パソコン用ディスプレイは、CRTから液晶ディスプレイにほぼ移行したといえるだろう。しかし一部のグラフィック関係者からはいまだにCRTに固執した人がいる(私は両刀づかい)。どちらにも長所短所がある。なぜCRTのディスプレイに固執しているかと言えば、表現できる色域の広さや動画などを見るときの応答速度が速いからだ。フィルムをデータ化したものやデジタル一眼レフカメラの広い色域(Adobe RGB)で撮影したものなどは大半の液晶ディスプレイでは完全には再現できていない。それは表現できる色域が「sRGB」のため、実際の色や階調が表示の段階で損なわれているからだ。

 そこでCRTも凌駕した広い色域を持ったディスプレイが登場したのだ。NECディスプレイソリューションズ株式会社からフラッグシップ機として「MultiSync® LCD2690WUXi」が発売され、液晶ディスプレイに新しい時代が到来したと言っても過言でないだろう。

 我々プロカメラマンからデザイナーなど色を扱うプロフェッショナルや作品をプリントして楽しんでいるハイアマチュアなら、この新時代の液晶ディスプレイ「MultiSync® LCD2690WUXi」を使ってみたくなると思う。

 この「MultiSync® LCD2690WUXi」は以前レビュー記事を書いて絶賛した「MultiSync® LCD2190UXi」のムラ補正機能など、いいところを踏襲したうえに色域が大幅に広がり、さらに25.5型ワイド液晶なので表示サイズが一回り大きくなるなどスペックをみただけで喉から手が出るほど欲しくなる。さっそく「MultiSync® LCD2690WUXi」(以下、LCD2690WUXi)をこの目で確認してみることにした。そしてその結果を友人でもあり愛弟子(笑)でもある物欲ライターのスタパ齋藤氏に見せ、感想を聞いてみることにした。

25.5型ワイド液晶パネル搭載の「MultiSync® LCD2690WUXi」

 大は小を兼ねると言うが、机の上に置けなくては困る。しかも格好悪くてはなお不可である。本体大きさは、589.8×306×444.2〜594.2mm(幅×奥行き×高さ)、で「2005年グットデザイン賞」を受賞している「MultiSync® LCD2190UXi」から一回り大きくなったが、デザインなど大きな変更はないようだ。これなら私の机にちょうど置けそうな大きさである。本体まわりの話は後にして液晶の話からしよう。

 液晶サイズは1920×1200(WUXGA)の25.5型ワイド液晶パネルでフルHD信号に対応している。この25.5型ワイド液晶という大きさは、画像処理を多くするにはもってこいの大きさだ。私は17型か19型液晶をデュアルディスプレイにして使うか24型ワイドディスプレイにするか迷っていた。しかし後者は気に入ったディスプレイがなく、21型の「MultiSync® LCD2190UXi」にするつもりだった。ところがその上のクラスが出たからもう考えることはないほどよい液晶サイズだ。

Photoshop CSを開けばAdobe Bridgeと同時に見ることもできるしパレットとかもたくさん開いたままにできる。ちなみに開いている夕日の写真は17型液晶と同じ大きさにしてみた。この大きさなら作業効率UP間違いないだろう。
まだ大きさがいまいちピンと来ない人のためにA4のプリンター用紙を2枚置いてみた。デザイナーやDTPに携わる人もこれならA4原寸2枚を100%サイズで開いた状態でも作業ができる。また音楽のオーサリングなどもこれだけの広さがあると便利そうだ。

LCD2690WUXiの表示色域

 さて大きさがわかったら肝心の液晶の表示性能だ。しかもこの液晶の性能ときたら超ハイスペックである。なんといっても表現色域が広い。ということはより人間の目に近づいたことになるわけだ。実際多くのsRGB対応液晶は、意外に表示色域が広くないのだ。人間の可視色域と、図中に小さな三角形で示されたsRGBの色域を比べてほしい。実はこれだけしか表示できないのだということを。ところがこのLCD2690WUXiはAdobe RGBどころか、NTSCの色域に限りなく近づいているのがわかるだろう。

