ネットワークカメラと聞いて、どのような用途を想像するだろうか? 外出中に自宅の様子を見る、ペットの様子を確認する、といった用途だろうか?しかし、大半の人は主に防犯とか防災といった「監視」という用途を思い浮かべるのではないだろうか。

 従来、特定の場所の様子を離れた所から見るためのシステムを構築するには、既存の監視カメラをベースにする場合も、手軽なUSBカメラを使うにしても、「サーバー」をどうするかという、ちょっと専門的なシステムとして実現しなければならなかった。

 そんな中で、パナソニックは以前から簡単に導入できるネットワークカメラを提案してきた。店舗や自宅など、見たい場所にカメラ本体を設置し、遠隔地の様子を手元のパソコンや携帯電話から手軽に確認することができる。この手軽さ、そしてわかりやすさこそが、ネットワークカメラの存在をより身近にした要因と言っても過言ではないだろう。

 身近な存在となったネットワークカメラは、最近では前述した「監視」という目的以外にも、さまざまな用途への活用が始まっている。監視が「セキュリティ」という分野の用途だとすれば、新しい使い方は「マネジメント」や「サービス」といった分野の用途に分類できる。

 ネットワークカメラでマネジメント? と疑問に思うかもしれないが、例を考えるとわかりやすい。たとえば、飲食店のチェーン展開をしている企業があるとしよう。このような企業が各店舗にネットワークカメラを設置すれば、本社側からリモートで店舗の様子を確認することが可能だ。これにより、新メニューを展開するときに調理場のオペレーションの様子を確認する、料理の盛りつけをチェックするといったように、遠隔地から商品やサービスをチェックすることができる。

 本来、経営者が各店舗を回るところを、ネットワークカメラによる遠隔地からのマネジメントに変更することで、そのコストを削減したり、スピードを向上させることができる。もちろん、すべての業務をネットワークカメラだけで行なうことはできないが、業務の一部を置き換えることで、効率の向上に一役買っているのは間違いないだろう。

 また、「サービス」の向上にネットワークカメラを活用する例もある。たとえば、幼稚園や保育園などの子供向け教育サービスの現場では、すでにネットワークカメラが導入されている。ネットワークカメラの画像を伝えることで、預けた子供の様子が気になる保護者の知りたい、見たいというニーズを満たし、顧客満足度の向上に大きく貢献しているのだ。

 つまり、ネットワークカメラは、これまでのセキュリティという使い方に加えて、その活躍の場をさらに多くの、そして次のステージへと広げつつあるというわけだ。


BB-HCM515
本体希望小売価格 89,800円(税別・取付調整費別)
屋内タイプ/メガピクセル/CMOSセンサー/MPEG-4&JPEG/逆光・階調補正/PoE対応/パン&チルト/SDメモリーカード

BB-HCM511
本体希望小売価格 69,800円(税別・取付調整費別)
屋内タイプ/CCDセンサー/MPEG-4&JPEG/PoE対応/パン&チルト/SDメモリーカード


BB-HCM531
本体希望小売価格 89,800円(税別・取付調整費別)
屋外タイプ/CCDセンサー/MPEG-4&JPEG/PoE対応/パン&チルト/SDメモリーカード

 このように、ニーズが多様化してきたネットワークカメラだが、通信インフラなどの制約条件への対応や、画質への要望、操作の手軽さなど、いろいろな面でまだまだ工夫の余地があると思われる。

 そこで新たに登場したビジネス向けネットワークカメラが、パナソニックの「BB-HCM515」(メガピクセルCMOSセンサー、屋内用)、「BB-HCM511」(CCDセンサー、屋内用)、「BB-HCM531」(CCDセンサー、屋外用)だ。これまでにもたくさんのネットワークカメラを発売してきた同社だが、今回の新製品はメガピクセル対応(BB-HCM515)のモデルをラインアップに追加したほか、各機種ともMPEG-4配信のサポートといった新機能を搭載するなど、さらに使いやすく、高機能に進化しているのが特長だ。

 使い方は、店舗や工場、自宅など、見たい場所にカメラ本体を設置し、既存のLANに接続するだけ。Webサーバーはカメラ本体に内蔵されているため、カンタンにライブカメラのシステムを構築できる。これにより離れた場所の様子を、パソコンや携帯電話から、ホームページを見る感覚で確認することが可能になる。

 では、その特長をもう少し具体的に見ていこう。まず注目したいのは、クリアで高精細な画質だ。上位モデルのBB-HCM515には約130万画素のCMOSイメージセンサーが搭載されており、JPEGで最大1280×1024ピクセル、MPEG-4で最大640×480ピクセルの解像度の映像を撮影できるようになっている。

