写真はやらせなしの、ボクのプライベートのハイビジョンソフトのコレクション。
DVDは1000タイトル以上(もう、数えていない)を所持しているのに比べれば総数はまだまだだが、Blu-ray Discが圧倒的に多くなってきている。筆者の地元のビックカメラでは圧倒的にBlu-ray Discタイトル数の方が多いし、「300」のBlu-ray Disc版発売時は売り切れとなっていたほどBlu-ray Disc人気が高い。かたやHD DVDコーナーは趣味DVDコーナーの一角を整理して置いてあるような状態。「Shrek 3」のHD DVDは結局、入荷しなかった。
「どっちのフォーマットがどう有利か」みたいな話はここではしないが、現実問題としてセル映画ソフトはBlu-ray Discの方が入手性が良くなりつつあると実感している(筆者居住地区での話)。
Blu-ray Discソフトの再生機として知名度が高いのはソニー・プレイステーション3だが、まだまだゲームソフトが少なく、4万円近い投資をして購入することにまだ踏み切れないという人は少なくないだろう。かといって専用のBlu-ray Disc機器は一層高価だ。
最もリーズナブルに、そして気軽にBlu-ray Discソフトの再生が楽しめる方法はないものか。
実は、そんな製品がパイオニアから発売されたのだ。
それはなんとBlu-ray Discソフトの再生に対応したDVD/CDライティングドライブの「BDC-S02J」。
BDC-S02Jの読み出しに対応するBlu-ray DiscメディアはBD-ROM(SL/DL), BD-RE(SL/DL), BD-R(SL/DL)という現行Blu-ray Discメディアの全て(SLは1層、DLは2層の意)。つまり、映画Blu-ray Discソフトの読み出しに対応するのはもちろん、Blu-ray Discレコーダで記録したメディアも読み込める。
嬉しいのはDVDメディアやCDメディアの書き込みにも対応しているところ。
読み書き対応DVDメディアはDVD±R/RW(SL,DL)という全てのDVDメディア。もちろんDVD-RAMの読み書きにも対応。書き込み速度はDVD±Rが12倍速、DVD±R DLが4倍速、DVD±RWが6倍速、DVD-RAMが5倍速というDVDドライブとしてはトップレベルの性能を達成している。
CDドライブとしても優秀で、書き込み速度はCD-R/RWで24倍速に対応。
まとめるとBDC-S02Jは現行のDVD/CDドライブのトップモデルにBlu-ray Disc再生機能を付加したドライブ…ということができると思う。
そこで、ここからは「Blu-ray Disc/DVD再生ドライブとして」「DVD書き込みドライブとして」の、突出したBDC-S02Jのポテンシャルを紹介していこう。
読み出しに用いるレーザーを、DVDの赤レーザーの650nmよりも短い405nmとした青紫レーザーを用いているのは広く知られているが、これは記録密度が約5倍となったBlu-ray Discのディスク面に対して約1/5のビームスポットで照射するため。ただ、青紫レーザーにしてビームを絞ってハイでき上がりというわけではなく、様々な機械的、光学的、物理的な障害がその実現と実装にはのしかかってきている。
BDC-S02Jでは、安定したBlu-ray Disc読み出しを実現するために、コストが重視されるPC向け光ドライブとはいえど手抜き一切無しの高品位な設計を採用している。特に、様々な条件で記録、製造されたBlu-ray Discメディアに対して確実に読み込めるように、パイオニア独自開発の可動式コリメータレンズと液晶素子を実装しているのがホットトピックだといえる。
この可動式コリメータレンズと液晶素子のコンビネーションにより、ディスクの厚み誤差、反り、その他の要因で発生する光学的障害をリアルタイムに補正してそのディスクの読み出しに際して理想的なビームスポットを生成する仕組みが実現されているのだ。
この恩恵はBlu-ray Disc再生時はもちろん、DVD再生時にも効果を発揮する。もしかすると読めなくなった手持ちの"あの"メディアもBDC-S02Jならば読み出せてしまうかもしれない?
