法林岳之執筆  ハイスペックと使いやすさをバランスさせた  NEC初のワンセグ対応ケータイ「N905i」 11月1日に発表されたNTTドコモの905iシリーズ。各社とも個性的なモデルがラインアップされているが、NECからは初のワンセグ対応ケータイとなる「N905i」が登場する。従来のN90Xiシリーズで培われたノウハウを凝縮しながら、他製品にはない新しい機能をしっかりと搭載した意欲的なモデルだ。早速、実機を試用することができたので、その出来をチェックしてみよう。

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NEC製FOMA端末初の二軸回転式ボディを採用

 「NEC製端末と言えば?」ケータイ業界に関わる人だけでなく、多くの一般ユーザーも含め、「折りたたみ」を挙げるだろう。そんなNEC製端末の代名詞とも言える「折りたたみ」のボディデザインを進化させ、二軸回転式という新しいスタイルを模索したのが今回発売された「N905i」だ。NEC製のFOMA端末としては、初の二軸回転式ボディということになる。

 二軸回転式ボディにはいくつかの形状があるが、N905iは液晶ディスプレイを180度反転させ、ボタン部側に折りたたむことができる形状を採用している。ヨコスタイルに切り替えることで、ワンセグを視聴しやすくしたり、カメラを使いやすくしたりするというメリットを持つが、スタイルチェンジによって、ワンセグを一発起動できるようにするなどの工夫も加えられている。後述するが、このスタイルチェンジは設定を変更することで、カメラにするなど好みに応じた対応が可能。ディスプレイ部の回転もスムーズで、ヒンジの剛性感も安心できるものだ。

NEC製FOMA端末として初の二軸回転式ボディを採用
液晶ディスプレイを180度反転させ、ボタン部側に折りたたむ形状
ボタン部は側面を少しラウンドさせた形状で、ディスプレイ部はスクウェアな形状のボディとなっている

 ボディの形状については、スタイルチェンジによる多彩な表情を活かすため、印象的なデザインが採用されている。ボタン部は持ちやすさやボタンの押しやすさを考慮し、側面を少しラウンドさせた形状であるのに対し、ディスプレイ部はスクウェアな形状を採用し、ボタン部と対比させている。トップパネル側にはサブディスプレイとなる「イルミネーションウィンドウ」が搭載されているが、白色有機ELを採用しており、黒いパネル部分に浮かび上がるように日時や着信の有無などの情報が表示される。トップパネル側のフロントフェイスは、ブラック、レッド、ホワイト、ピンクの4つのカラーごとに異なるテクスチャを採用し、それぞれのボディカラーを引き立てている。フラットな仕上げのボディカラーに比べ、テクスチャを施したトップパネルは指紋などの跡があまり気にならないのもうれしい点だ。

 操作系ではNシリーズの十八番であるニューロポインターを採用しているが、それ以上に特筆すべきはパソコンのキーボードのような立体感を実現した押しやすいボタンだ。最近は端末の薄型化が注目されていることもあり、文字入力などで頻繁に利用するダイヤルボタンの扱いが今ひとつなおざりにされている印象もあるが、iモードの文化、メールの文化を築き上げてきたNシリーズらしく、押しやすさをしっかりと考えたボタンとなっている。キーイルミネーションもボタンの周りが美しく光るようになっており、端末を開いたときに一度、もっとも明るくなり、徐々に標準的な明るさに落ち着いていくという細かい演出もしている。

トップパネル側には白色有機ELを採用したサブディスプレイを搭載
押しやすさを考えられた、立体感のあるボタン
キーイルミネーションにも細かい演出がなされている

顔検出AFにも対応した業界最高峰の5.2メガピクセルカメラ

国内最高峰の520万画素カメラで、高いクオリティの撮影が可能

 二軸回転式ボディを採用したN905iだが、そのスタイルを活かす機能のひとつがカメラだ。

 今回のN905iには国内最高峰のスペックとなる520万画素カメラが搭載されている。520万画素と言えば、デジタルカメラの普及モデルと同等であり、Nシリーズのカメラで培われてきたノウハウを活かすことにより、静止画も動画も高いクオリティでの撮影を可能にしている。

 N905iは撮影時にピントを自動的に調整するオートフォーカスに対応しているが、ファインダー内の人物の顔を認識して、自動的にピントを合わせ、明るさを調整する「顔検出オートフォーカス機能」を搭載する。顔は最大3人まで検出し、大きさや位置によって優先順位を決め、被写体の顔や表情をしっかりと捉えた撮影を可能にしている。

