オンラインのミシュランストアでは、全国にある提携ショップから近所の店舗を選び装着日程予約まで一括でできる。サービスエリアも拡大中なので、ぜひ一度チェックを

 昨年、ミシュランのスタッドレスタイヤ「MICHELIN X-ICE XI3(ミシュラン エックスアイス エックスアイスリー)」を装着した新潟在住の父。前編では、比較的気温が高く、雪も少ない新潟市内で、ベチャ雪や、細街路に残ったアイスバーンなど、さまざまなシチュエーションでのレビューをお伝えした。

 そこで後編では、さらに雪深い道を求めて、まさに日本屈指の豪雪地帯、湯沢へ。両親を連れた温泉旅行を兼ねて行くことにした。長年雪国で暮らし、スタッドレスタイヤにはうるさい父は、その性能に満足してくれるだろうか。

高速巡航でもフラつかない

 新潟市内は好天に恵まれていたものの、朝の内は湯沢IC(インターチェンジ)のあたりが雪で通行止めになっていたようだ。しかし、筆者らが湯沢に向かおうとした頃にはすでに通行止めは解除になっており、予定どおり新潟西ICから関越自動車道に乗って湯沢ICを目指すルートで向かうことにした。

 せっかくなので父にハンドルを握ってもらい、XI3の印象を聞きながら目的地に向かう。ドライ路面の高速道路を走りながらその印象を聞くと、いままで使ったことのあるスタッドレスタイヤだと高速道路を走ったときにフラつきやすいというイメージだったのが、XI3にはそれがないと父。ミシュランのX-ICEシリーズは、従来から高速道路での評価がとても高かったが、XI3の一部のサイズではタイヤの耐えられる最高速度を従来の190km/hから210km/hへと向上している。日本では100km/hまでしか出せないのだから、高速道路でフラつきが少ないと感じるのは当然のことなのだろう。

 日本海側を走っていた頃の路面状況はドライだったが、長岡JCT(ジャンクション)を越えて山間の中を湯沢方面に進むにつれて、徐々に雪が積もってきた。スタッドレスタイヤのレビューをするにはよい状況だ。交通量は意外と多く、周囲のドライバーも雪道は慣れたものでペースは速い。それはずっと雪国に住んでいる父も同じで、臆することなく流れに合わせてクルマを走らせる。クルマの通行により雪が解けて、水分の少ないシャーベット状態になっているところが多かったが、ハンドルを握りながら「なんだか乾いた道路と同じような感覚で走れる。きっとそれだけグリップがよいということなんだろうな」と父。さすがに乾いた路面と同じは言い過ぎだろうと思ったが、父の余裕の表情から確かな安心感を持って運転していることは伺い知れた。

関越自動車道で湯沢を目指す。ドライ路面でもフラつくことなく快適に走れる 雪が解けてシャーベット状になった道でもドライ路面に近い感覚があると父は言う

 さて、ドライと雪の高速道路も走れて、レビューは順風満帆かと思ったが、徐々に雪が激しくなり、目的地である湯沢ICのひとつ手前、塩沢石打ICを通過したところで、吹雪のため通行止めになってしまった。先ほどまで薄暗かった空は、すでに真っ暗になっていたが、数珠繋ぎに並ぶクルマのライトが舞う雪を照らし、あたりは妙に明るく感じられた。それでもときおり視界がゼロになるくらいの激しい吹雪だ。大雪を求めて湯沢に来たわけだが、まさかここまでの大雪に見舞われるとは。結局2時間ほど経過したところで、通行止めが解除! 湯沢ICを降り、道路の両側にうず高く雪が積もっている中を抜けて、なんとか目的地の湯沢東映ホテルに到着した。

湯沢の手前で突然激しい吹雪に遭遇する。通行止めではさすがにXI3を装着していても進めない

 一時はどうなることかと思ったが、親孝行のための温泉旅行は無事に初日を終えることができた。どれだけ雪が降って路面状況が悪くなろうと、視界さえ確保できれば、XI3の頼もしいグリップのおかげでなんら不安を感じることなく走ることができる。そのことを実感させられた1日だった。