液晶素子が入射レーザー光の偏向を操作する。この仕組みはBlu-ray DiscだけでなくDVD再生時にも威力を発揮! |
これは読み込み時のエラーをなんとかしようと一生懸命ドライブが頑張っているからなのだが、映像再生の場合はそのエラーフレームを破棄してしまい、再生を続けてくれた方がユーザーメリットは大きい。一般的なPC向け光ドライブではこうした融通がきかない。
BDC-S02Jでは、読み出しているデータが「映像再生」と判断できている場合のリードエラーは、数度の読み出しリトライのあとは読み出しデータを"0"としてホストシステム側に返してしまう「PowerRead」機能と呼ばれる強制リード機能を搭載しているのだ。エラーを出したフレームは一瞬乱れるが再生はハングアップすることがなく継続される。そして、もちろん、このPowerRead機能をBlu-ray Discソフト再生時にも適用できるようになっている。
BDC-S02Jはただの「あきらめのいいドライブ」なわけではない。
可能な限り、正確に読み出しが行えるようにするための、特別な機構も実装されている。それがUltra DRA(Dynamic Resonance Absorber)機構だ。
Ultra DRAは、メディアが高速回転したときの機械振動を、制震機構内部に仕掛けたゴムとカウンターウェイトによって低減させるもので、高層ビルの耐震構造の仕組みにもよく似た機構だ。これによってあらゆるタイプのメディアの高速回転時の読み出し精度を高い次元で実現させる。また、このUltra DRAは、副次的効果として、ドライブを縦置きにして活用したときの性能維持にも貢献しているとのこと。
さらに、民生向け光ドライブとしては珍しく、ドライブの温度を効果的に冷却するエアーフローデザインを行っているのも特徴だ。冷却ファンで外気を取り入れるのではなく、密閉されたドライブ内の空気を循環させるため埃や塵による性能低下も小さい。
実は、映像ソフトの再生は連続で数時間のノンストップなドライブ回転と読み出しが行われるため熱問題が苦しいという事情がある。BDC-S02JはBlu-ray Disc再生対応ということで、Blu-ray Disc映画ソフトの再生が行われることを想定して、この耐熱設計に気を配ったのだとという。
もちろん、この耐熱設計はDVD/CDメディアの連続焼き込み動作時にも性能を発揮することだろう。
スマートレーザードライバーの利点
それが「スマート・レーザー・ドライバー」だ。
DVDの書き込みは、実際のデータから、実際にディスク面上に記録する際のレーザー駆動信号に変換される。この変換工程を担当するのがストラテジ回路になるが、一般的な光ドライブではシステム基板の汎用性向上やコスト削減などの要因により、これをメイン基板上に配する設計が主流となっている。高倍速書き込み時には、当然、レーザー駆動信号の周波数が上がってしまうので、耐ノイズ性を考えればこのストラテジ回路は実際にレーザー照射を司るレーザードライバーに近いピックアップヘッド部にあった方がよい。BDC-S02Jではコストよりも安定記録性能と信頼性を重視してこのデザインを採用したわけただ。
さらにいえば、前述の「可動式コリメータレンズと液晶素子」、「Ultra DRA」といった機構も、実は再生だけでなく高品位なDVD書き込みにも効いている。これらは多様なメディアに、確実かつ高品位に書き込むための性能として反映されているである。
安価なドライブだと、安価なメディアに高倍速で書き込むと書き込んだドライブでしか読み込めないメディアが焼き上がってしまうことがある。BDC-S02Jではこうした工夫により、そうした事態が起きにくい。
そう。BDC-S02Jは「Blu-ray Disc再生」という看板性能だけでなく、DVD書き込みドライブとしても、かなり高品位な部類に属するのだ。
メインのターゲットユーザーはやはり、PCで映像視聴を楽しんでいる人…ということになると思う。
特に現在のホームシアターPCをアップグレードしようとしている人や、これからホームシアターPCを組み立てようとしている人には強くお勧めしたい。
今回、丁度、筆者もホームシアターPCとしてBlu-ray Disc再生への対応を考えていたので、ホームシアターPCを一台、組んでみることにした。
PCケースは適当なアルミケースをピックアップ。あまり高価なものではないが、見てくれはそれほど悪くもなく良い意味で無個性な面持ち。大きさも小さすぎず大きすぎずのATXタワー。
CPUは価格がこなれていたAthlon X2 4600+(2.4GHz,L2 512KBx2,TDP65W)の在庫処分品を購入。ビデオカード(GPU)は、最新の映像再生アクセラレーション技術「AVIVO HD」に対応したRadeon HD3870/512MBを選択した。ホームシアターPCということで、マザーボードは標準的なスペックを持つギガバイト「GA-M55S-S3」(nForce550チップセット)を選択。メモリはDDR2-800を2GB(1GB×2)を搭載。最高性能というわけではないが、これならば最新のPCゲームもそこそこ動かせそうな感じ。ちなみにGA-M55S-S3に光デジタルサウンド出力端子が搭載されていたために、サウンドカードは搭載していない。
