前編に引き続き、富士スピードウェイ・ドリフトコースで「ベストカー タイヤ体感試乗会 supported by MICHELIN」へ参加した模様をお伝えしたい。

 前回は僕自身が、次のタイヤはコレかな?と思っていたパイロットスポーツ3(以下PS3)のインプレッションを中心にお伝えしたが、今回はコンフォートタイヤのプライマシーLCのインプレッションをお伝えしたい。

  • プライマシーLCをクラウンに装着して試乗した
  • パイロットプレマシーLC
プライマシーLCのトレッドパターン。タイヤの回転方向に対し垂直にカットした際、
どこでもブロック部と溝の割合を同じにすることでトレッドブロックの振動を抑制し静粛性を向上

 プライマシーLCはミシュランのラインアップの中でも静粛性と乗り心地のよいタイヤ。しかしプライマシーLCのスペシャルウェブページ(http://www.michelin.co.jp/primacylc/)を見てみると、ハンドリング性能やウェット性能にもこだわったタイヤだということがわかる。そんなプライマシーLCをトヨタ・クラウンに装着し、試乗した。


満足保証キャンペーンについて説明する日本ミシュランタイヤPC/LT事業部の姫野氏(写真右)

 日本ミシュランは、日本初となるタイヤの「満足保証キャンペーン」を展開中。詳細はこちら(http://www.michelin.co.jp/manzoku/)をご覧頂きたいが、このキャンペーンに申し込んでおくと、プライマシーLC、PS3のいずれかを9月30日までに購入後、もし不満が残った場合は、60日以内ならタイヤの返品を受け付け、全額返金するという。

 PS3の性能に彼らが自信を持っていたように、プライマシーLCにも自信を持っているはず……なんてことは、十分わかった上で試乗してみたのだが、正直、この試乗結果にはかなり驚いた。僕が持っていたコンフォート向けタイヤへのイメージと、まるで違ったものだったからだ。

 

プライマシーLCを装着したクラウンで試乗。助手席はモータージャーナリストの竹平素信氏
 僕のコンフォート系のタイヤへのイメージは、走行音はとても静か。ウェット性能やグリップ性能は日常的な走行で十分なレベルなんだろうけれど、剛性感の不足から来るステアリング操作に対する応答遅れや、手応えの少なさには物足りなさを感じる、というイメージ。

 なんてことを書いているが、実はスポーティな車ばかり乗っているので、コンフォート系タイヤの経験に乏しい。そんな読者は結構、少なくないのでは。

 タイヤ大好きモータージャーナリストの斉藤聡氏が設定したコースは、スタート後に三つのパイロンを抜けるタイトなスラローム。その後、中速コーナーをぐるりと右に180度回り、左コーナーへと切り返して直線コースへ。直線には3本のギャップが作られており、ここを約50km/hのペースで乗り越えながら、乗り越える時の音質と音量を確認。さらに奥にあるパイロンをクルリと回って反転し、もう一度同じギャップを越えて静粛性を再確認してスタート地点へと戻るというプログラムだ。

 プライマシーLCを履いたクラウンで試乗をスタート。……っと、ここでアレっ? と思ったのが出足のよさ。最初の動き始めが軽快で、発進加速がよいように感じる。

走り始めてすぐに走り出しのよさを実感。これが転がり抵抗の少なさなのか?

 しかし違いはそこから先。出足がよいため、スラロームへの侵入速度も速いはずなのに、左右へのノーズの動きは軽い。クラウンの場合、元よりパワーステアリングのアシストが効き過ぎという印象のステアリングフィールだが、手にはしっかり路面の情報が伝わってくる。何よりステアリングの切り始め、拳1個か1個半ぐらいしか切っていないところでの手応えとクルマの応答が、スポーツタイヤに近いフィーリングを感じ取れた。コーナリング時は、タイヤの横方向への変形もさほど感じないまま、しっかり地面を踏みしめつつ、右カーブから左カーブへと切り返した。


パイロンを使ったスラロームから右コーナー。コンフォートタイヤとは思えないほどに初期から反応がよく、奥でもしっかり踏ん張ってくれる

 無論、さらにスピードを上げていけば話は変わってくるのだろう。しかし、極端に荷重をかけない状況下では、なかなかしっかりしたフィーリングを味わうことができた。乗り心地はよいし、しなやかさも感じるのだが、柔らかさを感じるところまでは至らないという印象だ。

  グッと荷重がかかり、サスペンションが沈んだ状況下でのロードノイズにも注意深く耳を傾けていたが、多少音量は上がるものの耳障りな印象はなかった。中高域の音が目立たず耳に付く音が少ない。ロードノイズとして放出されるエネルギーを減らすだけでなく、耳の感度が高い周波数帯を避けることで、聴感上の騒音“感”を下げているのかもしれない。そんなことを感じながら、ギャップを乗り越えてみると、「ストン」と少し低域に寄った音がした。プライマシーLCの音は、やはりその質をコントロールされているようだ。加えて「ストン」の後に続く余韻も少ない。


