しかし今Blu-rayのコンテンツを楽しもうと思ったら、Blu-rayプレーヤーが数多く発売されている米国とは違って、日本においては現実的な選択肢がPS3しかないというのもまた、一つの現状である。もちろんBDレコーダはすでに発売されているものの、単にBlu-rayで映画が見たいという人にとっては、出費が大きすぎる。
そんな人にお勧めなのが、PCを使ってBlu-rayを見るという方法だ。考えてみればDVD普及の時も、まずPCユーザーが市場を牽引したわけで、まさに歴史は繰り返すということなのかもしれない。
そのときに必要なのが、Blu-ray再生可能なドライブだ。どうせなら記録もできるものを、と考える方も多いだろうが、記録型ドライブはメディアも含め、まだコスト的に合わない。PioneerもいくつかBD記録ドライブを発売しているが、これは業務ユースの製品であることから、コンシューマユーザーが十分買える価格になるまで、もう少し時間がかかるだろう。
そんな中登場した「BDC-S02J」は、Blu-rayの再生をターゲットに絞ったドライブである。もちろんDVD系からCD系のライティングは、二層メディアまで含め全タイプのメディアに対応する。完成された赤色系のライターに、BD-ROMをプラスしたモデルと言えるだろう。
接続インターフェースは、すでに新基準となったSerial ATAを採用。Pioneerのサイトでは、接続確認ができたマザーボードやインターフェースカードのリストを掲載しているので、自作派には安心できるだろう。もちろんここに乗っていないものでも、Pioneerサイドで確認していないというだけで、接続できないわけではない。
一般的にBDの記録時には、再生時の10倍〜20倍、高倍速記録対応なら50倍以上のレーザ出力が必要となる。つまり記録に対応できるよう信号系を設計すると、再生時に信号が1/10、1/20になってしまったときに、S/Nが稼げないことになる。しかし最初から再生時の信号レベルに特化した設計であれば、この問題がクリアできるわけだ。
再生に強いもう一つの理由は、Pioneerとバッファローの共同開発による「PowerRead」である。例えば傷や汚れが多いメディアではリードエラーが連続して、一定部分の信号が読み取れないことが起こりうる。通常のドライブでは、読めるまでしつこくリトライするため、コンテンツの再生が先へ進めなくなってしまう。
一方PowerReadでは、どうしても読み取れない部分はNullデータ(ゼロ)を送って、再生ソフトがハングアップしないようにしている。オリジナルのデータとは違うデータが送られるわけだから、映像や音声に対してまったく影響が出ないわけではないが、それでもハングアップしてせっかくの映画が台無しになるよりははるかにいい。
PowerReadは以前からDVD再生に対して使われてきたが、今回のBDC-S02JからはBlu-rayの再生にも対応した。もちろんPC用データの読み出しでは違うデータが送られてくると困るので、データ読み出しの時にはPowerReadは働かないように設計されている。
コンテンツ再生に特化したドライブと筆者が言うワケがおわかりいただけただろうか。
BDC-S02Jでは、データの読み出しかコンテンツの再生かを判断し、コンテンツ再生時には必要以上に早くメディアを回さないようなプログラムが仕組まれている。さらに質の悪いメディア、例えば中心がちょっとズレてるとかいったものは、高速で回さないよう配慮されている。
さらに振動を抑えるため、従来から採用している防振設計「DRA」をさらに最適化した「Ultra DRA」を搭載している。単にダンパーによるクッションだけでなく、おもりを上に乗せることで振動と逆の動きをさせ、ドライブトータルの振動を押さえるという仕組みだ。
重りとゴムで作られたダンパーをトラバースメカ(ディスクの記録/再生機構)に装着し、ディスクの回転による振動と反対の向きに揺らし、不要な振動を吸収するというものだ。
また、ドライブ構造の密閉化を行なったことも、静音化のポイントだろう。もちろんメディア格納部は元々密閉されているのだが、基盤板部も吸気口や排気ファンを廃止し、機密性を高めた。
密閉されると困るのが、ピックアップ周りの放熱である。特にPioneerのドライブは、信号の伝送歪みを押さえるため、ピックアップ部に記録回路を乗せるという「スマートレーザードライバー」という機構を採用している。したがってピックアップ周りの放熱をシビアに行なう必要があるわけだ。
この問題をPioneerの技術陣は、面白い方法で解決した。メディアの回転により発生する気流を使って内部の空気を循環させ、ピックアップ基盤板に吹き付けることで、冷却極部的な温度上昇を抑制するのである。またメディア自体も、空気で上から押さえつけることで、より安定するという。また、ディスク上面に近接する格納部の蓋内側の凹凸を極力なくし、メディアの回転により発生する気流の乱れを抑えメディア自体もより安定するという。このあたりの仕組みは後編でじっくり検証するので、お楽しみに。
PCモニタは、DVIでデジタル接続する場合は、HDCP対応のものが必要になる。筆者宅にはたまたまDELLのPCを買ったときに一緒に付いてきたモニタがHDCP対応だったので、これでそのまま再生できた。最近のPC用モニタは、HDCP対応だから高いということもなく、標準で対応しているものも増えてきている。HDCP対応ではない場合は、VGA端子でアナログ接続すれば再生可能だ。
オーディオのほうはがんばってサラウンドにしてもいいが、PowerDVD 7には2chスピーカーでバーチャルサラウンドを実現する「CyberLink Virtual Speaker」機能がある。まずは手軽にハイビジョンコンテンツをPCで楽しんでみるという、ルートができているというわけだ。
年末から来年にかけて、おそらくBlu-rayが再生可能なPCが一般的になってくることだろう。それはBD-ROMドライブが普及することももちろんだが、普及価格帯のCPUやGPUの能力が、Blu-ray再生可能なレベルに上がってくるからである。
最近はBlu-rayタイトルの中古市場も、かなりにぎわっているようだ。日本ではレンタルはまだ始まっていないようだが、米国ではすでにレンタル事業がスタートしている。日本でもこの流れは期待したいところだ。
そこで重要になるのが、Blu-rayメディアの読み出しの強さである。この点でBDC-S02Jは、半年、1年先のトレンドを見越したドライブと言うことができそうだ。
= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。 |
パイオニア、実売4万円のBD再生対応SATAドライブ「BDC-S02J」