法林岳之執筆  薄さ12.9mmのスリムボディを実現した  FOMA 90Xiシリーズ初のμモデル「N905iμ」 11月1日に発表され、11月末から販売が開始されたFOMA 905iシリーズ。なかでも注目を集めているのがFOMA 90Xiシリーズでは初のμモデルとなる「N905iμ」だ。兄弟モデルのN905iに匹敵するスペックを持ちながら、わずか12.9mmというスリムボディに機能を凝縮した端末だ。早速、実機を試用することができたので、その内容を見てみよう。

FOMA 90Xiシリーズ最薄の12.9mmを実現

90Xiシリーズ初のμモデルとなった、「N905iμ」

「N905i」とほぼ同等の仕様ながら、超薄型のボディを実現

「N904i」との比較。従来端末より高性能ながら厚みを減らしているのが一目瞭然でわかる

トップパネルには白色有機ELを内蔵し、左右に2つのイルミネーションが配置されている

側面のディスプレイ部とボディ部の合わせ部分にスリットが入っており、開けやすくなっている

 ケータイは常に持ち歩くモノだけに、やはり、持ちやすいサイズが好まれる。小型化、薄型化はケータイが進化してきた歴史の一部とも言える。しかし、ケータイが話すための道具から使うための道具へと進化して以来、メールやコンテンツ閲覧のために大画面ディスプレイが採用され、最近ではカメラやワンセグといった新しい機能が相次いで登場したことにより、高機能端末では小型化や薄型化の実現が難しい傾向にある。そんな中、今年、NTTドコモはFOMA 70Xiシリーズにおいて、超薄型ボディを実現した「μモデル」を発表し、注目を集めた。

 今回、NTTドコモから発売されたNEC製端末「N905iμ」は、同時期に発売された同じNEC製端末「N905i」とほぼ同様の仕様を搭載しながら、最薄部で12.9mmという超スリムボディを実現したモデルだ。従来のμモデルはFOMA 70Xiシリーズだったが、今回のN905iμはFOMA 90Xiシリーズ初のμモデルということになる。「ALL IN 世界ケータイ」と銘打たれた905iシリーズの仕様を満たしながら、従来の90Xiシリーズにはなかったスリムボディを実現できたわけだ。

 これだけのスリムボディを実現できた理由はいくつもあるが、ボディをよく見ると、その秘密が見えてくる。たとえば、多くの基板がレイアウトされるボタン部では、電池パック装着部よりもヒンジ部寄りの部分にほとんどのパーツが集積されている。電池パックを取り外し、ボタン部の表面と指で挟むように持ってみると、その厚みがほぼシートキーのみであることがわかる。

 ボディは端末を閉じた状態で、もっとも薄い先端部が12.9mm、もっとも厚いカメラ部でも14mmに仕上げられている。トップパネルはまったくのフラットなデザインではなく、中央から側面に向かって、微妙に曲線が付けられており、先端部の曲線とも相まって、優雅で美しいデザインにまとめられている。トップパネルはボディカラーの部分と白色有機ELが内蔵された部分で分けられたデザインとなっているが、その間に左右2つのイルミネーションが内蔵されており、電話やメールの着信、スケジュール、ToDoなどに加え、ケータイを閉じるなどのアクションに合わせ、美しく点滅させることが可能だ。光り方はシンプルな点滅だけでなく、ウェーブやリズム、ホタル、ランダムといったパターンを選ぶことができる。ちなみに、イルミネーションは着信時だけでなく、友だちの誕生日や記念日などのタイミングで光って知らせることも可能だ。

 こうしたスリムボディの端末では、薄さを追求するあまり、デザインやハードウェア的な使いやすさがスポイルされる懸念があるが、N905iμは美しいボディラインに加え、側面のディスプレイ部とボタン部の合わせ部分にスリットを入れ、ボディを開けやすくするなどの工夫を施している。端末を開いたときの側面については、従来のNシリーズ端末のアークラインやLink Face Designと同じように、ヒンジ部分の合わせをキレイに仕上げることで、美しいサイドラインを作り出している。

 また、ボタンについては、スリムボディ実現に貢献しながら、指をスムーズに動かせるシートキーを採用する。シートキーは押下感や各ボタンの境目がわかりにくいことがあるが、程よいクリック感を確保するとともに、各ボタンの間にリブを付け、それぞれのリブにLEDを付けることで、視認性と使いやすさを確保している。最初は光るリブを押してしまいそうになるが、慣れてしまえば、シートキー部分をきちんと押すようになる。ちなみに、シートキーはフラットなデザインのため、指紋の跡が気になることがあるが、N905iμでは指紋が付きにくい表面処理を施すことで、質感の高いボタンに仕上げている。

