はじめに

 右の画像、何が書いてあるか見えますか? 見る角度を変えても同じですか?
(シアン1%でカエルの漫画が書いてあります。白の階調が豊かなディスプレイは見えますが、悪いディスプレイは見えなかったり微かに見える程度です。また角度を変えてみると白の色が黄色になったり色が反転するのは視野角が狭いためです。)

 

 グラデーションが綺麗に、黒のスケールは均等に順番に見えますか?
(悪いディスプレイはグラデーションが均等に変化せず急に変化します。また黒のスケールは均等に変化せず途中から微かな色がついたり濃くなりすぎたりするディスプレイもあります。)

 

 あなたはよりハイレベルな作品作りをしたいですか? そのために2つの色域(プロファイル)や2つのPC・Macを同時に同一画面上で見たいですか?

 

 そんな答えをNECディスプレイソリューションズが出した。プロ向け仕様の24.1型ワイド液晶ディスプレイ「MultiSync LCD-PA241W」を2月22日に発売したのだ。この「PA241W」は液晶ディスプレイの現状を打ち破り、ひと味違った新シリーズとして登場した。

 この「PA241W」最大の特徴はNEC独自の「2画面表示」と、「エミュレーション機能」があるカラーマネージメントの対応だ。もしかしたらものすごく使える液晶ディスプレイなのかもしれない。なぜなら、デジタルの世界になったとはいえ各機器やメディアごとに同じ色に見せるのは非常に難しいのが現実で、デジタルカメラで撮った写真をプリントすると液晶ディスプレイで見た色とだいぶ違ってしまう。もちろんカラーキャリブレーションソフトで近づけることも可能だが、なかなか合うものではない。まして印刷となるとますます違ってしまう。それは各機器の持っている色空間の広さや色の表現法(RGBやCMYKなど)が違うために、色の変換時にうまくいかないためだからだ。それを補うために印刷所に色見本を付け、その色に近づけるようにお願いしたりと、デジタルとはいえアナログな対応が一番ベストだったりしている。ところがどうもこの「PA241W」ならそんな問題を解消してくれるかもしれないのだ。

筐体を検証する

スタンドのフットプリントは従来比約38%小さくなった

 性能が良いディスプレイでも使い勝手が悪くては使う気にならない。入力コネクターが足りなければ使えない・・・と当たり前の話だが、私が普段使用している「MultiSync LCD2690WUXi2」はちょっと足りないかもと思うときがある。では「PA241W」ではどうなのか見てみよう。

 スタンドのフットプリント面積が小さくなるとともに、スタンドベースをそのままに回転できるようになった。これなら机の上の物をどけなくても回転させることができる。私のスタジオではレタッチするときは正面に。撮影しているときは45°回転して、撮影している私の方に向けている。だから机の上は物があふれていると、片づけから始めることになる。自宅の書斎はほとんど回転する必要はないが、ディスプレイの後ろにあるルーターのリセット時や、ファイルサーバーなどの配線メンテナンス時には、ディスプレイを回転しなくてはならない。たまにしか必要ないのだがそのたびに大掃除になる。このように普段は気がつかないところでも、回転機能は使っているのだ。

 

 高さ調節幅が150mm・・・しかも一番下まで下げられるようになった。液晶面は少し見下ろすぐらいが疲れなくて良いのである。今までのディスプレイスタンドだと私の机では水平になるのが精一杯だったから、すごく嬉しいのだ。しかもバネ式のように上に跳ね上がることもなく、一番下に下げてロックすれば液晶上(裏)にある取っ手で持ち運ぶことができる。

 

 ケーブルを固定し、隠すカバーがスライド式になりすっきり収納できるようになった。いままでのシリーズでは、被せるのだがケーブルを綺麗に収納してないとうまく被さらず、結局外したままにしていたりした。

 

 入力端子はDisplayPort(HDCP対応)、DVI-D×2(HDCP対応)、ミニD-SUB15ピン。
DisplayPortがあることで10bitカラー入力ができる。最大4台のPCに繋ぐことができるようになっている。また写真左隅にあるコネクターはDC-OUTでオプションのスピーカー用電源だ。

 USBコネクタはアップストリーム×2、ダウンストリーム×3が用意されている。これは2台のPCとUSBケーブルで接続し、キーボードなどをダウンストリームにつなげれば、ひとつのキーボードなどを2台のPCで切り替えて使うことができる。いちいち入れ替えずに済むのですごく便利である。また、NECのホームページから無償で入手できる専用アプリケーション「MultiProfiler」で、ディスプレイの細かな設定・制御が行える。さらに、ハードウェアキャリブレーションを行うための「SpectraViewⅡ」(オプション)も準備される。