 この広い色域をカバーするために、RGB各色に12ビットのルックアップテーブルを採用している。12ビットとなると679.7億色の中から1677万色を表示することになる。従来の10ビットガンマ補正機能だと約10.6億色の中から1677万色を表示していたのだから、約64倍の色から表示できるようになり、より正確な描写に近づいた。階調表現を確認するためにまずRGBとCMYKのグラデーションを見てもらおう。

Adobe RGBで撮影
sRGBで撮影
Adobe RGBで撮影
sRGBで撮影
 なんて素晴らしいグラデーションだろう! と言って、私はひとりでよろこんでいるが、残念ながらこのページをsRGB対応液晶ディスプレイで見ている人には伝えることができない。ここで使っているのは、カメラの設定を「Adobe RGB」と「sRGB」で撮ったものだが階調などにも差が現れている。同じように液晶ディスプレイの色域が違えば見え方も違ってしまうことがわかるだろう。

 デジタルカメラ全盛になった今、我々多くのプロカメラマンは、撮影色域をAdobe RGBに設定している。もちろんフィルムから作るスキャンデータも同じで、それらをプリントしたり印刷をするのだが、sRGB液晶では色域が狭く再現性が低い。プリントや印刷に合ったカラープロファイルに設定して作業するのだが、それでも擬似的に色を近づけているだけであり、アバウトなDTP作業をしているのが現状なのだ。


(0.0.0)〜(255.255.255)5ステップきざみの自作テストチャート

 液晶ディスプレイいじめのような、黒の階調テストである。RGBの世界は(0.0.0)〜(255.255.255)で表現される。(0.0.0)は黒で、それから各色5ステップで白(255.255.255)まで表示してみた。黒側の最後(0.0.0)と隣の(5.5.5)の差はほとんどわからない。しかし次の(10.10.10)との差はちゃんと出ている。私は多くの液晶を見ているが、この位置での差がわかる液晶は非常に少なく優秀であることがわかる。(5.5.5)以下になると印刷でも再現が難しいので、この差はほとんど気にしなくてよいだろう。

わかりやすくするために液晶を撮影する時にかなり露出オーバーにして、差が出ているか確認してみた。
LCD2690WUXi画面に「Adobe RGB」の画像(左)と「sRGB」(右)の画像を同時に表示してみた。明らかに緑の階調などで違いがわかり、全体の印象も違って見える。
sRGB液晶ディスプレイで「Adobe RGB」の画像を表示させたものだが、これを見てしまうともうsRGBでレタッチ作業をしたくなくなるくらいだ。

 「MultiSync® LCD2190UXi」と同じように「ムラ補正機能」MURACOMPを搭載している。これは専用画像処理ICで「輝度ムラ・色ムラ・ガンマ」を「無し」もしくはムラ補正レベルを5段階選べるようになっている。白色を表示してムラ補正レベルを「無し」「3」「5」と設定を変えつつ撮影したものだ。それをわかりやすいようにトーンカーブを変えてコントラストを付けることでムラを強調表示してみた。

ムラ補正無し
ムラ補正無し
ムラ補正レベル3
ムラ補正レベル3
ムラ補正レベル5
ムラ補正レベル5
他社製品のムラ
他社製品のムラ
 ヒストグラムが縦に細いほどムラが少ないと言える。見ての通りムラ補正をしてないときも優秀である。ムラ補正レベル5はほとんどフラットになっているし、ヒストグラムを見ても狭い範囲でグラフが上に伸びてムラのないことがわかる。ムラ補正レベルが高いほど多少輝度が落ちるが、これだけムラがなければ安心してDTP作業ができる。またこの製品のすばらしさは、一台ごとに適正な補正値を計測設定してから出荷していることだ。個体差まで個々に設定しているとは、まさに「プロによる、プロのための液晶ディスプレイ」に作り上げてくれている。

 液晶ディスプレイで動画を見ると、どうしても残像感が気になってしまったりする。特にゲームをする人は応答速度の速い液晶ディスプレイを求めている。私はそこまで速い応答速度を必要としていないが、動画を見ることも少なくないのでできたら速い方がよい。LCD2690WUXiは液晶ディスプレイの弱点である中間調の応答速度を向上させる「レスポンス・インプルーブ回路」を搭載することで残像感や違和感を低減している。

