日立マクセルがiPod専用スピーカーを初めて手掛けたのが、2006年に発売した「MXSP-1000」。その2年後に発売となった後継機種の「MXSP-1100」は、円筒形の独特な形状と優れたコスト・パフォーマンスで人気を集め、ロング・セラーを記録した。そんなiPod専用スピーカーにおいて存在感を示している同社が、またもや独創性に溢れた新製品「MXSP-2200」を11月25日に発表した。

なんとiPhoneがスピーカーを隠してしまう、「ありえない」デザイン

なんとiPhoneがスピーカーを隠してしまう、「ありえない」デザイン

 まずはこの外観を、とくとご覧あれ。クレードルに挿さったiPhone 4と比較すれば、このスピーカーが、いかにコンパクトなのかおわかりいただけるであろう。これ1台がステレオの片側で、ペアでもう1台あるのかと思いきや、どうやらそれも違うらしい。よく見ると、この小さな筐体の中に2発のスピーカーを備えている。ということは、これだけスピーカー同士が隣接していてステレオで鳴らすつもりなのか!? さらに仰天なのが、クレードルがスピーカー本体前面部に設置されているため、iPhoneを挿すと、スピーカーを隠してしまうではないか!

 初見して、筆者の正直な印象は“そんなカタチで大丈夫か?”。おそらく読者の方も、初めてこれを見たら、似たような感想を持つであろう。見た目はオーディオの常識を覆していて、ある意味ブッ飛んでいる。ところがどっこい、音を鳴らしてみると、さらに衝撃が走るではないか! これはゴイス、もとい凄いっす……。音については、後半のレビューでたっぷりと紹介するとして、まずは基本スペックを見ていくことにしよう。

新技術がてんこ盛り! ゲーマーのための新たなる「VISEO」

 日立マクセルが発売するiPod専用スピーカーのラインナップ中、前述の「MXSP-1100」はアクティブ・スピーカーのみという仕様だが、今回発売となる「MXSP-2200」はFMラジオ+アラーム機能を備えたクロックを搭載したモデルである。ちなみに同機は「Made for iPod」「Made for iPhone」に認定されており、Dock接続対応機器はiPhone 3G/3GS/4、第4世代以降のiPod、classic、mini、nano、touchとなっている(下記の対応表参照)。

 まず外形寸法だが、120×136×186mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約780gと非常にコンパクトなところが特徴となっている。これだけ小型だと、本棚やキッチンなど、いろんなところに置けるし、持ち運びも楽々なサイズなので、据え置きにしておくのももったいない。アホな筆者は“これならトイレにも置けるな”、なんて貧弱な発想をしてしまった(BGMは、植村花菜の「トイレの神様」)。

 スピーカーは、直径46㎜のアルミ・コーン型のものを2発搭載。加えて筐体内には「バスレフ構造」を備えており、小型な筐体ながら、迫力のある低音を出力してくれる。アンプの最大出力は4.2W+4.2Wで、再生周波数特性は70Hz~20kHz。サウンドを司る肝となるスペックについては、別項の“「マジックスピーカー」テクノロジー”で詳細を述べたいと思う。

スピーカーがこんなに寄ってて大丈夫か? バスレフ構造で、筐体サイズからは想像できない低音が

スピーカーがこんなに寄ってて大丈夫か?

バスレフ構造で、筐体サイズからは想像できない低音が

 FMラジオは、76.0MHz~108.0MHzまで受信でき、最大7局分の周波数をプリセット登録が可能だ。またFMアンテナが付属しており、これをリア・パネル上の端子に挿すことで、受信状態を向上させることもできる。