 もしかすると「ネットワークカメラの映像は荒くて、スムーズさに欠ける」という印象を持っている人がいるかもしれないが、本製品の画像は非常にクリアで見やすいのが特長だ。解像度もJPEGで1280×1024と非常に高いため、細かな部分をはっきりと映し出すことが可能。また、逆光・階調補正機能も搭載されており、逆光で被写体が暗くなってしまうような場合でも自動的に明るさやコントラストを調整し、見やすくできるようになっている。

 美しさと同時に、映像のスムーズさも大幅に向上した。本シリーズ(BB-HCM515/511/531)は、従来のJPEGに加えて、新たにMPEG-4をサポート。映像の精細さという点ではJPEGが有利だが、MPEG-4では被写体の動きを非常になめらかに表現することが可能となっている。映像の配信に必要な帯域も少なくて済むため、上り速度の遅いADSL環境でもスムーズな映像を実現可能だ。

 しかも、JPEGとMPEG-4は、相容れないものではなく、同時に配信することが可能となっている。このため、たとえば複数のユーザーがカメラに接続した場合に、片方のユーザーがJPEG、もう片方のユーザーはMPEG-4と個別に使い分けることも可能となっている。

 前述した飲食店のようなビジネスシーンの場合、映像に高い精細さやスムーズさが求められる場合もある。実際の現場を忠実に再現する表現力が備えられているのは、ビジネスシーンでは大きな魅力と言えるだろう。


「BB-HCM515」外観

背面の端子は、左からACアダプター、ドアセンサーなどの入出力、アナログビデオ出力、音声出力、外部マイク入力

130万画素のCMOSイメージセンサーを搭載したBB-HCM515の映像。1280×1024ピクセルという大きなサイズの映像を見ることができる

Motion JPEGに加えて、MPEG-4での映像配信に対応。スムーズな動画を表示することができる。回線速度が遅い場合などでの利用に適している

 本シリーズのもうひとつの特長と言えるのがSDメモリーカードを活用できる点だ。本体にSDメモリーカードスロットが用意されており、カメラで撮影した静止画や動画をカメラ単体で記録、保存することができるようになっている。

 この記録機能は非常に強力で、2GBのSDメモリーカードを利用した場合、MPEG-4で合計約9時間の映像と音声を記録できる。JPEGの場合は、合計約11万枚が記録可能。これは1日24時間連続で記録しても、6秒間隔の撮影なら最大約1週間、25秒間隔の撮影なら約1ヶ月分に相当する。記録する時間帯を制限したり、動作検知機能を使って動きのある場面だけを保存すれば、さらに長時間の記録もできる。

 長時間記録には、通常はPCやHDDレコーダーなどを組み合わせたシステムを構築するが、本シリーズならネットワークカメラ単体で手軽に録画システムを構築できることになる。

 また、たとえば店舗全体を見渡せる場所にカメラを設置しておき、店内を客がどのように動くかという動線を分析するのに利用したり、店舗内でのスタッフの動きを確認するといったような使い方にも応用できる。

 前述した飲食店などの例での使い方は、本部と店舗の物理的な「距離」を解消するという使い方であったが、これにSDメモリーカードを組み合わせて利用すれば、過去から現在の映像を時系列で確認できるようになり、さらに「時間」という概念までをも超越することができる。まさに、新しいビジネスマネジメントと言えるだろう。


SDメモリーカードスロット(カバーを外した状態)

動作検知、および一定間隔での定期的な撮影機能を併用することで、SDメモリーカードに長時間の映像を記録することができる。セキュリティ機能としての利用に加えて、対象の時間的な経過と変化を解析するのに適している

 もちろん、使いやすさという点でも心配はない。本シリーズはセットアップが非常に簡単にできるように工夫されている。本体に電源ケーブルとLANケーブルを接続後、ネットワーク上のPCでセットアップユーティリティを起動。ユーティリティから自動的にネットワーク上のBB-HCM515/511/531を発見できるため、ブラウザを使って管理者のパスワードを設定するだけで、すぐに利用できるようになっている。

 一般的なネットワークカメラの場合、ネットワークの設定がセットアップの障壁になることも多いが、本シリーズでは自動設定機能によって、既存のLANのネットワークを自動的に判別、IPアドレスを自動的に割り当てることができるようになっている。もちろん、固定IPやDHCPでも利用可能だが、ほとんどの場合はネットワークの設定は不要だ。

 実際の映像の確認も手軽で、ブラウザを使ってカメラにアクセスするだけで良い。画面上の矢印やプリセットのボタンを使ってパンやチルトをすることも可能だが、画面の中央に表示したいポイントをクリックすることでカメラの向きをコントロールすることもできる。直感的にカメラの方向を変えられるのは、非常に使いやすく、わかりやすい。