裏面は支柱の中に配線を束ねられるようになっている。DVI-D、DVI-I、ミニD-SUB15ピンが用意され、3系統の入力が可能。
横位置でのOSD
縦位置でのOSD
 OSDコントロールボタンはベゼルの右下コーナー部にあり、OSDメニュー画面を見ながら同じ方向のボタンを操作すればよい。直感的に操作できるのでとても使いやすい。また「ピボット機能」で液晶を縦位置に回転させるとOSDコントロールボタンが左下になるが、同じようにOSDメニューと同じ方向なので、縦横どちらでも操作は楽である。
OSDはオーソドックスなメニューだが裏メニュー「アドバンストメニュー」が用意されており、69の自分にあった設定が可能である。
A4版パンフレットを開いて原寸表示
A4版原寸を縦に並べて表示
写真を見ながらの原稿書きも楽勝だ!
長いWebページも快適閲覧
 これだけ画面がデカくても、回転はスムーズにできる。PDFでパンフレットを見るには横位置がよいが、ページの多いマニュアルや1ページが長いWebサイトは縦だとかなり見やすくなる。もちろんこれらを作るデザイナーも縦にして作業すれば、作業効率は抜群だろう。
縦位置写真を横画面で表示すると迫力がないが…
ピボットで縦に回転されればこんなに迫力が!!

 最後に本業である私の写真作品を表示してみた。縦位置の写真の迫力にビックリである。いままで縦位置の写真を人に見せる時は横に比べて小さくなってしまい迫力に欠けていたが、LCD2690WUXiならパッと液晶を回転させて見せることができ、相手にも満足してもらえる自信がある。

 いろいろ書いてきたが、やはり画面の大きさと色域の広さにつきる。所詮表示できない色域でのカラーマッチングなんて合っていそうで合っていないのが現実だった。そして結局プリントされたものを見て勘を働かせてレタッチすることになる。ところがこのLCD2690WUXiのように色域が広ければ、プリンターや印刷のマッチングもより容易になるはずだ。

 さて私、若林は、LCD2690WUXiの実力を十分につかんで買う気満々となった。ここで、現在までトリプルやデュアルで液晶ディスプレイを使い続けているスタパ齋藤氏にお邪魔し、LCD2690WUXiを渡して感想を聞いてみたい。


コレは画面がデカい!

 デジタル物が好きであり物欲旺盛な俺だが、実は写真も大好きである。フィルム時代から趣味で写真を撮っているが、その腕前たるやイマイチどころかイマニ〜イマサンだったりして……。

 しかしデジカメ時代になってから、撮影に関わる知識をずいぶんと得られた。てのはプロ写真家にちょいと指導を受けたからであり、すなわちストロボに露出計にカラーメーターに色温度に色空間にカラーマッチングにとアレコレ教えてもらったのであって、これらを教えてくれた人こそ、通称"師匠"こと若林直樹氏である。デジカメWatchやデジタルカメラマガジンでも おなじみのプロ写真家ですな。

 ていうかコノヒト、有り難いんですけど、ヤバいんですよ。撮影技術を教えてくれるのは嬉しいが、ついでに、非常に魅力的なハードウェア情報をビシバシと持ってくる。「このレンズいいよぉ〜、このストロボがオススメだよ〜ん、このプリンタとこの用紙を使うとサイコーなんだよねーん」と、写真絡みの垂涎モン情報をたっぷりと。物欲野郎の俺にそーゆー情報を伝えてくるもんだから、当の拙者の財布の総重量は軽量化の一途を辿っていると言えよう。

 で、その若林師匠が、またヤバげな情報を持ってきた。情報だけでなく、製品そのものも引っ提げて現れた。それはNECディスプレイソリューションズの新型ワイドディスプレイ、LCD2690WUXiなのであった。

 LCD2690WUXiは、25.5型のワイド液晶パネルを実装した大型液晶ディスプレイで、表示画素数は1920×1200ピクセル───フルHD信号を余裕を持って表示できる。流行のハイビジョン映像向けの液晶ディスプレイって感じだが、単なるHD対応液晶ではなかった。

