【特別企画】「Optimus G」実機レビュー
秋冬モデルトップクラスのスペックが実現した「速さ」「美しさ」「長時間駆動」


 8月28日にドコモから発表があり、9月18日には新UIを含めた全容が明らかになった、LGエレクトロニクス製「docomo NEXT series Optimus G L-01E」。本機の特長は3つに大別できる。ひとつは、最新のデバイストレンドを押さえたモデルであること。次に、防水仕様やワンセグなど日本仕様を満たしていること。3つ目は独自のUX(User Experience)を改良し、スマートフォンの使い勝手を向上させていることだ。今回は製品版を触れる機会が得られたので、この3つのポイントから「Optimus G」の魅力を探っていくことにする。

docomo NEXT series Optimus G L-01E

トップクラスのスペックは、どんな場面で実感できるのか?

 まずは「Optimus G」の主なスペックをおさらいしておきたい。まずチップセットは、Qualcommの「Snapdragon S4 Pro」(APQ8064)、ディスプレイは約4.7インチのTrue HD IPS液晶、電池は2210mAhの大容量バッテリーを採用している。これによって実現するのは「速さ」「美しさ」「長時間駆動」といえる。

 実際に使った印象で「速さ」が感じられたのは、複数のアプリをマルチタスクで実行しているとき。たとえばアプリの更新をしながらブラウザーアプリを起動して、複数のウェブページを閲覧しているような場面だ。アプリの更新では、データ受信を行なった後にインストールを行なうが、更新するものが複数あるときには、両方(データ受信とインストール)を同時に行なう。これに加えて別のアプリを起動、つまり新しいタスクを実行しようとすると、パワー不足のスマートフォンの場合は動きが鈍くなる。ときにはフリーズしてしまうこともあるが、「Optimus G」ではそうしたことがなく、自然にできる。やりたいことが、普通にできる−−−これが「Optimus G」が採用している「Snapdragon S4 Pro」の実力の一端といえるのだろう。

 とても地味かもしれないが、「速さ」について実感できる典型的な場面は、電話の着信や発信、メール作成やウェブページ検索をする際の文字入力など、スマートフォンの日常的な使い勝手も挙げられる。というのも、<電話の着信や発信、メール作成やウェブページ検索をする際の文字入力など、スマートフォンの日常的な使い勝手>が良いと改めて触れなければいけないほど、使い勝手が悪いスマートフォンが数多くあるからだ。たとえば「電話に出ようと思ってロック画面をフリックしたけれど、フリーズして動かず着信を逃した」、「電話をかけようと思って電話帳を検索をしたけれど、とても時間がかかる」、「ダイヤルボタンを押しても反応が悪く、間違った電話番号をダイヤルしてしまうことがある」、「従来の携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)と比べると、文字入力をするのに時間がかかる」など、スマートフォンにしてから不便になったという声はよく耳にする。しかし今回インプレッションした限りでは、「Optimus G」ではそうした不満は感じられない。LGエレクトロニクスでは、9月18日に行なった新製品説明会の冒頭に流したビデオのオープニングタイトルで、

我々は限界に縛られている
Noと言われ諦めていないか
その“NO”に対し“NO”と言える時代がやって来た!
そう、いま
新たなるステージへと踏み入れた
世界は一変する
不可能は−−
「可能へ」…

という「Optimus G」に込めた思いを披露した。上述したような電話やメールが使いにくい、文字入力がスムーズにできないといった不満は、まさに“限界に縛られている”といって過言ではない。こうした使い勝手は、Snapdragon S4 Proに加えて、ソフトウェアの調整や最適化などをトータルで行なった結果で、一般的なユーザーが、動きの悪いスマートフォンを使わされている状況からユーザーを解放したいという、LGエレクトロニクスの強い思いが感じられて興味深い。


スマートフォンのスタンダード、4インチ超の高精彩ディスプレイ

 スマートフォンは、操作系のボタンを極力減らし、さまざまな動作をタッチパネルによって行なうのが特徴であることは周知のとおり。そのためディスプレイの美しさは、スマートフォンの使い勝手そのものといっても過言ではない。サイズが大きくなればなるほど、その体験は豊かなものになっていくのはテレビと似ている。以前は大きいと思われていた42型のテレビは、いまでは標準サイズともいえるほど普及サイズになっている。