FMラジオも聴けるのはうれしい

FMラジオも聴けるのはうれしい

使いやすいアラームのスヌーズボタンなど

使いやすいアラームのスヌーズボタンなど

本体カラーは2色展開で、こちらはマット・ホワイト

本体カラーは2色展開で、こちらはマット・ホワイト

 クロックは、アラーム機能として、曜日と時刻が設定でき、指定の時刻にFMラジオやiPod/iPhoneの再生音が鳴るような仕組みになっている。待てよ?曜日が設定できるということは月~金だけ目覚ましで起きて土日は朝寝坊という実用的なライフスタイルもサポートしてくれるのか。さらにアラームを止めても5分後に再び自動再生を開始するスヌーズ機能も搭載。またリモコン操作で約30/60/90分間のスリープ・タイマーを設定することも可能となっている。

 本体側には、電源スイッチ、ボリューム、モード切替ボタン、スヌーズ・ボタンが備わっているが、基本操作は同梱されている赤外線リモコンを使って行う。このリモコンでスピーカーのボリューム調整だけでなく、iPodの再生/停止、曲送り/曲戻し、メニュー選択などが行えるようになっている。また、背面にはステレオ・ミニ入力を備え、iPod以外のプレーヤーとも接続が可能だ。

 本体のカラーは、マット・ブラック(BK)とマット・ホワイト(WH)の2色。価格はオープン・プライスだが、1万円でお釣りが来るという、コスト・パフォーマンスも魅力的だ。

新技術がてんこ盛り! ゲーマーのための新たなる「VISEO」

 「MXSP-2200」の目玉となっている機能が3D音響技術「マジックスピーカー」テクノロジーである。これは本機のようにスピーカーの設置間隔が狭くても、左右の音量や時間差に特殊な処理を施すことで、音がワイドに広がるというもの。この「マジックスピーカー」によって、実際のスピーカーの間隔は約12cmほどしかないのだが、約60cmの間隔にあるかのようなステレオ音像感を得られる。この技術は新日本無線株式会社が開発した「eala Stereo Expander(狭間隔スピーカ対応音場調整機能)」が元になっており、これを使った初めての市販品が「MXSP-2200」なのだという。

  3D音響技術「マジックスピーカー」テクノロジーの概念図  
 

3D音響技術「マジックスピーカー」テクノロジーの概念図

 

 「マジックスピーカー」は、同梱されている赤外線リモコン内に備わっている「マジックスピーカー切り替えスイッチ」によってオン/オフ切り替えができるようになっている。同機能をオンにして聞いてみると、こんなに幅の狭くて小さいユニットで、しかもスピーカーを遮るようにiPodが前に設置されているにも関わらず、しっかりとしたステレオ・サウンドが出力されるところに驚くに違いない。加えてサラウンド・スピーカーのような、どこかわざとらしい感じが微塵もなく、自然な広がりを生み出してくれるところも素晴らしい。

 この「マジックスピーカー」に加えて、「MXSP-2200」の音を司る機能で白眉なのが、「バスブースト」である。これも「マジックスピーカー」同様、新日本無線株式会社が開発したDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)内に備わっている機能で、左右独立音響処理をすることで、eala Stereo Expander(「マジックスピーカー」)に適した良好な低域セパレーションを得ることを可能にしたという。「バスブースト」もリモコン内にオン/オフ切り替えスイッチで操作できるようになっている。

操作はリモコンで 「マジックスピーカー」と「バスブースト」の状態表示(右下)

操作はリモコンで

「マジックスピーカー」と「バスブースト」の状態表示(右下)

剛性感ある筐体

剛性感ある筐体

 「MXSP-2200」から得られる豊かな低音域の秘訣は、「バスブースト」回路と、前述した「バスレフ構造」だけにあらず。日立マクセルの企画担当者によると、筐体の壁面の厚みのあるところでは約5mmと通常のものよりかなり厚く難しい成形を行っているそうだ。オーディオ・スピーカーにおいてはエンクロージャーを頑丈にすることが鉄則となっているが、そんなこだわりが本機でも貫かれているところに頭が下がる思いだ。
新技術がてんこ盛り! ゲーマーのための新たなる「VISEO」