 つーかですね、使用中の液晶ディスプレイ各種とこのLCD2690WUXiをですね、若林師匠の指南のもとにアレコレ試してみたらですね、……またですか!! 師匠!! いつもホントに危険な情報を持ってくるんだから!! ていうか俺の精神状態激ヤバ!! このディスプレイ超欲しい!! 次に買う液晶ディスプレイは絶対コレ!! そ〜んな心境に。てなわけで以降、LCD2690WUXiのよさげなトコロを見ていこう。


横でも縦でも使いやすいボタン

 現在拙者が使用中の液晶ディスプレイは、24.1型(表示対角サイズ61.1センチ)のワイド液晶で、表示解像度はWUXGA(1920×1200ピクセル)。で、ソコに若林師匠が持ってきたLCD2690WUXiは、25.5型(表示対角サイズ64.9センチ)でWUXGAである。で、これを見比べた時点で俺の第一物欲汗噴出ですよええ。

 現在比較的に多く流通している感じの24型クラス・WUXGAのワイド液晶ディスプレイ。サイズも解像度も快適である。が、LCD2690WUXiと比べちゃったりすると、ありゃりゃ、他のがなんだか見劣りする気が。てのはLCD2690WUXi、WUXGA表示ではあるが、パネルサイズ(表示対角サイズ)が一回り大きいので、表示がより見やすいのだ。文字やアイコン等々が"小さすぎない"という感じ。読みやすい。視認しやすい。25.5型・WUXGA表示のLCD2690WUXiには、まず"表示を見ていてラク"というよいバランスが感じられた。

 ま、パネルサイズが大きいから当然と言えば当然だが、しかし、前述の24.1型ディスプレイと、この25.5型のLCD2690WUXiを並べてみると、なーんかLCD2690WUXiの方がコンパクトに見える。し、設置した感じがシンプルで、操作感もスムーズだ。

 第一にLCD2690WUXiの額縁の狭さやデザイン上のストイックさでしょうな。表示部周りに余計なスペースや飾りがなく、ボタン類もスッキリと配置されている。またこのサイズのディスプレイにしては珍しく、非常に低い位置まで画面を下げられる。チルト角度は上30度・下5度、スイーベル角度が340度。高さや向きの自由度が高いので、最大級の大画面、とは言っても見やすい角度にセットできる。チルトやスイーベル時の抵抗も少ないので、角度変更等を行う時の扱いやすさも十分に持ち合わせている。

 パッと見、そのパネルサイズを感じさせないスリムさタイトさを持つLCD2690WUXi。シンプルな製品に見えるが、液晶ディスプレイとしての機能は十分に高い。例えばその入力系統として、DVI-D(HDCP対応)、DVI-I(HDCP対応)、ミニD-SUB15ピンの3系統を持つ。DVI系入力端子を2系統持つ液晶ディスプレイは珍しくなくなりつつあるが、さらにミニD-SUB15ピン(アナログ専用入力ですな)を排除していないのが好印象。例えばサブノートを臨時的に接続する時や、アナログ出力しか持たないデスクトップPCや映像出力機器類をつなぐ時 にも役立つ。

 あるいはLCD2690WUXiの設定を行う時に多用するメニュー表示とそのためのボタン類。ボタンを押すと例によってOSDでメニュー表示がなされるが、まずメニュー類が非常によく整理されていて理解しやすい。同時にこれを操作するボタン類の使い勝手が非常によい───ボタン近くにボタン機能を示すOSD表示がなされたり、ボタンの形状・配置から上下左右のカーソル移動を直感的に行える。ちなみにLCD2690WUXiは、こーんなに大画面なのにピボット表示対応。つまり縦にしての表示も可能だが、その時にもOSD表示類やボタンの位置関係が自動的に変わり、ピボット時にもこの操作性のよさは失われない。

 そんな感じで、ザッとLCD2690WUXiに触れてみただけで、なんつーかこう、要所要所のツボを押さえまくったハードウェアだと感じた次第。「あーこりゃイイですな若林師匠」と言ったところで、師匠曰く「まだキミはLCD2690WUXiの真の凄さを体験していな〜い!!」と。

 そうなのであった、LCD2690WUXiはハードウェアとして使いやすい以上に、肝心要の表示クオリティがタイヘンなコトになっていたのである。


ハードウェアキャリブレーションはゼヒ!