 また、Nシリーズでは従来モデルからカメラ機能において、さまざまな補正技術を搭載してきたが、今回は一段とバージョンアップしている。まず、撮影時の補正については、N904iで搭載された6軸手ブレ補正に加え、新たに被写体ブレ補正にも対応する。6軸手ブレ補正は撮影時の縦、横、前後のブレに、回転ブレを加えた6軸方向の手ブレを補正するものだ。これに対し、被写体ブレは撮影する画像の中から動く被写体を検出・分離し、動いていない部分と別々に処理をする。この2つのブレ補正により、動きのある被写体も背景とともに、ブレを抑えて、美しい映像を撮影できるようにしている。この顔検出オートフォーカスとダブル補正の搭載は、筆者の知るろことでは現時点で国内初でN端末だけに搭載される機能だ。さらに、Nシリーズの端末に搭載されていた画像処理技術の「PictMagic」が採用されていたが、N905iは最新版のPictMagic IVが採用されており、撮影した画像を顔や風景、夜景などのシーン別に判別して、最適化した映像を保存するようにしている。

最大三人まで検出する「顔オートフォーカス機能」を搭載
手ブレ補正なし
手ブレ補正あり

 動画撮影については、最大640×480ドットサイズでの撮影が可能となっている。圧縮形式もH.264に対応し、30fpsでのなめらかな動画を撮影できるようにしている。最近では動画サイトの人気上昇により、ケータイで動画を撮影するケースが増えてきているが、N905iであれば、高画質で大きなサイズの動画を撮影できるわけだ。

スタイルチェンジ設定では、ワンセグの起動のほか、カメラ起動の設定にも切り替えられる

 ちなみに、カメラ機能の起動については、デスクトップに表示されたアイコンを選択したり、メニュー画面から起動したりするだけでなく、設定を変更することにより、液晶ディスプレイを反転するスタイルチェンジに連動して、起動することも可能だ。スタイルチェンジの出荷時設定はワンセグの起動に割り当てられているが、カメラの使用頻度が高いのであれば、こちらの設定に切り替えると便利だ。

■撮影サンプル
※撮影サンプルのリンク先は撮影画像をコピーしたものです

 

ヤマハサウンド対応で高音質が楽しめるワンセグ

N905iは、NEC製端末として初めてワンセグ機能を搭載

 カメラと並ぶN905iの注目機能のひとつに、NEC製端末としては初めて搭載されたワンセグ機能が挙げられる。

 まず、ワンセグの起動については、前述のように、液晶ディスプレイを反転するスタイルチェンジによって、一発起動が可能だが、端末を開いた通常スタイルでも液晶ディスプレイ部左側面にある[TV]キーを長押しすることでも起動することができる。

 ワンセグの視聴は通常スタイルとヨコスタイルで利用できるが、ヨコスタイルについてはオプションの卓上ホルダに横置きして視聴したり、通常スタイルも視聴中にダイヤルボタンの[9]を長押しして、横表示に切り替え、ディスプレイを見やすい角度に変更して視聴するといったことをできるようにしている。連続視聴時間は標準で3時間20分だが、ECOモードに切り替えることで、最長3時間50分まで視聴することが可能だ。

 ワンセグ対応端末はいつでもワンセグが視聴できるというメリットがあるが、その一方でケータイであるがゆえに、視聴中の着信など、実際に使っていく上で気になる点も多い。N905iには「クイックインフォ」という機能が搭載されており、ヨコスタイルでワンセグ視聴中にメールが届くと、画面の最上段に送信者や題名をテロップ表示することができる。このクイックインフォ表示中に反転したディスプレイを通常スタイルに戻すと、メールとワンセグの分割表示に切り替えることができ、ワンセグを視聴しながら、メールの返信ができる。再びヨコスタイルに戻せば、自動的に横画面表示に切り替わり、ワンセグの視聴を継続することが可能だ。

[STEP1]:クイックインフォでメールをお知らせ。画面上部にテロップが流れる
[STEP2]:スタイルチェンジで同時に閲覧。メールとワンセグの2画面表示に
[STEP3]:ワンセグ見ながらメールを返信できる
[STEP4]:ヨコスタイルに戻して、大画面で続きを楽しむ

