「N906i」は、N905iから引き続き二軸回転式のボディを採用
トップパネルに内蔵のサブディスプレイには、時刻や電池・電波アイコンなどが表示される
トップパネルには特徴的なグラデーションが施されている
N905iで高い評価を受けたボタンを、引き続き採用
美しく輝くキーバックライトも引き継ぐ
みなさんはケータイにどんなことを求めているだろうか。私たちにとって、ケータイはもっとも身近な存在であり、欠かすことができない持ち物のひとつだが、ケータイを選ぶときの視点は、人によって、さまざまだ。スペックを重視する人もいれば、対応サービスや機能に注目する人もいるし、デザインやボディカラーにこだわる人もいる。ニーズが多様化した今日のケータイを選ぶうえでは、いずれも重要な視点だろう。
ただ、どんなケータイを選ぶ上でももうひとつ欠かすことができない要素がある。それは「どれだけ使えるか」ということだ。この「使える」には「実際に使うか」「使いやすいか」「使い物になるか」「使いたくなるか」など、いろいろな意味を含んでいる。どんなに高機能なケータイであってもデザインがカッコよくてもユーザー自身が使わなければ、その機能もデザインもサービスも意味がない。
今回、NECから登場した「N906i」は、まさにこの「使う」部分にフォーカスした端末だ。NECは従来から同社製ケータイの代名詞でもある「折りたたみ」デザインの美しいボディ、他製品を一歩リードするハイスペックをいち早く実現し、NTTドコモのラインアップの定番的な存在として、ユーザーに支持をされてきた。昨年末に登場した「N905i」では、ハイスペックと使いやすさを高次元でバランスさせ、各方面でも高い評価を得た。
今回のN906iではN905iに培われたハイスペックと使いやすさをに一歩、推し進め、楽しさと役立つ機能充実させた端末に仕上げられている。基本的なデザインはN905iを踏襲しており、側面に丸みを付け、持ちやすさを考慮したボタン部側ボディ、対比させるようにスクエアな形状を採用したディスプレイ部ボディから構成された二軸回転式ボディとなっている。トップパネルには0.9インチの白色有機ELのサブディスプレイが内蔵されており、一体感のあるパネルから浮き出るように時刻や電池・電波アイコンなどが表示される。
ボディカラーは今までのNシリーズ、最近のFOMA端末には、あまりないテイストのもので、個性的な印象を受ける。トップパネルのデザインは非常に特徴的で、それぞれのボディカラーごとに異なるグラデーションが施されており、独特のテイストを醸し出している。筆者も初めて写真で見たときは少しビックリしたが、実機を手にしてみると、意外に持ちやすい個性だということに気づかされた。販売方式が変わったこともあり、従来よりは少し長い期間の利用を考える必要があるが、実はこれくらいしっかりした個性を持つ端末の方が持っていて、安心できると言えるかもしれない。
ボタン類はN905iで「打ちやすい」と高い評価を得たPCライクキーが受け継がれている。昨今、端末の薄型化が進んでいることもあり、ボタン類も薄さに貢献するため、シートキーが採用されるなど、打ちやすいボタンが少なくなっているが、N906iのボタンは押しやすい形状と程よいクリック感に仕上げられている。筆者のような指の太いユーザーでもストレスなく、メールの文章などを入力できる。ちなみに、キーバックライトについては、ボディカラーごとに異なるカラーが設定されており、一段と個性を発揮している。
方向キーの部分には、Nシリーズおなじみのニューロポインターが採用されている。フルブラウザやクイック検索、ワンタッチマルチウィンドウ、後述するデスクトップインフォなどの機能を利用するときに役立つ機能だ。
また、N905iに引き続いて採用された二軸回転式ボディは、スタイルチェンジをすることで、ワンセグやカメラを起動することができる。もちろん、横画面の待受画面などを利用したいユーザーのために、何も起動しない設定にもでき、横画面にした状態からサイドキーを押して、ワンセグやカメラを起動するといった使い方もできる
さて、ここまではN906iの数ある特徴のうち、N905iの流れを受け継いだものを紹介したが、N906iにはNECが新たにフォーカスした「使う」を象徴する特徴も用意されている。