 LCD2690WUXiの表示能力は他の大型ワイド液晶とかとは段違いだから、ってコトで、若林師匠謹製のグラデーション画像(RGB、CMYK、グレースケール等)を表示させてみた。ら!! これはイキナリ最強にスゲく美しい!! 非常に微細なグラデーションまで出てる!! 気合入れて見なくても、パッと見ただけで、明らかに、まさしく、ホントにLCD2690WUXiは微妙なグラデーションをしっかり再現しまくり中!!

 何でもLCD2690WUXiは、PCの標準の色域であるsRGBを余裕で超え、NTSC比91パーセントの色域を達成しているとのこと。また、ムラ補正機能のMURACOMP(色ムラ・輝度ムラ・ガンマを5段階で自動補正する機能)を持ち、さらにRGB各色で12bitのルックアップテーブルを持つ(つまり600億色以上から約1677万色を選んで表示できる)。sRGB対応ディスプレイを遙かに超えた色域を持ち、表示可能な色のレンジも超広い。ゆえにフツーのディスプレイじゃ見えてこない色や階調の差が丸見えとなるのであった。

 あら!! んま!! いやだ!! LCD2690WUXiったらこれまで見えてこなかった色や階調を出しまくり!! ぶっちゃけ、グラデーションを非常に滑らか・豊富に表現してくれるので、他の今時的フツー的ディスプレイとその表示を比べたりなんかすると、例えば暗い部分の階調が非常によく見える。デジタル一眼レフとかで色域をAdobe RGBとして撮影した写真を見比べたりすると、緑〜黄色あたりがより豊かに表示されることもよくわかる。

 わりあい新しくて少々高性能なディスプレイと比較しても、LCD2690WUXiの方が良好に表示されることがわかるのだが、さらに、ちょいと古い液晶ディスプレイやブラウン管色ディスプレイなんかと比べると、けっこー愕然。あぁ、かつての拙者はこーんなショボい表示を見ていたのかぁ……と、寂しいキモチになってくる。

 ていうかこの表示を見た時点で、俺の第二〜第二五六物欲汗噴出ですよ汗ダクですよ大汗かいて脱水症状!! 工場出荷状態で、まだ何ら調整していないのにこの表示能力。LCD2690WUXiが本格的に欲しくなる俺なのであった。

 ちなみに、発色の正しさに関してもLCD2690WUXiは非常にグレイトなのであった。LCD2690WUXiの表示設定を何ら変更していない状態で、正確にキャリブレーションしたプロ向けの液晶ディスプレイの表示と比較してみたのだが、LCD2690WUXiの表示には遜色がない。出荷時に一台一台のパネル特性に合わせ、手動で調整が施されているからだそうだ。

 ただ、環境光まで含めたキャリブレーションや他機器と併せてのカラーマッチングを行いたい場合は、専用ソフトウェアのSpectraNaviと対応カラーセンサー等を使ってハードウェアキャリブレーションを行うのがいい。そこまでやればLCD2690WUXiの表示パフォーマンスを完全に使い倒すことができるだろう。


長〜いPC Watchのページも、こんなに長〜く表示!

 うわ〜WUXGAで表示品位超高いLCD2690WUXiマジ欲しぇーッ!! てなフィーリングになった俺は、若林師匠からLCD2690WUXiを奪い取って一週間ばかり使い続けてみた。ら、さらに細かい部分のよさを見つけたりして、さらにLCD2690WUXiを本気で買いたいモードに。

 使っているうちに改めて感じたのは、やはりパネルサイズと解像度がイイなぁ、と。前述のとおり、LCD2690WUXiはWUXGA(1920×1200ドット)表示。A4ドキュメントを100パーセント表示で2枚同時に見られる。画像処理ソフトを使えば画像とツールパレット類を余裕で並べられる。横に時間軸のトラックを持つソフト類(ビデオ編集ソフトや音楽ソフトなんか)を使うと、やっぱ高解像度・横長表示だと作業効率がグッと高まるのだ。

