マクセルが満を持して送る高級ヘッドホンラインアップ登場

 マクセルのインナーイヤーヘッドホンといえば、お手頃な価格でありながら高級機種さながらのクオリティの高い音質を出力し、コストパフォーマンスが非常に高い製品作りをしているというイメージを筆者は抱いている。そんなマクセルが新たなるステップを踏み出すべく、これまでの技術を結集して待望のハイエンドモデルをリリースすることになった。それが今回紹介する「MXH-DBA700」と「MXH-DD600」である。

  マクセルが送り出す高級インナーイヤーヘッドホン2種。左が「MXH-DBA700」、右が「MXH-DD600」。ハウジング形状は同じだが、単純な上位モデルと下位モデルの関係ではなく、まったく別の機構を備えている  

マクセルが送り出す高級インナーイヤーヘッドホン2種。左が「MXH-DBA700」、右の2つが「MXH-DD600」。ハウジング形状は同じだが、単純な上位モデルと下位モデルの関係ではなく、まったく別の機構を備えている

 まず「MXH-DBA700」は、バランスド・アーマチュア型+ダイナミック型による「Maxell Hybrid Driver」を搭載しており、市場想定価格が9,800円。続いて「MXH-DD600」は、ダイナミック型ドライバ2基の「Maxell Dual Dynamic Driver」を搭載しており、市場想定価格が7,800円。これまでのマクセルのカナル型イヤフォンの最高機種が「HP-CN45」で、その価格が約4,500円(オープンプライス)なので、今回リリースされる2機種は価格的にハイエンド。ただ、ドライバといいアルミ製ハウジングといい、両機種の仕様を見れば、かなり「頑張った」価格であるのがわかるだろう。とにかく、今後注目となるインナーイヤーヘッドホンであると太鼓判を押したい。

 両機種をくわしく見ていく前に、まずはマクセルが今回新たに増設したハイエンドヘッドホンシリーズについて簡単に説明したい。そもそもマクセルはオーディオ用カセットテープをメイン商品として発売していた頃から“音にこだわるメーカー”として認知されており、近年の主力商品であるヘッドホンとスピーカーにおいても同様の評価を得ているわけだが、その“音に対するこだわり”をより一層高めていこうという狙いが今回の新シリーズを立ち上げた理由となっている。

 まず先行して発売されるのが今回の2モデルなわけだが、型番の変更がおこなわれているのがわかる。従来のマクセルのヘッドホンは“HP”から始まる型番であったのだが、10月に発売された「MXH-DR200」、「MXH-DR300」から“MXH”が先頭に付くようになっている。マクセルの新生シリーズを象徴するものといえるだろう。

 さらに、製品ブランドのシンボルマークも新たに作成。その“m”マークだが、「maxell」及び「music」の頭文字であると同時に、デザイン的にもメッセージが込められている。それは、“過去(オーディオテープ)から未来(ヘッドホンやスピーカー)まで、音でコミュニケーションを取ろう”という壮大なテーマで、そんなところにもハイエンドシリーズに掛けるマクセルの意気込みが感じられる。なお“m”マークは今後、フラッグシップモデルや注力モデルで表示されていくというので、要注目だ。

 それでは「MXH-DBA700」と「MXH-DD600」の仕様を個別に見ていくことにしよう。

  新たにマクセルのハイエンドオーディオのブランドマークとして採用されたシンボルマーク  

新音響技術&高音質を表す、新しいシンボルマーク

BA+ダイナミック型ドライバをハイブリッド搭載
「MXH-DBA700」

バランスド・アーマチュア型ドライバとダイナミック型ドライバのハイブリッド構成となる「MXH-DBA700」

バランスド・アーマチュア型ドライバとダイナミック型ドライバのハイブリッド構成となる「MXH-DBA700」

 「MXH-DBA700」の最大の特徴は、前述したバランスド・アーマチュア+ダイナミック型による「Maxell Hybrid Driver」を搭載しているところにある。ちなみに型番の“DBA”だが、“D”がダイナミック型、“BA”がバランスド・アーマチュア方式を表わしている。

 バランスド・アーマチュア型ドライバを採用したインナーイヤー型ヘッドホンは近年では各社からリリースされており、比較的低価格なモデルも登場するなど、すっかり定着した感がある。そんな中、より独自性を出そうという思いからマクセルが選んだ手段が、異なるドライバをふたつ搭載したハイブリッド方式である。バランスド・アーマチュア型の持つ繊細かつ明瞭な音と、ダイナミック型が持つ力強い中低音が組み合わされば、さぞ良い音になりそうだと早計してしまいがちだが、決められたホーン型の筐体の中で、各ユニットをどのように配置するか、あるいはユニット各自のチューニングなど、クリアすべき問題は山積し、ヒアリングテストを何度も繰り返すなど、開発には時間が掛かったという。ちなみに各ユニットの配置は図のようになっている。なおダイナミック型ドライバの直径は8mmのものを採用している。

