ケーブル接続不要!置くだけでiPhone 4を充電 日立マクセル ワイヤレス充電器「エアボルテージ」
ようやく見つけ出したケーブルを、コネクタを探りながらiPhone 4に接続し、充電する。そんな苦労は、もう昔の話だ。日立マクセルから登場した「エアボルテージ(AIR VOLTAGE)」を使えば、iPhone 4を置く、それだけでワイヤレスで充電できる。(※充電には専用のカバーが必要です。)
ようやく見つけ出したケーブルを、コネクタを探りながらiPhone 4に接続し、充電する。そんな苦労は、もう昔の話だ。日立マクセルから登場した「エアボルテージ(AIR VOLTAGE)」を使えば、iPhone 4を置く、それだけでワイヤレスで充電できる。(※充電には専用のカバーが必要です。)
一度体験したら、おそらく、もう手放せない。
日立マクセルから発売されたiPhone 4対応ワイヤレス充電器「エアボルテージ(AIR VOLTAGE)」は、「充電」というiPhone 4にとって欠かせない作業を根本から変えてしまう画期的なアイテムだ。
これまで、iPhone 4を充電するには、充電用のケーブルを本体のコネクタに接続する必要があった。
電池の消耗も激しいiPhone 4の場合、頻繁に外出先からの帰宅後、鞄を置いて、真っ先に充電したり、会社や外出先などで少しでも時間があれば充電することも珍しくないが、そのたびにケーブルを本体に接続しなければならず、向きや長さにイライラしながらも毎日、ケーブルを接続しなければならなかった。
しかし、「エアボルテージ」を使えば、この充電からケーブルをつなぐという作業が必要なくなる。iPhone 4専用の充電用カバーを本体に装着し、充電ステーションに「ポン」と置けば、それだけで充電ができてしまう。
ケーブルを探したり、接続する手間から解放され、度重なる抜き差しでコネクタを傷める心配もなく、充電が可能になる。つまり、これまで手間がかかるものでしかなかった充電が、エアボルテージによって簡単なものへと生まれ変わるというわけだ。
エアボルテージによって「置くだけ」になった充電は、もはや「作業」ではなく、何気ない生活の中の自然な動作の1つでしかなくなったと言っても過言ではないだろう。
それにしても、どうして置くだけで充電できるのだろうか? そんな疑問を持つ人も少なくないはずだ。
この秘密は「電磁誘導」にある。すでに、家庭用電話機の子機や電動歯ブラシなどで使われているので、身近に製品が存在するケースもあるが、要するに磁力を使って電流を発生させる方式だ。
子供の頃に理科で勉強した記憶があるかもしれないが、コイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすると、磁束の変化によって電位差が発生し、電流が流れる。この仕組みが応用されている。
「エアボルテージ」の場合、ACアダプタを接続し、機器を置く台となる「充電ステーション」とiPhone 4をワイヤレス充電に対応させるための「充電用カバー」の2製品から構成されており、この両方にコイルが内蔵されている。このコイルを近づけたときの磁束の変化によって、充電用カバー側に電流を発生させ、接続されたiPhone 4に充電ができるというわけだ。
同様のワイヤレス充電方式には、「電界結合方式」、「電波方式」、「磁気共鳴」方式などがあるが、電磁誘導方式は、出力の高さや伝送効率の高さ、詳しくは後述するがコイルアレイ方式などによる位置自由度の高さといった特徴がある。
この点に着目した日立マクセルが、iPhone 4向けのワイヤレス充電器として、いち早く製品化を実現したというわけだ。
実際に使って見ると、その手軽さに感動する。
今回、紹介するのは、シングルタイプの充電ステーション(WP-PD10S.BK)とiPhone 4用の充電用カバー(WP-SL10A.BK)だ。エアボルテージには、先行して発売された2台用のダブルタイプ(WP-PD10.BK)もラインナップするが、今回、利用した1台用のシングルタイプは、USBポートが省略されているなどの違いがあるものの、非常にコンパクトでデスクの隅やベッドの脇などに置いておくのに重宝するサイズとなっている。価格も手ごろなので、1人暮らしの方にはこちらがおすすめだ。
セットアップは簡単だ。まず、充電ステーションにACアダプタを接続してテーブルの上などに設置する。続いて、充電用カバーにiPhone 4のコネクタがある底面側を滑り込ませるようにしてセットする。
この充電用カバーは、コネクタが接続される底面側に若干厚みがあるものの、iPhone 4の下半分と背面をピッタリと覆うような設計になっており、iPhone 4のサイズ感や美しさをあまり損なわないデザインとなっている。市販のカバーなどを使っているのと印象としてはほとんど同じで、持ち運びなども苦にならない。充電用としては、完成度の高いカバーと言えるだろう。
準備ができたら、充電用カバーを付けたiPhone 4をステーションの上に置くだけだ。iPhone 4独特の電子音と共に、ステーション側のLEDが点灯し、充電が開始される。あとはそのまま置いておくだけでかまわない。
実際にどれくらいの時間で充電できるのかが気になるところだが、2〜3時間と考えておくといいだろう。以下のグラフは電池残量が0%の状態から、iPhone 4のACアダプタとエアボルテージで充電した場合の変化の様子を示したものだ。
普段の利用時となるべく同じ環境になるように、メールやTwitterなどのアプリを起動後、無線LANもオンにしたままの状態で充電し、タイミングを見ながら画面を点灯し、電池残量を目視で確認した。
結果は、ACアダプタでの充電が2時間19分だったのに対して、エアボルテージでは2時間57分の時間がかかった。エアボルテージのカタログスペックでは、充電時間が約2.5時間となっているが、今回のテストでは無線LANなどを有効にしているうえ、バッテリー残量を確認するために何度も画面を点灯しているので、その分、充電に時間がかかってしまったが、ワイヤレスとは思えないほど高速な充電だ。
ちなみに、普段の生活で0%から充電することはあまりないため、50%からの充電で比較してみると、ACアダプタの場合は1時間29分、エアボルテージの場合は1時間42分となった。つまり、普段、自宅に帰ってきて、ある程度電池が残っている状態で充電した場合は、ほとんど差がないということになる。
充電効率としては、ACアダプタの70%となっており、USBケーブル経由でPCなどから充電した場合とほぼ同等となっている。この点からも、エアボルテージの充電効率の良さが実感できるだろう。
このように、iPhone 4を手軽に充電できるエアボルテージだが、前述したように、この電磁誘導を利用したワイヤレス充電は、家電製品などで従来から採用されていた。このような従来製品とエアボルテージでは、どのような違いがあるのだろうか?
