さらに進化したジャケットスタイルモバイル

 パナソニックのレッツノートシリーズといえば、「軽い」「丈夫」「バッテリーが長持ち」の三拍子揃ったモバイルノートPCとして、高い人気を誇る製品だ。レッツノートシリーズは、モバイルノートPCで特に重視されるスペックを高いレベルで実現し続けており、まさにモバイルノートPCの代名詞と呼ぶにふさわしい。2004年以降、7年連続でモバイルノートPCのシェアNo.1(※)を獲得しているのもその証といえるだろう。レッツノートの名を初めて冠した製品は、1996年に登場したAL-N1であり、今年はちょうど15周年にあたる。前述したように、レッツノートシリーズは、軽さと頑丈さ、長時間駆動がウリだが、2009年10月に登場したレッツノート S8/N8では、CPUが従来の超低電圧版から標準電圧版へと変更され、性能が大幅に向上。モバイルノートPCでありながら、A4スタンダードノートPCに匹敵する性能を備えるようになり、モバイルノートPCとしての完成度がさらに向上した。

 今回紹介するレッツノート J10(2011年夏モデル)は、今年2月に登場したレッツノート J10(2011年春モデル)の後継製品である。レッツノート Jシリーズは、斬新なジャケットスタイルが高い評価を得た10.1型ワイド液晶搭載モバイルノートPCであり、現行のレッツノートシリーズの中で、最も小型で軽い製品でもある。レッツノート J10(2011年夏モデル)は、筐体デザインは春モデルと同じだが、店頭モデルのCPUが最新の第2世代Core i5/i3になり、基本性能が大きく向上したほか、USB 3.0やWiDiなどの最新技術をサポートするなど、さらに魅力的な製品へと進化している。

※出展:IDC WorldWide Quarterly PC Tracker, Q4 2010、※Mini Notebook, タブレット型PCを除く

 

第2世代Core i7と最大16GBの大容量メモリ搭載で、モバイルを超えた性能を発揮

 レッツノート J10(2011年夏モデル)は、店頭モデルと直販サイトの「マイレッツ倶楽部」でのみ販売されるマイレッツ倶楽部モデルに大別できるが、性能にこだわる人にお勧めしたいのが、マイレッツ倶楽部モデルの中でも、特に高性能なレッツノート J10プレミアムエディションである。

 レッツノート J10プレミアムエディションは、その名の通り、J10の最高峰モデルであり、店頭モデルや通常のマイレッツ倶楽部モデルに比べて仕様が強化されている。J10プレミアムエディションには、インテル® CoreTM i7TMとExpressCardスロットを搭載する上位機種(メモリ標準8GB)と、インテル® CoreTM i5TM搭載でExpressCard非搭載(メモリ標準4GB)の2つのモデルがあるが、ここでは、上位のExpressCardスロット搭載モデル(以下、J10プレミアムエディションExpressCardモデル)を紹介する。

 J10プレミアムエディションExpressCardモデルでは、PCの基本的な処理能力を左右するCPUに、Core i7-2620Mを搭載する。Core i7-2620Mは、開発コードネーム「Sandy Bridge」と呼ばれていた第2世代のCore iシリーズであり、マルチメディア処理を高速化する新命令AVXに対応するほか、内蔵グラフィックス機能が強化され、高速エンコード機能も備えるなど、さまざまな点が進化している。Core i7-2620Mは、デュアルコアCPUだが、1つのコアで同時に2つのスレッドを実行可能なHyper-Threadingテクノロジーに対応しているため、最大4スレッドの同時実行が可能だ。動作クロックは2.7GHzと高く、さらに自動オーバークロック機能のTurbo Boost 2.0により、最大3.4GHzまでクロックが向上するため、非常に高い性能を誇る。春モデルのレッツノート J10(店頭モデルのハイパフォーマンスモデル)と比べて、PCMark05の総合スコアは約1.4倍に向上しているという。

 さらに、J10プレミアムエディションExpressCardモデルでは、標準実装メモリが春モデルのJ10プレミアムエディションの4GBから8GBへと倍増していることも特筆できる。店頭モデルのJ10の標準実装メモリは2GBで、最大でも6GBまでしか増設できないが、J10プレミアムエディションExpressCardモデルでは、標準実装の8GBに8GB SO-DIMMを追加することで、最大16GBまで増設が可能だ(購入時にメモリ8GB追加を選べる)。ネットサーフィンや一般的な文書作成といった用途では、メモリは4GB〜6GB程度あれば不満はないが、デジタル一眼レフなどで撮影した高解像度の写真を複数枚同時に開いてレタッチしたり、フルHD動画の編集などの作業では、メモリを多く実装しているほうがより快適に作業を行える。最近は、モバイルノートPCでも最大8GBまでメモリを増設可能な製品が増えてきたが、16GBまで増設できる製品は、A4スタンダードノートPCでもそれほど多くはない。第2世代Core i7と大容量メモリを搭載したJ10プレミアムエディションExpressCardモデルなら、これまでのモバイルノートPCでは荷が重かった作業でも、楽にこなすことができる。