 試聴には第5世代iPod(30GB)を使用し、【クラシック】、【ヘヴィ・メタル】、【ジャズ】、【ロック】という4つのジャンルでそれぞれMP3フォーマットの音源を用いた。各音源のビット・レートは曲ごとに明記してある。

【クラシック】
年末に合わせて、ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章をチョイス(MP3/160kbps)。指揮はヘルベルト・フォン・カラヤンで、ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラによる演奏。ここでも「マジックスピーカー」は大活躍で、壮大なスケールを持つこの楽曲に迫力と広がりを与えている。

 ただこの楽曲に関しては「バスブースト」を入れると、フォルテシモで弾いているパートに迫力が出るが、逆にピアニシモで弾いているパートでは音が若干聞き取りにくくなる傾向があった。特にバイオリンやフルートなど、高音部を司る楽器の音色に中域が増してしまい、私の主観では濃厚過ぎると思い、気になったので「バスブースト」はオフにした。

 しかしこの機能をオフにしても、バスレフ構造のおかげで、十分な低域を出力しており、特にクライマックスのティンパニーの連打するパートの迫力は抜群であった。それにしても、こんな小さなボディで、よくもこれだけの臨場感を創れるものだと、改めて「マジックスピーカー」の機能に関心させられてしまった。

【ヘヴィ・メタル】
 メタリカの出世作となった5枚目の『メタリカ』(通称ブラック・アルバム)は、言わずと知れたヘヴィ・メタルにおける金字塔となった作品で、メタル系の中で最もハイファイなサウンドが聞けるアルバムと、私の中では評価している。アルバムを通してひたすらソリッドな音作りがされており、ギターの音色もどちらかと言うとドンシャリ傾向。この作品の中から選出したのは、1曲目の「エンター・サンドマン」(MP3/160kbps)で、本機側の「マジックスピーカー」と「バスブースト」はオンにして聞いた。

 ジェイムス・ヘッドフィールド自身が“ウォール・オブ・ギター”と称した分厚いギター・リフのサウンドが実に心地良く響き、メリハリは利いているのだが、ねばっこい中域が出力しており、気分は盛り上がる。加えて秀逸なのが、ラーズ・ウルリッヒのドラムで、特にタムからフロア・タムへロールした時のサウンドが抜群にカッコいい!

 プラスティック製の小型スピーカーの場合、低域の強い音源を再生すると、妙な箱鳴りがし、それが起因して不愉快な音に聞こえてしまうことを私は何度か体験しているのだが、この「MXSP-2200」はそうした傾向がまったく見られない。音量をかなり上げても、筐体がドッシリしているため、箱鳴りがほとんどしない。加えてバスレフ構造もしっかり効いていて、それが迫力のある低域を生み出している。

 「バスブースト」についても、2.1chのウーファーに感じられるわざとらしい、ブーミーな重低音というよりは、ごく自然な味付けとなっているところも気に入った。メタルのみならず、ヘヴィなロック音源での再生能力もかなり高いと印象づけられた。

【ジャズ】
 ビル・エバンス・トリオの不朽の名作『ワルツ・フォー・デビイ』より、「マイ・フーリッシュ・ハート」(MP3/128kbps)。1961年リリースの本作はモノラル録音ゆえに、「マジックスピーカー」の効果は厳密には発揮されないはず。しかし実際に同機能をオン/オフを切り替えをしながら試聴してみたところ、音の広がりという点ではたしかに恩恵はないものの、音色の面ではオンにした時の方がクリアに聞こえたので、結局この機能は入れることにした。また「バスブースト」については、透明感のあるメロディアスな楽曲の性質上、繊細な響きを存分に味わいたかったので、オフにした。ただオフにした状態でも、ウッド・ベースの存在感は十分に出ており、色っぽい低音を出力していたので、不足感はまったくなかった。