  フラット型コードは高級感と実用性を兼ね備える   イヤーピースは4種  

高音域用のBAドライバと中低音域用のダイナミックドライバを搭載

 

特性の異なるふたつのドライバを活かした音作りを目指した

 「MXH-DBA700」のもうひとつの特徴が、印象的なホーン型の筐体であろう。ハウジングはやや大きめなのかなという印象もあるが、実際に装着してみると気にならないサイズだ。なおフロントとリアのハウジングにはアルミニウム切削ボディを採用。剛性の高いアルミを使うことで不要共振を抑え、クリアな再生音を実現している。なおハウジングのリア部には前述した“m”マークが刻まれており、ブランド名やモデル名などは一切入っていない。この非常にシンプルかつ硬派なルックスは、個人的には非常にカッコいいと思った。

  ホーン型のハウジングという個性的なスタイル。アルミ削りだしパーツも使われており高級感が高い   リアハウジングには新生「m」ロゴマークがただひとつ刻まれる  

ホーン型のハウジングという個性的なスタイル。アルミ削りだしパーツも使われており高級感が高い

 

リアハウジングには新生「m」マークがただひとつ刻まれる

 またケーブルについてもマクセルとしては初めてとなるフラット型のコードを採用。通常のコードの場合、絡まって難儀することが多々あるが、フラットコードの場合はそうした心配は無用。加えて見た目にも高級感があるところもナイスだ。

 付属しているイヤーピースは抗菌加工済みで、L/M/S/SSという4種類のサイズが用意されている。

 その他の基本スペックは、インピーダンスが16Ω、音圧感度が104dB/mW。再生周波数帯域:20〜20,000Hzで、最大入力が200mWとなっている。コードの長さは約1.2mで、ステレオミニプラグ(金メッキ)はL型が搭載されている。

 カラーはブラック一色のみで、市場想定価格が9,800円。

  フラット型コードは高級感と実用性を兼ね備える   イヤーピースは4種  

フラット型コードは高級感と実用性を兼ね備える

 

イヤーピースは4種

ダイナミック型ドライバをデュアル搭載「MXH-DD600」

カラバリはブラックとレッドの2色。特にレッドは、製品担当者も自信を見せる非常に美しい仕上がり

ダイナミック型ドライバのデュアル構成となる「MXH-DD600」。カラバリはブラックとレッドの2色。特にレッドは、製品担当者も自信を見せる非常に美しい仕上がり

 「MXH-DD600」はダイナミック型のドライバを2基搭載したモデルで、型番の“DD”は前述したとおり“D”がダイナミック型を表わしている。

 搭載されているドライバだが、リア側に配置されているのが直径8mm、フロント側が直径6mmとなっている。この口径サイズから8mmが低域、6mmが中高域という割り振りになるのであろうが、両者の特性は実はそれほど離れておらず、実際はかなりの部分で重なっている。これによって本機の特色となっている音の「厚み」が生まれるのだという。

 ホーン型のアルミニウム切削ボディ、フラットコード、4種類の抗菌イヤーピース、L型のステレオミニプラグといった仕様は、前述した「MXH-DBA700」とまったく同じだ。基本スペックは、インピーダンスが8Ω、音圧感度が100dB/mW。再生周波数帯域:20〜20,000Hzで、最大入力が200mWとなっている。

 なお「MXH-DBA700」ではブラック一色のみであったが、本機はレッドも用意されている。この赤の色合いだが、深みがあり、アルミボディの光沢と相まって、非常にシックな仕上がりを見せていてカッコいい。市場想定価格が7,800円。

  フラット型コードは高級感と実用性を兼ね備える   イヤーピースは4種  

ダイナミックドライバを2基搭載

 

2基のドライバの特性が重ねることでこれまでにない音の厚みを志向

両機を試聴してみる

※試聴には第5世代iPod(30GB)/オヤイデ FiiO E1(ヘッドホンアンプ)を使用。

MXH-DBA700

 第一印象でまず驚いたのが音量だ。iPodとヘッドホンアンプのボリュームを同一設定にし、普段筆者が愛用しているイヤフォン(ダイナミック型)と聴き比べたところ、音量にして2〜3dBくらい「MXH-DBA700」の方が大きく感じる。音質がはっきりとしており、特に高域が顕著なのだがロスしている音域がまったく見当たらない。