 また、音声着信があったときは、最大2分間まで視聴中の番組を録画し、通話終了後に止めたところから視聴を再開できる「タイムシフト再生」にも対応する。他機種のタイムシフト再生では着信時に操作が必要だったり、設定の変更が必要なことがあるが、N905iは常時、最大2分間のデータを保存しているため、音声通話の着信時はもちろん、他の用事でちょっと番組の視聴を停止したいときなどにもすぐに使えるというメリットがある。再生については音声付きの1.3倍速、音声なしの2倍速、通常速度から選択することが可能だ。録画については、視聴中の番組を録画できる「見ながら録画」、番組表からの録画予約にも対応する。

ヤマハが開発したAudio Engine™を搭載しており、10種類のワンセグ効果を切り替えられる

 そして、N905iにはヤマハが開発したAudio Engine™を搭載されているため、ワンセグ視聴中に側面の[プッシュトーク]ボタンを押すことで、「ライブ」「コンサート」「ドラマ」「スポーツ」「ニュース」「バラエティ」「映画」「SFX」「音漏れ低減」「OFF」の10種類のワンセグ効果を切り替えられるようにしている。つまり、視聴する番組に合わせてワンセグ効果を選べば、より高音質のリアルなサウンドを楽しむことができるわけだ。ちなみに、このAudio Engineによる効果は、ワンセグだけでなく、当然のことながら、音楽再生にも活かされており、映像も音楽も高音質なヤマハサウンドで楽しむことができる。

 音楽及び映像コンテンツについては、FOMAハイスピード端末向けの「Music&Videoチャネル」で配信される番組、定額で音楽を楽しめる「うた・ホーダイ」、Windows Media Audio、着うたフル、SD-Audioの3つの音楽データをシームレスに再生できる「マルチミュージックプレーヤー」、最大10MBのiモーションをダウンロードして再生できる「ビデオクリップ」と利用環境が充実している。マルチミュージックプレーヤーでの音楽再生では、Windows Media Audioと着うたフルで約55時間、SD-Audioで約85時間と、FOMA905iシリーズの中では最長の連続再生時間を実現したことで、たっぷりと高音質の音楽再生を楽しめる。

映像やテキストを美しく表示する3インチフルワイドVGA液晶

 5.2メガピクセルカメラとワンセグが魅力のN905iだが、これを支えているのが二軸回転式ボディに搭載された3インチのフルワイドVGA液晶ディスプレイだ。

3インチフルワイドVGA液晶ディスプレイを搭載

 NECでは昨年のN903i、今年のN904iとVGAクラスの液晶ディスプレイを採用してきたが、今回はサイズも3インチと大きくなったうえ、メールやブラウザの画面もフルVGA対応になったことにより、VGAサイズをフルに活かすための環境が整っている。表示フォントについては、VGA対応フォントとして、ゴシック体と明朝体の2種類が搭載されており、なめらかで高精細な文字で表示することが可能だ。

 また、フルワイドVGA液晶を活かす新しい機能として、ライフヒストリービューアという機能が搭載される。ライフヒストリービューアはメールの送受信履歴、カメラで撮影した画像などの一覧を時系列に沿って表示できる機能で、言わば、そのケータイを使ってきた思い出を振り返ることができる「ケータイ版自分史ノート」のような使い方ができるものだ。ライフヒストリービューアに表示されている画像やメールを選択すれば、そのままプレビューを表示することができ、直接ファイルを開くこともできる。静止画やメールの送受信履歴以外にも動画やiモーション、スケジュールなども表示することができる。ケータイの買い方が変わり、従来よりも長く使うユーザーが増えてくることを考慮したユニークな機能と言えそうだ。

ライブヒストリービューアは、時間軸を拡大・縮小して一覧表示でき、どのズーム状態からでもプレビュー画面に移行できる

 ケータイとしての基本機能についてもフルワイドVGA液晶を活かすためのパワーアップが図られている。なかでも特におすすめしたいのが「ワンタッチマルチウィンドウ」だ。iモードのブラウザは基本的に公式サイトや対応サイトなどを1つだけ表示する仕様となっていたが、N905iではBookmarkから選択した最大5カ所のiモードサイトをタブ形式で一括表示できる「ワンタッチマルチウィンドウ」という機能が搭載されている。たとえば、ニュースサイト、ブログ、天気予報など、毎日、決まってみるようなサイトがあるときは、Bookmarkに登録しておき、一括起動させて、タブ表示を切り替えながら閲覧するわけだ。ワンタッチマルチウィンドウでは最大5カ所のサイト表示に加え、iチャネルもいっしょに表示できるため、iチャネルで気になった情報を他のサイトでも確認するといった使い方もできる。iモードをヘビーに使うユーザーにもおすすめの機能だ。

