日立マクセル HP-CN45

大口径13mmドライバがジャストフィット 解像度・遮音性も高めて進化

 iPodやWalkman用のヘッドフォンに何か安くていい製品はないか、と探している人は多いはず。もちろん上を見ればウン万円というクラスの高級品もあるが、4,000〜5,000円で購入できる手軽で音のいい製品に人気が集中しているのも事実。その中で、最近話題になっているのが2月25日に発売されたばかりのマクセルのインナーイヤー・タイプのHP-CN45という製品。どんなヘッドフォンなのか試してみた。

大口径13mmドライバユニット搭載でも高いコストパフォーマンス

 数多くのメーカーが参入するポータブルプレイヤー用のヘッドフォンとしてロングセラーとなっているもののひとつが、マクセルのHP-CN40という製品だ。実売価格が4,000円弱と手ごろでありながら、素直でフラットなサウンドが人気を呼んでいた。この価格帯の製品だと、いわゆるドンシャリ系のものが多いのは事実。やはり若年層を中心にした「低音で迫力を出し、高域も強く」というニーズに応えた製品が集中しているからだろう。そんな中で、HP-CN40は「妙な強調のされかたがなく、気持ちよく聴ける」ということで評判がよかったのだ。

 そのHP-CN40はHP-CN40Aにマイナーチェンジをしながら、登場してから3年近く経過していたのだが、ここに来てその上位モデルとなるHP-CN45が誕生。その型番から「HP-CN40の後継モデルなのでは?」と思う人も多かったようだが、HP-CN40はそのまま現行製品としてラインナップされ、価格も実売4,480円前後とちょっとだけ高いものとして位置づけられているのだ。

 そもそもHP-CN40Aの人気が高かった背景には、インナーイヤーの製品ながら直径13mmと大きなドライバユニットを採用しており、その結果として高音質である、ということがあった。一般に13mm以上の大口径のものとなると、5,000円から10,000円、さらにはそれ以上の価格レンジとなるが、その大口径のドライバを採用しながらも安く抑えられていたのが人気の秘訣ともいえるところ。この新製品、HP-CN45もやはり13mmのドライバユニットを搭載しているのだが、HP-CN40Aのウィークポイントとされていたところを克服し、さらにいい音に仕上げたヘッドフォンとなっているのだ。

イヤピースは3種類付属

[手前:CN45 奥:CN40A]
コード長は1.2mに

進化ポイント その1 装着性の向上

[左:CN45 右:CN40A]
CN45では斜めに角度が
ついて装着感が高まった

 では、HP-CN40Aのウィークポイントとは何だったのか。そのひとつは装着感だ。筆者自身はまったく不満はなかったのだが、やはり13mmと大口径なドライバユニットを使っているだけに、耳にフィットしにくい、装着してもドライバ部分の重さで外れやすい、という声が挙がっていたようなのだ。とくに女性ユーザーにとってそれがひとつのネックともなっていた。確かに、構造を見るとイヤーピース部分がドライバに対して垂直に設置されていたので、そうした不満が一部から出ていたのだろう。それに対し、HP-CN45ではドライバに対してイヤーピース部分が斜めに取り付けられているのが分かる。これなら耳の大きめの人ならドライバ部分まで含めて耳の内側に装着できるし、そうでない人でも違和感なく納まるのがポイントだ。もともと楕円形のポートを採用していたので、多くの人にとっては装着感としてもいい感じであったが、その快適性がさらによくなったのだ。

進化ポイント その2 遮音性の向上

[左:CN45 右:CN40A]
CN40Aでは穴が3つ空いていたが…

 さらに、それより大きい問題となっていたのが遮音性だ。よく構造を見ると分かるとおり、HP-CN40Aの場合、ちょっと大きめな音の抜け穴が3つ空いていた。これが高音質性、音抜けをよくする秘訣ともなっていたのだが、この穴によって、どうしても遮音性が損なわれていた。カナル型ヘッドフォンではあるものの、どうしても外の音が入り込んでしまうという問題があったのだ。それと同時に、電車の中などで使っていると、音漏れしてしまうという問題点もあった。