路面上に設けた段差を越えることで、ロードノイズもチェック。ストンストンと乗り越えて、音に不快さがない
 他の参加者にも印象を伺ったが、走り出しのスムース感を強く感じたのは僕だけではなく、話を伺った参加者ほぼ全員が発進加速のスムースさについて触れている。これが転がり抵抗の少なさによるものなのだろう。

 

  • 柴犬(HN)さん
    クラウンで試乗したが、コーナリングでプライマシーLCは結構踏ん張ってくれた。インフォメーションもあるし剛性感があってよかった。普段はカルディナのターボにスポーツタイヤを付けているので、それと比べるととても静かだった。
  • 林 昭雄さん
    プライマシーLCはスーッと走る感じで、走り出しの抵抗が少なく感じた。コーナリングもよかったが、スキール音は早く出た感じ。自分はスキール音でグリップの限界を感じるので、むしろ好印象。今はミニバンに乗っているので、フラット感や静粛性、スーッと走るコンフォートな感じがよかった。

 

  • 山本英則さん
    プライマシーLCは、段差を乗り越える際にやわらかい感じがした。音の大きさや収まり具合など全体的な雰囲気でやわらかい印象を受けた。加速もプライマシーLCはよく感じた。転がり抵抗が少ないからだと言われるとそういう気がする。バイクも乗っているがミシュランは持ちがよくコントロール性がよい印象を持っている。
  • たいしょう?(HN)さん
    トップバッターだったのでかなり遠慮してしまった。コーナリングで、スピードを上げてもアンダーが出ない様な感じ。段差を超えた際は、プライマシーLCは音が出たが、振動の収束が早い感じで、個人的には好みだった。

 

 

 と、まあ参加者も、こんなにフィーリングがよいなんて思わなかった、と驚きを隠せないよう。僕の個人的な本命はスポーツタイヤ。おそらくPS3が性格的に一番合いそう。プライマシーLCへの興味は(正直に言うと)なかったのだけど、乗ってみたら俄然、興味が湧いてきた。

モータージャーナリストの斎藤聡氏などによるトークショーも行われた。詳しくは前編で

 斉藤聡氏はトークショーで「レースも、スポーツも、コンフォートも。ミシュランタイヤの味付け、性格はすべて同じ。コアの部分が同じテイストで、それぞれのカテゴリごとに求められる方向に味付けされている」と話していたが、プライマシーLCに乗ってみて、なるほどと感じた次第。

 PS3とプライマシーLCは、同じ分類、同じ仲間のタイヤで、ちょっとスパイスの振り方を変えましたよ、という感じ。なんだ、同じようなものを売っているのか? と思うかもしれないけれど、方向性はまったく違う。でも基本の部分、商品のコアの部分はまったく同じ。そして、実際に体験してみると、このことがとても大切なのだと思うようになってきた。

 コンフォートでも、しっかりしたハンドリングや高いコーナーリング性能はあった方がよいに決まっているし、スポーツタイヤだって目的の性能が出ているのなら、快適な方が運転していて疲れないはずだ。

 これが“レース専用”なんて極端な状況のみで機能すればよいタイヤなら、話は変わってくるかもしれない。しかし、近くのコンビニに買い物に出かけることもあれば、デートや家族旅行にも使い、たまには趣味でドライビングを楽しみ、なんて多様な使い方をする自家用車には、“諦めてもよい性能”なんてないんだなと実感した。

 しかも、このプライマシーLC。転がり抵抗を減らして燃費を改善するエコタイヤでもあるという。グリップ性能に優れるのにエコタイヤなんて、そんな魔法のようなことがあるんだろうか? とも思うが、燃費のよさは十分に予感できる。

日本における低燃費タイヤのラベリング制度にも適合。転がり抵抗性能がA、ウェットグリップ性能がcだ

 プライマシーLCの試乗に、ことさら強い感動を覚えたのは、日常的なシーンでの利点が多いからかもしれない。プライマシーLCの利点は日常の走行シーンでほとんどが体感できる。

 というわけで、スポーツタイヤには興味がない、なんて方も「満足保証キャンペーン」を活用し、その実力を感じてみてはどうだろうか。きっとコンフォート系タイヤに対するイメージが変わるはずだ。これほど、履いただけでよさを即座に実感できるタイヤは他に経験したことがない。まずは“体感しましょう”と声をかけたい気分。しかし、体感してしまうと、もう戻れなくなりそうだが。

前編はこちら

本田雅一■本田雅一 (ほんだ まさかず)
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。 個人メディアサービス「MAGon」では「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を毎月第2・4週木曜日に配信中。
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