画質を検証する

PA241Wの色域は、AdobeRGBカバー率98.1%

新開発の「SpectraViewエンジン」を搭載する

 この液晶パネルはWUXGA(1920×1200)で表示方式は10bitのp-IPSパネルだ。IPS方式はご存知のとおり、液晶としては視野角は広く、見る角度が変わっても色の崩れ方も小さい。我々多くのプロ現場では好んで使っている液晶パネルだ。色域はAdobeRGBカバー率98.1%と限りなく100%に近づき、色表示能力は従来の8bitパネルは約1677万色 (約679億6723万色中)なのに対して、PA241WはDisplayPortによる10-bit入力時には約10億7374万色(約4兆3475億色中)と膨大な色を表示することができるのだ。

 同じ液晶パネルでもメーカーによって画質に大きく差が出るのは、エンジンと呼ばれている画像処理専用ICの技術的差が大きい。このPA241Wの画像処理専用ICは新開発の「SpectraViewエンジン」で3次元ルックアップテーブルと独自の色変換アルゴリズムによって色再現精度を向上させている。「LCD2690WUXi2」では12bitガンマ補正機能だったのが14bitガンマ補正機能になり、NEC独自のムラ補正機能などもこの「SpectraViewエンジン」で統合制御し安定化している。また本体内蔵の「高精度フィードバックセンサー」と「SpectraViewエンジン」によって外部センサーによるキャリブレーションをせずとも正確な色変換を行っているという。難しい話になったが、色再現能力が格段にアップし、経年劣化も内部センサーとエンジンによって調整してくれるようだ。

 この色変換で身近な例とするとsRGBがある。多くの液晶パネルはsRGBに対応し、またWebに載っている写真もsRGBがほとんどだ。実は広色域のディスプレイでsRGB変換させた場合にも色の精度に問題がある。下のグラフを見てもらうとわかるように、「PA241W」では従来機の5倍以上の色変換精度が出ている。

外部カラーセンサーを使用せずにsRGB色域へ変換した場合の精度例

 では画質性能を一般的な他社製のディスプレイと比較してみてみよう。なおPA241WはDisplayPortでPCと接続しているが、テストパターンはPhotoShop CS3の8bitチャンネルで表示させてある。表示させた画像をデジタル一眼レフカメラNikon D3でRAW撮影し、RAW現像時に色温度を液晶パネルに合わせてある。撮影した結果はカメラの特性のため見た目とは違うが、同じ条件下で撮影しヒストグラム等での比較に使用した。

PA241W

他社製ディスプレイ

 他社製に比べグラデーションの色の変化やグレースケールは均等に変化している。また他社製ディスプレイはグレーの部分で青みが強くなる傾向がある。

PA241W

他社製ディスプレイ

 最初に質問したカエルはPA241Wなら顕著に判別できる。他社製は微かに見えるものの判別は不可能だ。撮影した絵をレベル補正してみるとどちらもカエルの絵が現れるが、PA421Wの方がより濃く見えていることが分かる。

PA241W

他社製ディスプレイ

 画面を白くしてややアンダーに撮影してムラを顕著になるようにしてみた。PhotoShopでどちらも同じように調整している。PA241Wは他社製に比べグラフの山の幅が狭く輝度にムラが少ないことが分かる。また色も均一で色ムラも少ないことが分かる。

PA241W

他社製ディスプレイ

 PA241Wは赤い花びらや緑や空の階調性が豊かであるのに対し、他社製は花びらの一部は色飽和を起こし緑や空は原色のような色になっている。

 右の写真は、PA241Wと他社製ディスプレイを並べて斜めから撮影した写真だ。もちろん左側に置いてある液晶ディスプレイがPA241Wだ。見ての通り角度を変えても色変化は少なく数人で打ち合わせをするときに使っても問題がない。

新機能「2画面表示機能」と「カラーマネージメント機能」の検証

 本製品の最大の特徴となっている2画面表示機能。写真家からグラフィックデザインはもちろん、広くWebや印刷関係などのプロを意識した作りになっている。まず冒頭でも述べたように2台のPCを同液晶ディスプレイ上に同時に並べて表示させることができる。PIPの拡張版と思えばわかりやすいがそれだけではない。個々の画面のピクチャーモードを変えられる(たとえばAdobeRGBからsRGB)驚きの仕様だ!

