ニコンが提供している簡単、手軽に写真の保存と管理、共有ができるクラウドサービスの「my Picturetown」はご存知の方も多いだろう。すでに使われている方も多いと思うが、このサービスを持ち出し可能にしたiPad・iPhone用アプリ「my Picturetown Pad」はもう体験されただろうか?
本アプリはクラウドサービスの基本的な機能は押さえつつ、写真を‘見せる’ことにこだわった実にセンスあるつくりとなっている。写真を加工できるアプリは沢山あるが人に写真を見せたくなるアプリははっきり言って少ない。この「my Picturetown Pad」は、その数少ない‘写真を見せたくなるアプリ’として自信を持ってお勧めできるアプリである。
本アプリはiPad、iPhone、iPod touchで使用でき、iOS4.2、iOS 4.3、iOS5が必要である。執筆時現在、無料でダウンロードして利用できる。まずは会員登録が必要だが、メールアドレスを登録するだけでとても簡単。住所や電話番号などの情報を入れる手間もなく、2GBのストレージを無料で手に入れることができる。見せたい写真どんどんアップロードしよう。
ログイン後に表示されるのがトップ画面だが、この画面のスライドショーがまたセンスがいい。アップロードした画像を使ったスライドショーが大写しになるのだが、ズームイン、ズームアウトなどを組み合わせた近年のトレンドエフェクトである「ケンバーンズ」を使用していて、この画面を見ているだけでも楽しくて飽きが来ない。
いつまでもスライドショーに見惚れていては先に進めないので、メニューから「マイフォト」を選択してみよう。ここに作成したアルバムと、そのアルバムをまとめることができるフォルダーが格納される。写真のカテゴリー別に、季節の花の写真を集めた「flower」や、旅行の行程を辿った「trip」などのアルバムやフォルダーを作っておくと、写真が増えてきたときに探しやすくなるのでお勧めだ。
またアルバム内なら、表示画像をタッチして任意の位置に移動することで、 写真の並び替えも自由に可能だ。何気ないことだが、自分のアルバムであれば 非常に嬉しい機能である。
とはいいながらも多くの写真を表示させたいので「全画像」をタッチしてみよう。本アプリでは3種類のビュー方式が選択できるが、一番ノーマルな表示方法が「グリッドビュー」という一覧表示だ。iPadでは縦横のわかる全体画像が、iPhoneではスクエアにトリミングされた画像が一覧で表示される。
ここで任意の画像をタッチすると全画面表示され、拡大表示や画像の回転が行えるほか、撮影日時や撮影機種などの情報はもちろん、絞り値と露出、焦点距離というEXIF情報の確認まで行える。写真を見せながら撮影状況を説明する時にワンタッチで情報を引き出すことができるのはとても便利だ。
また、このビュー画面からスライドショーを起動させることもできる。エフェクトはトップ画面と同じ「ケンバーンズ」、一般的なスライドショーでお馴染みの「フェードイン/フェードアウト」、ノーマルで見やすい「ワイプ」の3種類のいずれかを任意で設定しておくことができる。
本アプリで秀逸なのがこのブックビューである。これはアプリ内の写真を電子写真集のように自動的にレイアウトしてプレビューする機能だが、全画面表示、2分割、3分割、4分割、5分割など多彩なレイアウトで見る者を飽きさせず、とてもセンスのあるつくりになっている。
言ってしまえば写真をアプリが自動で並び替えをして表示しているわけだが、iPad上でこのプレビューを見ていると、自分専属の担当者が編集をした写真集を見ているような気分に浸れる。これはこのプレビュー画面の画像表示の大きさ、EXIF情報の表記の方法などすべてが気持ちのいい、しっくり来る配置になっているからこそだろう。このブックビューはスライドショーでも見ることができる(エフェクトはワイプのみ)。
このブックビューの機能は現在iPadでのみ表示可能だが、iPhoneでも近い将来、実装予定のようで楽しみである。
マップビューでは写真を撮影した時の位置情報を地図上に表示することができる。これには位置情報を記録できるカメラが必要になるが、もし所持していなければiPhoneやiPadで作品とは別に記録として撮影しておくと後々撮影場所を思い出すのにとても便利だ。ちなみにmy PicturetownのPCサービス上では、位置情報の無い写真に位置情報を記録できる機能があるので、PCサービスとの併用でマップビューの活用頻度を高めることができるだろう。
さらに特筆すべきは、このマップビューでは写真に方位情報が記録されていれば、どちらを向いて撮影したかも表示できる。画像情報には撮影日時も記録されるので、時期による日照条件を確認するのにも役立つ。
単純なことだが、マップ画面で撮影地にピンが沢山立っている画面はなかなか楽しい。もっと色々な場所に出掛けて行って写真を撮影、ピンの数を増やしたくなってしまうだろう。
写真の共有はメールだけでなく、Facebookやtwitterでも可能だ。アプリから簡単に写真付きのツイートを送信できるので、撮影場所から写真仲間へ今日の撮影速報ツイートをしても面白いだろう。電車での移動中などに、重い撮影機材をしまってiPhoneからスマートに投稿できるのはなかなか魅力的だ。
ここまで本アプリの概略を紹介させて頂いたが、アプリの機能としては最近注目の機種であるNikon 1のモーションスナップショットの再生機能や動画への対応、ゴールドアカウントへのアップグレードで利用容量が最大200GBに増量可能なことなど、まだまだ紹介しきれないほど多彩だ。
だが、筆者としてはこのアプリは‘人に写真を見せるアプリ’として、ぜひ使って頂きたい!
それほど写真を見せることにこだわったつくりであるのは、写真好きの読者の皆さんなら実際に体験されればすぐおわかりになると思う。しかし問題なのは、写真に興味がない家族や友達に写真を見せるときだったりする。人間、興味がないことには目が向かないのは当たり前だ。しかし、そんな無関心の人の目も留まらせるのが、本アプリのブックビュー機能である。
一枚の写真に長く目を留まらせたいと思うのは写真を撮っている者の常ではないだろうか。そんな目標を手助けしてくれるアプリがこの「my Picturetown Pad」なのである。
(水咲 奈々)