両サイドをメタルフレームで構成する新設計により、液晶のフレームが約3mmと非常に狭い、いわゆる狭額縁設計となっていて、本体の幅は約68mmにおさめられている。5インチ前後のディスプレイを搭載するスマートフォンとしては、70mm未満はかなり細い部類に入る。エッジが丸いラウンドフォルムなので、グリップ感も良好だ。
ホームボタンなどはハードウェアキーとして画面の外に搭載されている。Android 4.0以降では、ホームボタンやバックキーなどが画面の中に表示されるソフトウェアキーになっている端末も多いが、その場合、画面の一部が常にソフトウェアキー表示に占有される。しかしハードウェアキーのELUGA Xならば、約5.0インチの画面全体をフルに活用でき、表示できる情報量も多い。
ディスプレイの解像度は、1080×1920ドットのいわゆるフルHD解像度になっている。昨年までの主流だった720×1280ドットのHD解像度に比べると、解像度は1.5×1.5倍だ。HD解像度でも十分にキレイではあったが、比べてみると、Webページの小さい文字も潰れずに表示されるなど、見やすさは明らかに向上している。
ディスプレイ関連では、動画や写真などを表示するとき、映像を自動補正する「モバイルPEAKSエンジン」も搭載している。これは映像に応じて見やすく色鮮やかに自動補正してくれるという機能だ。パナソニックの薄型テレビ「ビエラ」で培った技術を、ELUGA Xの液晶の特性に合わせてチューニングしている。屋外など明るい場所で表示させたとき、コントラストや彩度が低く見えがちなので、こうした補正技術の効果は大きい。ちなみにこの映像補正は、リアルタイムで処理されるが、ELUGA Xはクアッドコアのプロセッサを搭載しているので、フルHD動画の映像処理をしても、操作が重たくなったりする心配もない。
音響面では、「MAXX AUDIO」という音響補正技術を搭載している。こちらもELUGA Xのスピーカー特性に合わせてチューニングされていて、動画の音声などをより聞こえやすくリアルタイムで補正をかけてくれる。じっくりと音楽や映画を楽しみたいならば、イヤホンを使うことをおすすめしたいが、しかしスマートフォンではイヤホンを使っていないとき、たとえば会食中に話題に上がったYouTube動画をその場で見る、といった使い方も多いので、この音声補正技術の効果もありがたいところだ。
ちなみに多くのケータイでは、受話音用の前面レシーバーと着信音や動画の音声などを鳴らす背面スピーカーが別々になっているが、パナソニックのスマートフォンは、ディスプレイ側にフロントスピーカーが配置されている。動画の音声も、ディスプレイ正面から聴こえてくるので、最適な環境で動画視聴ができるのもポイントだ。
Androidのスマートフォンは、ディスプレイに表示されるボタンなどをタップして操作するので、ディスプレイの大きさは、見やすさだけではなく操作性にも大きく影響する。ディスプレイが大きいと、表示されるボタンなども大きくなるので操作しやすい面もあるが、一方で片手で操作するとき、指が届きにくくなってしまうこともある。しかしELUGA Xではソフトウェア面での工夫で、約5.0インチという大きなディスプレイながらも、片手で操作しやすいようになっている。
たとえば独自のホーム画面「フィットホーム」は、アプリのアイコンが画面の下半分に表示されるデザインで、片手操作時にも無理なくすべてのアイコンに親指が届くようになっている。Android端末のホーム画面は、メーカーごとにカスタマイズされたものが搭載されているが、ここまで片手操作にこだわっているのは珍しい。
片手操作にこだわっているのはホーム画面だけではない。たとえばカメラアプリも、縦画面操作時には設定メニューが指の届く範囲に表示され、ほとんど片手で操作できるようになっている。スマートフォンだと気楽にスナップ写真を撮る機会が多いので、片手で使えるというのはありがたい。このほかにもタスクマネージャーやロック解除なども、片手で操作しやすいように工夫されている。
スマートフォンは両手の方が使いやすいことも多いが、通勤中などカバン等をもっていて、片手操作が必要なシチュエーションも少なくない。そうしたとき、ロック解除からアプリ起動までが片手で難なく行なえるというのは、重要なポイントだ。