 まず最初に選んだソースが、押尾コータローが昨年リリースした『Hand to Hand』からアコースティックギター1本による、しっとりとしたバラード曲「手のひら」。押尾はこの曲でギブソンのL-1というかなり古いモデルを弾いているのだが、このギターは中域にかなり癖を持ったイナたい音色が特徴。たしかに3〜4弦を弾いているあたりでは、その片鱗がわかるのだが、高音弦のきらびやかな響きがオールドギターっぽさが薄らいで、もっとハイファイなギターを弾いているかのような印象を受けた。とにかく6本の弦それぞれが狭い音域の中で鳴っている様子を見事に捉えており、音の分離感はすこぶるご機嫌だ。また押弦している左手がポジションチェンジの際に、鳴ってしまうキュッキュッというフィンガーノイズが生々しくて、まるで目の前で弾いているかのような臨場感を味わえた。

 続いての音源は、ラッシュの名盤『ムーヴィング・ピクチャーズ』から「トム・ソーヤー」。この曲は米ドラマ『チャック』でも使われていることもあり近年再注目されているが、アルバム自体は1981年作と古い音源。にも関わらず、「MXH-DBA700」で聴くとまるでデジタル・リマスタリングしたかのような明瞭な音で聴こえてくる。ゲディ・リーのシンセ音とニール・パートの叩くシンバルやハイハットの音は、ややデフォルメされて高域が強く感じるが、アレックス・ライフソン弾く粘っこい中域だらけのギターは健在のため、全体を通して気持ちよく聴くことができた。またゲディ・リーのシンセとアレックス・ライフソンのギターがユニゾンするパートにおいて、互いのパートがしっかりと聴き取れ、分離の良さや再現力の高さには感服した。

 次はエアロスミスの新作『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』より「レジェンダリー・チャイルド」。冒頭のジョー・ペリーによるフィードバック音がヒステリックなまでに耳に突き刺さり、普通の人なら騒音にしか聴こえないであろうが、ロック好きにとっては、この音はまさに快感! この曲ではトム・ハミルトンのベースの音が捉えにくく、筆者が普段使っているヘッドホンだと、まったく聴き取れない。それが「MXH-DBA700」で聴いてみて、オーヴァードライブを掛けて強めに歪ませていることが発覚し、しかも結構な重低音で鳴らしていることがわかった。低域においての迫力は十分な上、音像がボヤけることなく再生できる力を持っている。恐るべし、「MXH-DBA700」。


MXH-DD600

 押尾コータローの「手のひら」では、「MXH-DBA700」で感じられたハイファイな印象がなくなった分、古いギブソンならではの素朴なトーンが満喫できた。特に5〜6弦の低域がややボヤけて聴こえる感じは、このギターの特徴を見事に捉えている。この曲を耳コピーで採譜するなら「MXH-DBA700」の方がやりやすいだろうが、純粋に音色を楽しむのであれば「MXH-DD600」の方が筆者好みである。

 続いてはレッド・ツェッペリンの2007年の再結成時のライヴ音源『セレブレイション・デイ』から「カシミール」。変則チューニングにより独特のギターリフが印象的な曲だが、この時のライヴでジミー・ペイジはフェイザーやワウペダルなどエフェクターを多用しており、ウネリを利かせたサウンドを展開。ジョン・ポール・ジョーンズがベースではなくキーボードを演奏する曲ゆえに、ペイジのギター音は中低域寄りに振っているのだが、この帯域における「MXH-DD600」の再現力は白眉で、音が細くならずに、ひたすらズブズブと響いてくれる感じがたまらなく気持ちいい。またジェイソン・ボーナムのベードラの音が重低音を響かせつつ、いい塩梅でタイトなところも好感が持てる。

コストパフォーマンスにもすぐれたマクセルのハイエンド第1弾

 試聴をした印象では、「MXH-DBA700」は帯域ごとのセパレーションに優れ、複数の楽器によるアンサンブルの場合、各々の楽器固有の音色を的確に捉える力を持っている。今回は筆者が得意とするギター系の音楽を中心に試聴したが、同機ならばクラシックやジャズなどのようなダイナミックレンジの広い音源を聴くのに最適であろう。一方の「MXH-DD600」は、厚みのある中域が魅力的で、ロックやJ-Popなど、特にヴォーカルが入った楽曲を聴くのに合っているという印象を持った。

 バランスド・アーマチュア+ダイナミック型によるハイブリッドドライバを搭載したイヤフォンを発売しているメーカーは、現段階ではそれほどない上に、あったとしても非常に高価である。ダイナミック型が2基という仕様に関しても、ユーザーフレンドリーな価格帯のものは少ない。その点、「MXH-DBA700」と「MXH-DD600」は1万円を切る良心的な価格を実現してる。
音質のクオリティも自信を持ってオススメできる仕上がりを見せている。興味がある方は是非とも試していただきたい。


[Reported by ashtei]

  左が「MXH-DBA700」、右が「MXH-DD600」  
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