秋葉原の電気街口の改札を出て左に歩いていくと秋葉原ダイビルがある。数年前に完成し、企業の製品発表会やイベントなどに使われることもある、秋葉原のランドマーク的存在だ。今回はダイビルで5月26日と27日にかけて行われたサーバ・ワークステーションのイベント、「NEC Express5800 Tech Festa! 08」に参加してきた。その中でもとくに異彩を放つのが「改造バカこと高橋敏也のExpress5800徹底解剖」だろう。高橋敏也氏といえば自作ユーザーの間では、おもしろいテーマに沿ったパソコンなどを組み立てる記事で有名なカリスマ的テクニカルライターだ。筆者もこのセミナーを拝聴してきたので、それをレポートしたい。 ■最新のサーバ・ワークステーション向け技術を公開展示 NECはPCサーバの領域で1996年から2007年までの間、12年連続で国内シェアNo.1*を誇るサーバの販売元でありその累計は100万台を突破している。今回のイベントはその中心製品であるExpress5800シリーズのセミナー・展示会だ。 イベントは、製品の展示や技術の紹介がダイビルの2階ホールで、セミナーが5階で行われた。セミナーは今回の展示の柱となる「Express5800シリーズ」を中心にECOへの取り組みや企業システムの紹介、NECのブレードサーバ「SIGMABLADE」や製品開発へのこだわり、そして高橋氏のサーバ徹底解剖といった様々なテーマになっている。 *1996〜2007暦年国内x86サーバー(出荷台数、出荷金額) 出典:IDC Japan ■3倍速いサーバ? Express5800/110Geを自作ユーザーの視点で高橋敏也氏が改造 今回のセミナーの中で一際興味を引いたのが、テクニカルライターの改造バカこと高橋敏也氏が講師を務めるExpress5800徹底解剖だ。「Express5800/110Ge」(以下110Ge)は、SOHO/小規模オフィスでファイルサーバやメールサーバなどに利用されるタワー型のPCサーバ。法人向けショッピングサイト「NEC得選街」では、14,700円で販売されており(6/26までの期間限定)、圧倒的な低価格が魅力の商品だ。サーバ展示会のセミナーを高橋氏が務めるというのはちょっと?な感じもする。というのも高橋氏は普段パソコンに関するテクニカルライターをしていることで有名な人だ。企業などで使われるサーバやワークステーションの世界となると今回のセミナーは異質に感じるが、反面興味を引くのも確かだ。サーバとワークステーションの技術を紹介すると言う比較的固めの今回のイベント。展示会場ではあまり見られなかったカジュアルな服装をした方もちらほらと参加しており、高橋氏の人気が伺える。 セミナー会場で目を引いたのが布のかけられた「何か」だ。講義台のそばに置かれているのでセミナーで使う物だとは思うが大きさ的にはパソコンサイズのようにも見える。そんな中現れた高橋氏は110Geについての魅力を語り始めた。高橋氏のセミナーは110Geの徹底解剖という触れ込みだったが、ここでは110Geを改造することをネタとしているようだ。サーバショールームと萌えキャラの関係など、NECのサーバを展示しているクラサバ市場秋葉原店のデジタル店員「いつはちゃん」について熱く語っており、セミナー参加者の緊張をほぐしながら話に引き込んでいく。高橋氏の説明を聞くと、110Geは低価格でありながら、サーバとしての信頼性・拡張性をそなえており、しかも静音やメンテナンス性で、ビジネス用途のみならず、自作ユーザーからも密かに注目されている隠れた名機という。 最初は「なぜサーバ向けのイベントに私が呼ばれたか分からない」、「何を題材にしてセミナーをすればよいか悩んだ」などと、高橋氏らしい自虐ネタを取り混ぜ笑いを取っていたが、得意の分解を110Geに行い、個々のパーツを紹介しながらいかに自作ユーザー向けの仕様であるのかを説明していく。しかし、なるほど、話を聞けば聞くほど、110Geは自作ユーザー向けという気がしてくる。それもそのはず。サーバ機として作られた110Geは、低価格と言えどもサーバなので、その作りは非常に堅実でスタンダード。その上、上質な部品を使用した製品だからだ。さらに、なによりも、自作ユーザーは「サーバ機」という言葉に弱いと言うこと。この点は筆者は笑いながらも、同意し、素直にうなずいてしまった。
