
世界中のゲームファンに衝撃を与えた第1作「Mass Effect」からおよそ3年。その続編としてついに登場する「Mass Effect 2」は、その密度と質、そしてボリュームにおいて他の追随を許さない新境地のアクションRPGに仕上がった。まず、その完成度がスゴい。
ハリウッドスタイルのシネマティックと、プレーヤーの選択によりシナリオが柔軟に変化するRPGスタイルとの完璧な融合。アクションゲームファンも納得の、爽快感と戦略性溢れるリアルタイム戦闘。広大な宇宙を駆け巡る疾走感に、様々な成り立ちと表情を見せる無数の惑星の探索。
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シェパード少佐の新たなる戦いが始まる!
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無限の銀河が冒険の舞台だ
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壮大なスケールと圧倒的なボリュームが織り成す、それでいて調和のとれた作品世界は、最初の数分でプレーヤーを夢中にさせてしまう。重厚で衝撃的なシナリオは見る者を圧倒し、プレーヤーに倫理・道徳上の難問を突きつけ続ける。
緻密なSF設定は知的な刺激に溢れ、匂い立つほど個性的なキャラクターが彩りを加える。一瞬の退屈も感じさせることなく、プレーヤーを壮大な銀河世界の渦に巻き込み続けるゲーム内容は、まさに「スゴい!」のひとことだ。ゲームの雰囲気を確認できる映像が公式サイトで配信されているので、是非ご覧になって欲しい。
いかに中立的な視点で評価しようとも、本作に欠点らしい欠点を見つけることは不可能に近い。全てが磨き上げられており、ゲームファンとして只々、圧倒されるばかりなのだ。
前作「Mass Effect」をプレイしていればキャラクターのインポートも可能で、感動はさらに深まる。しかし本作からプレイし始めても問題はない。今世代のゲームが成し得る最高クラスの偉業を前に、誰もが夢中になってしまう。そんな本作の「スゴさ」を具体的にご紹介していこう。
セーブデータの引き継ぎ - シリーズの壮大なスケールを体感せよ
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舞台は広大な銀河系世界。火星での発見により星間航行技術を手に入れた人類は、多種多様な異星種族が構成する銀河社会の新参者として急速に力をつけつつある。そこに襲いかかったのが、人類を含む全有機生命体の殲滅を目論む機械種族「リーパー」の襲撃だ。
銀河社会の統治機関「シタデル評議会」はこの危機に対し、人類連合軍の将校であるシェパード少佐を特務エージェント「スペクター」に任命。シェパード少佐を中心とする人類の活躍により、危機は去ったに見えたが……。
その後シタデル評議会は事件の真相を隠蔽したあげく、全てを知るシェパード少佐を「掃討作戦」を名目にして辺境宙域での任務に追いやってしまう。そしてシェパード少佐は任務中に謎の戦艦の攻撃を受け、乗艦「ノルマンディー」もろとも宇宙の塵になった……かのように見えた。
銀河にはさらに深刻な危機が迫っている。謎の「消滅」を繰り返す人類のコロニー。絶え間ない「ゲス」の侵略。本作「Mass Effect 2」では、人類至上主義組織「サーベラス」の手により蘇生したシェパード少佐の活躍を描く。
ストーリー - 人類に忍び寄る新たな脅威―
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「Mass Effect 2」の基本的なゲームシステムは、前作に比べてさらに3Dシューティングゲームとしての完成度が高まっている。操作性の向上、部位ダメージの精密化などがその秘密だ。
アクションRPGらしい戦闘の戦略性においても幅が広がっている。シェパード少佐のパーティに加わるメンバーの数が増え、銃とスキル、そして本作における超能力という位置づけの「バイオティック」を駆使した立ち回りにいっそうの面白さが加わっているのだ。

本作ではゲーム全体の流れとして、銀河全体を行き来する移動・探索シーンと、惑星やステーション内でシェパード少佐を操る3Dアクションシーンがはっきりと区別されている。
今回の任務について - 人類を守るために挑む危険な任務 -ゲームの進め方-
戦闘は3Dシューティングスタイルで、マイクロソフトの「Gears of War」シリーズなど標準的なTPSジャンルと同系統の軽快な操作性だ。
前作から大きく変わったのは、銃の命中判定やダメージ判定がよりTPS的になったこと。前作では照準システムがかなり大雑把で、与えるダメージはキャラクターのパラメーターそのものに大きな比重が置かれていたが、本作では弾丸が照準通りに飛び、狙った場所にきちんと命中する。敵の腕を撃って武器を落とさせるといった部位ダメージのシステムも組み込まれて、プレーヤーの腕前次第でより上手に立ち回れる余地が大きくなった。
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より爽快になったアクション。立ち回りに深みが増した
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コマンドリングを通じて武器の選択や部隊員への指示が可能
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敵との戦闘 - 部隊を率いて戦うリアルタイムバトル!