 ライブ音源ということもあり、ピアノ、ベース、ドラムスの3者が感情豊かに演奏を繰り広げており、全体を通して音の強弱の振れ幅はかなり広い。繊細なタッチで演奏されているパートとしては、ドラムスのポール・モチアンによるシンバル・ワークや、ブラシでスネアをロールするところが代表的だが、なかなか聞き取りにくいところまで、このスピーカーは見事に描写できていて、高音の再生能力においても本機は非常に優れていると感じた。

【ロック】
 今年10月に最新リマスター音源で復活したザ・ビートルズの『ザ・ビートルズ/1967~1970』(通称:青盤)の中から「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」(MP3/320kbps)をセレクト。オリジナル・アルバムでは『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 』内のラスト・ナンバーとして収録。ジョン・レノンとポール・マッカートニーの両者それぞれが作曲したパートによる2部構成で、互いのパートの間奏にはオーケストラも入った壮大な曲である。

 いざ再生してみると、冒頭のジョンが奏でるアコースティック・ギターの音色から、すでに興味は掻き立てられた。このペケペケなアコギの音は、ギブソンJ-160Eだなと、聞くなり確認でき、思わずほくそ笑んでしまった。私はビートルズを聞く際は、ポールのベースを中心に聞きたくなってしまう癖があるので、「バスブースト」はオンにして、彼のベース・サウンドを際立たせて聞いた。ボンボンと唸るポールならではの丸っこいベース音が再生されるや嬉しくなってしまった。そうしたらリンゴ・スターのバス・ドラムやフロア・タムにミュートをまったく掛けずに、まるで大太鼓のようなボーンという轟音を響かせているではないか。何度も聞いている曲のはずなのに、今回改めて聞いて発見した音である。

 サイケデリックな雰囲気に仕上げるべく、リバーブをたっぷり利かせ、全体的に浮遊感を漂う楽曲なのだが、本機は小さいスピーカーでありながら、よくぞここまで広がりのあるステレオ・サウンドを出力しているなと感心させられた。それと同時に、ボーカルや各楽器がボヤけることなく、それぞれの音色をしっかりと誇示しているところも立派だ。

新技術がてんこ盛り! ゲーマーのための新たなる「VISEO」

 オーディオ機器の中で、「MXSP-2200」はひさびさに大きなインパクトを与えてくれた製品で、今回試聴してみて痛感したのは、見た目だけで判断してはいけないということであった。先入観を持たず、本機が店頭に並んでいたら、まずは音を鳴らしてみて欲しい。一度聞けばいかに「マジックスピーカー」テクノロジーが革新的であるか、わかるはずだ。

 このルックスとスペックを見れば、オーディオをかじったことのある古い世代からすると、ギミックが多いという印象を受けるかもしれないが、いろんなジャンルの音楽を試聴してみた結果、総じて出音は自然で、そんなところにも好感が持てた。これが1万円を切る価格で発売されるというのだから、かなり高いコスト・パフォーマンスを発揮しているという印象だ。

 さらに日立マクセルの中でロング・セラーを続けている「MXSP-1100」の後継モデル「MXSP-1200」も、「MXSP-2200」と同じ11月25日より発売になった。こちらは先代機の仕様をそのまま踏襲しながら、最新モデルのiPhone 4を含むiPhoneに対応したアクティブスピーカーだ。ボディ・カラーに光沢感のある「ブラック」「ホワイト」という新色が採用されている。FMラジオやクロック機能は不要というユーザーには、こちらもオススメだ。

MXSP-1200「ブラック」 MXSP-1200「ホワイト」

MXSP-1200も「ブラック」と「ホワイト」の2色展開

(text by ashtei)

関連リンク

日立マクセル株式会社
http://www.maxell.co.jp/jpn/

関連リンク

マクセル、音を広げるiPodスピーカー「MXSP-2200」
-iPhoneも対応。3D音響技術でワイドなステレオ感
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20101115_407010.html


[PR]企画・製作 株式会社 Impress Watch 営業統括部
お問い合わせ先:watch-adtieup-maxell1012@ad.impress.co.jp
Copyright (c) 2010 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.