さて、高橋氏の紹介してくれた110Geの特徴について簡単に説明していこう。実際のところ、110Geはサーバ向けということで、作りは非常に良くできている。まず気がつくのはケースが頑丈にできていること。スチールを採用した筐体だが、筆者がセミナー終了後に上から体重をかけても曲がりやひねりが起きているようには見えなかった。ケースの前部に1つ、後部に2つ搭載されたファンは、高額な製品に位置づけされるデルタ電子製のもの。このメーカーの製品はサーバ用途などに良く使われており、110Geでも例外ではないようだ。また、標準のDVD-RAM装置が搭載されている5インチベイのドライブケースは3段になっているが、ネジ止め不要で丸ごと取り外せるようになっており、それを90度回転させて取り付けが可能なため、サーバ本体を横にして使う場合でも光学ドライブを正位置で使うことができるという裏技を披露。そして、これらの各パーツの市場価格を交えてお買い得度を解説していった。 このあたりまで説明していく中で、高橋氏はこのサーバ機を自作ユーザーの視点で改造すると言う、セミナーの実際の目的を話し始める。最終的にはWindows VistaやWindows Home Serverなどをインストールするのが目的と言うことだ。Windows Vistaを動作させるにあたっては、やはりWindows Aeroを動かしたいところ。110Ge内蔵のオンボードチップ、Volari Z9sでは心許ないため、ビデオカードを増設する計画を説明する。しかし110Geの内部インターフェースとして用意されたPCI Expressはx8のショートサイズのため、一般的な自作PC向けのx16のものを使うことはできない。そのため、高橋氏はx4のビデオカードを購入してVistaのAeroが動作するための性能を確保していた。 また、改造計画には3倍速いサーバ機を目指して高橋氏お得意の塗装も含まれていた。改造中の様子も写真で紹介していたが、路上で分解したケースを赤一色に塗っている写真は、シュール以外の何物でもない。(※実際にはサーバが3倍速くなることはありません) さらに、このような改造を施す場合に注意したいのは、サーバ目的で販売されている製品にWindows VistaやWindows Home Serverなどのコンシューマー向けOSをインストールする点だ。110Geはサーバ機なのでメーカー側もサポートするOSは基本的にサーバOSのみとなる。インストールするOSで使えるドライバをあらかじめ用意しておかなくてはならないし、それを探すのは簡単ではないだろう。もちろんメーカー側の保証も受けることができないので、場合によっては動かないこともある。今回のセミナーでは高橋氏がマザーボードの型番からドライバを探し出してインストールを行ったが、すべての機能が正常に動作していたようだ。しかし、ビデオカードの件もそうなのだが、このようにユーザー自身が試行錯誤しながらマシンを組み立て完成させるのも、自作の醍醐味と言える。多少ハードルがあったとしても、その障害に立ち向かい燃えるのが真の自作ユーザーの姿なのだということを感じずにはいられない。 最後に改造した110Geにかけられていたベールをはずして実機を公開。真っ赤に塗られたケースはおおよそオフィスに置かれるサーバ機とはかけ離れた印象ではあるが、低価格なサーバ機を自作ユーザーからの視点で、個人が利用できることを証明した形となった。最初はなぜ高橋氏がこのイベントのセミナー講師なのか気になっていたが、終わってみれば納得の内容だ。サーバ機を使った自作PCという発想はなかなか一般的な自作ユーザーにはできないことだ。高橋氏の味を出しつつサーバ機を自作PCのベースにするという楽しさを感じられたセミナーであった。
なお、この赤色の110GeはNECクラサバ市場秋葉原店で展示されているので、来店すれば誰でも見ることができるとのこと。ベースマシンとなった製品も現在はキャンペーン価格で14,700円となっており非常にお買い得だ。自作PCのベースとして使えば、非常にコストパフォーマンスの高いマシンになるだろう。サーバマシンを使ってみたいと思ったらクラサバ市場で直接見て、気に入ったらNECのWeb直販サイトで購入してしまおう。なお、このキャンペーンは6月26日までなので、ご注意願いたい。
■展示会場の様子は?
