MDT191Sは、あらゆる映像メディアを接続してそのソースをできるだけ忠実に表示できるポテンシャルを獲得するために、PC用液晶ディスプレイのくくりの製品としてはかなり贅沢なスペックを備えている。
解像度的にはオーソドックスな1,280x1,024(SXGA)ドットだが、応答速度は8msと、クラス最高速級の動画に適したパネルを採用している。一般的なPC用液晶ディスプレイが16ms〜25msだから、倍以上高速であるということができる。
とはいうものの、まず筆者が、実際に表示映像をみて、ハッとさせられたのは、応答速度よりもコントラスト性能の方だった。
MDT191Sのコントラスト性能は700:1。一般的な液晶ディスプレイが350〜400:1であることを考えると、こちらも2倍近いコントラスト性能があるのだ。実際、明るさのパワーが目に感じられ、青空などの表現はかなり目映く見えるほど。
このハイコントラスト性能の根源となっているのは400cd/uというMDT191Sの強力な輝度性能だ。一般的な液晶ディスプレイの輝度性能が250cd/u前後だから、MDT191Sにはかなりの高輝度性能が与えられているのだ。
いくら輝度が明るくても、暗部の締まりがなくては、700:1などというハイコントラスト性能は得られない。この秘密は液晶パネルの表面処理にある。「グレアパネル」と呼ばれるこのパネルの効果として、黒浮きが徹底的に抑えられ、暗部の階調に落ち着きが与えられているのだ。
発色は非常にナチュラルなチューニングがなされており、筆者個人としては、画調モードをオフ、カラーモードを「NATIVE(ネイティヴ)」としたときが、色再現性に癖がなく、最も階調性のバランスがよくなると感じた。
色深度はかなり深めで、NATIVEモードとしたときは微妙なグラデーションも非常に高精度なリニアリティが得られている。純色の発色も鮮烈。それでいて肌色の軟らかい表現もしっかり再現できており、過度な色補正が行われていない設計思想には好感が持てる。
また、高輝度性能が功を奏しているためだろうか、階調表現時のダイナミックレンジが驚くほど高い。極端な明部と暗部が同居するような映像でも、暗部に着目して見れば暗部のディテール感がキッチリと見え、明部は眩しく見える。逆に、明部に着目して見れば明部のディテール感がちゃんと見え、暗部が渋く沈み込んで見えることが実感できる。意図的に暗部を沈み込ませてコントラストを上げているのとは違い、映像自体がハイダイナミックレンジなのだ。
以下に、各映像ソースを入力したときのインプレッションとチューニングの方針を示す。
レーザーディスクの映像信号はYC混合のコンポジットアナログ映像をデジタル記録したものであり、LDプレイヤーから出力されるのは当然YC混合のコンポジットアナログ映像信号になる。よってLDプレイヤーよりも映像機器側の信号処理が優秀と判断できる場合はLDプレイヤーとSビデオ接続するよりもコンポジット接続した方が高画質が得られる場合がある。
その点、MDT191Sには「3次元Y/C」分離機能と「ノイズリダクション」といったLD映像に効果的な高画質化ロジックが実装されており、LDプレイヤーとの相性は抜群なのだ。実際に、3次元Y/C設定を「強」とし、ノイズリダクション設定を「強」とすると、かなりLDの映像がきれいに見られるようになった。LD映像特有の色ディテール部での虹色のちらつきが嘘のように消え、また高周波ノイズもずいぶんと低減される。
もちろんLDプレイヤーだけでなく、VHSビデオデッキなどと組み合わせる際にも、こうした設定は有効だ。これまで収集したレガシービデオライブラリもMDT191Sならば、これまでよりも高画質で楽しめるようになることだろう。
なお、余計なことかもしれないが、DVD機器などをはじめとした最近の機器ではもともと素性がよい出力なので、3次元Y/Cやノイズリダクションは「弱」設定、あるいは「オフ」としたほうがよい。
MDT191Sでは、720x480ドット解像度で記録されたDVDビデオフレームが入力されるとこれを拡大スケーリング処理して表示することになるわけだが、そのクオリティは上質。変にぼやけてもいないし、逆に目立ったジャギーもない。実にアナログチックな表示で固定画素系ディスプレイであることを意識させない。
画調モードは一般的な映画ソフトであれば「スタンダード」か「シネマ」がよくハマる。
グレアパネルの表示特性か、画作りが「しっとり」とした面持ちになっているのが気になった人は「シャープネス」を気持ち「+」調整するといい。これで色ディテール感が向上する。
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AV WATCHの「大画面☆マニア」でお馴染みの「モンスターズインク」の映像をPC上で再生して、その映像を撮影。DVDビデオはDVDプレイヤーで見るよりもPCで再生してDVI接続したMDT191Sにて見た方がきれい。 |