まず、N906iでもっとも特徴的と言えるのが「スマイルフェイスシャッター」が搭載された5.2Mピクセルカメラだ。写真撮影では被写体の人物にピントが合わず、背景や他のモノにピントが合ってしまったという失敗がよく起きるが、N905iではこうした失敗を未然に防ぐため、ファインダー内の人物の顔を認識し、顔にピントを合わせ、明るさを調整する「顔検出オートフォーカス」が搭載されていた。最大3人までの顔を認識でき、非常に簡単にキレイな撮影ができるため、ユーザーからも高い評価を得た人気機能のひとつだ。今回のN906iではこれに加え、被写体の笑顔に反応してシャッターを切ることができる「スマイルフェイスシャッター」が搭載されている。撮影モードを「スマイルフェイス」に切り替え、被写体にカメラを向けて、シャッターボタンを押せば、N906iのカメラはいわゆる「笑顔待ち」の状態に入る。あとは被写体の表情が変化し、笑顔になれば、シャッターが切れるため、シャッターチャンスを逃すことなく、笑顔の一枚を撮影できるわけだ。ちなみに、笑顔の検出レベルは3段階で設定することが可能だ。
カメラを楽しむ機能としては、新たにパノラマ撮影がサポートされている。カメラモードを[パノラマ]に切り替え、水平に動かすことで、横長の写真を撮影することができる。たとえば、何人もが横に並んだ集合写真を撮ってみたり、広大な景色を撮影するなど、いろいろな使い道がある。パノラマ撮影でカメラを動かしているときには、画面上にガイドラインが表示され、動かす速度も「GOOD」「FAST」といったガイダンスでわかるため、これらを参考にすれば、手軽にパノラマ写真を撮ることが可能だ。ちなみに、パノラマ写真の最大サイズは2592×480ドットとなっている。
ところで、ケータイのカメラで撮影した写真の使い道といえば、何を思い浮かべるだろうか。端末の待受画面や着信画像などに使うことはよく知られているが、最近、それ以上に多いのは、やはり、ブログやSNSへの投稿だろう。N906iのカメラには、ブログやSNSに簡単に投稿するための機能が用意されている。カメラを起動し、静止画の何か写真を撮影すると、プレビュー画面が表示されるが、ここに左上ソフトキーの[メール/Blog]ボタンを押すと、その画像を利用したiモードメール作成の選択画面が表示される。通常、ケータイでのブログのエントリーは特定のメールアドレス宛のメールで投稿する形式が多いが、N906iの「OWN DATA」内にある「ブログ・メールメンバー」にブログ投稿用メールアドレスを登録しておけば、[ブログ投稿]を選ぶだけで、そのメールアドレスが入力され、撮影した写真が添付された状態でメール作成画面が表示される。あとは本文を入力するだけで、ブログのエントリーが投稿できるわけだ。ちなみに、ブログではケータイから投稿できる画像サイズが制限されていることが多いが、N906iでは最大サイズ(1944×2592ドット)で撮影した場合でも[メール/Blog]ボタンを押し、[ブログ投稿]を選んだあと、[そのまま添付][QVGA縮小添付][VGA縮小添付]が選べるため、画像編集などをほとんどすることなく、すぐに投稿できる。横長で写真を撮影したときも横長のまま、メールに写真を添付できるのもケータイでブログを活用しているユーザーには、うれしい配慮のひとつと言えるだろう。
ブログへの投稿など、ケータイのカメラ機能でよく利用される使い道として、料理の撮影が挙げられる。レストランなどに美味しいものを食べに行ったとき、あるいは普段の食事の記録など、料理を撮影するシーンは人物撮影に匹敵するほど多いと言われているが、N906iでは料理をきれいに撮影するための「料理モード」という撮影モードを用意している。具体的には赤や黄色の鮮やかさを強調し、緑をみずみずしい色に補正することで、料理を一段と美味しそうに見せている。ユーザーの利用シーンを考えた便利な機能だ。
この他にも従来のN905iで搭載され、好評を得ている被写体ブレ補正と6軸手ブレ補正、撮影したシーンを自動判別することで最適な画質に補正するPictMagic IV、最大VGAサイズのムービーが撮影できる動画撮影など、まさに充実のカメラ機能となっている。
ケータイの数ある機能において、やはり、サイト接続は欠かせないもののひとつだ。特に、最近は下り方向で最大3.6Mbps対応のHSDPA方式による「FOMAハイスピード」に対応した端末が増えてきたことで、今まで以上に快適にネット環境を活用できるようになってきた。もちろん、N906iも従来に引き続き、FOMAハイスピード対応だ。
