例えばビジネス用の専用ソフトでも、開発環境でも何でもかまわないが、オフィスなり自宅なりと、出かけた先で同じ環境が欲しいということは少なくない。例えばオフィスでプログラムを開発し、出先でデバッグなんてこともあるだろうし、客先で設計図などをCADで表示しながら、その場で修正なんてケースもあるだろう。こうした場合、自宅やオフィスと、持ち歩き用のノートで環境が異なると著しく作業効率が落ちるから、なるべくなら同一の環境にしたいところだ。が、これは言うは優しいがやるとなると大変である。単にデータの同期だけでなく、例えばパッチを両方に当てたり、ソフトウェアのバージョンの同期を取ったりという作業は必須になる。ましてや、OSが双方で異なったりすると、場合によってはこのすりあわせが大変だったりする。 そこでVirtual PC 2004の出番である。必要な環境を仮想マシンの上に作り、これを共有してしまえば、データやソフトウェアのバージョン違いに悩むことはなくなり、自宅やオフィスと出先で全く同じ環境が確保できる。必要なのは仮想HDDの同期を取るだけだから、手間は大幅に削減される。 これをもっと進めてUSB接続などの携行型HDDを使うと、これは更に便利になる。仮想マシン用の仮想HDDを、携行型HDDの上に置いてしまえばよいのだ。 こうすれば、普段はオフィスや自宅のマシンに携行型HDDを接続して利用し、出かけるときにはノートと一緒に携行型HDDを持参、出先で接続すれば先ほどまで利用していた環境がすぐに立ち上がることになる。頻繁に出かけることが多いユーザーには便利な機能であろう。 |
居間に一台PCを置いて、家族全員で共用なんて使い方はまだまだ見かける。実際Windows XPは普通であればこうした使い方に十分耐えうる作りになっている。では「普通ではない」とはどういうことかというと、例えばウイルスやルートキットなどである。例えば子供が使っていて、うっかりルートキットに侵入されたりウイルスに感染したりすると、被害は子供が使っているデータだけではなく、その他のユーザーにも及ぶことになる。一義的にはワクチンソフトやファイアウォールを使って防止するのが筋だし、次にはそうした危険性のある行為をしてはいけないという話が来るわけだが、ワクチンソフトやファイアウォールは万能ではないし、誰でも痛い目に会うまでは危険だということが認識しにくいものだから、特に多数のユーザーでPCを共用するケースでは潜在的な危険性は高まるのは仕方がない。 こうしたケースで、侵入や感染されてしまった当人は仕方ないとしても、せめて他のユーザーの被害は食い止めたいと思う場合に、Virtual PC 2004が役にたつ。単純な話で、各ユーザーごとに別々の仮想マシンを作成しておき、ログインするとただちに仮想マシンが全画面で実行されるようにしておけばよいのだ。たったこれだけの配慮で、他のユーザーに被害が及ぶことが避けられる。 例えばAさんがウイルスに感染してしまい、例えばアドレス帳とかブックマークとかを根こそぎ盗まれたりしたとする。その場合でもB/C/Dさんに被害が及ぶことはない。ウイルスはAさん用の仮想マシンの外側は全くアクセスできない(というか、そんな場所があることすら判らない)から、被害はあくまでもAさんの仮想マシンだけで食い止められることになる。 また副次的な効果として、例えばウイルス駆除も兼ねてOSからインストールしなおしをする場合、仮想マシンを使わない状態だとB〜Dさんの環境も一気になくなってしまうことになるので、バックアップを取ったり再設定したりという手間が馬鹿にならない。が、図4のような構成ならAさん用の仮想HDDを消して、新たに作り直すだけで済むから、Bさん〜Dさんには影響が及ばないことになる。更にハードウェアの不調があった場合でも、仮想マシンの設定ファイルと仮想HDDだけバックアップしておけば、マシンをリプレースしてVirtual PC 2004をインストール後、設定ファイルと仮想HDDを戻せばただちに環境が復活することもメリットとして挙げられるだろう。 |
最近、しばしば「個人情報流出」のニュースが新聞などを賑わすことがある。このケースで、PCそのものを盗まれて流出というのはソフトウェアからはどうしようもないので除外するとして、ウイルス感染などによる流出も後を絶たない。これも本来は「ウイルスに感染するような処理をするな」という話になるわけだが、そこで終っていては予防は覚束ない。もっと積極的に保護を行うことで、不測の事態があっても対応できるようにするのが正しい予防のありかただろう。 ではどうするか?これは複数ユーザー環境の応用パターンになるのだが、「危険なアプリケーション」と「セキュアなアプリケーション」を、個別の仮想マシンで隔離してしまえばいいことになる。危険なアプリケーションというのは、ウイルスやルートキットの感染源になりやすそうなもので、メールだったりWebブラウザだったりというのがその筆頭に挙げられよう。こうしたものは、個別の仮想マシンに分離してそれぞれ単独で実行させることで、侵入/感染されても被害をその仮想マシンの中で食い止められる。 一方セキュアなアプリケーションというのは、要するに個人情報を格納しているようなものを指す。こうしたものも別の仮想マシンで実行させることで、他のアプリケーションから見えなくすることで、安全性を高めようというものだ。 もちろん普段自宅で使うPCにこんなことをしていたら大変かもしれないが、特に業務で使うようなPCでは、こんな形で安全性を高めることが可能である。 |
今回は具体例を4つほどをご紹介したが、他にも仮想マシンを生かした例はいろいろ考えられる。例えばデバイスドライバの開発の際、デバッグを仮想マシン上で行うことで効率化を図る(デバッグは通常、開発マシンとは別にターゲットマシンを用意し、そこでテストを行うのが普通だ)とか、仮想マシンが利用できるメモリ量を自由に変化させられる機能を活かして、搭載メモリ量を変えての負荷テストなど、応用はいろいろ考えられる。一歩進んだ深い使い方をしたい場合に、Virtual PC 2004は有用なツールとなるであろう。 |
マイクロソフト Microsoft Virtual PC 2004 製品情報
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マイクロソフト、仮想PCソフト「Virtual PC 2004」(PC Watch) マイクロソフト、仮想マシン「Microsoft Virtual PC 2004」の体験版を公開(窓の杜) |