オンラインのミシュランストアでXI3を購入。全国にある提携ショップから近所の店舗を選び、装着日程の予約まで一括してできてしまう

 昨年、新潟に住む父が愛車のスタッドレスタイヤを新調することになった際、筆者が仕事で試乗して非常に印象のよかったスタッドレス「MICHELIN X-ICE XI3(エックスアイス エックスアイスリー)」(以下XI3)をプレゼントすることにした。東京にいながらにして、ECサイトのミシュランストアでネット注文。両親の住む新潟でもっとも近いタイヤショップを選んで装着した。一般的にオープンプライスで、店頭に足を運ばないと値段もわからないタイヤだが、ネットで商品代金はもちろん、装着工賃や古タイヤの廃棄代まですべて決済できてしまうというこのシステムは、なかなか画期的だった。

 と、ここまでは昨年の記事でお伝えしたとおり。今回はそれから後、本格的に降雪シーズンを迎えた新潟で日々XI3で走り回っている父のレビューを交えつつ、日本一の豪雪地帯でのインプレッションをお届けしたい。

解けかけの雪に回転方向指定パターンが効く!

 前回の装着時以来の帰郷は、新潟駅で父と待ち合わせした。新潟というと豪雪地帯というイメージが強いが、本当に多くの雪が降るのは上越や湯沢あたりで、両親の住む新潟市内は、それほど雪は多くない。そのため除雪の設備も大掛かりには整えられていないのだが、それでも一晩で30cmほど積もることもある。こうなるとその翌日がなかなかしんどいわけで、この日もまさにそんな日だった。

この日は珍しく新潟市内でも雪が降っていた。降雪頻度は低いが降れば10cm程度ならすぐに積もってしまう

 駅を降りると明け方から降り始めた雪が駅前のロータリーにも十数cm積もり、ところによっては、おそらく以前に積もった雪が氷になっていて、歩くのにも注意が要るような状況。スタッドレスタイヤの取材としては、ある意味ラッキーなシチュエーションだ。とはいえ、父の車に乗って走り出してしまえば、降ったばかりの新雪はXI3の敵ではなく、不安なく走り始められた。

 しかし気温の低い朝のうちはまだよいのだが、日中にかけて気温が上がってくると、大通りの轍のところだけ、雪が融けてシャバシャバとしたシャーベット状態になる。周りには雪が積もっているため水が排水溝に流れず、場所によっては深さ数cmの水たまり状態にもなる。

クルマ通りの多い道では、轍の部分だけ雪が解け、シャーベット状態になる 通りの多い部分は雪が完全に解けていても、右折車線などにはまだまだ雪が残っているので安心できない
大通りの路面の状況。轍の部分も片側の轍にだけ雪が残っていたり、シャーベット状になっていたり、場所や時間によって刻々と状況が変化する

 スタッドレスタイヤというのは、一般的にウェット路面が苦手だ。氷上性能を上げるためには接地面積を大きくする必要があり、その分、溝が減るので排水性能は落ちるという理屈。氷の上のわずかな水膜程度であれば細かなサイプで除去できるが、深い水たまりというのはあまり得意としない。

 しかしこういったシャーベット路においても、XI3は強さを発揮する。XI3の排水&排雪性能の高さの要因は、センターからV字型に広がった回転方向指定パターンにある。タイヤが回転したときに排雪&排水性を考えると、方向性があったほうが有利なことは容易に想像がつくだろう。装着時の作業性を考えれば方向性はないほうがよいが、ミシュランはそれはユーザーのためのことではないと判断して、あえて方向性のある「Vシェイプデザイン」のパターンを採用。XI3では、従来のXI2よりもより排水&排雪性能を高めたパターンに進化している。

気温が上がってくると、雪の轍の内側には大きな水たまりができる。こういったシチュエーションでは排水性能の高さが要求される XI3は回転方向指定のVシェイプデザインで排水&排雪性能を高めている

マンションの陰にできたアイスバーンがやばい!

 でも新潟の道はそれだけで安心はできない。クルマの往来の多い大通りであればよいのだが、一本路地を入れば状況は一変する。交通量が少なく、加えてマンションの陰で一日中陽が当たらないような路地では、積もった雪が時々通るクルマに踏み固められ圧雪になり、その表面が磨かれてアイスバーン状に変化する。一見するとただの雪に見えるのだが、人間が立って歩くのも厳しいほどツルツルな状態となる。

大通りから一本路地を入るととたんにアイスバーンになっていたりする。緊張する一瞬だ 奥の大通りはすでに路面が乾き始めているのに、手前の路地はテカテカのアイスバーンになっているのがわかる こちらは大きな建物の日陰。おそらく以前降った雪が解けずに踏み固められ凍った状態
一見するとただの白い雪に見えるが、よく見ると表面が凍っていてかなり滑るアイスバーンだったりする 大通りと脇道でまったく路面の状況が異なる。除雪機能がそこまで完備されていないため、雪が解けきらずに残っている場所があちこちにある 住宅街にある交差点も万年アイスバーン状態。一時停止する交差点の手前は、さらに磨かれて滑りやすい状態になっていて、まともに歩けないような状態だ

