FlexScan SX2761W

 FlexScan SX2761Wは、1920×1200ドット(WUXGA)の解像度を持つ、27型ワイド液晶だ。PCにおいては、WUXGA24型ワイド液晶が普及し始めているが、24型ワイドでも十分に大きい印象を持っている人も多いと思う。27型ワイドはそれを一回り大きくした製品ということになり、パッと見でも、その大きさは目を引かれるものがある。

 この液晶を支えるスタンドは、ナナオの従来製品にも搭載されているタイプのもの。チルトは上方向へ40度、スウィーベルは左右各35度の調整が可能なほか、右90度ピボットも可能だ。また、この回転機構のために高さも118mmと調整範囲が広くなっている。

 調整時も使い勝手がよく、ここで留めたいと思った位置でピタリと留まってくれる。とくにチルトとピボットは重力に逆らわない動きであることもあってか、小さな力でも軽快に動いてくれ、思い通りのところで留めることができる。

 また、背面にはケーブルホルダーも備わっている。本製品はDVI-I×2系統、電源ケーブル、USBケーブルと4本のケーブルを接続する場合があり、ケーブルをすっきり収納するためにも、こうしたケーブルホルダーは必須の存在だ。この使い勝手もよく、脇に設けられた扉風のカバーからケーブルを納めていくだけ。モニターのケーブルはそれほど頻繁に脱着することもないと思うが、ケーブルホルダーへ収納しやすく、かつ簡単にはホルダーから抜けない良く考えられた機構になっている。

高さ方向は118mmと大きく動く。調整時はパネルの重みをズシリと感じるが、それでも思い通りのところで留まってくれる

 

右90度のピボットも可能。1200×1920ドットの解像度は、インターネットや文書の表示に便利

左右各35度、上方向40度のチルト&スウィーベルを実現するのがマウント根本にあるこの部分。非常にスムーズに動く

 

背面下の端子とは別に側面にもUSB端子×2系統があり、使い勝手がよい

 

内側に開く扉状のカバーにより、収納しやすさ、外れにくさ、の両立を果たした作りになっている

Adobe RGBが持つ色域の95%をカバーする表示能力を持つ。NTSCの色域も92%をカバー

液晶パネル固有の表示ムラを、ドライブ回路側で補正してムラを低減してくれるデジタルユニフォミティ補正回路

 当然ながら、液晶の表示クオリティの面でも魅力的なスペックになっている。本製品は発色や視野角でバランスの良いVA方式のパネルを採用しており、水平/垂直各178度の視野角を確保。オーバードライブ回路の搭載により、動きの大きな動画を再生してもチラつきなどが気になるシーンはなかった。動画のほか、ゲームユースでも大きな効果があるだろう。

 そして、色再現はAdobe RGBの95%をカバー。sRGBよりも圧倒的に広い色域を表示可能で、デジタル一眼レフカメラなどを利用するユーザーにとって恩恵が大きい。

 Adobe RGBはsRGBに比べてとくにグリーンからシアン〜ブルーにかけて広い色域を持っているのが特徴で、例えば草木と青空を組み合わせた写真などでは大きな違いを感じることができる。

 また、階調表現に関しても12bitガンマ補正と16bit内部演算処理により、階調がなめらかに再現される。階調表現が豊かでないとグラデーションを表示したとき、不自然な色の段差が生まれてしまう。プロ・アマ問わず、本格的に写真を楽しむならAdobe RGBの広い範囲をカバーし、なめらかな階調表現が可能なモニターは必須といえるだろう。

 また、本製品ではナナオ独自の表示ムラ補正技術「デジタルユニフォミティ補正」が搭載されている。液晶パネルにおいては、その製造段階でパネル上の品質が一定にならず、そのまま表示を行うとほぼ確実に表示ムラが発生する。この表示ムラの少ないものだけを利用しようとすると、選別品ということで少々高価になってしまうわけで、こうしたパネルを一般ユーザーを意識した製品に搭載するのはコスト面で無理があることになる。

 そこで、パネルへの出力の段階で表示ムラを補正するアプローチをとった技術がナナオのデジタルユニフォミティ補正である。パネル一枚ずつをチェックし、各パネルの表示ムラをデータ化。そのデータを基に、表示のさいに補正しているのである。

 パネルの製造に関する問題に起因しているため、大きいパネルであればあるほど品質が一定になりづらい現実がある。27型クラスの大型液晶にとって、表示ムラは大きな課題なのである。ドライブ回路側で補正をかける手法は、表示ムラを低減しつつ、コストも抑えられる技術として注目できるものだ。

 画質に関しては、使い方によってある程度、理想・好みのパターンというのがある。例えば、テキスト編集が主体であれば輝度を暗くして目が疲れにくいよう調整したり、動画を見るなら輝度を上げて鮮やかな発色となるようにしたりする。PC用モニターの場合は、一台のモニターで複数の用途が混在するのが当たり前だが、そのときの使い方に合わせていちいちOSDメニューを出して調整するのは、あまりに手間が大きい。