軽快なアクションにRPG的な成長要素が融合して、ゲームが進展するほどに最適な立ち回りに変化が現れるのが面白いところだ。プレーヤーは選んだクラスに応じて新たなスキルやバイオティックを習得・強化することができる。有機生命体には火炎系の弾丸を、機械生命体には電撃系の弾丸を。巧みに攻撃をかいくぐってくるやっかいな敵は、テレキネシスの技で宙吊りにしてやろう。
プレーヤーが選択できるクラスは6種類。銃撃に特化した「ソルジャー」、近接戦闘が得意な「ヴァンガード」、テクノロジーを駆使して立ちまわる「インフィルトレーター」、超能力特化の「アデプト」、トリッキーな罠をめぐらす「エンジニア」、複数ジャンルの特殊スキルを駆使できる「センチネル」と、プレーヤーのスタイルに合わせてプレイできるのがいい。
銀河系全体からシェパード少佐のもとに集うパーティメンバーたちも、各方面に鋭く特化した戦闘スタイルを持っている。バイオティックとエンジニアリングの達人「ミランダ」、銃撃とバイオティックを駆使する「ジェイコブ」をはじめ、序盤から個性派ぞろいのメンバーたち。それをどう活用するかは、まさに隊長であるプレーヤー次第だ。
プレーヤー自身の成長や、ミッションに随行させるメンバーの選択。こういったRPG要素が絶妙に噛み合っていることで、戦闘そのものの面白さ、手応えもグッと深まっているのだ。
キャラクターカスタマイズ - プレイヤーの理想を投影する主人公
部隊の強化 - 有能な人材を集め、最強のチームを結成せよ
装備とアップグレード - 多種多様な武器を使いこなし、戦闘力を強化せよ
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シェパード少佐の活躍を中心にダイナミックに旋回する銀河社会。数々のミッションで遭遇するキャラクターとの会話は、銀河社会への理解を深めさせてくれると同時に、プレーヤーに多くの「選択」の機会を与えてくれる。
銀河の安定を脅かすからといって、特定の種族の生存と生殖の権利を奪うのは正しいことだろうか? 親が子を助けるためにその生命を奪うことは、本当に許されるのだろうか? 感情に鋭く突き刺さる、正解のない問いの数々がプレーヤーを悩ませる。
そして下された「選択」が、シェパード少佐自身と、銀河社会の姿そのものに影響を与えていく。人徳溢れる善人を目指すか、冷酷な憎まれ役を演ずるか。いずれにしても、「Mass Effect 2」の世界には通り一遍の解答は存在しないのだ。
会話の進め方 - 言葉とリアクションの選択が物語を動かす
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無限の銀河は驚くべき発見に満ち溢れている。人類とは全く異なる生物学的特徴を備えた異星人達、超光速テクノロジーに支えられた生活や産業。個性的なキャラクターたちと交わるたび、「文化がちが〜う!」と叫んでしまいそうだ。
銀河の自由探索 - 最新鋭の宇宙船で広大な銀河を駆ける
銀河に集う多彩なキャラクターたち
固有の文明を営む銀河の生命体
この興味深い世界を支えているのが、本作のために構築された緻密で膨大な設定だ。特にお見事と言えるのが、ハードSF作品において強い説得力が求められる超光速テクノロジーの説明を、たったひとつの特殊な物質を想定することで成し遂げている点だ。
それが、本作のタイトルにもなっているマスエフェクト。エレメント・ゼロと呼ばれる希少物質に電圧をかけることで実現する質量制御テクノロジーだ。特定空間の質量を制御することで、空間内の光速そのものを変え、相対的に光速を超えた航行を可能とする。もちろん、シェパード少佐の乗艦である「ノルマンディー」には強力なマスエフェクト・コアが搭載されている。
マスエフェクトは本作の銀河社会を構成する全ての種族が依存するテクノロジーだが、これを生み出したと考えられているのは「プロセアン」と呼ばれる、5万年前に絶滅した先史種族だ。ただし、プロセアンの姿や社会・文化の手がかりは断片的に発掘される遺物にわずか残るばかりで、なぜ絶滅したのかという根本的な問いに答えは見いだせていない。どうやら、シェパード少佐が撃退した外宇宙の機械種族「リーパー」が深く関わっているらしいが……。
さらに、銀河社会に参加した人類が実はかなり微妙な立場にあることも、本作のシナリオを深みのあるものにしている。
人類がマスエフェクトを発見し、最初に遭遇した異星種族と交戦した「ファーストコンタクト戦争」からわずか30年あまり。そのわずかな期間に、人類は軍事・政治的に重要なポストを占めることとなり、銀河社会を統括する「シタデル評議会」にも代表を送り込むことに成功したのだ。