NシリーズではNEC製の通常端末として、はじめてFOMAハイスピードに対応したN904i、続くN905iと、着実にFOMAハイスピードを活かすための機能を充実させてきたが、今回のN906iでも一段と快適にインターネットを活用できるようにしている。まず、FOMAハイスピードを活かす使い道のひとつとして、従来からフルブラウザが搭載されているが、N906iでは1ページあたりの容量が最大1.2MBに拡大し、より多くのパソコン向けサイトを閲覧できるようになっている。480×854ドット表示が可能な3インチのフルワイドVGA液晶、パソコンのマウスのように操作ができるニューロポインターとの組み合わせにより、快適にフルブラウザを利用することができる。
さらに、N906iでは動画への対応を強化し、新たにフルブラウザでのWindows Media Videoの再生に対応する。インターネット上には数多くのWMV形式のコンテンツが配信されているが、これらをN906iのみで視聴することができるわけだ。N906iにはWMV形式の動画を配信しているサイトのリンク集「おすすめストリーム」も用意されており、N906iを購入して、すぐにWMV形式のムービーを楽しむことができるが、WMV形式の動画は送受信するデータの容量が大きく、パケット通信料が高額になるため、NTTドコモのパケット通信料定額制サービス「パケ・ホーダイフル」への加入がおすすめだ。ちなみに、おすすめストリームのほかに、筆者が出演していた旧インプレスTVの番組も再生してみたが、特に問題なく、再生することができている。
「クイック検索」は、フルブラウザにも対応した
こうした動画コンテンツを楽しむこと以外では、やはり、検索も重要なネット環境の活用例のひとつだ。従来のN905iでは待受画面のデスクトップからすぐに検索が実行できる「クイック検索」という機能が搭載されていたが、N906iではクイック検索もパワーアップしている。まず、検索をするためにブラウザについては、従来はiモードブラウザのみだったが、今回からフルブラウザにも対応したため、たとえば、テレビCMなどで「詳しくは○○で検索!」といった場面を見かけたときもパソコンを使わなくても手軽に同様の検索ができるわけだ。
また、クイック検索を呼び出せるシーンも待受画面だけでなく、iモードやフルブラウザ、iチャネルの閲覧中、メールや画面メモの参照中などで、画面の右下に表示される[Q Search]のアイコンをニューロポインターでクリックすれば、検索のダイアログボックスが表示され、検索を始めることができる。つまり、メールを読んでいるときでもiモードを見ているときでも気になることがあれば、すぐにクイック検索で調べられるわけだ。利用範囲も拡がったので、一段とクイック検索を利用するシーンも増えそうだ。
コンテンツの閲覧では従来に引き続き、最大5つのサイトを一括して読み込むことができる「ワンタッチマルチウィンドウ」にも対応し、タブ表示でのブラウジングも可能だ。頻繁にチェックするニュースサイトやブログなどがあるユーザーには非常に便利な機能だが、タブブラウジングについては通常のサイト閲覧時にも別ウィンドウでの表示を選ぶことができるため、サイト閲覧の利用頻度が高いユーザーにはかなり有用だ。
ケータイにはさまざまな機能が搭載され、数多くの情報も配信されてくる。しかし、ユーザーがそれらの機能や情報を有効に活用できるようになっていなければならないのも事実。ただ、機能が多ければ、情報が配信されれば、それでいいというわけではない。
N906iではこうした状況を踏まえ、新たに「デスクトップインフォ」と呼ばれる便利機能を搭載している。Nシリーズでは早くから待受画面のデスクトップに機能や連絡先情報などを貼っておくことができる「デスクトップアイコン」という機能を搭載していたが、デスクトップインフォでは端末に搭載されている機能や配信されてくる情報、保存しているコンテンツやデータなどをデスクトップにレイアウトして表示することで、さまざまな情報を参照しやすくしている。ちょうどWindows Vistaなどで採用されているウィジェットなどに近い印象の機能だ。
