量ディスクとなると記録時間はかなり長くなるので、高速記録への対応は使い勝手の点でもありがたい。「BDXL」に対応する事で、他のディスクでもより安定した記録再生が実現するとの事。 「BDXL」に万全の対応をしていくことで全体の性能を向上させようという姿勢だ。

続いて、ネットワーク経由でのデジタル放送ダビングに標準対応した点。これはバンドルされたデジオン社製の「DiXiM BD Burner for Pioneer」によって実現した機能で、BDドライブを持たない録画機能付きのテレビ、NASやHDDレコーダーに保存したテレビ番組などを、ネットワーク経由でダビングしてBDに保存できる。従来ならば、録画機能付きのテレビなどで録画した番組をBDに保存するには、別途ネットワークダビングに対応したBDレコーダーが必要となり、BDに保存する用途のためだけに手に入れるには価格的にも敷居が高かった。「BDR-S07J」なら、パソコンのドライブを交換するだけでテレビ番組のBD保存ができるようになる。録画機能付きのテレビなどで番組録画をしていた人にとっては、待望の機能と言えるだろう。

細かな使い勝手を高めるための追加機能も多数新搭載している。特徴的なのは、「ディスクステイタス」機能と「ドライブステイタス」機能。「ディスクステイタス」は、トレイをいちいち開閉しなくても、セットしたディスクの種類などを表示できる機能で、プリンタブルディスクなど一見してどの種類のディスク分かりにくいメディアを使うことが多い人は重宝するだろう。「ドライブステイタス」機能は、ドライブ自身の状況などを表示する機能。小型ケースで高性能パソコンを組んだ場合など、思いがけずドライブが高温状態におかれ高速記録が禁止されたり、正確な記録が行えないおそれがあるが、そうした場合にはこの機能をチェックする事で、アラートを出してくれる。ドライブの状態を手軽に確認できるので、予期せぬトラブルも防げるだろう。こうした機能は、あまり専門的な知識のない人はもちろん、パソコンに慣れた人にとってもありがたい機能だ。パイオニアによれば、BDドライブを使うユーザーも知識のある先進的なユーザーに加え、一般的なユーザーにも広がりはじめており、より幅広いユーザーに快適に使えるためにも、こうした機能を盛り込んだとしている。パソコンを手軽なマルチメディアプレーヤーとして使う場合にもこうした機能は重宝するだろう。

そして、マルチメディアプレーヤーとして使うには最適な機能が「ビデオ&オーディオモード」。BD/DVDなどの映像ソフトやCD再生時に静音設定などを最適化し、静音化をはかることができる。なんと、トレイの開閉スピードまで切り替わり、スパッと素早く開閉するトレイが、ややゆっくりと落ち着いた開閉動作になったりもする。パソコン用のドライブで、こんなところにまでこだわるのもパイオニアらしいユニークさ。ほかにも、省電力運転を実現する「ピークパワーリデューサー」など、とにかく細かい部分でもブラッシュアップが施されている印象だ。

クリアホワイトカラー「BDR-S07J-W」

マットな黒色のラバーブラック「BDR-S07J-KR」

大容量BDXLディスクへの6倍速記録に対応

録画機器からのDTCP-IP経由のダビングに対応したソフトを無償バンドル

信号読み取り能力をさらに高めた
「Pure Read 3+」を搭載

パイオニア製ドライブのお家芸、「Pure Read」機能も「Pure Read 3+」へとバージョンアップしている。「Pure Read」は、盤面に細かなキズや汚れがあるディスクを読み取る際に威力を発揮する技術で、キズの状況やディスクの状態(偏心やソリなど)によって自動で最適な再読込を行うことで、CDのエラー補完に頼らない正確な読み込み・再生を支援するもの。CDは通常、キズなどによって正常に読み込みができない場合、エラー訂正を行うが、それでも訂正ができないと、前後のデータから予測するデータ補完が発生し音のデータが変化してしまう場合も考えられる。「Pure Read」によってデータ補完の禁止や抑制ができるため、手持ちのCDをより忠実にデータとして保存したいという人の高い支持を得ている。

進化した「Pure Read 3+」では、さらに、読み込み時のディスク回転速度をより細かく制御するアルゴリズムが追加された。わかりやすく例えるなら、でこぼこの道を車で走るとき、でこぼこをなぞるようにゆっくりと走るか、早く走ってへこんだ部分を飛び越えていくのか、どちらが乗る人間について快適かを自動で判断して制御するということだ。これを行うことで、従来は信号読み取りができなかった部分まで、読み取りが可能になっているという。

これにより、今までは完璧な状態でのリッピングができているのか判断できなかった古いCDなども、よりCDのもとの音に忠実にデータ化できることが期待される。発売は古いものの愛着のある名盤を数多く持っている人にはぜひ試してみて欲しい機能だ。

なお、末尾の「+」は、Pure Read関連のユーザー設定をドライブ内蔵のメモリーに記憶しておける機能を示しており、この点については「Pure Read 2+」と同様だ。

パイオニア独自開発の光学系により正確な読み取りを実現

フラッグシップならではの作り込み

「BDRーS07J」は、同社下位モデルやバルクモデルと細かい部分で差異があるが、特に大きい違いは、定評のある「アドバンス静音・防塵メカニズム」や、「アドバンストハニカム放熱静音ケース」を採用している点だ。

「アドバンス静音・防塵メカニズム」は、埃の侵入を防ぐ構造と、動作音が漏れにくい静音設計を両立するもので、独創的かつ非常に手間のかかった構造を採用している。従来モデルでも高く評価されいているものだが、オーディオ鑑賞やビデオ視聴でもありがたい機能だ。

ドライブメカの冷却は、ディスクの回転で発生する風をうまく利用して内部で循環させる方式を採用しているが、このとき、回転するディスク自体に風が当たるようにし、上方からディスクを抑えつける働きもしている。これによってディスク回転がより安定し、信号読み取り性能も高めている。また、風切り音を抑制することにより、静音化にも貢献している。

こうしたアイデアが次々と実現されているのは、BDドライブの企画や開発にパイオニアのLD(レーザーディスク)プレーヤーの開発にも関わった面々が多いことも理由だろう。アクリル製で直径30cmのレーザーディスクは、回転音もモーターの駆動音も凄まじく、当時も静音設計には相当の苦労があったという。超高級機であるHLD-X0というモデルでも、ディスク回転で発生する風を内部のエアフローに利用し、静音性と冷却を高い次元で両立していた。こうして積み重ねたノウハウが「BDR-S07J」にも受け継がれていることを知ると、BDソフトや音楽CDの再生にも期待が高まってくる。

また、「BDR-S07J」は国内の青森県、十和田市にある十和田パイオニアでの生産となる。常に最も高い品質を目指して国内で生産される BDドライブへの品質面での信頼感は大きい。

こうして「BDR-S07J」を見ていくと、パソコン用の光学ドライブとして高い性能を持っているだけでなく、AVユースで大きな魅力がありそうだ。薄型テレビなどで録画した番組のBD保存も便利だし、静音性や防塵性が優れていれば、テレビなどと一緒にリビングルームに置いて使うこともできそうだ。

後編では、実際に筆者の家で「BDR-S07J」を使ってみることにする。新機能やドライブの実力についてじっくりと見ていきたい。

(Reported by 鳥居一豊)

各所に施された防振・防塵対策

ボディのハニカム構造

ディスクの回転による風を効果的に利用

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