 このほか、映像のサイズやフォーマットも手軽に変更できるうえ、最大化ボタンをクリックすることで、画面いっぱいに映像を表示することもできる。また、マルチ表示も可能となっており、店舗などに複数のカメラが設置されている場合は、各カメラの映像を4分割や9分割、16分割と1画面に同時に表示することができる。(4分割・9分割では動画表示が可能。16分割では自動更新の静止画のみ)このように複数カメラの利用が想定されているのも特長だ。


自動設定機能によってネットワークに接続するだけですぐに利用可能

付属のユーティリティを利用することでネットワーク上のカメラを発見し、詳細設定を行なうこともできる

画面左側のボタンでカメラの向きなどをコントロールすることが可能。さらに、画面を直接クリックすることで見たい場所を指定して、カメラの方向を直感的に制御することもできる

 外出先からアクセスするための設定も非常にカンタンだ。これまでは外出先からカメラの画像を見るには、ルーターのポートを開放したり、ポートフォワードの設定によって外部からのアクセスを内部の機器に転送する必要があった。この設定は、ネットワークの設定に慣れたユーザーでも迷うことがあるほどだが、本シリーズではUPnP*を利用することで、これらの設定を自動的に行なうことが可能となっている。

*UPnP:「Universal Plug and Play」の略で、UPnP Forumが制定した、ネットワークに対応した機器間を簡単に接続できるように考えられた仕組み

 具体的にはBB-HCM515/511/531の設定画面から「公開」タブを開き、「自動ポートフォワーディング(IPv4)」を有効にすれば良い。最近のルーターであれば、ほとんどの場合UPnPに対応しているため、UPnPを有効にするだけでルーターの設定を自動的に行なうことができる。

 次に、外部からアクセスするためにはアクセスしたいカメラのIPアドレスを特定する必要がある。それには固定IPアドレスを用意するか、外部のDynamic DNSなどを利用しなければならない。しかし手軽さとともに、長期の活用に不可欠なシステムの信頼性を考えれば、ぜひ利用したいのが、パナソニックが提供している「みえますねっと」や「みえますねっとLite」というサービスだ。パソコンからのアクセスが必要な場合やビジネスでの本格展開を検討している場合は、リアルタイムで動画を確認できる「みえますねっと」がおすすめだが、携帯電話から手軽に利用できる「みえますねっとLite」でも十分な活用が可能だ。

 この「みえますねっとLite」サービスは、店舗などに設置したネットワークカメラの静止画を外出先の携帯電話から手軽に閲覧できるサービスだ。使い方は非常にカンタンで、NTTドコモ製、またはau(KDDI)社製のウェブブラウザを搭載したJPEG対応、QVGA対応の携帯電話を利用することができる。カメラに貼り付けられているQRコードを、携帯電話で読み取り、「みえますねっとLite」のホームページにアクセスしてサービスの申し込みを行なう。

 仮申込が済んだら、本体の電源を入れ、設定ボタン(FUNCTIONボタン)を押す。これでテスト画像がサーバーに送られ、再び携帯電話の認証確認などを済ませれば、サービスの利用が可能となる(30日間315円)。カメラ付でない携帯電話の場合でも、以上の手順に加えてMACアドレスを入力するなどの手間が増える程度だ。

 設定が完了すれば、あとは「みえますねっとLite」のページから、いつでもカメラの静止画を確認できるようになる。最も簡単に外出先から画像を確認できる方法であるため、通常はこの方法を利用すると良いだろう。

 このように、パナソニックのネットワークカメラ「BB-HCM515/511/531」は、非常に高性能、多機能でありながら、実際のビジネスシーンでの使いやすさが重視された製品となっている。今回、触れたように、ネットワークカメラは、今後のマネジメントやサービスといった分野になくてはならない存在になる可能性を秘めた製品と言える。実際のビジネスシーンでの活用を検討してみると良いだろう。


公開設定タブでチェックを付けるだけ。これでポートフォワードなどのルーターの設定が自動的に行なわれる。独自のDynamic DNSなどを利用している場合は、これだけで外部からの利用が可能だ

みえますねっとLiteを利用すれば、携帯電話からの登録だけで手軽に外出先からカメラの映像を確認できる

 




関連情報

パナソニック コミュニケーションズ
http://panasonic.co.jp/pcc/

パナソニック ネットワークカメラ「カメラBB」
http://panasonic.biz/netsys/netwkcam/

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パナソニック、SDカードスロット搭載のネットワークカメラ3製品(Broadband Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/17150.html
 
清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