具体的な項目としては、新着メールや不在着信、ユーザー自身が設定するショートカット、ブラウザのブックマーク、カレンダー、最新受信したメール、iチャネルのテロップ、電話帳情報、静止画/動画、時計を設定することができる。ただ、ユーザーによって、何を表示するのか、したくないのかといった好みがあるため、これらの中から自由に表示したい項目を選ぶことができる。つまり、自分の「使うスタイル」に合わせ、カスタマイズした待受画面が作成できるというわけだ。デスクトップインフォに表示された項目は、ニューロポインターで選ぶことができ、選択したい項目をクリックすれば、各項目の機能やデータをすぐに呼び出すことができるわけだ。静止画と動画については、カーソルを移動させ、フォーカスを当てるだけで、サムネイル表示をしたり、プレビュー表示もできる。使い方はユーザーの工夫次第だが、今まで以上に待受画面が有効に活用できるようになるのは確かだ。
新たに搭載した「デスクトップインフォ」機能。自分の「使うスタイル」に合わせてカスタマイズできる
使うという点においては、メール機能も一段と充実している。たとえば、NTTドコモが新たにサービスを開始したFlashを利用したデコメアニメにも対応し、10種類のテンプレートがプリインストールされている。端末上で直接、再生できるのは906iシリーズ以降の対応機種に限定されるが、従来の905iシリーズなどの非対応端末にはURL付きメールで送信されるため、十分に楽しむことができる。お誕生日や季節の挨拶などのグリーティングメールにも便利な機能と言えそうだ。
デコメールでは従来から「おまかせデコメ」など、ユーザーが手間を掛けなくても楽しいデコメールを作成できるようにしていたが、今回はデコメピクチャにも使えるiアプリとして「フォト文字クリエイター」が用意されている。これはあらかじめ用意された砂浜や雲の静止画、あるいはユーザーが撮影した画像に、メッセージをを入力し、オリジナルのメッセージ画像を作れるというものだ。作成したメッセージ画像はデコメピクチャだけでなく、待受画像としても利用したり、友だちにメールで送信することもできる。これもユーザーの工夫次第で、かなり楽しめるアプリと言えそうだ。 さらに、iアプリでは「X-FORGE」と呼ばれるプラットフォームに対応し、3D映像を使ったリアルな動きのゲームを楽しむことができる。N906iには「アバター☆ボウリング」「パックマニア」がプリインストールされている。「アバター☆ボウリング」で利用するアバターの作成については、「アバターメーカー」というiアプリが用意されており、自分に似せたアバターを簡単に作ることができる。アバターは「アバター☆ボウリング」だけでなく、デジメールや他の対応iアプリのキャラクターとしても利用できるので、今後の拡がりにも期待ができそうだ。
この他にもN906iには、従来よりも高コントラストで視認性が大きく向上した「ワンセグ」、待受画面から[7]キーの長押しでワンタッチで文字サイズが変更できる「拡大もじ」、最下位層画面まで文字を大きく表示することができる「シンプルメニュー」、電話帳のシークレットセットと連動して、特定の人のメールを閲覧不可にできる「メールシークレット」、ロックの範囲を3段階で設定することができる「オリジナルロック」など、細かい部分も含め、非常に多くの改善が図られている。
こうしたN906iのさまざまな進化を通して見えてくるのは、やはり、N906iはユーザーが「使う」ことにしっかりフォーカスして、作られているという点だろう。ユーザーが「使いやすい」「使って楽しい」「使って便利」と実感できる環境がしっかりと作り込まれており、きっと使い込んでいくほどに、手になじみ、手放せない存在になっていくはずだ。ケータイの選び方は人それぞれだが、「ケータイを楽しく使いたい」というユーザーなら、N906iは素直に「買い」と言える端末だろう。
法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。。
■関連情報
□「N906i」製品情報(NTTドコモ) http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/906i/n906i/
□「N906i」製品情報(NEC) http://www.n-keitai.com/n906i/
■関連記事
□ドコモ、520万画素カメラ搭載「N906i」を6月18日発売
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/40372.html
□笑顔認識対応の520万画素カメラを搭載「N906i」
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/40017.html