すべての入力端子が2画面表示機能に対応

ちろんMacを表示させることもできるし、Macをメインのマシンにした操作もできる

 PhotoShop等でレタッチ中に違う色域での確認も可能だ。印刷物とWeb媒体に載せるときには必ず確認しておきたいものだ。また、ディスプレイを縦に回転させると自動的に表示も縦並びになるように設定することができる。

 また、ひとつのPCの入力を2画面に表示させ、それぞれの画面のピクチャーモードを変えて表示させることもできる。5つのピクチャーモードが用意されており、自分でカスタマイズできるので、他のディスプレイのICCプロファイルや、プリンターのICCプロファイルを指定すれば、その機器の色空間に限りなく近づいてくれる。まさにグラフィックデザイナーから写真家・印刷関係などなど多くのクリエイター同士の色意識を統一できるディスプレイだ。

2画面表示時には、ディスプレイを縦回転させると自動的に画面も縦並びになる

操作はいたって簡単にできるようになっている。PIPのボタンを押せばPIPのオンオフができ、上下ボタンで開くメニューでピクチャーモードを両方の画面に指定して変更できる仕様だ

メインメニューから「ADVANCED SETTING」に入り細かい設定もできる。

PinPからカラーマネージメントまで専用ソフト「MultiProfiler」が用意されてあり、ディスプレイ側のOSDや「ADVANCED SETTING」より解りやすくセッティングができる。製品版では日本語表記も用意されるとのことなので使い勝手はいいだろう

最後に

 まだ紹介しきれない機能もある。OSDメニューの中にはECOインフォメーションがあり低輝度で使用した場合のCO2削減量を表示してくれる。またアドバンストメニューの中には複数台のディスプレイを使ったマルチスクリーン機能があり、1つの画面を最大25台(5×5)で表示させることもできる。また色覚エミュレーション機能もP/D/T型やグレースケール表示が用意され、CUD支援ツールとして認定されているなど、さすがNECディスプレイソリューションズと言わせるだけのことはある。

 カラーマネージメントはプロの現場で常にネックな問題だった。外付けカラーキャリブレーターでなんとかプリンターや印刷物と色合わせをしてみたり、結果を見ながら想像でレタッチ作業をしていたりした。プロファイルを設定してやってもAdobeRGBにもどしたりsRGBにしたりの手間を考えると、「PA241W」のパネルでのコントロール、OSDそして新たに専用ソフト「MultiProfiler」があり至れり尽くせりな感じだ。そして色域が広がり、他の色空間にしたときの誤差も非常に少ないという。さっそく印刷プロファイルで過去の雑誌表紙の画像を表示してみた。

 透過原稿と反射原稿の差があるがほぼ同じ色や階調で、これなら雑誌の表紙用作品作りもディスプレイを見ながらできるのだ! 同じようにプリンター出力時でもおおいに活用できそうだ。

 私の愛用しているMulutiSyncLCD2690WUXi2も素晴らしいディスプレイなので買い替えるのではなく、PA241Wとコンビのスーパーデュアルディスプレイにしてみたい。今まではコンシューマ機でsRGB確認をしていたが、これなら印刷も考慮したレタッチが可能になる。スタジオに来たクライアントに撮ったその場で印刷予定のエミュレーションして見せたら、さぞ驚いて仕事倍増かも!?

【文末コラム】 環境光に気をつけよう!

ディスプレイのある部屋の照明によって、白の見え方が違ってくる。できるだけ蛍光灯の自然光に近い色の照明が良い。また画面に光が直接入ると見え方が違ってくる。そこで以前、あるカメラ雑誌に「遮光フード」の手作りの仕方をいくつか紹介した。液晶ディスプレイの側面上面には熱排気穴が設けられているので塞がないように作らなくてはならない。とても手間だし見栄えも本人次第だ。しかし今回PA241Wの発売と同時に、NECディスプレイソリューションズは「遮光フードプレゼントキャンペーン」を行っている。この純正遮光フード、オプション単体で購入すると税込19,950円なので、「PA241W」を買いたいと思っているなら絶対お得! 遮光フードの購入も考えているなら、このキャンペーン中に買うのがお勧めだ!

 

MultiSync LCD-PA241W/LCD-PA241W(BK)発売記念
NEC純正「遮光フード」プレゼントキャンペーン

◎キャンペーン期間
 2010年2月22日(月)〜3月31日(水)

◎キャンペーン対象商品
 MultiSync LCD-PA241W
 MultiSync LCD-PA241W(BK)

応募方法など詳細はこちら

※一部の画像はAdobe RGB形式で保存したものを掲載しています。そのため、表示するパソコンモニターによっては違って見える場合があります。

(Text by 若林直樹)

 

■関連情報
□MultiSync LCD-PA241W 製品ページ
 http://www.nec-display.com/jp/display/professional/lcd-pa241w/
□NECディスプレイソリューションズ株式会社
 http://www.nec-display.com/jp/

■関連記事
□NEC、外部センサーなしでキャリブレーションできる24.1型ディスプレイ
 http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100113_342077.html
□NEC、10bit IPSパネル搭載の24.1型プロ向け液晶〜3次元ルックアップテーブル搭載で色再現性向上
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100113_341989.html
□【最新液晶ディスプレイ ピックアップ】 NECディスプレイソリューションズ「MultiSync LCD-PA241W(BK)」
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/lcd/20100128_344939.html

 

[PR]企画・製作 株式会社 Impress Watch 営業統括部
問い合わせ先:watch-adtieup-necds1002@ad.impress.co.jp
Copyright (c) 2010 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.