 参考のために、Windowsエクスペリエンスインデックスを計測してみたところ、プロセッサとメモリが7.1、グラフィックスが4.4、ゲーム用グラフィックスが6.1、プライマリハードディスクが7.0と、モバイルノートPCとは思えない、非常に優秀な結果となった。


  • J10プレミアムエディションExpressCardモデルでは、標準で8GBのメモリを実装しており、SO-DIMMスロットに8GB SO-DIMMを装着することで、最大16GBまで増設できる

  • Windowsエクスペリエンスインデックスを計測したところ。プロセッサとメモリ、プライマリハードディスクのスコアは7以上と、非常に優秀だ

 

高速SSDとクイックブートマネージャーで約10秒の超高速起動を実現

 J10プレミアムエディションのもう一つのウリが、Windowsの超高速起動の実現だ。通常のノートPCの場合、電源オフからWindowsの起動が完了するまでの時間は、速い機種でも30秒程度、遅いものでは1分近くかかることが多いが、J10プレミアムエディションでは、高速SSDの搭載とBIOSの初期化やディスク読み込みなどを高速化する独自のクイックブートマネージャーの搭載によって、電源オフの状態からでも最短約10秒で起動が完了する。前モデルのJ10プレミアムエディションにも、高速SSDとクイックブートマネージャーが搭載されていたが、前モデルの起動時間は約15秒であり、今回の夏モデルではさらに5秒も短縮されている。実際にこの超高速起動を体験してみたが、起動の速さはまさに驚異的であり、あっという間にWindowsが起動するので非常に快適だ。スリープや休止状態からの復帰とほぼ同じような感覚で利用できるので、こまめに電源を切る人に嬉しい。

 SSDを搭載したことで、Windowsの起動だけでなく、さまざまなアプリケーションの起動や機能選択なども非常に高速だ。ファイルを開いたり、コピーするといった、日常よく行う作業も快適で、生産性が大きく向上する。一度、この快適な環境に慣れると、もはやHDD搭載機を使いたくなくなるほどだ。


  • クイックブートマネージャーを利用して、高速起動の設定を行う。クイックブートマネージャーには、2ステップで設定が完了する初心者向けの「かんたん高速起動設定モード」と中上級者向けに細かな設定が可能な「高速起動詳細設定ウィザードモード」の2つのモードが用意されている

  • 高速起動詳細設定ウィザードモードでは、起動高速化に関する設定を自分で選んで有効にできる

 

本体の傷や汚れを防ぎ、気軽に持ち運べるジャケットスタイルを採用

 J10プレミアムエディションExpressCardモデルは、単に高性能なだけでなく、携帯性や堅牢性が高いことも魅力だ。レッツノート Jシリーズでは、ジャケットスタイルと呼ばれる斬新なコンセプトを採用しており、本体を保護する専用ジャケットが付属している。ジャケットは、本体をくるむ形で装着され、落下時などの衝撃をやわらげるだけでなく、本体の傷や汚れも防いでくれる。ジャケットを装着したまま液晶の開閉が可能で、液晶を開閉してもジャケットがずれにくい工夫がされている。また、ジャケットの底面には、ハンドストラップが用意されており、立ったまま片手で安定して持てるのも便利だ。


  • J10プレミアムエディションにジャケットを装着したところ

  • ジャケット装着時のJ10プレミアムエディションを横からみたところ。底面もしっかりカバーされている

  • 液晶を開閉してもジャケットがずれない、ジャケットリンク構造を採用

  • ジャケットの底面にハンドストラップが用意されており、片手でも安定して持てる

 レッツノートシリーズ伝統のタフ設計は、J10プレミアムエディションでもそのまま受け継がれており、動作時の76cm落下試験や100kgfの加圧振動試験をクリアしている(ともにジャケット装着時)。ジャケットを装着しておけば、インナーケースなどに入れずに、そのまま気軽にバッグに入れて持ち運べる。ジャケット装着時のサイズは、幅259mm×奥行185mm×高さ39〜48mmとコンパクトであり、喫茶店のテーブルなど狭い場所でも快適に使える。

 なお、プレミアムエディションではジャケットの色を、ベーシックカラーのシフォンホワイト、パンサーブラック、プレミアムカラーのカーディナルレッド、イーグルブラウンの4色から選択できる。


  • シフォンホワイト(ベーシックカラー)

  • パンサーブラック(ベーシックカラー)

  • カーディナルレッド(プレミアムカラー)

  • イーグルブラウン(プレミアムカラー)

 

見やすいノングレア液晶と入力しやすいリーフ型キーボードを搭載

 液晶ディスプレイは10.1型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。ノングレアタイプの液晶を採用しているため、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目への負担が小さい。キーボードの出来も素晴らしい。本体がコンパクトなため、キーピッチは横方向が17mm、縦方向が14.2mmと、A4スタンダードノートPCなどに比べると狭いが、キートップの形状をリーフ型にすることで、小さくても入力しやすいキーボードを実現している。ポインティングデバイスとしては、レッツノートシリーズではお馴染みの円形ホイールパッドを採用。周囲をクルクル指でなぞることで、連続的なスクロール操作が行えるので便利だ。