 スマートフォンでも同様で、「Optimus G」が採用している約4.7インチというディスプレイサイズは、標準になりつつある。手に取った時に“少し大きいかな”と思われる方でも、使い始めると違和感がなくなり、以前のサイズに戻るのは抵抗を感じるようになるはず。一度大画面テレビに慣れてしまうと、元に戻れなくなるところもよく似ている。それは、スマートフォンがディスプレイによって表現されるUIやコンテンツを使ったり、楽しんだりするものなので、画面が大きくなれば同じコンテンツでもリッチになるからだろう。画面が大きくなれば、スマートフォンの体験はより豊かになる、とも言えるのかもしれない。男性ならスーツの胸ポケット、女性なら小さなバッグに入れても遜色なく持ち歩けるはず。大きいけれど、持ち歩くのには抵抗のないサイズ感を「Optimus G」は実現している。

視野角が広く、美しい、約4.7インチのTrue HD IPS液晶を搭載 液晶下部に[戻る][ホーム][メニュー]のボタンを備える
大画面でありながら、持ち運ぶのに抵抗感のないサイズを実現

 ハイエンドの薄型テレビやパソコンモニターなどで多用されているIPS液晶パネルは、上下左右/ななめといったどの方向からも見やすいのが特長だ。とくに移動しながらも使うことが多いスマートフォンは、視野角が広いことは、使い勝手に大きく影響する。たとえば電車に乗っているときや歩きながらなど、さまざまな場面で画面が見やすいことを感じていただけるだろう。店頭などで実際に動くものを見て確かめていただきたい。


1日1回の充電で十分な電池持続時間

 ドコモが今年の秋冬商戦で発売するハイスペックモデルは、いずれも2000mAhを超える大容量バッテリーを採用している。そのひとつである「Optimus G」も、2210mAhのバッテリーを搭載する。カタログスペックでは連続待受時間がFOMA(3G)で約300時間、Xi(LTE)で約240時間、連続通話はFOMA/Xiともに約500分。スマートフォンの場合、ディスプレイを点灯している時間や、アプリを使う時間によって電池持続時間は変わってくるが、今回試した限りでは遜色がなかった。

 むしろ従来のXiモデルの電池持続時間を知っている方からすると、文字通り“驚くほど”電池の持ちが良いと感じられるはずだ。これは大容量バッテリーを搭載していることもさることながら、ベースバンドチップ(3GやLTEで通信を行なう際のモデムチップ)にQualcommの「MDM9215」を採用している点や、ドコモのネットワークが拡充していることが挙げられる。とくに「MDM9215」は、3GとLTEの切り替えなどを最適化し、効率良く電源管理を行なう。そのため電池持続時間が長いばかりではなく、発熱なども少ない。従来機種では本体の温度が気になることが少なくなかったが、「Optimus G」では、そうしたことが気にならない。本体が熱を持つと、電源を強制的にオフにしたり、カメラが起動しなくなるなど、スマートフォンの利用場面を制約してしまう。こうした制約からの解放は、前述した<我々は限界に縛られている〜>というメッセージの一例といえるのだろう。


グローバルブランドながら、日本仕様も対応で、“真の全部入り”を実現

「Optimus G」は防水性能を実現

 機種の選択肢にグローバル市場でメジャーなブランドが加わったことが、スマートフォンになってからのトレンドだ。その理由は、スマートフォンのプラットフォームを作る主要なプレーヤーが米国に拠点を起き、世界市場の中で商品企画、製造、流通、マーケティングなどを行なっているためで、日本市場もその例外ではないからだ。とはいえ従来の携帯電話には、iモードに代表されるインターネットサービス、デジタル放送のワンセグ、電子決済やチケットなどの利用をいち早く実現したおサイフケータイなど、世界市場に先んじた機能が備わっていた。

 こうしたなかでLGエレクトロニクスは、とてもユニークな存在だ。ある調査によると、2011年度の携帯電話の世界市場におけるLGエレクトロニクスのシェアは第4位で出荷台数は約8800万台。この数字がいかに大きいかは、日本国内市場での出荷台数が約4000万台であることを考えると実感できるだろう。

 このようにグローバル市場では存在感が大きいにも関わらず、「Optimus G」は、スマートフォンにおける“日本仕様”と呼ばれる「ワンセグ」「防水」「おサイフケータイ」「赤外線通信」といった機能はすべて備えている。デジタルテレビに関して言えば、「ワンセグ」のみならず「NOTTV」にも対応し、新しい放送の世界も体験できる。また「防水」に関しては、キャップで保護することなくIPX5/IPX7相当の性能を実現している。防水仕様の機種をお持ちの方はよくご存知だと思うが、充電端子などを保護するキャップは開け閉めを繰り返していると、パッキンが傷んで防水性能が維持できなくなってしまう。よって定期的にドコモショップなどに持ち込んで修理交換をしなければ防水性能は維持されない。結局は防水仕様を謳っても、その実用性に疑問を挟む余地があるのだが、「Optimus G」はキャップレスでも防水性能を実現しているため、極端な話、水中でヘッドフォン端子を抜き差しすることも不可能ではない。こうした心配りは、2006年に日本市場に参入して以来、ユーザーのニーズに耳を傾け、対応してきたLGエレクトロニクスのモノ作りに対する姿勢を窺い知ることができるだろう。

