三菱電機「RDT231WM-S(BK)」
低解像度の映像ソースをHD解像度のディスプレイ上で全画面表示すると、拡大処理によって「ぼけ」が生じる
超解像処理は、拡大によって「ぼけ」て「眠くなった」画像のディテールをよみがえらせることができる *画像はイメージです。超解像技術の効果は入力画像の種類や解像度によって異なります。 コンテンツによっては、ノイズやちらつきが発生する場合があります。
三菱独自の高画質化LSI「GIGA CLEAR Engine」により、超解像処理をはじめとする数々の高画質化処理がおこなわれる
超解像機能の設定画面。無効、小、中、大と、効き具合を選択可能
製品に搭載された「デモモード」なら、このように高画質処理前と後を同時に表示して、効き具合を確かめることができる。ちなみに、向かって左が処理後、右が処理前
映像の世界は、急速にHDに移行している。地デジやBlu-ray Discが牽引するAVはもちろん、ゲーム機に関しても、Xbox360やプレイステーション3は720p(縦解像度720ドット)から1080p(縦解像度1080ドット)までの解像度が中心である。元々高解像度な環境が求められてきたPCのディスプレイと、これらの解像度はそもそも相性がいい。PC用ディスプレイとしてみた場合、解像度がより高いに越したことはないのだが、1920×1080ドットもあれば、多くの人にとって満足できるレベルに到達している。「フルHDのPC用ディスプレイ」は、現在、様々なソースを扱う上で、非常にバランスの良い存在といえるのだ。
他方で、弱点ももちろんある。それは、「低解像度」への対応だ。
HD解像度の映像が増えたとはいえ、すべてがそうなったわけではない。みなさんがお持ちの映像ソースは、まだDVDなどのSD解像度のものも多いはず。またゲーム機にしても、Wii®はSD解像度だし、テレビなどへPSP®を接続して楽しむ場合にも、比較的低解像度となる。YouTubeやニコニコ動画に代表されるネット動画のほとんどもそうだ。
CRTと比較した場合、液晶はその性質上、解像度の低い映像に弱い。低解像度の映像や画像を高解像度の画面に拡大して表示すると、どうしてもドットの周囲がぼやけて、全体的に「眠い」映像になってしまう。
このことは、大画面の液晶テレビ以上に、パーソナルディスプレイたるPC用ディスプレイではより深刻な問題となる。なぜなら、視聴距離がテレビよりも近いからだ。高解像度のディスプレイで至近距離から視聴する場合、解像度が十分に高い映像ならば、なんともいえない「細密感」が気持ちいいのだが、低解像度な映像を全画面で見る場合には、どうしても「ぼやけ」が目につきやすいのだ。
そういった問題はなにも、SD解像度の映像だけにとどまらない。
ゲームの場合には、HD解像度とはいえ、多くのものが1080pでなく、720pで出力されている。1080p出力である場合でも、内部的には720pやそれ以下といった、比較的低い解像度で映像が生成され、最終出力段で拡大出力されている場合が多い。そうなると、やはり液晶の解像度との差から、若干の「ぼやけ」と無縁ではいられない。
また映像の場合にも、1080iの地上デジタル放送は横解像度が1440ドットだし、縦解像度についても、インタレースで送信されているので、Blu-ray Discなどの1080p(プログレッシブ収録)ソースに比べると、劣って感じられる場合がある。
要は、様々な映像ソースを扱う上で、液晶の解像度とのミスマッチによる「ぼやけ」は、大なり小なり発生してしまう、ということなのである。すべての映像を、1920×1080の「ドット・バイ・ドット」で表示できればいいのだが、そうはいかないのが現実だ。
そういった「フルHDのジレンマ」を解決するのが、RDT231WMに搭載された「超解像技術」である。超解像とは、解像度が低い映像に処理を加えることで、より高い解像度の映像へと補完することを試みるものである。
RDT231WMの超解像手法は、入力された映像をまず1920×1080ドットの映像へと拡大した上で、独自のアルゴリズムを用いて、「本来、この映像が高解像度で作られていたならばこうであろう」という情報を推定、拡大映像に補正をかけることで、最終的な「表示映像」を実現する。詳細は公開されていないが、この考え方の中に、三菱電機が開発したオリジナルの手法を導入した上で、超解像処理を含めた高画質化処理全体を、新規開発・オリジナルの高画質化LSI「GIGA CLEAR Engine」の中に詰め込み、商品へと搭載している。
DVモードの「静止画」と「動画」は、それぞれの用途に最適な画質設定がプリセットされている
向かって左が高画質化処理後(超解像は「小」)、右が処理前。エッジ感の強調だけでなく、CROによるコントラスト調整やノイズリダクションにより、映像が全体的にクリアになっていることがわかる
