「W2363V-WF」。ゲーミング用途に向けた様々な機能を搭載しながらも挑戦的な価格を実現している
23インチワイド、フルHDの液晶パネルを搭載したW2363V-WFは、ゲーム用途において高い満足度を与えてくれる製品だ。
はじめに基本的な要素から見ていこう。
まず、本機の23インチという画面サイズは、視点からの距離が50cm程度となるデスクトップ環境では大きすぎず小さすぎず、調度良い。時には自室とは別の場所にゲーム環境を持ち込んでプレイする、というアクティブなゲーマーにとっては、5.16kgという本体重量による取り回しの良さもありがたいところだろう。パネル表面はノングレア(非光沢)処理で、映り込みが最小限に抑えられる。
パネル解像度は1,920×1,080ドットと、アスペクト比16:9のHD(High-Definition)映像をドットバイドットで表示できるサイズを採用。非HDゲーム機やDVDプレーヤーでは一般的な、より低解像度の映像ソースを入力した場合でも、ドットバイドット表示、オリジナル(アスペクト比固定拡大)表示、フル表示という3つの表示スタイルを選択できるため、多様な映像機器で最適な表示を実現することが可能だ。
その上で本機には、多様な映像入力端子が装備されている。HDMI端子を2系統、コンポーネント入力端子を1系統に加え、PC接続に最適なDVI-D端子を1系統、アナログD-Sub15ピン端子を1系統と、計5系統が同時に利用できる。これらの映像入力は、前面タッチパネルの「SOURCE」ボタンをタッチすることで素早く切り替えることが可能だ。
PCとゲーム機の同時利用に最適なPIP機能
しかも本機は、メインの映像に別ソースの映像を小さくオーバーレイ表示できる「PIP(Picture In Picture)」機能を搭載している。メイン画面とPIP表示された副画面は、前面タッチパネルのSWAPボタンで即座に切り替えることができるので、HDMI接続したゲーム機の画面を小さく表示しつつ、DVI-D接続のPCで攻略サイトをチェック、必要なことがわかったら即ゲームに戻る、といった使い方もできる。
もちろん、HDMI入力時には本機に搭載されたサウンド機能が有効になる。本機にはSRS社の「TruSurround HD」というサウンドエンジンが搭載されており、HDMIのデジタルサラウンド入力による3Dオーディオを、迫力重視の設定で2chアナログオーディオにダウンミックス。これを、本体側面のステレオジャックからヘッドフォンやスピーカーに出力することができるのだ。
Source |
RGB |
Component |
DVI |
HDMI #1 |
HDMI #2 |
RGB |
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X |
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○ |
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Component |
X |
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○ |
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HDMI #1 |
○ |
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X |
HDMI #2 |
○ |
○ |
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X |
- |
PIP機能は2つのHDMI入力同士、あるいはD-Sub RGB入力とコンポーネント入力同士以外であれば、全ての組み合わせで利用できる。従来機種に比べてかなり制限が少ない
音声信号に応じてLEDが発光するギミックを搭載。「ゲーム」「ムービー」「音楽」の3種の設定を選ぶことができる
スペースに限りのあるデスクトップ環境では、5.1ch以上のデジタルサラウンドスピーカーではなく2chのアナログステレオスピーカーを利用している人がかなりの割合を占めるため、これは多くのユーザーが有効活用できる、使い勝手の良いサウンド機能といえるだろう。