話題の海外TVドラマ「トゥルー・コーリング」より。木陰の中を歩く2人の人物と、日光で照らされて眩しい背景の木々が鮮烈なコントラストを作り出しているシーン。MDT191Sでは持ち前のハイダイナミックレンジな輝度性能と正確な階調表現との相乗効果で、明るい背景と暗めの人物、両方の描写を正確かつリニアに表現できている。 ©2005 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All
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WinDVDからのキャプチャ映像 「トゥルー・コーリング」 ©2005 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All
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さすがはPC用液晶ディスプレイだけあって、一通りの画面解像度への対応がなされている。
◎はパネル解像度に一致することを意味している。●は全画面表示の他、アスペクト比を維持しての表示、拡大処理無しの等倍表示にも対応していることを表している。
アスペクト比維持表示や等倍表示は一般ユーザーにはあまり関係ないモードのように思えるが、プロフェッショナルユース、とくにデザイン系業務ではこうした機能が求められている。安価な液晶ディスプレイではこうした機能がカットされている場合も多いが、MDT191Sならば、そうした細かい機能性にも妥協はなく、本格的なアートワークにも対応できるポテンシャルがあるのだ。
さて、実際に本機を活用して「これはいい」と思ったのが、PCとMDT191SをDVI-D接続してPC上でDVDビデオを再生したときの画質。これは、はっきりいってしまうと、DVDプレイヤーをコンポーネントビデオ接続して見るよりも美しい。
シャープネスの調整を行わなくても色ディテール感は十分得られているし、階調性のリニアリティもコンポーネントビデオ接続よりも数段上になる。是非とも試していただきたい。
なお、このPCベースでのDVDビデオ鑑賞時、お勧めとなる画調モードは
・「DV-MODE1(映画用モード)」にしてコントラスト、デフォルト値50に対して43あたりまで下げる
・「DV-MODE OFF(通常モード)」にして、カラー調節を「N(NATIVE)」にする
この2つだ。
MDT191SのD4映像入力は1,080i/720pまでの解像度に対応しているので、市販のBS/CSデジタルチューナ、あるいは地上波デジタルチューナを接続して、本機でハイビジョン映像を楽しむことができる。
MDT191Sの液晶パネルは1,280x1,024ドットの解像度を持つが、ハイビジョン映像を入力したときには画面中央の1,280x720ドット領域(アスペクト比16:9)を使って表示を行う。いわゆる720pリアル表示対応なので、一般的なハイビジョン対応液晶TVと同等の解像度表示になる。
実際に、筆者宅にあるBS/CSデジタルチューナと接続して映してみたが、ハイビジョンが持つ高解像感は十分に享受できることが確認できた。ビデオ入力をもつ液晶ディスプレイは増えてきたとはいえ、ハイビジョン入力対応はまだまだ少数派だ。PCの前に座ったままの状態で、PC画面からパッと本格的なハイビジョン映像に切り替えられるのは、ちょっとした優越感になることだろう。
ハイビジョン映像視聴中、子画面機能も活用でき、MDT191S内蔵のアナログ地上波TVチューナーの映像と親子関係を相互に入れ替えて楽しむこともできた。この状態でのマルチ画面の利便性は、もはやPCディスプレイというよりは液晶テレビのそれに近い。
マルチメディアディスプレイをうたっている以上避けられないと思われるのが、ゲーム機との接続。いまやゲーム機は、ある意味最も高い普及率を誇る映像機器の1つであり、その存在を無視することはできない。
というわけで、実際に、Playstation2(PS2)と接続して、ゲームをプレイしてみた。
PS2から出力されるゲーム映像は(一部の例外を除き)、基本的には480i相当のインターレース映像になる。MDT191Sには映像のプログレッシブ化ロジック「I/P変換機能」が内蔵されており、これはゲーム機の映像にも適用できるのだ。オフ状態ではテクスチャのディテールや文字表示などがぼやっととしているが、ひとたびオンにすると、ググっと解像感が一段階上がり、フレーム単位で美しい映像になる。
また、MDT191Sの特徴である応答速度の高さについても、ゲーム映像がよいベンチマークとなって、これまでの液晶ディスプレイとの違いを気づかさせてくれた。
「グランツーリスモ4」のような3Dスクロール主体のドライビングゲームをプレイしていても、縦横縦横無尽に動く外界の景色や消失点に向かって伸びる道の動きなどがぼやっとせずにくっきりと見えるのである。
適切な表現か分からないが、MDT191Sの高速応答速度性能はゲーム機と接続してゲームをプレイすると一番分かりやすいと思う。
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