 そこで便利なのが、FlexScan SX2761Wに搭載された「オートファインコントラスト」機能だ。そもそも「ファインコントラスト」機能とは、モニター側があらかじめテキストや静止画、動画に合ったプリセットを持っており、用途に合わせて手動で切り替える機能だ。切り替えはモニター前面の[M]odeボタン、またはWindows上で動作する専用ツール「ScreenManager Pro for LCD」から行える。

 これを自動化したものがオートファインコントラスト機能である。ScreenManager Pro for LCDを利用した機能で、アクティブになったアプリケーションを判別し、自動的にプリセットを切り替える機能となる。例えば、NotepadやMicrosoft WordをTextモード、Windows Media PlayerをMovieモードへ割り当てておけば、該当アプリケーションがアクティブになった瞬間に、自動的にモードが切り替わるわけだ。

 また、BrightRegulator機能と呼ばれる、モニター周辺の明るさに合わせて自動的に輝度を調整する機能もある。こうした機能の数々により、どのような場所で、どのような使い方をしても、そのときどきのベストな表示を“自動的に”実現してくれるのである。

ファインコントラスト機能は、各種用途に合わせてプリセットされた画面調整を“手動”で切り替える機能。ソフトウェア上での切り替えもできて便利である

 

オートファインコントラスト機能は、「ScreenManager Pro for LCD」上で、利用するアプリケーションと適用するモードを登録しておくことで、アクティブになったアプリケーションに応じて自動的にファインコントラストモードが切り替わる機能だ

     

BrightRegulator機能を有効にしておくと、外光センサーを読み取った光の量に応じて、自動的に適切な輝度へ調整される

 

前面の左端に備わっているのがBrightRegulator用の外光センサー。ちなみに、[M]ボタンを押すことでファインコントラストモードを切り替えることもできる

A4用紙を実寸で2枚表示しても、周辺のスペースは大きい。Microsoft Office 2007のリボンもフル表示が可能なほか、DTPソフトなどのツールパレット類を配置するスペースにもゆとりがあることになる

次世代メディアのコンテンツなどで採用されるフルHDと呼ばれる1920×1080ドットのコンテンツもドット・バイ・ドット表示が可能。大画面の魅力も享受できる。また、ハイビジョンデジタルカメラで撮影した映像の編集にも高解像度は必須だ

 WUXGAの解像度、27型ワイド、そして数々の高品質表示機能によってもたらされるPC環境は極めて快適なものとなる。例えば、本製品はナナオみずから“クリエイティブワークに向いた製品”としてアピールしているが、これはすぐに実感できることだ。広い解像度を持つということは、一度に多くの情報量を表示できるということと同義だ。

 例えば、高解像度デジカメで撮影した写真のレタッチにおいても、上下左右にツールパネルをおいても、写真自体は最小限のズームアウトで作業を進められる。クリエイティブな作業において、一度に表示できる情報は多いほうが良いことはいうまでもないだろう。

 また、DTPやワープロソフトにおいては解像度だけでなく、画面が広いという点にもメリットがある。24型ワイドでは、縦方向のサイズがA4サイズ+α程度となり、意外に余裕がない。ここに27型ワイドの圧倒的な利点が生まれる。A4サイズを縦においても、Microsoft Office 2007で採用された“リボン”と呼ばれるユーザーインタフェースをフルに利用できるといえば、その広さが実感いただけるだろうか。A4サイズを実寸表示したあとに生まれる周辺のスペースは、ほかのアプリケーションでもツールバーやツールパレットを置くスペースとして活用できる。

 また、昨今めざましい勢いで普及しているハイビジョン対応のデバイスに対しても本製品は有効な選択肢だ。ハイビジョン対応デジタルビデオカメラで撮影した動画の再生や編集においては、WUXGA解像度が必須といってもいいだろう。ハイビジョン撮影された映像は縦方向に1080ドットの解像度を持つため、WUXGAがないとドット・バイ・ドット表示はできないからだ。

 これは、Blu-rayやHD DVDのコンテンツをPCで再生する場合にも同じことがいえる。FlexScan SX2761WのDVI端子はHDCPに対応しているので、次世代メディアの著作権保護されたコンテンツもデジタル出力で再生することができるのはいうまでもない。

 そして、ホビー。ゲームにおいてはDirectX10対応アプリケーションが続々と発売されている。DirectX10によってもたらされた高クオリティな表示品質を、より大画面で堪能したいと思う人は多いのではないだろうか。本製品のオーバードライブ回路はゲームユースにおいても有効で、高速な動きを伴うFPS(First Person Shooting)ゲームにおいても液晶の表示遅延は発生しづらいメリットがある。

 このように、クリエイティブなビジネスからホーム/ホビーユースにいたるまで、あらゆるシーンで一歩上行くPC環境をもたらしてくれるFlexScan SX2761W。とくに、新しい技術を積極的に取り込んでいくような意欲的なユーザーにとって、魅力の大きい製品といえる。

(Text by 多和田新也)