 グローバル市場のトレンドを踏まえつつ、日本向けのローカライズを国内メーカーを凌駕する形で実現している「Optimus G」は、“真の全部入り”といっても過言ではないかもしれない。

キャップレスで防水性能を実現しており、充電端子やヘッドフォン端子には保護キャップがない 「おサイフケータイ」や「ワンセグ」、「赤外線通信」といった日本仕様の機能も備わっている

気づいていなかったけれど、やりたかったことを可能にした新機能

 「Optimus G」には、スマートフォンの利用場面を開拓するいくつかの提案が盛り込まれているのも魅力のひとつだ。まずユニークなのは、ひとつのスマートフォンの画面で、ふたつのことを同時に実現する「Qスライド」だ。この機能は「ワンセグ」や動画再生アプリ「動画」利用時に、別の機能を起動して使うことができるというもの。映像視聴をしたいけれど、スマートフォンの別の機能も同時にやりたいという欲求に応えてくれる。「ワンセグ」や「動画」アプリを起動中に現れるアイコンをタップすると、ホーム画面の縦画面上部に映像が表示された状態で、通常どおり各種操作ができる。この状態でスライドバーを左右に動かすと、映像の濃淡を調節できる。映像をメインに見ながらスマートフォンを操作したいときには映像を濃くして、スポーツ中継などを継続的に流しながらも、別のアプリでの操作を優先させたいときには映像を薄くしてなど、いろいろな使い方が考えられる。電車で移動中など人ごみで画面を覗かれずに映像を楽しみたいというときなどでも重宝しそうだし、オフィスで残業中などにこっそりと映像を楽しむといった使い方も考えられそうだ。

 今後こうした使い方は別のアプリの組み合わせでも実現することが期待される。複数のアプリを同時に実行するマルチタスクを可視化する「Qスライド」には、今後のスマートフォンの可能性を拡げ、新しい使い方を切り拓いてくれるはず。その端緒を体験できるのは楽しいだろう。

【動画】「Qスライド」で、映像の濃淡を調整している様子 【動画】映像を再生しながらホーム画面の操作、ブラウザの起動をしている様子
映像を再生しながら、文字入力をしている様子

 似た機能として、「Optimus G」と外部モニターと接続したときに、手元の画面では別のアプリが起動できる「デュアルスクリーン」という機能もユニークだ。前述した「Qスライド」は1画面で複数のことを実現したものだが、「デュアルスクリーン」では外部モニターの画面では映像再生やゲーム、スマートフォン本体では別画面の操作ができる。たとえばスマートフォンで入手した映像をテレビに出力しているときに、メールやSNSを同時に行なえる。標準搭載のオフィスアプリ「Polaris」のプレゼンテーションを使っているときには、ディスプレイには説明資料、「Optimus G」側にはプレゼンテーション用の原稿や、スライドの次ページを表示することができる。ディスプレイへの出力は、microUSB端子経由でモニター側のHDMIと接続するMHL、Wi-Fi Directに対応したテレビなどで行なえる。

「デュアルスクリーン」機能で、外部モニターでは動画を、手元の「Optimus G」ではブラウザを表示しているところ プレゼンテーションを行う際に、手元の「Optimus G」には次のスライドを表示したり、スライドノートを表示してメモ書きを見るといった使い方もできる

 映像に関連した機能としては、前述の動画再生アプリ「動画」で映像を観ているときに、二本指を広げたり閉じたりすることで、拡大/縮小ができる「ライブズーム」という機能もある。たとえば「サッカーの試合中に特定の選手の様子を詳しく知りたい」、「学芸会や運動会で撮った映像で、自分の子供だけを拡大して見ていたい」など、わがままな使い方に応えてくれるのだ。

【動画】映像再生中に一部分を拡大縮小できる「ライブズーム」

 上記の「Qスライド」「デュアルスクリーン」「ライブズーム」では、クアッドコアチップのSnapdragon S4 Proの実力を存分に体験できる。ぜひお試していただきたい。