エアボルテージの特徴の1つは、「Qi(チー)」と呼ばれるワイヤレス充電規格を採用している点だろう。中国、アメリカ、オランダ、そして日本の企業など、80を超える世界中の有力企業が参加する「WPC(ワイヤレスパワーコンソーシアム)」によって策定されたQiは、その安全性と高い互換性から、現状では事実上のワイヤレス充電器の標準となる可能性が高い規格といえる。
実際、Qiを採用した製品は、日立マクセルの「エアボルテージ」のみならず、すでに海外でも製品化されているうえ(Energizer)、国内でも三洋電機、パナソニックから同様の製品が発売されており、さらにNTTドコモのスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」なども大きな話題になっている。このようにQiに対応した製品は、続々と発表されており、今夏以降、市場に数多く登場してくることだろう。
注目は、これら「Qi」に対応した製品同士は、互換性を備えているという点だ。サポートなどの問題はあるにせよQiに対応した製品であれば、異なるメーカーの機器でも充電が可能になっている。
つまり、エアボルテージを持っていれば、今後、登場するであろうQi対応スマートフォンや充電式電池など、後から機器が増えても、同様に充電することが可能ということになる。
また、Qiの規格には、家電系のメーカーだけでなく、さまざま業種が参加している。このため、Qiに対応したテーブルなどが登場してくる可能性もあるうえ、街中の飲食店などにQiに対応した充電器が置かれることも予想できる。クルマなどで使えるようになる可能性もあるだろう。
このように汎用的な規格を採用していることで、エアボルテージは、今後、さまざまな機器へと用途が広がる可能性がある。ワイヤレス充電という、これまでになかった製品となるため、今後の普及を心配するかもしれないが、実際にはワイヤレス充電の方式の中でも最も早く規格化した方式を採用しているというわけだ。
エアボルテージが、既存のワイヤレス充電器と異なるもう1つのポイントは、コイルアレイ方式の採用によって、充電する機器を配置する際の高い自由度を確保している点だ。
前述した、従来の電磁誘導方式の電話の子機や電動歯ブラシなどを使ったことがある人ならわかると思うが、これらの機器を充電する際は、充電する機器とステーションが特定の位置で固定されるように、底面の突起などで位置が固定されるようになっていた。これは、内部のコイルの位置がズレて充電効率が落ちることを防止するための対策だ。
しかし、エアボルテージでは、ステーション上にiPhone 4を固定する場所はなく、一定の範囲内であれば自由に配置できるようになっている。
その理由となるのが、コイルアレイ方式だ。エアボルテージのステーションの内部には、一定の大きさに巻かれたコイルが7つ重なるように配置されている。ちょうど、中心の1つコイルを囲むように6つのコイルが六角形に配置されているイメージだ。
これにより、エアボルテージでは、ステーション上に配置された機器の場所に応じて、最大3つのコイルの磁気の強さをコントロールし、7つのコイルの上であれば、どこにあっても充電効率を落とさないように工夫している。
このため、Qiマークの周辺であれば無造作に充電カバーを付けたiPhone 4を置くことができ、どこに置いてもほとんど変わらない高い効率で充電することが可能となっている。
同様に位置自由度を高める方法には、ステーション内部のコイルを物理的に移動させるという方式もあるが、ステーションの厚みを押さえられることや構造をシンプルにできることが、このコイルアレイ方式の特徴というわけだ。
このように、日立マクセルのワイヤレス充電器「エアボルテージ」は、エネルギー分野に積極的に取り組んできた日立マクセルならではの革新的な製品と言える。
ワイヤレスで充電するという未来的な環境が、わずか数千円のコストで、実際に自宅で実現できるだけでも夢のような話だが、前述したコイルアレイ方式によって、比較的ルーズに扱ってもきちんと充電できるようになっているなど、非常に実用性が高い。
標準規格のQiに対応しているのも魅力で、今後、スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤー、充電式電池などでの採用が増えてくれば、エアボルテージで、いろいろな機器の充電ができるようになると言える。iPhone 4以外の充電用カバーの開発も進められているとのことなので、今後の展開が期待できる。
また、先日、アップルから発表があったiCloudのように、今後はワイヤレス環境でのデータの同期が進むことが予想される。そういった意味でも、エアボルテージで、一足先に、iPhone 4を完全にワイヤレス化する準備をしてみてはいかがだろうか?