次に、向かって左の超解像設定を「大」に設定。右は無効のままだ。この動画の場合、「大」だとやや効き具合が強すぎるようだ。映像によって最適な設定を使い分けよう
RDT231WMには、DVI端子の他に、HDMI端子が2つ搭載されている。今回はこちらに、Blu-ray Discレコーダーと、AV機器としても使えるゲーム機である「プレイステーション3」をつなぎ、DVDやBlu-ray Disc、地デジの画質をチェックしてみた。
RDT231WMは、動画をより美しく見るために、主にPC表示向けの「静止画」モードに加え、動画向けの「動画」モードを用意している。後者では、映像のコントラストを改善するための機能が効果的に働くのだ。「Contrast Rasio Optimizer(CRO)」と呼ばれる機能が動作している際には、最大で5000:1のコントラストが実現される。さほど設定をいじらなくても、十分に納得できる画質で映像が楽しめるはずだ。
また、RDT231WMの超解像処理は、HDMIでも効果を発揮する。地デジの映像はもちろん、Blu-ray DiscレコーダーやPLAYSTATION® 3でDVDを再生した場合でも、その入力信号に対し、超解像処理が行われることになる。
特に効果がはっきりするのが、地デジ映像を入力した時だ。本来はディテールが眠くなりがちなのだが、そういった部分が補正される。かといって、なだらかな階調を維持したい「ぼけ味」の部分や平坦な階調の部分では、無駄にエッジが強調されることはあまりない。また、不自然なモスキートノイズやざらつきの一部も、GIGA CLEAR Engine搭載の「ノイズリダクション機能」を使い、見やすいレベルへと低減される。両方を加味すると、単純に高画質化されるというよりは、「見づらい部分がすっきりと見やすい感じになる」といった方がしっくりくる。特に地デジの場合には、超解像設定を「小」にして使うのがお勧めだ。
著作権保護の観点から、一般的なAV機器の場合、DVDビデオのアップコンバート出力は認められていない。そのため、D端子でハイビジョンテレビにつなぐと、DVDビデオはより「眠く」見えやすい。RDT231WMでは、単純なスケーリングではなく超解像処理を行うので、その眠くなる部分が緩和される。フルHD解像度になってスポイルされる部分を、最低限に抑えて視聴することができるのである。
RDT231WMのD-SUB15ピン端子は、変換ケーブル等(市販)を使用することでD端子と接続可能であり、D2(480p)はもちろん、D3(1080i)やD4(720p)にも対応しているので、HDMI未搭載の地デジ対応DVDレコーダーで地デジを楽しむ、といったことも可能だ。
HDMI入力だけでなく、D端子からの入力にも超解像が働く民生用機器は、2009年5月現在、著者が知る限りRDT231WMが唯一だ。そこに大きな価値を感じる人も、少なくないだろう。
従来モデルと同様、通常のオフィス作業などに適すIVテキストモードなどを備える
今回試用したグレア液晶の「RDT231WM-S」のほかに、ノングレア液晶を採用した「RDT231WM」もラインアップ
YouTubeの動画のように、解像度が低く、かつ圧縮率が高い動画でも超解像の効果は感じられる。向かって左が高画質化処理後(超解像は「中」)、右が処理前の映像
ヘッドホン出力端子と各種スイッチが並ぶ前面下部。左矢印と右矢印それぞれのキーにはショートカットが割り当てられる
同社は、PC用ディスプレイの開発では長い歴史を持ち、省エネ機能や、文字をより読みやすくした上で、目にやさしい表示を実現する「IVテキストモード」といった、独自の機能で人気がある。それらの点については、超解像採用とはいえ、決しておろそかになっていない。最近のディスプレイ、特にフルHDのものはグレア(光沢)液晶のモデルのみ、という場合が多いのだが、RDT231WMはグレア液晶モデルとノングレア液晶モデル、両方がラインナップされているため、どちらにこだわりがある人にも選べるのがありがたい。
実際のところ、単純にオフィス文書作成やウェブページの表示を行っている場合には、超解像の出番はない。元々「文字や絵をきれいに表示する」のがPCディスプレイの本道。だから、画像補整を行う超解像とは、かならずしも相性が良いわけではない。だから、DVI端子にPCをつないだ場合、デフォルトの設定では、超解像処理は「オフ」となっている。
だが、超解像の出番がないわけではないし、PC上でももちろん有効だ。もっともはっきりと効果が出るのは、やはりDVDやネット動画などを見る時だ。一般的に、PCのDVD再生機能やネット動画再生機能は、AV機器ほど高度なアップコンバート処理を備えていない。また、すでに述べたように、視聴距離が基本的に近いこともあって、映像の「ぼやけ」が目立ちやすい。