 さらに、本体側面の+と−の音量ボタンを同時に押すと、ちょっとしたことがメモできる「Qメモ」も便利だ。この機能は、手元に紙とペンがなくても、ちょっとしたメモが取れるというもの。画面に常時表示させておくことができるので、どうしてもやらなくてはいけないようなことを書いておくと忘れずに済むかもしれない。イメージとしては、手の甲にペンで書いておくような感覚でメモが取れるのだ。この機能は、[マップ]アプリを起動した状態でメモを書き、その状態で画面キャプチャー(ロックボタンと音量−ボタンを同時に押す)を取る、といった芸当もできる。同様のことはブラウザでウェブページ上にメモを取ることもできるので、自分なりの使い方を見つけてみていただきたい。

 このほか細かい機能だが、アイコンの自分の好みの写真や画像に変更、アイコンサイズそのものを4倍(最大サイズ)にできるのも「Optimus G」の特長だ。こうした細かいカスタマイズは、従来の携帯電話ではきせかえ機能などで実現されていたが、スマートフォンになってからはできなくなっていた。こうした細かいカスタマイズだが、自分らしさを大事にしたい方には、とても響く機能といっていいだろう。カスタマイズという点では、「Optimus G」はグローバルモデルながら、ストラップをつけるためのストラップホールがある。“どうしてもストラップホールが欲しい”という方のために付記しておきたい。

画面上でメモが取れる「Qメモ」機能 ホーム画面上のカメラアイコンのサイズを変更したところ。このようにアイコンサイズを変更したり、アイコン画像を好みの写真や画像に変更することもできる

「Optimus G」はストラップホールも用意されている

カメラには、「Optimus G」ならではの機能もある

メインカメラは約1320万画素のCMOSカメラを搭載

 「Optimus G」に興味を持った方には、カメラ機能にも注目していただきたい。多くのAndroid搭載機はカメラ起動中に画面内の任意の部分をタッチすると、そこにピントを合わせてくれるAF(オートフォーカス、自動ピント調節)を備えている。が、それと同時に露出(光の量の調節)を自動にコントロールしてくれるAE(オートエクスポージャー、自動露出調節)を備えたものは多くない(これは驚愕の事実)。写真の知識がある方には釈迦に説法だが、きれいな写真を撮るためにはピントと露出の調節はとても重要で、両者を同時に自動的に行なってくれる当たり前のことを当たり前にやってくれるカメラが「Optimus G」には備わっている。たとえば太陽を背にした場面で記念写真を撮りたいとき、顔の部分は影になる。そんなときプレビュー画面で顔にタッチすると、ピント調節と露出調節を同時に行なってくれるので、誰でもきれいな写真が撮れるというわけだ。

 このように明暗差(コントラスト差)が激しい場面では、明るい写真と暗い写真を合成し、1枚のきれいな写真にしてくれるHDR(High Dynamic Range)も備わっている。これまでどうも写真がうまく撮れないという方は、これらの機能が解決してくれるかもしれない。フォーカス関連では、手前側と背景側の顔を認識し、瞬時に切り替えて撮影ができる「Face Detection」、動きのある被写体を検知して、自動的にブレを防ぐ「スマートシャッター」なども備わっている。また肌色の色味と質感を自然に調節してくれる「ビューティーショット」も、従来の携帯電話からのおなじみの機能だろう。

 このほかユニークなのは、「チーズ」「ウィスキー」「LG(えるじー)」など、口角が上がりそうな単語をいうと自動的にシャッターが切れる「ボイスシャッター」という機能もある。たとえば2ショットの自分撮りをしたいときなどは、シャッターボタンを押す必要がないので便利だけでなく、手ブレを防げるという効果もある。同様に、飲み会などの集合写真ではしゃべっているうちにシャッターが切れるので、映っている人の自然な表情が撮れるはずだ。


「Optimus G」で発見する“普通に使える”ということ

 以上、駆け足で「Optimus G」のインプレッションをお届けしてきたが、使ってみた感想を一言でいうなら、“普通に使えるスマートフォンが登場した”というのが適当ではないか、と思う。というのも、いま多くのスマートフォンでは従来の携帯電話でできていたことが普通にできないことが多く、そうした不便さをわれわれは強いられていることを、「Optimus G」を使ってみると“発見”できるからだ。

 確かにインターネットへのコネクティビティや、いままで使えなかったサービスやエンターテインメントなどが利用できるようになったことでスマートフォンは画期的なデバイスだ。しかし、これまで実現されていたことが犠牲されて新しいことが実現されたのでは困る。

 そうした意味で「Optimus G」は、従来の携帯電話+スマートフォンの新しい価値がバランスよく実現していると、総括することもできる。秋冬商戦向けに各社から新モデルが発表されているが、そうした中でも屈指の存在感を持つ「Optimus G」。店頭などで自分自身で手にとって、その魅力を確かめてみてはいかがだろうか?