モバイルビジネスユーザーのための  グローバルスタンダードサービス  NTTドコモのブラックベリーインターネットサービス  −法林岳之 執筆−プライベートはもちろん、ビジネスでも欠かすことができないケータイ。国内ではNTTドコモのiモードを中心に、さまざまなビジネス向けのソリューションが展開されているが、海外を中心に広く利用されているのが「BlackBerry(R) 8707h」だ。国内ではNTTドコモが「ブラックベリーエンタープライズソリューション」として、主に法人向けにサービスを展開してきたが、いよいよ今年8月から本格的に個人向けに「ブラックベリーインターネットサービス」の提供が開始された。ここではブラックベリーサービスの基本的なしくみやメリット、ブラックベリーインターネットサービスの概要などについて、紹介しよう。 「BlackBerry」「BlackBerry(R) 8707h」は、Research In Motion Limitedの商標または登録商標です。

世界のビジネスエリートやセレブリティが愛用するBlackBerry

BlackBerry 8707h

 ケータイは私たちにとって、もっとも身近なデジタルツールであり、日常生活に欠かすことができないアイテムだ。その一方で、ケータイは元々、ビジネスツールとして、一般に普及し、進化してきたという背景もある。そんなビジネスツールとしてのケータイにおいて、世界中で広く愛用されているのが「BlackBerry」だ。

 BlackBerryはカナダのResearch In Motion社が開発したスマートフォンとネットワークサービスを連携させたソリューションサービスで、国内ではNTTドコモが「ブラックベリーエンタープライズソリューション」として、サービスを提供している。BlackBerryというと、すぐにQWERTY配列のフルキーが装備された独特の端末を思い浮かべてしまうが、端末のみに特徴があるわけではない。BlackBerryは端末とネットワークサービスを連携させたトータルなビジネスソリューションとして提供されており、高いセキュリティや管理しやすい環境などにより、世界中のビジネスエリートやセレブリティに広く愛用されている。

 近年、企業のIT化が進んだことにより、ケータイやノートパソコンなどのモバイル機器をスタッフに持たせ、社外でも業務をこなせるようにする企業が増えている。しかし、ケータイをはじめとするモバイル機器は、外出先で利用できる半面、紛失や盗難による情報漏えいなど、セキュリティ面でのリスクを抱えている。また、社外での業務効率を高めるためには、社内でパソコンを利用しているときと同じような環境をモバイル環境でもできる限り、実現したいところだが、システムが複雑になってしまったり、社外からのアクセスを実現するために、ファイアウォールなどのネットワーク構成を変更しなければならず、セキュリティ面にリスクを抱えてしまうことがある。

 BlackBerryで提供されるモバイルソリューションは、暗号化通信などによる高度なセキュリティ、運用や管理がしやすい環境などにより、企業が安心して運用できるビジネスモバイル環境を実現している。たとえば、多くの企業ではMicrosoft ExchangeやLotus Dominoといったグループウェアを利用するが、ブラックベリーエンタープライズソリューションではこうしたグループウェアと連携ができるため、社内でスタッフがスケジュールや連絡先などの情報を更新すると、BlackBerry端末の情報もすぐに更新される。メールも会社で利用しているメールアドレスが利用でき、iモードなどと同じようにプッシュで配信されるため、ブラウザで確認などをしなくても端末に直接、メールが届く。

会社で利用しているメールアドレスが利用でき、プッシュでメールが配信されるためブラウザで確認などをしなくても端末に自動でメールが届く

 また、システム管理者の視点から見た場合、BlackBerryは非常に管理しやすい環境が整っている。たとえば、ユーザーにどのアプリケーションや機能を利用できるようにするか、サードパーティのアプリケーションをインストールできるようにするかといったセキュリティポリシーを一括で設定したり、コントロールすることができ、利用状況もリアルタイムに把握することが可能だ。仮に、紛失や盗難といったことが起きてもリモートワイプ機能により、端末の情報を消去したり、端末のパスワード入力を一定の回数、間違えると、同様に端末のユーザーデータを自動的に消去するといった設定もできる。ブラックベリーエンタープライズソリューションでは上記のようにいつでも端末と社内サーバーとが連携出来る環境をつくりだし、高いビジネスレベルが実現できる。

個人ユーザーが利用できるブラックベリーインターネットサービス

個人ユーザーにも提供が開始された、BlackBerry 8707h

QWERTY配列のフルキー装備で、長文のメールもストレス無く入力できる

ブラウザも搭載されており、横長のディスプレイともマッチして見やすい

 こうした特徴を持つBlackBerryのモバイルソリューションだが、今までは社内サーバを設置した企業ユーザーを対象にした「ブラックベリーエンタープライズソリューション」が提供されてきた。