 ボディ背面にはオートフォーカス対応2Mピクセルカメラが内蔵されているが、背面部分もきれいに仕上げられている。カメラ部分がわずかに盛り上がるような形状だが、カメラモジュールの厚さによる影響だけではなく、なだらかな曲線で仕上げることにより、ユーザーが端末を持ったとき、握りやすく、カメラへの指被りを防ぐという意味合いも持つ。

ボタンは指をスムースに動かせる、フラットなシートキーを採用
各ボタンの間に付いているLED付きのリブは視認性と使いやすさを確保している
指紋が付きにくい表面処理を施しており、質感の高い仕上げとなっている
背面は2Mピクセルカメラを内蔵している分わずかに盛り上がっているが、なだらかな形状で端末を握りやすくなっている

3インチフルワイドVGA液晶を搭載

 薄さ12.9mmというスリムボディを実現したN905iμだが、スペック面での妥協はない。たとえば、液晶ディスプレイもそのひとつだ。従来の70Xiシリーズのμモデルはコンパクトなボディを実現するため、標準的なサイズである2.3インチのQVGA液晶が搭載されていたが、N905iμはN905iと同スペックの3インチフルワイドVGA液晶を搭載する。最大480×854ドットの高解像度表示が可能だ。

「N905i」と同スペックの3インチフルワイドVGA液晶を搭載

 VGAクラスのディスプレイについては、FOMA端末において、NECはN903iでいち早く搭載し、今年春に発売されたN904iでも3インチのワイドVGA液晶を搭載していた。N905iμもサイズ的には同じだが、今回は待受画面だけでなく、メールやコンテンツ閲覧をはじめ、アプリ、フルブラウザなども広く高精細な画面で利用することが可能だ。しかもVGAの解像度に合わせた高精細なゴシック対と明朝体の2つのフォントを搭載しており、なめらかで読みやすい文字を表示できるようにしている。N904iに引き続き、より大きな文字を表示したいユーザーのために、最大60ドットで文字を表示できる「拡大もじ」という機能も用意されているが、メールやコンテンツ閲覧画面だけでなく、発着信履歴や電話帳など、頻繁に利用する画面についても大きな文字で表示することが可能だ。シニアユーザーにもうれしい配慮のひとつだ。

 また、VGA液晶を活かすための機能として、新たにライフヒストリービューアという機能が搭載される。ケータイは使い続けていると、メールや写真など、いろいろなデータが蓄積されてくるが、ライフヒストリービューアは端末に蓄積されてきたデータを時系列に沿って、表示するための機能だ。言わば、ちょっとした「ケータイ版自分史ノート」のように、そのケータイを使ってきた思い出を振り返ることができるわけだ。ライフヒストリービューアは待受画面から起動することができ、カメラで撮影した写真や動画、iモーション、メールの送受信履歴、スケジュールを表示することができる。表示されたデータを選択すれば、プレビュー画面が表示され、そこからファイルを開いて、ムービーやメールの画面に移動することも可能だ。905i/705iシリーズ以降、ケータイの買い方が変わり、従来よりも長く使うユーザーが増えてくることを考慮したユニークな機能だ。

最大5カ所までiモードサイトを一括表示できる「ワンタッチマルチウィンドウ」

 コンテンツ閲覧に利用するブラウザについてもVGA液晶を活かすための強化が図られている。N905iμにはBookmarkから選択したiモードサイトを最大5カ所まで一括して表示できる「ワンタッチマルチウィンドウ」が搭載されている。たとえば、お気に入りのブログやニュースサイト、SNS、掲示板など、頻繁に利用するサイトがあるときは、ワンタッチマルチウィンドウで一括起動させて、タブを切り替えながら、それぞれのページを閲覧するといった使い方ができる。ちなみに、ワンタッチマルチウィンドウで起動した5カ所のサイトのほかに、iチャネルも同時に表示することが可能だ。iモードをフルに活用するユーザーにはうれしい機能だ。

 パソコンのホームページが見られるフルブラウザについては、N904iから継承したスタンダードタイプとビューアタイプの2種類が利用できる。ホーム設定にはGoogleがプリセットされている。N905iμはN905i同様、HSDPA方式によるFOMAハイスピードに対応しており、フルワイドVGA液晶とも相まって、エリア内であれば、パソコン向けホームページもストレスなく、閲覧することができる。ただし、パソコン向けホームページはデータサイズも大きいため、パケ・ホーダイフルに加入するのがおすすめだ。

「クイック検索」は、iモードやフルブラウザ(スタンダードタイプ)、あるいはメール画面などからすぐに気になるキーワードを検索できる

 検索では、知りたい情報をすぐに調べられる「クイック検索」が非常に便利だ。iモードやフルブラウザ(スタンダードタイプ)の閲覧中、あるいはメール画面などで、右下ソフトキー([iチャネル]ボタン)を押し、表示された機能メニューから「クイック検索」を選ぶと、検索ウィンドウがポップアップ表示される。そこに気になるキーワードを入力すれば、すぐにiモードメニューで検索ができるという機能だ。検索結果はiモードブラウザで表示されるが、このとき、直前の機能は動作しているため、メールの画面から検索をしたのであれば、[MULTI]キーを押せば、すぐにメールの画面に戻ることができる。iモード閲覧中であれば、検索結果は新しいタブに表示されるため、タブを切り替えれば、元の画面にすぐ戻ることができるわけだ。