しかし、ここでRDT231WMの超解像処理を「ON」にすると、表示状況は大きく変わる。それまで感じられた「ぼやけ」による眠さがかなり低減され、ワンランク締まった映像に変わる。一言でいえば、「より見やすい映像」に変わるのだ。
ただし、超解像も魔法ではないので、ネット動画のように、解像度が極端に低く、ビットレートも低い映像を「ハイビジョン並」にしてくれるわけではない。質の低い映像で「大」設定を使うと、ノイズまで大きくなってしまい、違和感を感じやすくなる。「中」「小」あたりと「オフ」をうまく使い分けながら使うのがお勧めだ。RDT231WMの操作ボタンには「ショートカット」を設定し、設定をワンタッチで切り換えられるようにすることができる。「動画用設定」と「静止画用設定」を切り換えながら使うと、より便利に感じられるはずだ。
多彩なゲーム機に対応している「RDT231WM」。基本的にHDMI端子とD-SUB15ピン端子で接続する
RDT231WMの入力端子。HDMI×2、DVI-D、D-SUB15ピン端子と、音声入力を装備。D-SUB端子に関しては市販の変換ケーブルを用いることで、D端子やコンポーネント出力端子の入力にも対応する。Wii®や初期のXBOX 360など、HDMI出力が存在しないゲーム機を接続することができる
PSP®「モンスターハンター ポータブル 2nd G」のゲーム画面。向かって左が高画質化処理後(超解像は「中」)、右が処理前。超解像を使うと、モンスター体表や背景の樹木など、ディテールがよりハッキリとした
Wii® バーチャルコンソールの「ロックマン」のタイトル画面を表示してみたところ。超解像は最終的な映像出力に反映されるため、OSDメニューまで超解像されているのはご愛敬
PLAYSTATION®3の「ストリートファイターIV」で比較。左が超解像(小)有効、右が超解像なしの映像。ちなみに解像度は720p。キャラクターのエッジや、胴着の帯の文字に注目
フルHDのジレンマが、特にはっきりと感じられやすいのがゲームである。ゲームはテレビ放送やDVD、Blu-ray Discなどと違い、「圧縮された映像」でなく、その場で映像が生成される場合が多い。その分、映像はノイズが少なくはっきりとした、SN比の高いものが多い。
だが、液晶ディスプレイ上でスケーリング(拡大処理)が発生すると、本来はエッジがはっきりと立った映像であるべきところが不自然にぼやけ、ディテールもはっきりしなくなってしまう。
では、この問題は、RDT231WMの超解像技術でどのようにカバーできるのだろうか?
結論から言えば、「こうかは ばつぐんだ!」。
RDT231WMの超解像処理は、入力ソースを選ばない。HDMI、DVI-D、D-SUB、それぞれの接続すべてで有効となる。しかも、「D端子」しかもたないゲーム機でも、接続および超解像処理が可能だ。RDT231WMにはD端子は搭載されていないが、実は、アナログRGB入力用の「D-Sub 15ピン」端子に、D端子<->D-Sub 15ピン変換コネクター(市販)をつけることで、D端子しか持たない機器でも接続することができるのだ。
通常D-Sub 15ピンは、あくまでアナログRGB入力専用で、D端子を持つ機器は接続できない。しかしRDT231WMの場合には、入力信号がRGB信号なのか、色差信号なのかを自動判別し、どちらでも映像を表示出来るようになっている。だから、D-Sub 15ピン端子とD端子の変換コネクターさえあれば、アナログ出力しかもたないAV機器やゲーム機を接続して、480i/p、720p、1080i/pの入力信号を表示することが可能なのだ(※)。こういった機能は、一部のプロジェクターにのみ搭載されていたもので、PC用ディスプレイに搭載されるのは珍しい。
※ちなみに480i入力に限り、ディスプレイは簡易表示モードとなるので、その状態で出力元機器の設定を変えてやる必要がある。たとえばPlayStation®2を接続する際などは、この簡易表示の状態でPlayStation®2の設定画面まで進み、480p出力に設定変更してやればよい
Wii®やPSP®をD端子経由で接続した場合、一般的な液晶テレビなら失われてしまう「ドットのシャッキリ感」が、RDT231WMでは戻ってくる。テクスチャのディテールもきっちり見えるし、文字などは明らかに読みやすくなる。特に面白いのが、Wii®の「バーチャルコンソール」機能を使い、ファミリーコンピュータ®のタイトルをプレイする場合である。バーチャルコンソールはファミリーコンピュータ®などのエミュレータであるから、映像の解像度は非常に低い。ファミリーコンピュータ®時代のタイトルは、「ドットのシャッキリ感」こそ味であり、命である。