通行止めが解除されると、うず高く積もった雪道でも問題なくホテルに到着。家族水入らずで食事と温泉を堪能

圧雪路の下に潜むアイスバーン

 翌朝、せっかくなので朝風呂に入ってから出かけることにした。親子水入らずでいっしょに入浴するのもひさしぶりだったが、露天風呂に出るとしんしんと降り続く雪。さすがは湯沢、同じ新潟県でも新潟市とは雪の量がぜんぜん違う。

 いざ出発するため駐車場に向かってびっくりした。あたり一面真っ白で、どこにウチのクルマを止めたかわからないほど! 高速道路が通行止めになるほどの雪のまま一晩するとこんなになってしまうわけで、クルマを動かせるようにするために雪をどけるのも一苦労だ。

翌朝、クルマの判別も不可能なほどの雪が積もっている。湯沢が豪雪地帯であることをあらためて実感する

 やっとの思いでクルマに乗り込み、両親を乗せて走り出す。このあたりはもともと日本有数の豪雪地帯であるため、路面に設けた穴から水を噴き出させて雪を解かす融雪装置や除雪車による作業など、市街地やメインストリートの雪対策はけっこう行き届いている。しかし、「三国街道」と呼ばれる国道17号線から離れると状況は一変する。あとからあとから落ちてくる雪が通行する自動車に踏み固められて、いわゆる圧雪路となっている。

 空は厚い雲に阻まれていて、太陽が見えていた前日よりも気温はずっと低い。しかしこうした路面状況は、意外と路面ミューが高くて、グリップもするので走りやすかったりする。ところが、一見そうしたグリップする圧雪に見えても、実は新しく積もった圧雪の下に、一度解けた雪が再び凍ったアイスバーンが潜んでいる路面がある。これがとんでもなく滑りやすい。頻繁に雪が降る湯沢の場合、降り積もった新雪で見た目は同じに見えても、実はアイスバーンだったりするので油断は禁物だ。特にブレーキングの繰り返される一時停止のある場所が危ない。クルマから降りて自力で歩いてみると、あまりの滑りやすさに驚かされる。いまどき標準で装着されるABSも、こうした状況では作動しっぱなしになって止まらないことが往々にしてありえるので注意が必要だ。

雪に慣れている土地だけに、市街地やメインストリートはさっそく除雪されていた ただし少し離れた道に入ると、新雪の下はアイスバーンになっていたりするので注意が必要だ

 あるいは、アップダウンのある冬道にもいろいろな危険が潜んでいて、平坦な道に比べて、その危険性は格段に高まる。上り坂では、前輪に十分な荷重が乗らずアンダーステアが出やすいし、下り坂では逆に荷重が乗りすぎることでアンダーステアが出たり、後輪の荷重が不足してスピン状態におちいったりする。特に重たいクルマほど慣性が大きく働いて、止まりにくく、曲がりにくくなるなるので、重いクルマに乗っている人は注意が必要だ。

 父の愛車は4輪駆動であるが、かなりヘビーウェイトのクルマだ。トラクションコントロールや横滑り防止装置も付いていて、それらが作動するとランプが点灯するようになっている。朝からレビューのために、雪の積もった山道を求め走り続けているが、アップダウンやタイトなコーナーがある道でも、それらのデバイスが作動した際に点灯するはずのランプが、ほとんど点灯していない。これは、XI3の十分なグリップにより、デバイスが介入する必要性が小さいということの表れだろう。