 そうした厳しい状況でこそ、XI3は真価を発揮する。このような圧雪の表面が磨かれてアイスバーン状になった路面というのは、一般的にスタッドレスタイヤがもっとも苦手とするシチュエーションといわれている。タイヤと路面が接する部分に水膜ができてしまい、それが滑りの原因となってしまうからだ。水膜はある程度気温が低い状態であってもタイヤが接地したときの圧力によって氷が解けて発生してしまう。なので、ブレーキを踏んでもツーッと滑って、ABSが作動しっぱなしになって、なかなか止まらないというのはよくある状況だ。

 そんなわけでアイス路面では、いかに水膜を除去できるかが問われるのだが、XI3はしっかりグリップして、比較的よく止まってくれる。さすがに強めのブレーキではABSが作動するが、それでもちゃんと減速Gを感じることができ、安心感が高い。これにはトレッドと路面の間の水を「マイクロポンプ」と「クロスZサイプ」が吸収しつつ、「ZigZagマイクロエッジ」と「クロスZサイプ」のエッジ効果で強力にグリップするからに他ならない。

 評判のよかった従来モデルのX-ICE XI2に比べても、約9%もアイスブレーキ性能が向上しているとのこと。ブレーキ性能というのは、なによりも重要なものに違いないし、XI3であれば、より安心して冬の道をドライブできるというわけだ。

さすがにここまで滑りやすいアイスバーンだと、XI3でもABSが作動するが、それでも確かな減速Gを感じられるので、精神的な安心感が違う ピンホールのようなマイクロポンプとクロスZサイプが氷表面の水膜を除去し、エッジ効果でグリップを生む
通勤で毎日クルマを利用する父。ミシュランのスタッドレスタイヤは初めて履くが、その性能には満足してくれているようだ

 父にもXI3に履き替えて、印象がどうだったかを聞いたところ「よくグリップしてくれて、ブレーキで止まるときもまったく不安がない。交差点でステアリングを切ったときの反応も、これまで使ってきたスタッドレスタイヤとよりもスッと曲がってくれて、凍った路面でも走りやすい」とのこと。

 これは、前で述べたとおりのアイスブレーキ性能の高さと、ブロック剛性が高く応答遅れがないことや、多方向に配したサイプが全方位に高いエッジ効果を発揮する「バリアブルアングルサイプ」の性能の表れといえそうで、素人ドライバーである父もそれを感じ取っていたのだろう。日常的に雪道を走る中で、XI3の性能には十分満足してくれているようだ。

ミシュランストアの無料点検を受けてみた

 さて、昨年お伝えしたとおり、このタイヤはネット販売のミシュランストアで購入したわけだが、実はミシュランストアで購入すると、タイヤの空気圧や溝、外観の点検、ホイールナットの増し締めといった安全点検サービスを1年間何度でも無料で受けられる。さらにタイヤローテーションやパンク修理も1回まで無料という特典が付く。父一人ではなかなかお店に行くこともないだろうし、せっかくなのでこの機会に点検をしてもらうことにした。

 XI3を装着してもらった「ニッタタイヤ タイヤショップbub(ブブ)新潟店」に到着し、点検を受ける。まだ装着して間もないことだし、あくまで念のためというつもりでいたのだが、どういうわけか右側後輪の空気圧だけが低い。これはおかしいということで調べてもらうと、なんと5cmぐらいの針金が刺さってスローパンクチャーを起こしていた。

 父によると、3日ほど前に仕事で廃材置き場を走ったらしく、その際に踏んだ可能性が高いとのこと。お店のスタッフによると、こうしたケースは後輪に多く、特にスタッドレスではよくあるケースだと言う。というのも、路上に転がっている針金や釘を前輪で踏むと、倒れていた釘が反動で立ち上がってしまい、そこを後輪が踏むことで突き刺さるのだそうだ。

昨年ミシュランストアのWebサイトで見つけ、装着をしてもらったタイヤショップbub 新潟店
ホイールナットの締め付けトルクのチェックや空気圧のチェックをしてもらった
なぜか1本だけ空気圧が低い右後輪を外して調べてもらったところ、空気が漏れているのを発見! 原因を確かめるためタイヤをホイールから外す
こんなにも長い針金が刺さっていた。フロントタイヤで跳ね上げられた針金や釘が後輪に刺さるのだとか 刺さった針金を除去しパンク修理をしてもらった。パンク修理は購入3年以内なら1回限り無料だ

 それにしても、これがたまたま点検のタイミングだったのは本当に幸運だった。この3日間は市街地しか走っていなかったようだが、もしも気づかず低い空気圧のまま高速道路を走っていたら、バーストする危険性もある。さらに、一般的なタイヤでは空気圧が120kPaあたりを下回るとガバッと外れてしまう危険性があるらしい。ミシュランではビードをしっかりさせているので、よほどでないとリムから落ちることないそうだが、それでもバーストする危険性があったことには違いない。あらためて点検の重要性を思い知った次第である。

 さて、期せずしてパンクというトラブルにも見舞われたものの、新潟市内での解けかけの雪での性能が十分にあることは確認できた。これは関東圏の雪にも通じる性能テストになったと思う。後編ではより本格的な雪国での性能をテストすべく、両親とともにより雪深い湯沢まで足を伸ばしたので、その模様をお届けしたい。

後編では真の豪雪地帯、越後湯沢でのレポートをお届けするのでお楽しみに!

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