超解像の設定は「大」「中」「小」「オフ」の4段階あるが、特に解像度の低いファミリーコンピュータ®世代の映像ならば、超解像をあえて「大」に設定すると、そのシャッキリ感が生まれ、びっくりするくらい見やすくてきれいな映像によみがえる。通常のWii®やPSP®のタイトルならば、エッジの先鋭さとなめらかさが両立できる「中」「小」がお勧めだが、あえて「古い」ソフトは「大」で楽しむのがいいだろう。
他方、現行の「ハイデフ世代」ゲーム機はどうだろう? 1080pタイトルでは極端な差は出ないが、720pのタイトルでは、やはり超解像処理が効いてくる。若干感じられた輪郭の「ぼやけ」が解消され、ディテールがはっきりしてくるからだ。「小」設定ならば、なめらかなグラデーションなどもほとんど失われないので、マイナス点はあまりない。
こういった機能があると気になるのは、「入力に対し遅延があるか否か」だろう。格闘ゲームや音楽ゲームなどでは致命的になりやすいものなので、熱心なゲーマーであればあるほど気になるところのはずだ。
メーカーの説明によれば、「超解像やコントラスト調整に伴う遅延はほとんどない」という。短時間ではあるが、私がプレイした範囲でも、明確な遅延は感じられなかった。そのあたりについても、とりあえずは安心して良さそうだ。
RDT231WMの魅力は、超解像技術によって「入力ソースを選ばす、見やすい映像が得られる」ことに尽きる。搭載された端子すべてで同じ効果が発揮されるので、接続の自由度がきわめて高い。「どれかだけでなく、どの機器も」OKであるのが、RDT231WMの良さなのだ。 「ディスプレイの解像度は上がっているのに、ちっとも解像感を感じない」
そんな人ならば、RDT231WMを試してみる価値がある。PC用ディスプレイをAV、ゲーム用とで利用する際のデメリットをできる限り緩和し、映像をより見やすく、楽しみやすくしてくれるのが、RDT231WMの超解像機能といえそうだ。
机の前に座り、正面から見ることの多い使用環境では、十分に性能を発揮できることだろう。しかも、RDT231WMは実売価格が3万円台と非常に手頃。これだけの機能が搭載されていることを考えれば、十分に納得いく価格である。
RDT231WM取り扱い店の多くでは、画面を「超解像ON」「超解像OFF」に分割し、映像のクオリティを確認できるデモンストレーションを展開中だ。「フルHDのジレンマを緩和する超解像」とはどんなのものなのか、デモ映像を通じ、ぜひご自分の目で確かめてみていただきたい。
今回試用に使ったゲームタイトル
モンスターハンター ポータブル 2nd G PSP® the Best
ハード:PSP® / ジャンル:ハンティングアクション / 発売日:2008年10月30日 / 希望小売価格:3,140円(税込)/ CEROレーティング:C(15才以上対象)(C)CAPCOM CO., LTD. 2007,2008 ALL RIGHTS RESERVED.
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ストリートファイターIV
ハード:PLAYSTATION®3 / Xbox 360 / ジャンル:対戦格闘 / 発売日:2009年2月12日 / 希望小売価格:8,390円(税込)/ CEROレーティング:B(12才以上対象)(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2008,2009 ALL RIGHTS RESERVED.
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VC ロックマン
ハード:Wii®(バーチャルコンソール) / ジャンル:アクション / 配信日:2008年7月29日 / Wii®ポイント:500(C)CAPCOM CO., LTD. 1987,2007 ALL RIGHTS RESERVED.
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http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/display/product/multi/rdt231wm_s/index.html - □RDT231WM 製品情報
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“ぼけ成分”を推定し画質補正。実売37,800円〜(AV Watch)
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20090422_152919.html
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