CN45では極小の穴ひとつになった

 そこで、その音漏れをなくすために、設計を大幅に変え、抜け穴を小さい1つの穴に絞ったというのが最大の違いといってもいいだろう。こうすることで、遮音性を大幅に向上させているのだ。ただ、普通に考えても想像がつくとおり、音の抜け穴を小さくしてしまえば、当然音はこもりがちになる。それが大きな問題となり、開発に時間がかかっていたようだが、ドライバをチューニングしたり、ハウジングをさまざまに改良した結果、遮音性を向上させながらも、HP-CN40Aを超えるサウンドを作り出すことができた、という。

試聴してみると

 確かに、それぞれを試してみたところ、HP-CN45の遮音性が圧倒的に向上しているし、音抜けもよく、高い解像度の音を実現しているのが分かる。ただ、その設計変更なのか、若干低域が強めに出ていることが感じられる。その理由を日立マクセルの担当者に尋ねてみたところ、「CN40Aと同じ大きさの13mm口径のドライバを採用しているが、チューニングによって、若干低域を豊かにしている」という答えが返ってきた。この辺は好みの別れるところかもしれないが、低域が少し持ち上がった分、音に迫力とスピード感が向上している。

 またそれぞれを同じ素材、同じ設定で聴き比べてみると、明らかに音圧が向上しているのも実感できる。やはりこれも、穴を小さくした分、外に抜けずに直接耳に届く音量が上がったのが要因なのだろう。フラット感は保ちながらも音圧を上げたいという人にとっては嬉しい製品といえるだろう。

アルミハウジングでデザインと音の向上を両立

左側がアルミハウジング採用のCN45

 HP-CN40AとHP-CN45を比較したとき、もう1点大きな違いがある。それはCN-45ではハウジングをアルミ素材にしたということだ。従来のHP-CN40Aも見た目にはシルバーのメタリックで同じように見えるが、こちらはプラスティックにメッキ加工したものだった。それをアルミハウジングにしたことで、不要共振を抑えよりクリアで伸びのあるサウンドに仕立てているのだ、という。もちろん、音だけでなくデザイン性でもよりよくなっており、アルミ部分はスピン目となり高級感を演出している。

 また、このハウジング部分、並べて比較してみると、その厚みが大きく変化している。そう、HP-CN40ではドライバの後ろ側に大きな空間が作ってあったのに対し、HP-CN45ではかなりドライバに近い距離にアルミハウジングが来る。これも音作りのひとつとなっており、結果としていいサウンドに仕上がっているのだ。

3種のカラーバリエーション

 最後にHP-CN45の色についてだが、ブラック、シルバー、ネイビーのカラーバリエーションが用意されている。これはHP-CN40Aと同じであり、個人的にはネイビーが気に入っているが、これは趣味の問題だろう。ちなみに、HP-CN40Aではホワイトといっていたものがシルバーに変わっているが、ボディー部分の色を指したとのことなので、実質は同じと考えてよさそうだ。ケーブルは「ブラック」と「ネイビー」がブラックで「シルバー」がホワイトと、HP-CN40Aと同様のカラーリングを採用している。しなやかで絡みにくいので、どんなシチュエーションにおいても扱いやすそうだ。

ネイビー

ブラック

シルバー

パッケージは少し大きめに変更

 以上、マクセルのインナーイヤー・タイプのヘッドフォンHP-CN45をチェックしてみたがいかがだろうか?手ごろに買えるこの価格帯で、この音質と遮音性、デザイン性を実現しているので、かなりコストパフォーマンスの高い製品といえる。とくにフラットな特性のヘッドフォンを探している人にはぜひお勧めしたい製品だ。普段使っているヘッドフォンからワングレード上の音に向上させたいという人は、試してみてはいかがだろうか?

(藤本 健)