  • 液晶ディスプレイは10.1型ワイドで、解像度は1,366×768ドット。ノングレアタイプなので、外光の映り込みが少ない

  • キートップの形状をリーフ型にすることで、誤入力を減らしている。ポインティングデバイスとしてはお馴染みの円形ホイールパッドを搭載

 

新たにUSB 3.0やWiDiに対応、拡張性も十分

 夏モデルのJ10プレミアムエディションExpressCardモデルでは、インターフェース周りも強化されている。春モデルのUSBポートは、USB 2.0×3という構成だったが、夏モデルではUSB 3.0×1とUSB 2.0×2という構成になった。USB 3.0のデータ転送速度は約5Gbpsと、USB 2.0(480Mbps)の10倍以上も高速であり、外付けHDDなどUSB 3.0対応周辺機器の性能をフルに発揮できる。外部ディスプレイ接続用端子としては、HDMI出力とアナログRGB出力を搭載。家庭の大画面テレビなどにもHDMIケーブル1本で気軽に接続できる。さらに、夏モデルでは、インテルが開発したワイヤレスディスプレイ接続技術「WiDi」に対応。WiDiとは、無線LANを利用してワイヤレスで映像と音声を転送する技術であり、ケーブルを使わずに外部ディスプレイに出力が可能である。ただし、WiDiを利用するには、ディスプレイ側にサードパーティから発売されているWiDiアダプターを繋ぐ必要がある。カードスロットとしては、SDメモリーカードスロットとExpressCard/34スロットを搭載。SDメモリーカードスロットは、大容量のSDXC/SDHCカードに対応していることはもちろん、高速転送規格のUHS-Iもサポートしている。また、ExpressCard/34スロットに、ExpressCardを装着することで機能拡張が可能だ。


  • 右側面には、ExpressCard/34スロット、SDメモリーカードスロット、USB 2.0×2、有線LANが用意されている

  • 左側面には、HDMI出力、アナログRGB出力、USB 3.0が用意されている

 

無線LANだけでなく、WiMAXやBluetoothにも対応

本体前面には、ヘッドホン出力やマイク入力、ワイヤレススイッチが用意されている

 ワイヤレス機能が充実していることも魅力だ。店頭モデルのJ10では、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとWiMAXをサポートしているが、J10プレミアムエディションをはじめとするマイレッツ倶楽部で販売されているモデルでは、無線LANとWiMAXに加えて、Bluetooth Ver2.1+EDRも標準で対応しており、スマートにBluetooth対応機器を利用できる。また、本体前面に、ワイヤレス機能をワンタッチでON/OFFできるワイヤレススイッチが用意されていることも評価できる。飛行機の中など電波を出すことが禁じられている場所でも素早くワイヤレス機能をオフにできるので便利だ。

 

2種類のバッテリーパックで最長約12時間の長時間駆動を実現

サイズが同じで容量と重量が異なる2種類のバッテリーパックが用意されている。
大容量バッテリーパックを装着しても、本体の厚みが増したりしないのは嬉しい

 同じサイズで容量と重量が異なる2種類のバッテリーパックが用意されており、駆動時間重視か携帯性重視かで使い分けられるのも嬉しい。大容量のバッテリーパック(L)装着時のJ10プレミアムエディションExpressCardモデルの重量は、ジャケット付きで約1.235kg、ジャケットなしでは約1.02kgしかなく、女性でも楽に持ち運べる。バッテリーパック(L)装着時のバッテリー駆動時間は約12時間と長く、一日持ち歩いて使っても安心だが、そこまでの長時間駆動は必要ないという人は、バッテリーパック(S)を装着することで、重量がジャケット付きで約1.145kg、ジャケットなしで約0.93kgへと軽減される。

 

性能と携帯性にこだわるヘビーモバイラーにお勧め

ビジネスユースにぴったりなWindows 7 Professional

 これまで見てきたように、J10プレミアムエディションExpressCardモデルは、レッツノートシリーズの中で最もコンパクトでありながら、一般的なA4スタンダードノートPCを凌駕する高い性能を実現した製品だといえる。性能と携帯性という、相反する要求を高いレベルで両立させており、現時点での究極のモバイルノートPCといっても過言ではない。その分、店頭モデルに比べると価格は高くなるが、例えば、プロカメラマンがデジタル一眼レフと一緒に持ち歩き、撮影した現場でRAW画像の現像/レタッチをして、すぐに納品したいといった、通常のモバイルノートPCでは荷が重い作業も楽にこなせる。そういった意味では、重さ1kg程度で、Core i7と16GBメモリを搭載可能な製品は他にはなく、唯一無二の存在であるJ10プレミアムエディションExpressCardモデルは、十分価格に見合う価値があるといえる。性能と携帯性の両方にこだわる、ヘビーモバイラーやプロの仕事の道具としてお勧めしたい。
(石井英男)

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