 iモード閲覧時やメール、iチャネル、フルブラウザ(スタンダードタイプ)を表示しているとき、気になるキーワードをすぐに検索できる「クイック検索」も便利な機能だ。たとえば、メールの画面を表示していて、何か検索したいことがあるときは、画面右下のボタンにポインタを合わせると、検索ウィンドウがポップアップ表示して、検索キーワードを入力すれば、すぐに検索ができるというものだ。このとき、メールの画面は閉じていないため、[MULTI]キーを押せば、すぐにメールの画面に戻ることができる。ちなみに、検索はiモードのトップメニューの検索ボックスを利用したときと同じ内容が表示される。

Bookmarkから最大5カ所のiモードサイトを選択可能
「ワンタッチマルチウィンドウ」ではタブ形式で一括起動できる
「クイック検索」機能は、iモード、メール、iチャネル、フルブラウザ(スタンダードタイプ)を表示しているときに利用可能

 フルブラウザについては、N904iで搭載されたビューアタイプと通常のスタンダードタイプの2種類が搭載されており、両タイプともダイヤルボタンの[9]を押せば、表示の縦横を切り替えることができる。起動時のホームは「Google」がプリセットされている。N905iはN904iに引き続き、FOMAハイスピードに対応しており、iモードサイトだけでなく、フルブラウザも快適に利用できるのも見逃せないメリットだ。

 メール周りの使い勝手ではメールの文字入力がインライン入力に対応し、Nシリーズ端末の人気機能のひとつである「おまかせデコメ」も顔文字や絵文字を自動で追加する5種類の候補が表示され、誰でも簡単にデコメールを利用できるようにしている。

 この他にも3G+GSMによる国際ローミング「WORLD WING」対応、ビギナーにも使いやすい「シンプルメニュー」、発着信履歴やiチャネルなども大きな文字で表示できる「拡大もじ」など、実用的かつ便利で使いやすい機能が充実している。

ハイスペックを思いきり使いたい人におすすめ

 NTTドコモが11月末から販売を開始した905iシリーズは、FOMA 90Xiシリーズの集大成的なモデルと位置付ける向きも多く、各社とも魅力的な端末をラインアップしている。そんな中において、N905iはN904iまでに搭載されてきた機能やスペックを一段とアップしたハイスペック端末として、仕上げられている。顔検出オートフォーカスや被写体ブレ&手ブレ補正を搭載した「5.2メガピクセルカメラ」、録画予約やタイムシフト再生にも対応した「ワンセグ」、広視野角で映像やコンテンツを楽しめる3インチの「フルワイドVGA液晶」など、従来モデルがまったく霞んでしまうほどのハイスペック端末と言えそうだ。しかし、N905iはスペックにこだわるだけでなく、メールなどで頻繁に利用するボタンの押しやすさ、iモードブラウザのワンタッチマルチウィンドウ、いつでも検索ができるクイック検索、メールやスケジュールなどの履歴を楽しむことができるライフヒストリービューアーなど、ユーザーがケータイを使っていく上で、本当に役立つ機能をきちんとサポートしている点は高く評価できる。N905iはハイスペックを思いきり使いたい、思う存分にケータイを活用したいというアクティブなユーザーにこそ、ぜひおすすめしたい端末と言えるだろう。

■関連情報
□「N905i」製品情報(NTTドコモ) http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/905i/n905i/
□「N905i」製品情報(NEC) http://www.n-keitai.com/n905i/
□「N905i」Photo Gallery http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/905i/n905i/gallery.html
□「N905i」スペシャルサイト http://www.n-keitai.com/pickup/n905i_n905imyu/
□YUKI 着うた®プレゼント! http://www.n-keitai.com/pickup/n905i_n905imyu/campaign/yuki/

■関連記事

□ケータイ新製品 SHOW CASE NTTドコモ N905i(Pink)
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/36996.html
□5.2メガカメラ搭載のNEC初のワンセグケータイ「N905i」
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/36996.html
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 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/37322.html
□NEC、N905i/N905iμの広告キャラクターにYUKIを起用
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法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中