銀河社会には、数百年、数千年をかけてもこのような成功を手にできていない種族が多く、これが人類に対する敵対的な見方を助長する主因となっている。したがってシタデル評議会は人類の影響力がさらに増すことを恐れているふしがあり、シェパード少佐の戦いは独立愚連隊的な色彩が濃くなっていく。
だからこそシェパード少佐に一目置く異星種族の仲間たちの存在はさらに貴重なものとなり、プレーヤー自身、シェパード少佐になりきって銀河の命運を左右することの「重さ」がひしひしと伝わってくるわけだ。
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宇宙船に搭載されたマスエフェクト・コアにより船体の質量を減らし、相対的な時間の遅れを生じない超光速(FTL)ドライブが可能となっている。FTLドライブによっても星間航行には数百年の時間がかかってしまうため、他の星系への移動には銀河じゅうに点在する「マスリレイ」を用いる。マスリレイは大質量の物質を瞬時に他のマスリレイに送ることのできるステーション施設。現在のいかなる種族にも建造が不可能なテクノロジーが使われており、先史種族プロセアンの遺物だと考えられている。数千光年を移動する長距離型マスリレイ(プライマリー・マスリレイ)は入り口と出口が固定されており、移動先に何があるかわからないため、利用されていないものも多い。
惑星や星系間の通信には、マスリレイを利用した通信ブイによるFTLネットワークが用いられる。無数の通信ブイにより現在のインターネットに似たネットワークが構成されており、銀河社会の誰もが利用できる。ただし通信量に限りがあるため、非常時には評議会、スペクター、軍の利用が優先される。民間に高い優先度の通信を提供する商業ネットワークサービスプロバイダも存在するようだ。シェパード少佐が乗艦するフリゲート「ノルマンディー」には、サーベラスのボスであるイルーシブマンとの1対1通信用に、量子もつれを利用した特殊な通信装置(QEC)が組み込まれている。
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シェパード少佐の乗艦となる「SR2 ノルマンディー」最新鋭のフリゲート艦だ
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光年単位の瞬間移動を可能とするマスリレイ。プロセアンの技術で作られている
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驚きに満ちた世界観とシナリオ、迫力の演出、洗練されたゲーム性。「Mass Effect 2」をプレイしたなら誰でも、その怒涛のような破壊力に圧倒されつつ、この世界のことで頭が一杯になってしまうことだろう。
それに本作は、重厚なシナリオを持つと同時に、プレーヤーに多くの自由を与える世界でもある。何度もプレイして、異なるプレーヤークラスで一味違った戦闘を楽しむもよし、ゲーム中に下した決断が本当に正しかったのか、もうひとつの選択を確かめにいくもよし。それほどに本作の密度は濃く、心地良い時間を提供してくれるのだ。
本作からプレイをはじめたプレーヤーなら、改めて前作を購入して「Mass Effect」世界の全貌をよりよく理解したくもなるだろう。その上でもういちど本作をプレイすれば、また違った視点でプレイを楽しめることは間違いないし、新たなシナリオの展開を見ることになるかもしれない。
全てにおいて超一流、得られる感動は銀河系級。シナリオ、演出、そしてゲーム性と、全てが磨き上げられたアクションRPGの傑作として、すべてのゲームファンに両手を挙げてオススメしたい。やるべし、「Mass Effect 2」!!
(Reported by 佐藤カフジ)
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Mass Effect™ 2 (マスエフェクト 2)ジャンル:SF シューティング RPG 国内販売元:マイクロソフト株式会社 発売元:エレクトロニック・アーツ株式会社 開発:BioWare 希望小売価格:7,140円 プラットフォーム:Xbox 360 2011年1月13日(木)発売予定 オフラインプレイ人数:1人 対象年齢(CERO):D区分(17歳以上対象) |
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