大量の雪が積もった坂道でも、グリップ力が高いため、滑ったり下がったりすることなく登って行く

スパイクタイヤを思い出させるアイスブレーキ性能

 三国街道沿いで昼食を採り、歴史的な町並みのあることで知られる、塩沢宿の「牧之通り(ぼくしどおり)」へ向かう。三国街道は、北陸街道の魚市場で有名な長岡市寺泊という町を起点に、群馬県の高崎で中山道に合流するまでをつなぐ街道で、日本海側と江戸を結ぶ交通の要路として、戦国時代には上杉謙信の関東遠征に、江戸時代には参勤交代に利用されてきた。

 「塩沢宿」は、そんな三国街道沿いに計35カ所あった宿場町として栄えたうちのひとつだ。地元住民の「雪国の歴史と文化の街」として復興させようという取り組みによって、2009年に新調したばかりで、タイムスリップしたかのような異次元空間が広がっている。「牧之通り」の名前は、この地の出身である江戸時代の随筆家の鈴木牧之にちなむもの。当時、江戸や上方では雪に苦しむ豪雪地のことがほとんど知られていなかった中で、「北越雪譜」(1837年開板)を記し、雪国の厳しさと暮らしぶりを世に広く知らしめたのが鈴木牧之である。牧之が描写した当時と、この地の冬場の厳しい気候というのは大きく変わっていないはずだ。

宿場町として栄えた「塩沢宿」に立ち寄る。美しい街並みは雪に覆われているが、それはそれで風情がある

 考えてみると、筆者が物心がついてからでさえ、冬場にクルマを走らせる上での環境というのは少なからず変わってきた。免許を取る前には、冬場は家のクルマにチェーンを装着したり、スパイクタイヤを履かせたりしたことを覚えている。スパイクタイヤというのは、アイス路面では抜群の諸性能を誇ったというが、やがて粉塵問題を受けてスパイクタイヤの使用が制限され、岡本家でもスタッドレスタイヤを使うようになった。ところが、世の中に出て間もない頃のスタッドレスタイヤというのは性能が不十分で、とりわけアイスブレーキ性能には不安があったそうだ。

 それも、まだABSが普及する前の話なので、タイヤがロックして止まれないこともしばしばだったらしい。それがいまから20年あまり前の話。この頃が冬道を走る環境としては、もっとも厳しかったといえるかもしれない。

 その後、岡本家でも概ね3シーズンごとにスタッドレスタイヤを新調してきたが、技術の進化により、だんだんと性能が向上していることを実感していると父は言う。そしてXI3について「(圧雪や凍結など)どんな路面状況でも同じような感覚で、何も気にすることなく走れる。これまで使ってきた中でもっとも不安に感じるところがない。アイスブレーキ性能も、昔のスパイクタイヤを思い出させるぐらい高い」と感心していた。

 冬道では、こちらが大丈夫でも、相手方のせいで事故が起こる可能性もある。雪国で生活する父は、かつて相手方が一時停止の十字路で止まりきれず、こちらは優先だったが相手方の危機的状況を察知して急ブレーキをかけ、ギリギリでかわしてなんとか事なきを得た、ということもあったらしい。雪国に住んでいるからこそ、タイヤの性能の重要性を身をもって理解しているし、日々進化するスタッドレスタイヤの性能を実感している。確実に「止まる」そして「曲がる」という性能は、冬道では何よりも大事なことで、XI3はその性能において、父を十分に満足させているようだ。

雪国で暮らす人たちは、冬の道の怖さやスタッドレスタイヤの重要性をよく理解している。父もそのひとりだが、XI3の性能には満足してるようだ

 夕方になり、筆者は東京に向かわなければならない時間が近づいてきた。新幹線に乗るため、JR越後湯沢駅へ。雪が降り続いている中、ここから両親は父の運転で自宅に向かうが、XI3を履いているのだから、心配する必要もないだろう。今回はCar Watchの企画もあって、よい機会と思い父にミシュランのXI3をプレゼントしたわけだが、こうして2日間の旅を通じて、XI3の性能と、それを運転する父の表情をみて、本当によいプレゼントができたとあらためて実感した次第だ。

この製品の購入はこちらから

関連情報

関連記事