 その利便はワイド液晶ディスプレイに共通するものだが、しかし、LCD2690WUXiの25.5型というパネルサイズは快適さを加速する。現在のWUXGA表示対応ディスプレイとしては最大級のパネルサイズ(25.5型)になるわけだが、解像度・パネルサイズのバランスが非常にイイですな。長時間使っていても疲れない。画面をやや低い位置にし、気持ち顔側にチルトして使うと、テキスト系の処理をした時に非常に快適だったりする。

 それから意外にキモチイイのがピボット表示。画面を90度回転させて縦表示する機能だが、若林師匠と同様に、縦位置で撮った写真をドーンと大きく表示させるのは楽しい……だけではなく、縦方向の解像度を稼げるので、縦位置写真を大きく表示しつつの鑑賞やレタッチ等によく向く。また、縦位置でウェブページを始めとするテキスト系ドキュメントを見ると、スクロール回数激減で一覧性が高まり、これまた意外に快適であった。

 それから、細かい機能ではあるが、オートデミング機能がよかった。これは室内の明るさ・暗さをLCD2690WUXiが自動的に判断し、常に適切な表示輝度を維持するというもの。ちょいと賢いディスプレイには付いている機能だが、長い時間使っていても目の疲れが出にくいのがよい。

 LCD2690WUXiの場合はフツーのオートデミング機能だけでなく、周囲の暗さに合わせてディスプレイ自体が自動的にパワーセーブモードに入る"オートオフ機能"も働く。例えばPCの電源は入れっぱなしだけど、人間様は部屋の電気消して外出とか寝ちゃうとかって場合には、液晶ディスプレイ側も自動的に消灯状態になる。省電力につながり、また液晶ディスプレイ自体を長持ちさせられる機能だ。ちなみに、液晶ディスプレイは1日1度はオフにした方が消耗・劣化が少なくなるとのことなので、24時間PCの電源を切れないようなオフィスユースにも実用的な機能となるだろう。

 あとは、やはり、表示の正確さと美しさ、ですな。写真を始め、アートワーク用途にはドンピシャ。表示品位の高さはもちろん、サイズや解像度、対応ハードウェアキャリブレータがあること、ピボット機能の実用性まで含めて、LCD2690WUXiの大きな魅力だ。

 それと、このLCD2690WUXi、HD解像度動画を観るにはバッチシなアスペクト比・解像度があるんですけど、動画の表示も滑らかでキレイ。独自のレスポンス・インプルーブ回路により、一般的な液晶ディスプレイが苦手とする"中間調の応答速度の速さ"出てるからとのことだが、動画を長い時間観ていても、観疲れ!? ってんですか? 神経にピリピリ来るような例のアノ感覚が非常に少ない。動画表示時の発色やグラデーションも非常に自然でイイ感じである。高品位なビデオカードと組み合わせてのゲーム用途にもかなりよさそうだ。

 というわけで、全体的にヒジョーに好印象となったLCD2690WUXi。メーカー価格が高いかも!? と当初思った。しかし、プロクオリティの表示が得られて、WUXGAゆえ多種多様なソフトで広〜い表示を行えて、操作感や機能も良好であり十二分。正直、抜け目のない高品位ワイド液晶ディスプレイだと思う。毎日使うモノであり、難点や弱点が見えないあたり、コレ買っときゃぁかな〜り末永く気分よく使える=結果的に安上がりだろ>俺!! という理由で、やはりLCD2690WUXiをスゲく買いたい拙者だったりする。


ふたりともお買い上げ予定!!

スタパ:師匠、こんな「ヤバい」液晶ディスプレイ、持って来ちゃって。もう即買いスイッチON状態になっちゃったじゃないスか。

若林:これ使っちゃうと、もうほかのディスプレイ使えないよね。

スタパ:色域の広さもイイけど、縦位置での使い心地、かなり感動モノですね〜。

若林:LCD2690WUXiなら1台で足りちゃうんじゃないの? ついにスタパさんが、「シングルモニター」に戻るか!?



■関連情報
・NECディスプレイソリューションズ株式会社
 http://www.nec-display.com/

■関連記事
・NEC、プロ向けの25.5型WUXGA液晶ディスプレイ
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1120/nec.htm


若林 直樹  http://homepage2.nifty.com/nao-w/
雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や癒される空間を求めて国内外を旅している。撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。
スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。