なお、BDC-S02Jには付属ソフトとして
が付属している。Blu-ray Disc視聴に用いるのはドライブに付属する「PowerDVD v7」だ。前述した強制読み込み機能「PowerRead」機能を利用するには対応ソフトが必要になるのだが、「PowerDVD v7」はこれに対応している。そしてBlu-ray Discに採用されている最新映像コーデックであるMPEG4-AVC(H.264)やVC-1は非常に処理負荷が高いことで知られるが、今回のPCで選択したRadeon HD3870には、その最新コーデックに対応したアクセラレーション技術「AVIVO HD」が搭載されており、PowerDVD v7はこの機能をもちゃんと活用してくれる。
本当にそうなのか、負荷について、実際に再生して調べてみた。
H.264, VC-1のデコードアクセラレーションが効かない、某メーカー製の1年前のハイエンドビデオカードでは図1のようにCPU負荷が常に100%付近に停滞してしまうことを確認(再生ソフトはBlu-ray Disc版「ダイ・ハード4.0」)。CPUがAthlon X2 4600+だけの再生では時々、コマ落ちが発生してしまうのであった。
これをRadeon HD3870に戻してみると図2のように、ちゃんとCPU負荷に余裕が生まれだし、コマ落ちもなくなって、再生は非常にスムーズに。
Blu-ray Disc再生を視野に入れたホームシアターPCを組むならばビデオカードの選択は非常に重要なポイントといえそうだ。
ちなみに、ディスプレイにはフルHD解像度に対応した1920×1200ドットパネルを採用したEIZOの27V型テレビモニタ「DT27ZD1」を使用。
Blu-ray Discソフトはメニュー操作が凝っているのだが、ソフトによっては懲りすぎていて普通のリモコンでは操作がピンとこないメニューの開き方をすることがある。PCベースのBlu-ray Disc再生システムだとマウスが使えるので楽ちんだ。
サウンドはちゃんとマザーボードのオンボードの同軸デジタル出力端子からサラウンドサウンドがS/PDIF出力できていた。
Windows 2000時代くらいまでは、サラウンドサウンドに対応したサウンドカードがホームシアターPCには必須…とまで言われていたものだが、今ではマザーボードのオンボードのサウンドチップでS/PDIF出力ができてしまうのだから楽ちん。
そうそう。Blu-ray Discソフトにもリージョンコードがあるにはあるのだが、DVDの時とは違い、北米と日本は同一リージョンになっているので、アメリカで買ってきたBlu-ray Discソフトは合法的に日本のBlu-ray Disc機器で再生できることになっている。実際に、今回のBDC-S02J + PowerDVD v7システムで再生してみたところ…問題なし! 何事もなく再生できてしまった。北米地域に旅行したときには、レアもののBlu-ray Discソフトが格好なお土産になるはずだ。
つい、Blu-ray Discソフトの再生ばかりをやってしまったが、DVDの書き込みも文句なし。最大倍速で書き込んだDVD-Rメディアが、ちゃんと他社製DVD-ROMドライブでも読めていたので、書き込み品質は本当に高いみたいだ。ちなみに、同梱ソフトではないが、定番ライティングソフトのB's Recorderもちゃんと使えていた。
今回はホームシアターPCを構成してしまったが、手持ちのパソコンをBlu-ray Disc再生マシンにアップグレードするにはBDC-S02Jは必須アイテムだ。既にゲームPCを構築しているならば、CPUやビデオカードは比較的ハイスペックなはず。BDC-S02Jを購入するだけでBlu-ray Discソフト再生マシンに変身させることができるはずだ。
それと、最近、PC向けディスプレイ製品の売れ筋といえば、1920×1200ドットのWUXGAディスプレイ。その高解像度のポテンシャルを手軽に満喫するには絶対にBlu-ray Discソフトが適している。Webページを左右に並べて見るだけでもいいが、せっかくなので、200万画素のフレームが動画で見られる感動を味わって欲しい。 (トライゼット 西川善司)
□パイオニア、実売4万円のBD-ROMドライブ−BDビデオ再生とDVD/CD記録に対応(AV Watch) http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070724/pioneer.htm