NECのSOHO/企業向けショッピングサイト「NEC得選街」で現在“14,700円”という驚きの価格で発売されているのが、同社のエントリサーバである「Express5800/110Gd」だ。 スペックはCeleron D 341(2.93GHz)に512MB MemoryでHDDやOSは無しという構成であるが、しっかりしたミドルタワーとマザーボード、DVD-ROMドライブ、電源までついて14,700円だから、下手なケースを買うよりもお買い得である。もともとがサーバー用だからNASなどに仕立てるのは簡単だし、デスクトップとしてもかなり使いやすいものになっている。
●ずっしり重く、値段以上のケース 梱包はこんな具合(図1)で、ものすごく大きいという程ではないが、密度が高く重量はずっしりしている。中身は、タワー型の本体のほかキーボード、マウスと電源ケーブルとセットアップCD、SATAケーブル4本が入っているだけのシンプルなものだ。 もっとも、サーバー用だからあれこれついていても邪魔であるが。前面は同社のExpress5800シリーズを継承するフォルム(図2)で、光学ドライブなどはカバーの裏に配される(図3)。背面には8cm径の排気ファンが2個が配され、排熱対策も十分である(図4)。
サーバー用とあって奥行きはやや深めだが(図5)、その分内部はゆったりとしており、拡張性も十分である(図6)。ちなみに側面パネルは、背面に付けられたローレットネジ2つを手で廻すだけで開くメンテナンス性の良さだ(図7)。
さて、搭載されているマザーボードはGIGABYTEの「GA-5MMSV-RH」(図8)。MCHには「Intel 3000チップセット」(図9)を、ICHには「ICH7R」(図10)が搭載されるほか、Onboard GraphicsとしてXGIの「Volari Z9s+32MB Memory」(図11)が、LANにはIntelの「82573L」(図12)がそれぞれ搭載されている。なおマザーボードには、SamsungのDDR2-677 512MB ECC DIMM(図13)が1枚搭載されていた。
話をケースに戻すと、5inchベイと3.5inchベイは、こんな具合にワンタッチで取り外しが出来る(図14)。このあたりのメンテナンス性の高さはやはり特筆モノだろう。搭載されている電源は380WのATX12V仕様のものだが(図15)、+3.3Vが25A、+12Vも23Aと、それなりにしっかりした出力のもの。EPS12Vの2x4コネクタやPCI Express Graphics用の2x3コネクタこそ無いが、普通に利用するには不自由ない筈だ。
ケースそのものは標準的なATXをそのまま踏襲しているから、自分でマザーボードを交換したりすることも問題ない。拡張ベイはネジを使わず、ワンタッチで止められる構造になっているのはサーバーならではだし、また電源とマザーボードの間にゆとりがある事は個人的には高く評価したいポイントだ(図17)。 また、猫に起因する埃が非常に問題になっている筆者宅でも、このケースは意外にポイントが高かった。というのはフロントパネル部に設けられたエアスリットが、2種類のモールドをはめ込む形で構成されているためだ。試しにこのモールドを一度分解して間に不織布を挟み込んでみたところ、恐ろしくしっかりしたフィルターが出来上がったからだ(図18,19)。おまけに、内部の冷却の流れを考慮してか、余分な隙間は一切設けられていないので、フロント部をしっかりフィルタしておけば、他から埃が入り込む心配もない。メーカーの保証範囲は逸脱してしまうが、これならば猫の多い筆者宅でも安心して長時間運用できそうだ。
●まず、本職のWindowsサーバーとして使う さて、眺めるのはこれぐらいにして、さっそく稼動させてみることにしよう。公式にサポートされているOSは次の7種類だ。
・Microsoft Windows 2000 Server(SP4以降) 今回は手元にあったWindows Server 2003 Standard Editionのx86版をインストールしてみた(図20)。HDDにはWDの「Caviar GP 500GB(WD5000AACS)」を4台用意し、ブートドライブ(C:)はそのままにして、残り3台でRAID-5を組んでみた。(図21)
この状況で、hiyohiyo氏作の「CrystalDiskMark 2.1」をローカルディスク(図22)とRAID-5ディスク(図23)に掛けた結果はご覧の通り。RAID-5だから書き込みは遅いが読み込みはかなり優秀である。
もっとも、ファイルサーバーが自分でHDDをアクセスしてても仕方が無いので、GbE LANで接続された別のWindows XPクライアントから同じようにアクセスした結果がこちら(図24,25)。十分優秀な性能であることが判る。 最近だとHDDを4台格納できるNASキットなども手頃なお値段で販売されているが、ここまでのスループットが出せる製品はそう多くない。ローエンド品とは言え、サーバー用途向けだけあり、「高速なファイルサーバーを安く作りたい」というケースでは有力な候補の1つと考えても良さそうだ。 ちなみに消費電力は待機時で90W、HDDのフルアクセス時でも102W。HDDの温度は、室温25℃の状態でおおむね30℃〜35℃の間に収まっていた(図26)。
●デスクトップPCとして使う さて、Serverではなくデスクトップでは?ということで、まずはWindows XP Professionalをインストールしてみた(図27)。インストール直後はいくつかのドライバが見えないまま(図28)であるが、必要なドライバをダウンロードしてそれぞれインストールすると、正常に動作するようになる。(図29)
・Intel Chipset Software Installation Utility(最新は8.3.1.1009)
