PCの光学ドライブがBDXLに対応すると…… Impress Watchの提案で商品化が実現

 パイオニアがBDXL対応の内蔵型ドライブユニットを発売する。ブルーレイの新規格であるBDXL規格すべてに対応し、それを活かすアプリケーションもバンドルされたパッケージが、もうすぐ店頭に並ぶ。PCのユーザーとして、自作パーツ選び、現行機拡張のための魅力的な製品になりそうだ。

パイオニアの技術が多層BDの難題をクリア

 BDXLは、ブルーレイの新規格で、2010年6月に最終仕様が決定されている。記録容量は最大128GBとなり、今回の「BDR-206MBK」は、BDXL-Rの3層100GB・4層128GB、規格策定済みのBDXL-REの3層100GBにも対応予定だという。

BDXL対応「BDR-206MBK」

BDXL対応「BDR-206MBK」

 BDXLは、最終仕様決定後、すぐに各社の民生用ブルーレイディスクレコーダーが対応、シャープを皮切りに、パナソニックやソニーから対応製品が発売されている。今後登場する民生用ブルーレイディスクレコーダー製品は、すべてこの規格に対応するだろう。これだけの容量があれば、連続テレビドラマのワンクール分を余裕で一枚のメディアに記録しておけるのは魅力だ。ブルーレイディスクレコーダーの現在のトレンドは、BDからHDDへのムーブ書き戻しなので、ブルーレイディスクレコーダーのヘビーユーザーにとっては待ち望まれていた規格であるともいえる。

 ところが、この新規格、民生用ブルーレイディスクレコーダーでは順調に普及し始めているのに、いざ、PCのユーザーが使ってみたいと思っても、ドライブの入手が難しかった。バルクでもいいからと秋葉原などの電気街をさまよっても、まず、見つけることができなかったはずだ。

 パイオニアとしては、すでに民生用ブルーレイディスクレコーダー用のドライブを製造し、OEM供給していたので、技術的な問題の多くはクリアできていた。BDのメディアからデータを読み出すためには、光学メカで発生する信号の汚れを、いかに除去するかもポイントで、同社は、そのためにリミットイコライザーをはじめ各種技術を開発して実装した。

 また、ディスク共振スタビライザーによりディスクを風の流れで押さえつけてディスクの共振を抑えることで高精度な記録再生を安定して実現させている。光学メディアもBDともなると、安定した品質の高い読み書きには、こうした技術が不可欠だという。これらの技術は、いわばパイオニアのお家芸ともいえるもので、パイオニアが先行している。その為他社製ドライブがBDXL対応など、キャッチアップするのは、まだ先になりそうだ。



「受光素子のパターン」

「他層迷光除去イメージ図」


「BDピックアップ光路図」

Impress Watchのプッシュが製品化を後押し

 実は、このドライブの製品化にあたり、Impress Watchが提案したという経緯もある。PCのマニア層に向けて、PC内蔵用ドライブを製品化するように、同社に対してリクエストし、なかば強引に製品企画を実現させたのだ。パイオニアとしては、当面、BDXLドライブをリテール市場に投入する予定はなかったそうだが、Impress Watchの提案を受けて、ついに、製品化に踏み切った。だから、今回の製品化は、Impress Watchの熱意が大いに貢献し、それがなければ製品化実現は、もっと、先になっていたはずなのだ。

 初物に手を出すマニア層は、“人柱”とも呼ばれ、初物製品にありがちな不安定さや、使いこなしのノウハウに惜しみない努力を捧げる。パイオニアでは、こうしたマニア層の期待に応えるために、問題があればファームウェアや添付ソフトのバージョンアップで、最先端の技術を提供していく予定だという。ちょうど、グーグルが、アンドロイド携帯のリファレンスとして、Nexus Oneを用意し、他製品に先行して新たな技術を搭載していくのに似ている。だから、初物だからといって、導入に二の足を踏むのは杞憂だ。


100GB超えの先にあるもの

 個人的には光学メディアの大容量化はとてもうれしい。現時点でのBDXLメディアの価格帯はまだまだ高価だし、2TBのHDDが、パーツとして1万円を切る価格で入手できる現在、たかだか100GB程度のメディアが、どんな役にたつのかという議論もあるかもしれない。だが、光学メディアには、磁気メディアでは得られない安心感がある。衝撃が加わったときのクラッシュの可能性が格段に低いからだ。

 ちなみに、手元の環境では、iTunesのライブラリが約120GBで、その楽曲をすべて格納できる音楽プレーヤーは、手持ちのiPodのうち、3年前に購入した6thGのiPod Classicの160GB版だけだ。このプレーヤー、ストレージはHDDだし、iTunesのライブラリには楽曲以外にも、iPadやiPod touchで使うアプリのデータも含まれるので、これを丸ごとバックアップできる安全なメディアが個人的には欲しかった。だからこそ、BDXL4層の登場に期待が高まる。

 ポータブルのHDDは、やはり、衝撃等による破損が怖い。SSDではバックアップ用途にはちょっと高価すぎるし、オーバースペックだ。でも、光学メディアなら容積も少なければ価格的にも許せる範囲だ。今後、BDXLドライブがノートパソコン等に搭載されるようになったり、USBバスパワーで駆動できる外付けのポータブルドライブが出てくれば、もっと活用範囲は広がるだろう。
 個人としてPCを使い始めて四半世紀が過ぎたが、今、手元にあるかけがえのないデータは約700GBだ。書きためた原稿、自炊した書籍や資料のデータ、CDからリッピングした音楽、撮影したデジタル写真、やりとりしたメールなどをあわせた合計で、録画済みのテレビ番組データなどは含まれない。番組コンテンツは、たぶん、近い将来すべてオンデマンドで視聴できるようになることを信じてバックアップからはずしている。

 かけがえのないデータは、ぼくの場合でBDXLメディアが6枚あればバックアップできることになる。パイオニアは、2008年にBD互換の400GB光ディスク技術を開発、CEATECにて発表、動作サンプルの展示を行っていた。BDXLが支持されれば、より大容量のメディアの登場を後押しすることになる。こうしたメディアをPCで気軽に使えるようになるまでは、まだ、時間はかかるだろうけれど、日々蓄積されていくデータの容量の増加に追いつく程度のタイミングで新たなメディアが手に入るようになるに違いない。そのためのステップとして、今回のPC用BDXLドライブの登場は貴重だ。

 続編では製品レビューをお届けする予定だ。お楽しみに。

(山田 祥平)
■関連情報

パイオニア株式会社
http://pioneer.jp/
パイオニア Blu-ray Drive Navi
http://pioneer.jp/bdd/products/index.html

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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20101025_402470.html