 これに対し、個人ユーザーでも気軽にBlackBerryを利用できるようにしたのがNTTドコモが8月からサービスの提供を開始した「ブラックベリーインターネットサービス」だ。企業向けに提供されているプッシュ対応メールの利用はそのままに、個人ユーザーでも気軽に利用できるように専用メールアドレスを提供し、ISPのメールアドレスもいっしょに利用できるようにしている。もちろん、端末はブラックベリーエンタープライズソリューションと同じ「BlackBerry8707h」が提供されており、今まであまりスマートフォンになじみのなかったユーザーでも簡単に扱うことができる。

 まず、メールについては、1台のBlackBerry端末(契約)につき、「○△□@docomo.blackberry.com」という専用メールアドレスが1つ付与される。このメールアドレスはBlackBerryのプッシュ対応メールなので、基本的にはメール着信を確認する必要がなく、自分宛てにメールが送られ、端末が圏内に居れば、すぐに端末に届く。

 これに加え、多くのISPで採用されているPOP3/IMAP4方式のメールも利用できる。ISPなどのメールを送受信するのに必要な情報は、端末そのものに設定するのではなく、BlackBerryのサーバー側に情報を設定しておき、BlackBerryのサーバーが一定間隔で自動的にISPのメールサーバーを確認するといったしくみになっている。メール着信が確認できれば、BlackBerryのサーバー側から端末にメールが送られるため、若干のタイムラグこそあるものの、プッシュ対応メールとほぼ変わらない感覚で利用できる。ちなみに、Googleが提供する「Gmail」については、プッシュ対応で利用することができる。ブラックベリーインターネットサービスでは、通常のISPメールと専用メールアドレスと合わせ、最大11個のメールアカウントを管理できるため、ビジネス用からプライベート用も含め、一括して1台の端末で扱うことができる。

 文字入力についてもパソコンと同じQWERTY配列のフルキーが装備されており、日本語入力の予測変換にも対応しているため、長文のメールでもストレスなく、入力できる。また、PC向けサイトを閲覧するためのブラウザも搭載されている。基本的にはテキスト中心のウェブアクセスということになるが、CSSやXMLにも対応し、横長のディスプレイともマッチして見やすい環境を提供している。RSSフィードにも対応し、1/4/8/12/24時間の間隔で購読することができる。本誌のようなニュースサイトを頻繁にチェックするユーザーには、便利な機能のひとつだろう。ちなみに、ブラウザを使うことで、パケット通信料が気になるところだが、BlackBerryは元々、独自の圧縮技術によるデータ通信を行なっているため、通常のケータイ用フルブラウザに比べると、データ通信量を抑えており、通信費を削減することができる。

 ブラックベリーインターネットサービスは、個人ユーザーを対象にしたサービスということを考慮し、インスタントメッセンジャーの「BlackBerry Messenger」が提供される。しくみとしては、パソコンなどで利用されているメッセンジャーソフトと同様だが、BlackBerryユーザー同士なら、複数のユーザーで同時にテキストチャットによる会話ができる。交通機関での移動中など、通話ができないような環境でもメッセージをやり取りすることができる。

 また、端末のBlackBerry 8707hは、FOMA網ネットワークで採用されているW-CDMA方式に加え、欧米で広く採用されているGSM/GPRS方式(850/900/1800/1900MHz)にも対応しており、120以上の国・地域でブラックベリーインターネットサービスを利用することが可能だ。ちなみに、海外で利用する際には、NTTドコモの国際ローミングサービス「WORLD WING」への申し込みが必要になるほか、料金体系も国内とは異なるため、注意が必要だ。渡航先での通話・通信料については、渡航先の通信事業者ごとに異なり、課金方法が異なる場合もあるので、特に注意したい。

 さらに、ブラックベリーインターネットサービスと法人向けに提供されているブラックベリーエンタープライズソリューションの両方を利用したいユーザーのために、「ブラックベリーデュアルサービス」も提供されている。すでに、企業などでブラックベリーエンタープライズソリューションを利用しているユーザーにとっては、さらにBlackBerryの活用シーンを拡げられる便利なサービスと言えるだろう。