ゲーミングモニターらしいギミックとしては、入力された音声信号に応じて本体下部のLEDライトが点灯するという「TRU-LIGHT」機能が搭載されている。これには音楽、映画、そしてゲームの3モードの点灯パターンが用意されている。特にゲームにおいては、爆発音など重要な効果音が視覚化されることにより、音声信号の記号性が高まるという効果もあって面白い。地味だが楽しい機能だ。
本製品はエヌ・シー・ジャパンの人気MMORPGタイトル「タワー オブ アイオン」の推奨モニターとなっている
ゲーム用途としては、本機が70,000:1というブラウン管モニターに迫る高コントラスト比を実現していることにも注目したい。これはLGエレクトロニクスが持つ映像エンジン「f-エンジン」により実現されているもので、映像ソースの特性に応じ、リアルタイムにバックライトの光量やコントラスト、色調をコントロールし、動的にダイナミックレンジを確保するものだ。
この高コントラスト性による視認性の高さは、画面から得られる情報量を高めてくれるという効果もある。ひとつのモデルケースとして挙げたいのは、エヌ・シー・ジャパン(開発:NcSoft)が提供している人気のMMORPG「タワー オブ アイオン」だ。
このゲームでは対NPC、対人の両方で、数多くのキャラクターが入り乱れて戦いを展開するプレイが醍醐味のひとつとなっている。そういったシーンではまさに、画面内の各所で何が起きているのかを素早く認識することが、より高いレベルにおけるプレイのポイントだ。
しかし、薄暮、夜間のシーンなど、全体的に映像の輝度が低い場面においては、コントラスト比の低いモニターでは画面内で展開する情報を瞬時に読み取ることが難しいこともある。
自分にとって重要な相手がどこに居るのか、何を装備しているのか、何をしようとしているのか……。それを、W2363V-WFの高コントラストな画面ではしっかりと視認することができる。重要な情報を見逃さず、適切な意思決定に繋げることができるのだ。
「タワー オブ アイオン」のようなMMORPGに限らず、FPS、シューティング、格闘、スポーツ、あらゆるジャンルのリアルタイムゲームでこの視認性が役に立つ。
暗い場所で相手が良く見えず、よくわからないまま撃ち負けてしまった、といった残念なシチュエーションとは訣別しよう。結果にこだわるゲーマーであれば尚更、このありがたみが実感できるはずだ。
本機「W2363V-WF」は、そういったゲームプレイ上の実利を基本的な性能面から追求しているからこそ、ゲーミングモニターといえるのだ。
ゲーミングモニターを評価する際に絶対に外せない最重要の項目が、「高速応答性」だ。
高速応答性はモニターの「動画性能」を構成する1要素だが、一般的に動画性能という場合、残像感の低減やノイズリダクションなど画質面の項目が取り沙汰されることが多い。
オンラインRPGでの戦闘はもちろん、アクションゲーム、FPS、レースゲームなど、素早い反応と操作を要求されるゲームにとって、「モニターの応答速度」は死活問題だ
映画やTV放送ソースの映像を鑑賞するだけなら、それでいい。しかし、ことゲームに限っては、映像とはプレーヤーのインタラクションに対する応答そのものであるだけに、高速に映像を表示することが即、快適な使用感に繋がってくる。したがって、ゲーミングモニターとしては高速応答性が最も重要な性能指標となるのだ。
実際のところ、一般的な液晶モニターでは数フレーム分の表示遅延を持つものが多い。実際にパネル上に映像を表示するまでに、画質を向上させるため各種の処理を行なうことがその理由だ。
特に影響が大きいのは、高画質を謳うハイエンドな映像処理エンジンを有する機種である。よくあるのが、数フレーム分の映像をフレームバッファに溜めておき、順次ノイズリダクションなど高画質化処理を行なったフレームを表示にまわす、という仕様だ。
この仕様はハイエンド液晶モニターでは一般的で、少なくとも3フレーム程度の遅延を発生する機種が主流である。リフレッシュレートが60fpsならば、1フレームが約16.666ミリ秒なので、少なくとも50ミリ秒ほどとなる。さらに表示の際、液晶パネル自体の応答速度の影響が加わり、実際の平均遅延が60ミリ秒を超えるケースも稀ではない。格闘ゲームやFPSの熱心なプレーヤーならば、それがどれほど操作性に影響するか容易に想像できるはずだ。