スリムなボディに充実の機能

 ボディがスリムなのはいいが、対応サービスや搭載されている機能についてはどうだろうか。基本的な仕様は兄弟モデルのN905iと共通となっており、HSDPA方式によるFOMAハイスピード対応、3G+GSM方式による国際ローミングサービスのWORLD WINGにも対応する。FOMAハイスピードによっては、地域によって、対応エリアに含まれていないケースもあるが、端末を一定期間、継続して利用することを考慮すれば、最新ネットワークに対応しつつ、国際ローミングも利用できるようになっていることは、ユーザーとしても心強い。

iアプリも海外向けを意識したものがプリインストールされている

 国際ローミング対応ということもあり、iアプリも海外向けを意識し、音声入力による翻訳ができる「しゃべって翻訳 for N」、外貨換算や主要国の基本情報などが収録された「海外旅行便利ツール」がプリインストールされている。iアプリについては、直感ゲームの「絶対視覚」、数字を使ったゲームの「PLATINUM SURIKI」、「地図アプリ」、「モバイルGoogleマップN」などがプリインストールされており、エンターテインメントから実用まで、幅広く活用できる。

 N905iμがN905iと比較して、大きく異なるのはワンセグを搭載していないことだが、Audio&Visualエンターテインメント機能としては、音楽再生や映像コンテンツ再生に対応している。NTTドコモがFOMAハイスピード対応端末向けに提供する「Music&Videoチャネル」で配信された番組の再生をはじめ、定額制で音楽が楽しめる「うた・ホーダイ」、最大10MBのiモーションをダウンロードして再生できる「ビデオクリップ」が利用可能だ。通常の音楽再生についても着うたフル、SD-Audio、Windows Media Audioの3つのフォーマットに対応しており、それぞれのフォーマットをシームレスに再生できる「マルチミュージックプレーヤー」で自由に音楽を楽しむことが可能だ。連続再生時間も着うたフルで約55時間、SD-Audioで約85時間、Windows Media Audioで約55時間と、スタミナ再生を可能にしている。ちなみに、音楽再生についてはヤマハが開発したAudio Engineの搭載により、圧縮音楽で失われた音域を補完するなどのチューニングが行なわれており、オーディオ専用プレーヤーに負けない音質で高品位なサウンドを楽しむことができる。

 実用的なところでは、Nシリーズの十八番とも言えるメール周りの機能が充実している。N905iμではメール作成時の日本語入力がインライン入力に対応したため、少ないキー操作でメールの本文を入力できるようにしている。デコメールも入力した文面から感情を理解し、ワンタッチでデコメールに変換してくれる「おまかせデコメ」が従来モデルから継承されている。N905iμではおまかせデコメでデコレーションされる項目に、絵文字や顔文字なども付加されるようになり、ビギナーでも一段と表現力の豊かなデコメールを作成できるようにしている。

スマートにハイスペックを使いこなしたい人におすすめ

 NTTドコモの主力ラインアップであるFOMA 90Xiシリーズは、フラッグシップモデルという位置付けだが、高機能&ハイスペックであるために、ボディサイズが大きくなってしまったり、なかなかスリム化が難しい傾向があった。

 しかし、今回発売されたN905iμは、905iシリーズの基本仕様を満たしながら、最薄部で12.9mmという今までの90Xiシリーズにはないスリムボディにまとめ上げている。兄弟モデルであるN905iに搭載されているワンセグこそないものの、ハードウェアのスペックや対応サービス、搭載する機能なども妥協することなく、新時代のフラッグシップモデルとして仕上げられたという印象だ。スリムなボディながら、ユーザーの使い勝手もよく考慮されており、使い込んでいくほどに手になじんでいくケータイといえる。ハイスペックでスタイリッシュなケータイをスマートに使いこなしたいユーザーに、おすすめできる端末と言えるだろう。

■関連情報
□「N905iμ」製品情報(NTTドコモ) http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/905i/n905imu/
□「N905iμ」製品情報(NEC) http://www.n-keitai.com/n905imyu/
□「N905iμ」Photo Gallery http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/905i/n905imu/gallery.html
□「N905iμ」スペシャルサイト http://www.n-keitai.com/pickup/n905i_n905imyu/
□YUKI 着うた(R)プレゼント! http://www.n-keitai.com/pickup/n905i_n905imyu/campaign/yuki/

■関連記事

□NEC、フラッグシップゾーンでのシェア回復を目指す
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/37322.html
□厚さ12.9mm、90Xiシリーズ最薄の「N905iμ」
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 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/37226.html

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法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中