さて、高橋氏のセミナーばかりをレポートしてきたが、2Fの会場では、サーバ製品の展示やデモンストレーションを行っていた。以降は、その様子をお届けする。 筆者は昼頃から展示会場を訪れたが、高橋氏のセミナー参加者と違い基本的にスーツ姿の男性で、企業の製品導入のキーマンとなるような人物が多くいるように見えた。高橋氏のセミナーの時間が近づくにつれてカジュアルな服装の人たちが増え始めたところを見ると、やはり高橋氏のセミナーが今回のイベントでは異質な点が伺える。 会場内にはタワーサーバ、ブレードサーバ、ラックサーバなどが置かれており、省電力と仮想化をメインにした展示のようだ。では、実際に目についた新技術などを紹介していこう。 ■サーバ統合の主役、SIGMABLADE SIGMABLADEはNECが販売するブレードサーバだ。ブレードサーバとは、ブレード収納ユニットと呼ばれる筐体の中に、CPUブレード(薄い板のような形のサーバ)とネットワークスイッチ類を収納したシステムのことだ。 普通のラックサーバと比べ、各パーツがモジュール化されているため省スペースで、サーバ統合に最適だと注目が高い。 特に、統合プラットフォーム管理ソフトウェア「SigmaSystemCenter」を使って、物理環境、仮想環境を問わずに同一コンソールで一元管理を行うなど、運用管理性が高いのが特長だ。他にも、サーバリソースの振り分け機能も人気が高い。これはサーバリソースの使用状況が低いサーバの作業を、他のサーバ上に振り分け、使用していないサーバの電源を落としてしまうというもの。これにより大幅な省電力が可能になっている。また、ブレード上にあらかじめ仮想化ソフト(VMware ESXi 3.5)が組み込まれた新モデルも展示されていた。インストールが不要で、仮想環境の構築がラクになるそうだ。
■省電力、省スペース、軽量化を実現したECO CENTER 今回の展示会には5月26日に発表されたばかりのECO CENTERも展示されていた。このECO CENTERはラック単位での省電力化が図られており、従来のサーバと比較して省電力、省スペース、軽量化を実現している。最近の傾向としてサーバ製品は省電力であることを意識した製品が多いのだが、このECO CENTERはその中でもさらに「ECO」へ注力したものだ。具体的にはサーバ2台を1つのモジュールとして収容、電源を共有し省電力を図ったり、ユニットの形を工夫して省スペースを実現したりしている。またこの2つの工夫で結果的に軽量化も実現できているわけだ。
■データセンター向けのExpress5800/iモデル 通常、データセンター事業者の多くは、いかに省電力であるかをポイントにサーバを選択する。これは使えるアンペア数がラック単位での契約となるため、出来るだけ効率良く1ラック当たりの搭載台数を増やしたいからだ。このデータセンター向けのExpress5800/iモデルは他社製品と比較して徹底した省電力化によって、電力消費が抑えられている。 また、省スペースの要望も多いようだ。当然と言えば当然の話になるが、設置スペースが大きくなればその分コストは増えてしまう。このデータセンター向けのExpress5800/iモデルにはハーフサイズの製品も用意されており、ラックの前後搭載によって、従来のラックサーバに比べて2倍の実装を可能とした。このような省電力、省スペース設計が、トータルでのコストダウンにつながっていくわけだ。 さらに、サーバの運用や保守の際にも便利な工夫がされている。各サーバにはEXPRESSSCOOPエンジンと呼ばれる自社開発の管理チップが搭載されており、このチップがサーバの状態を監視する。サーバの電源ON/OFFに依存しないため、リモートでの管理・制御が可能で、更に、様々な管理ソフトとの親和性も高く連携しやすいことから、管理者にとっては非常に安心で扱いやすいサーバになっている。また、小さくて軽い筐体や、両サイドに用意されたワンタッチレールにより、サーバの交換や追加といった作業が軽減されているのも便利なところだろう。
■高いセキュリティを実現するシンクライアント ここ数年企業から注目されているのがシンクライアントと言われるもの。すべてのデータ処理や記録を基本的にサーバで行い、端末側ではキーボードやマウスからの入力や画面の出力のみしか行うことができない仕組みで、ウイルスやデータ漏えいの危険性が少ないシステムだ。サーバ上で一元管理されたクライアントは電源のオンオフだけでなく異常状態なども管理することができるので、効率よく安全にシステムの運営を行うことができる。
■まとめ 日進月歩の進化を遂げるサーバの世界。ちょっと目を離すと技術に乗り遅れてしまいそうになるほどだ。筆者自身もともとSEだったため、今までも動向そのものはチェックしていたが、あらためて今回の展示会を見ていると、SEの当時に実現していたらどれだけシステムの導入が楽だったのだろうかと思うようなアイデアや工夫が公開されていた展示会だった。 また、お堅くなりがちなサーバの展示会で、セミナーの講師に高橋氏を起用し秋葉原で開催するなど、一般のPCユーザーとの接点を考えたイベントは新しい試みと言えるだろう。 なお、高橋氏のセミナーで使われたExpress5800/110GeはNECのWeb直販サイトで14,700円で販売されている。自作ユーザーの筆者としては気になる情報だが、これは6月26日までのキャンペーン価格なので、気になった方はチェックをして欲しい。また購入する前に実機が見てみたい人はクラサバ市場を訪れるとよいだろう。 ■関連情報 ■関連記事
[PR]企画・製作 株式会社 Impress Watch 営業グループ
|