その点、ゲーム用途に最適化されたW2363V-WFがもたらす映像の遅延は最小限だ。
まず、中間色の平均応答時間がGtG※で2ミリ秒というきわめて高速な液晶パネルを採用していることで、根本的なレベルで高速応答性が確保されている。さらに、PIP機能、アスペクト比調整機能といった映像処理に必要なバッファは1フレーム分だけであり、表示までに要する余分な遅延は16ミリ秒程度に抑えられている。
(※)液晶パネルの応答速度の指標のひとつで、中間色から中間色へと切り替わる速度を指す
「スルーモード」をオンにすることでさらなるレスポンスを得ることができる
これだけでもほとんどのゲームで快適なプレイが約束されたも同然なのだが、本製品ではさらに、ゲーマーが熱望する「スルーモード」を搭載し、業界最速レベルの高速応答性を確保しているところに本質的な価値がある。
スルーモードとは、標準使用時に行なわれる各種の映像処理をスキップして、入力された信号をそのまま表示にまわす機能である。本製品の場合、映像のバッファリングが一切行なわれなくなるため、最速のタイミングで映像が表示されるのだ。
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W2363V-WFに搭載されたスルーモード
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2ミリ秒という中間色の応答速度もあいまって、本製品のスルーモードで実現するレスポンスは業界最速レベル。本機を使用するプレーヤーは、スルーモード非対応のモニターを使用するプレーヤーに比べ、ごくわずかだが、確実に一歩先の操作ができる。特に影響が大きいジャンルは、FPS、格闘ゲーム、レースゲームなど、100分の1秒の差が勝敗を分けることもあるストイックなゲームだ。
腕に自身のあるプレーヤーであるほど、本機のスルーモードの威力を体感できることだろう。そうでなくても、「液晶モニター最速級」という事実が与えてくれる安心感は大きい。
映像の表示タイミングを最速にしてくれるスルーモード。だが、その原理上、多少の副作用もある。
具体的には、スルーモード時に、映像のバッファリング処理を前提とするPIP機能、アスペクト比調整機能といったファンクションが利用できなくなることだ。このため、ネイティブ解像度以外の映像を入力した場合、スルーモード時は画面一杯に引き伸ばされたフル表示のみがサポートされる。
実際のところ、この問題は本機だけのものではなく、スルーモードを搭載する数少ない他社製品にも共通するものだ。だがその中で本製品が1,920×1,080解像度、アスペクト比16:9のパネルを採用していることは、HD世代ゲーム機での使用を前提に考えれば非常に強みである。
スルーモードの効果とリスクを考えたとき、16:9パネルの真のメリットに気がつく
なぜかというと、一般的なPC用途では1,920×1,200、アスペクト比16:10の解像度を好むユーザーも多いが、そういった解像度の液晶モニターでスルーモードを利用すると、ゲーム機が出力する16:9の映像が強制的に縦に引き伸ばされて16:10になってしまうのだ。16:10ネイティブの映像を出力できるPCゲームでは問題にならないが、そうでないコンシューマーゲーム機においては大問題なのである。
筆者の所有する他社製の高価なスルーモード搭載液晶モニターはアスペクト比16:10モデルで、まさにこの問題を抱えている。ゲーム用途に購入したものの、プレイステーション 3、Xbox 360といったコンシューマーゲーム機での使用は泣く泣く諦めて、PC専用となっているのが現状だ。
それを考えると、スルーモード時に16:9の映像を正しく表示できるW2363V-WFの製品仕様は、PCとコンシューマーゲーム機、様々なシチュエーションでゲームを楽しむハイブリッドゲーマーの要求を直撃するものなのだ。
この秋からクリスマスシーズンにかけて、PCでもコンシューマーゲーム機でもたくさんの話題作がリリースされる。それを本機W2363V-WFで心ゆくまで楽しんでいきたい。
【Reported by 佐藤カフジ】
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