カメラ機能には、パナソニックがルミックスで培ってきた技術や開発ノウハウが継承されている。その中でも特徴的なのが、シーン自動識別機能の「おまかせiA」だ。おまかせiAモードがオンになっていると、カメラを向けるだけで、自動的に被写体がどのような状況にあるかを判別し、撮影時に適切な設定でかんたんキレイに撮影できる。
こうしたシーン自動認識機能は、デジタルカメラはもちろん、一部のケータイのカメラでもおなじみになりつつあるが、ELUGA Xの「おまかせiA」は、ルミックスと同じ名前を冠するだけに、ルミックスと同様の厳しい水準で開発されていて、非常に完成度の高い機能となっている。
たとえば比較的難度の高いシチュエーションである「夜景+人物」で試してみたが、しっかりとシーン認識して、手前の人物はフラッシュで照らしつつ、人物が真っ白に白飛びせずに背景もしっかりと写すことができた。シーンの認識率も高く、対応できるシーンの種類も多く、さらにそれぞれのシーンでの補正も自然な感じにチューニングされている。ここまで作り込めるのも、ルミックスシリーズでカメラ開発の膨大な蓄積があるパナソニックならではだろう。
このほかにも、F2.2の明るいレンズが採用されていたり、フラッシュのLEDの演色性が向上して、より自然な色で撮れるようになっていたりと、さまざまな強化が施されている。とくにスマートフォンのカメラが活躍する、屋内など暗い場所での撮影性能が強化されているのは嬉しいポイントだ。
スマートフォンで気になるバッテリーの持ちも、ELUGA Xは、2320mAhの大容量バッテリーと独自の省電力機能「エコナビ」で2日間の使用を可能にした。最近では2000mAhを超えるバッテリーを搭載するスマートフォンも増えてきたが、昨年までのモデルに比べるとかなりの大容量だ。1年以上前のスマートフォンからの移行ならば、バッテリーの改善に驚くことだろう。
※お客様の平均的な使用状況を想定し、実際に測定したものです(パナソニック モバイルコミュニケーションズ調べ)。
アプリやネットワークなどの使用頻度・使用環境により大きく変動する場合があります。
しかし、いくらバッテリーの持ちが良くても、スマートフォンを使う上で重要なのは、「可能なときは常に充電しておき、家から持ち出すときには残量100%にしておくこと」だったりする。自宅やオフィスにいても、スマートフォンを使う機会は多い。しかし使ったまま充電するのを忘れ、残量が減ったまま持ち出すことになると、どんなに持ちの良いバッテリーも意味がない。充電忘れを防ぐ「充電のしやすさ」は重要だ。
「充電のしやすさ」という点では、ELUGA Xは「おくだけ充電」に対応しているのが強みとなっている。おくだけ充電は、WPCの規格に準拠したドコモワイヤレス充電機能のことで、ELUGA Xは同梱の充電パッドに文字通り「置くだけ」で充電が可能となっている。置くだけでいいので、自宅やオフィスでの充電忘れを防ぎやすい。
実はパナソニックと同傘下の三洋電機はワイヤレス充電に強く、さまざまな対応製品を商品化しているほか、NTTドコモ共通の充電パッドをOEM供給している実績もある。ELUGA Xでも三洋電機との共同開発により、おくだけ充電の電流が700mAから900mAへアップしていて、通常よりも高速な充電も可能になっている。ちなみにもっと急ぎのときは、microUSBでさらに高速な充電もできる。ただし有線充電ではキャップの開閉が少々面倒なので、普段はおくだけ充電の利用をおすすめしたい。
ELUGA Xに付属する卓上ホルダは、充電パッドが立てかけられるスタンド形状になっていて、ワンセグやNOTTVを横長の大画面で視聴しながら充電できる。充電時に普通の卓上ホルダのように、「カチっ」と鳴るまで押し込まないでいいので、充電し損ねることを避けやすい。また、充電パッドだけを外し、平置きして充電することも可能だ。
おくだけ充電のメリットは「充電のしやすさ」だけではない。普通の卓上ホルダは、モデルごとに形状が違うので使い回しできないが、おくだけ充電対応機器同士なら充電パッドを使い回すことができる。すでに対応充電パッドを持っているならば、それをそのまま流用できるし、市販の充電パッドを買い足して使ったり、将来的にELUGA Xを買い換えるとき、おくだけ充電対応のスマートフォンを選べば、充電器を流用することも可能だ。この汎用性・応用性の高さは大きなメリットと言えるだろう。
ELUGA Xはさまざまな最新の無線通信規格に対応している。たとえばNTTドコモのLTEサービス「Xi」は、最新のサービスにあわせ、複数の周波数帯域に対応した。Wi-Fi(無線LAN)についても、2.4GHz帯だけでなく5GHz帯にも対応した。これにより、無線通信の混雑を回避しやすくなり、より安定した通信が可能だ。
また、Bluetooth 4.0やNFCの決済サービスなどにも対応している。いずれもまだ普及していない無線通信規格なので、いますぐに必要になる機能ではないが、スマートフォンを長く使うにあたっては、あとから登場した製品やサービスに対応できていないのは非常に悔しいので、こうした機能は先取りして搭載してくれるくらいの方が頼もしい。
パナソニックの家電との連携機能も豊富で、専用の「ELUGA Link」というアプリを搭載している。このアプリでは、ビエラやディーガ、レッツノート、さらに白物家電とも連携が可能。レコーダーとの連携については、DTCP-IPのDLNA規格に対応するので、パナソニック以外のレコーダーについても一部利用できるようだ。
あとはELUGA Xの画面をそのままWi-Fi経由で転送するMiracast規格にも対応している。ELUGA Xで撮った写真やダウンロードした動画等を大画面テレビに映して皆で楽しみたいときに便利な機能だ。(※1)まだMiracastを受信できる製品は少ないが、パナソニックでは3月に「ワイヤレスディスプレイアダプター」(※2)を発売する予定となっている。
※1.別途HDMIケーブル(市販品)が必要です。
※2.購入は、パナソニックの家電製品直販サイト「パナセンス」から。
機能面で見ると、ELUGA Xはワンセグや赤外線通信機能、おサイフケータイ、防水(※)など、日本のフィーチャーフォン(普通のケータイ)でおなじみの機能に一通り対応している。細かいところでは、伝言メモ(簡易留守録)機能を搭載しているのもポイントだ。スマートフォンでは伝言メモを搭載していないモデルも少なくないが、伝言メモがないと、有料の留守番電話サービスが必要になるので、この伝言メモ搭載はありがたい。
こうしたフィーチャーフォンで当たり前だった日本的な仕様にしっかり対応しているので、フィーチャーフォンからの乗り換えユーザーも、「あの機能がない!」と不便を感じることがない。
さらに機能面だけでなく、フィーチャーフォンに似せた「ケータイモード」を搭載することで、使い勝手の面でも、スマートフォンに不慣れな人が使いやすいように作られている。
普通のAndroid端末では、インストールされているすべてのアプリが、アプリケーション画面にずらーっと並べられるが、ケータイモードのメニュー画面では、アプリがカテゴリごとに分類されて表示される。この4×3のカテゴリ表示がフィーチャーフォンのメニュー画面そっくりに作られているのが面白い。また、待受画面に相当するホーム画面は、左右にフリックすると発信履歴と着信履歴、上にフリックすると電話帳が表示されるのも、フィーチャーフォンと同じ操作だ。ちなみにこのホーム画面、自由なカスタマイズはできないものの、数種類のプリセットが用意されている。自分でゼロからカスタマイズする必要がないので、初心者でも簡単に利用が可能だ。
※ご使用の際は、リアカバーやキャップ(外部接続端子カバー)が確実に閉じているかご確認ください。
防水性能を維持するため、異常の有無にかかわらず2年に1回部品の交換をおすすめします(有料)。
ELUGA Xは、約5.0インチのフルHD液晶やクアッドコアプロセッサなど、最新・最先端のハイスペックなスマートフォンになっている。しかし一方で、精度の高いカメラのシーン自動認識機能や片手操作しやすいUI、おくだけ充電など、スペック表では表われにくい使い勝手面での完成度も高い。さらにハイスペックモデルとしては珍しいくらい、フィーチャーフォンからの移行ユーザーに向けた配慮が充実しているのも特徴的だ。
5インチ級のディスプレイを搭載するスマートフォンというと、IT機器に慣れている人向けのハイエンドモデルというイメージも強い。ELUGA Xもスペック面ではハイエンドモデルだが、しかし使い勝手やフィーチャーフォンからの移行という観点でも、非常にバランス良く作られている。とくに使い勝手面での配慮は、スマートフォン初心者にとってはもちろん、上級者にとっても嬉しいポイントだ。初めてのスマートフォンとしても、ほかのスマートフォンからの移行先としても、満足できる一台と言えるだろう。