※「Google」「Gmail」は、Google,Inc.の登録商標です。

横320×縦240ドットのQVGA液晶を搭載

キーは立体で押しやすい

キーバックライトも搭載されているので暗いところでもキーを判別しやすい

端末右側面。メニュー選択や決定ボタンなどの役割をする[トラックホイール]、クリアボタンの役割の[エスケープキー]を配置

端末上部。[電源キー]と[ミュートキー]を配置

端末左側面。[イヤホンジャック]、[USBポート]、[サイドキー]を配置

リーズナブルに始められるブラックベリーインターネットサービス

 BlackBerryによるモバイルソリューションは、端末と携帯電話網をパケット通信によって、常時接続し、NTTドコモとResearch In Motion社のブラックベリーインターネットサービスの設備との間で常に最新の状態を保つようなしくみで動作している。そのため、一見、通信量が非常に多いように考えられているが、NTTドコモが提供するブラックベリーインターネットサービスでは、個人ユーザーでも気軽に利用できる環境を提案している。

 まず、音声通話を利用するのであれば、通常の「タイプSS(月額3780円)」などの料金プランを選択する。これにブラックベリーインターネットサービス利用料として、月額3045円が必要になるため、合計で月額6825円が掛かる。ただし、音声通話が可能な各料金プランはファミ割MAX50を適用できるため、タイプSSならば、基本使用料を月額1890円に抑えることができ、ブラックベリーインターネットサービス利用料と合わせても月額4935円で利用できる。

 この組み合わせの場合、パケット通信料が1パケットあたり0.21円になるため、「パケットパック」などのパケット通信料割引サービスの契約を検討する必要があるが、NTTドコモが9月1日からBlackBerryユーザー向けに提供する「ブラックベリーデータ通信パック」がおすすめだ。ブラックベリーデータ通信パックは、月額1680円を支払うことで、国内における8万パケット(約9.8MB相当)まで※1の通信が利用できるもので、一般的な個人ユーザーが利用する範囲であれば、十分に対応できる割引サービスとなっている。

ブラックベリーインターネットサービスで利用可能なパケット通信料割引サービス

プラン名 月額 無料通信分 パケット単価
ブラックベリーデータ通信パック※2
1680円
8万パケット (約9.8MB 相当)
0.0525円

※1 8万パケットを超えた通信については、1パケットあたり0.05円が従量課金されます
※2 「ブラックベリーデータ通信パック」については、blackberry.netへの通信のみに適用されます

 ちなみに、ブラックベリーインターネットサービスではパケット通信料の定額プランが選択できないが、前述のように、送受信するデータを圧縮しているうえ、メールも長文のメールについては冒頭部分のみを受信し、必要なものだけを全文受信するというしくみになっている。そのため、他のスマートフォンやPCを接続してのモバイルデータ通信などに比べると、構造的にパケット通信量が抑えられており、ユーザーのコスト負担も少なくすることができる。通常の利用であれば、ブラックベリーデータ通信パックやデータプランSパケットプラスなどで十分に対応可能だが、もし、使いすぎが心配であれば、NTTドコモが提供する「一定額到達通知サービス」などを利用すれば、安心して使うことができるはずだ。

グローバルスタンダードのスマートフォンを自分の手に

 ケータイの用途はさまざまだ。ワンセグやカメラ、おサイフケータイといったエンターテインメントや生活に関わる使い道は、今や誰にも欠かすことができないものになっている。

 しかし、ビジネスにはビジネスなりのケータイの活用スタイルがあって、しかるべきものだろう。ブラックベリーインターネットサービスは、今まで企業向けに提供されてきたブラックベリーエンタープライズソリューションのアドバンテージを継承しながら、ビジネスミッションを快適にクリアするために作り込まれたサービスだ。世界のビジネスエリートやセレブリティが愛用するグローバルスタンダードのスマートフォンをぜひ自分の手に取り、快適なモバイルソリューションを自らのビジネスに活かして欲しい。現在、BlackBerryの購入は下記ドコモのスマートフォンページで行うことができる。

※「BlackBerry」「BlackBerry(R) 8707h」「BlackBerry Enterprise Server」は、Research In Motion Limitedの登録商標または商標です。

■関連情報
□ドコモスマートフォンサイト(購入・詳細について)
 http://smartphone.nttdocomo.co.jp/

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□BlackBerryで何ができるのか 個人向けサービス開始でドコモに聞く
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□【WIRELESS JAPAN 2008】 健康サービスやBlackBerryを展示するドコモブース
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/event/40985.html

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerryサーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用のほか、各ケータイに対応。「ケータイしようぜ!!」も配信中。