もっとも、使い勝手としては「ちょっと遅い」。特にウィンドウをドラッグして移動するといった操作には、ちょっとストレスを感じる。「PCMark05」を実施した結果は「スコア無し」(図30)という有様。 同様にWindows Vistaもインストールこそできるが、Performance Indexは1.0(図31)。PCMark05のScoreも相変わらず低いし(図32)、PCMark Vantageに至ってはベンチマークが起動すらしなかった。さすがにこれでは、かなり用途を限らないと使いにくい。
●ノコギリ使ってビデオカードを追加 そこでもう少し現実的に使う事を考えてみた。とにかくまず足りないのがビデオの性能、ついでメモリとなる。ビデオに関しては、PCI Express x8スロットに外部ビデオを装着してしまえば良いわけだが、x8スロットに装着できるビデオカードなど非常に限られ、高価である。そこで、マザーボードを改造する案を選んだ。マザーボードにはこんな具合に2本のPCI Express x8スロットが並んでいる(図33)。ただし片方は、ICH7に繋がるx4相当だ。そこでIntel 3000に繋がっている方を残してマスキングし(図34)、端を取り除いた(図35)。この状態で、手持ちのGeForce 7600GS/256MBのビデオカードを装着してみた(図36)。一方メモリだが、ECC付きメモリはどうしても高価である。ただIntel 3000シリーズはECCが必須というわけではない。そこで手持ちのノーブランドDDR2-677 2GB Unbuffered DIMM×2を装着してみたところ、あっさり動いてしまった。Windows XPでもPCMark05のスコアは「2943」になったし(図37)、Windows VistaのPerformance Indexは4.0(図38)、PCMark05(図39)に加え、PCMark Vantage(図40)もちゃんと動くようになった。最低限、この程度動けば「まぁ使える」という感じである。
ちなみに改造費を別にすると予算はこんな感じだ。
・ビデオカード:15,000円前後 HDD(WD Caviar GP 500GBは、遂に1万円を切った)を込みにしても3万円強といったところ。本体とあわせて5万円でお釣りが来る程度だ。
●ちょっと前のモデルでCPU強化 ではもっと欲張ってCPUまで強化したらどうなるか、というのが次の話。もともとExpress5800/110GdはCeleron D/Pentium D以外にIntel Xeon 3000シリーズをサポートしている。Xeon 3000シリーズというのは、要するにCore 2 Duoそのものであって、FSBも1066MHzまでサポートしているから、1333MHz FSBのCore 2 Duoファミリーはともかく、旧来の1066MHz FSBのCore 2 Duoならば動作しても不思議ではない。ということで、「Core 2 E6700」を試しに装着したところ、あっさり動いてしまった(図41)。当然ながら、Windows XPのみならずWindows Vistaでも性能は大きく跳ね上がり(図42〜45)、「ちゃんと動く」のレベルから「使って快適」な状態になった。 現状ではE6700は流通在庫のみになっているので、いまだとCore 2 E4500/4600とかPentium Dual-Core、Celeron E1200あたりが選択肢となるわけで(流石にCeleron 400シリーズを選ぶ理由は無いだろう)、これらではもう少し性能の伸びは少なくなると思うが、その分価格も安く抑えられる(Core 2 E4600でも16,000〜17,000円程度だ)わけで、こうした選択にも一考の余地はあるだろう。
余談になるが、Celeron Dのみの最初の構成では、おおむね待機時に90W、フル稼働時に152Wといった消費電力だった。ところがCore 2 Duo + 4GB Memory + GeForce 7600GSの環境では、待機時は85W、フル稼働時でも122W程度と省電力化も図られている。 大きな要因は、Core 2 DuoでEISTが使えるようになったことと、CPUの消費電力そのものが減ったことで、この差がメモリの増量やビデオカード増設を埋めてまだ余りあった、という事になる。また気になるケース内の温度だが、やはり室温25℃の状態で、OSの起動直後(図46)と18時間ほど連続してPCMark05を実施してみた結果(図47)を比較すると、かなりストレスを掛けた場合でも安心して運用できそうだ。
●この値段で買えるのは、4月25日まで 本来ならばこの製品、NEC直営サイトの得選街では税込35,700円という値段が付いている。実際ケースの作りやパーツを考えると、その位の金額はするであろうというもので、この値段でも割高感は感じない。それが14,700円まで下がっているという現状がむしろ異常というか、これで利益が出ているのかちょっと心配になるほどだが、とりあえずユーザーにとっては間違いなくメリットであろう。何も考えずにサーバーを立てるもよし、色々改造(魔改造?)して遊ぶもよし、よく考えられたケース+電源+光学ドライブとして購入するも良し、どんな使い方にしても後悔する事はないだろう。この値段で買えるのも4月25日まで。何かしら新しいマシン、または手頃なオモチャをと考えている読者に、強くイチオシしたい。
□NECのホームページ (2008年3月17日) [Reported by 大原雄介] [PR]企画・製作 株式会社 Impress Watch 営業グループ watch-adtieup-nec0803@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません Copyright (c) 2008 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |