たった15秒の高速起動、ジャケットをまとった パナソニックの新製品Let'snote CF-J9

この秋、パナソニックから新シリーズの製品が発表された。Let'snote Jシリーズだ。ジャケットをまとった非常にユニークな製品だが、同社には同じ10型台の液晶パネルを搭載するノートPCとして、Rシリーズがあった。Jシリーズはそれに代わる新たなレッツノートの中で最も軽くて、コンパクトなモデルとなる。シリーズ名を新しくつけられたLet'snote Jの秘密に迫る。

Rシリーズを継承した新生Jシリーズ

Let'snote CF-J9

Rシリーズに代わり、Let'snoteに加わった新シリーズのCF-J9。取り換え可能なジャケットをまとったユニークな見た目と、15秒でデスクトップを表示できる(店頭・ハイパフォーマンスモデルの場合)高い性能を持つ。


 パナソニックからLet'snoteの新製品CF-J9が発表された。Jシリーズは今までのLet'snoteのラインナップになかった新しいシリーズだ。装着したままモニタ部の開閉が可能な本体一体型カバー、「ジャケット」スタイルを採用した非常にユニークな外見で、液晶パネルにワイドタイプの10.1型モニタを採用しているモバイルPCだ。10型台のモニタを採用している製品と言えば、10.4型パネルを採用するLet'snote Rシリーズがあった。

しかし、Rシリーズはワイドタイプではなく、4:3のアスペクト比のモニタを採用している。そのRシリーズは、このCF-J9が発売されると同時にシリーズが終了することになっているそうだ。パネルのアスペクト比が違うものの、Jシリーズは事実上Rシリーズの後継と考えてよいだろう。そのCF-J9の試用機をお借りすることができたので、機能や性能を使いながら紹介していこう。

通常電圧版のCPU Intel Core iシリーズを採用

 試用機を紹介する前にLet'snoteの販売形態について説明しておこう。Let'snoteを個人で購入する手段は二通りある。店頭で購入する店頭モデルと、Webの直販サイト「マイレッツ倶楽部」で注文して購入する方法だ。マイレッツ倶楽部では、カスタマイズが可能となっているため、自分の用途に合った製品が欲しい場合には、店頭モデルよりも、こちらで購入するほうがよいだろう。

 さて、 試用のモデルのCPUにはCore i5-460M(2.53GHz)を搭載している。資料によると店頭販売モデルのハイパフォーマンスモデルのようだ。CPUは低電圧版や超低電圧版のいわゆるCULV(Consumer Ultra Low Voltage)ではなく、ノートPC向けの通常電圧版CPUを採用している。性能的に一段も二段も落ちるCULV版CPUとは比較にならないパフォーマンスをもつCPUだ。通常電圧版CPUは小型ボディのウルトラモバイルの分野ではめったに採用されない。これは発熱が大きいためだ。CF-J9では、基板面積を小さくしたり、排熱機構を見直したりすることで通常電圧版CPUを採用し、高いパフォーマンスをもつモバイルノートPCとして完成した。また、Core i7やCore i5には、インテル・ターボブーストという1種のオーバークロック機能が組み込まれている。これは、CPUが電圧や温度を監視して、余裕があるときには倍率を変更して定格以上の動作周波数にする機能だ。ソフトウェアによってはCPUのマルチコアに対応していない場合もあるが、その際にも高いパフォーマンスを得ることができる。

 今までのRシリーズと大きく違うのは、ワイドタイプの液晶を採用していることだろう。以前は4:3のアスペクト比のパネルを採用していた機種が多かったのだが、各モデルで段階的にワイドパネルを採用し、残すところはRシリーズのみといった状況であった。今回のCF-J9発表でRシリーズが終息することを考えると、Let'snoteシリーズの全クラスが、ワイドタイプの液晶パネルを採用したことになる。

 そのほかのスペックとしてはストレージに128GBのSSDが搭載されている。メモリは2GB搭載で最大6GBまでの搭載が可能。メモリスロットが一つ空いており、4GBのモジュールを追加することができる。グラフィックス機能はチップセット内蔵機能を利用する。無線機能はIEEE802.11a/b/g/nを搭載するほか、WiMAXも標準で内蔵している。マイレッツ倶楽部で販売するモデルではBluetoothにも対応し、また、ワイヤレスWANかExpressCardスロットのどちらかの搭載が可能。有線LANでの接続も当然可能だ。

ジャケットをまとった ユニークな容姿をチェック

 ここからは、主に外見上の特徴からCF-J9を見ていくことにしよう。前段では、性能面について説明していたためあえて触れなかったが、CF-J9にはLet'snoteだけでなく、ノートPC全体で見た場合にも実にユニークな外見上の特徴がある。それが、取り換え可能なジャケットだ。もちろん、ジャケットを外して使うこともできるが、立ってPCを操作する際には片手をジャケットのハンドストラップに差し込み、もう一方の手で操作をすることができるようになっており、実用面でも役に立つようになっている。ジャケットを付けたまま長時間使用してみたが、熱についても問題ないようだ。ジャケットの取り外しや交換も、プラスのドライバー1本で行える。ネジの形状を考えるとあまり推奨はできないものの、コイン状のものなど身近なものでもドライバーの代わりに使えそうなので、手軽にジャケットを取り外したり交換したりすることができるだろう。ジャケットは黒のパンサーブラックのほかに白のシフォンホワイト、マイレッツ倶楽部限定の赤のカーディナルレッドや茶色のイーグルブラウン、など4種類が用意されており、好きな色のジャケットで個性を主張することができる。


革製のジャケット

ジャケットが目を引くユニークな見た目。写真はパンサーブラックのジャケットを装着しているところ。赤いラインがワンポイントの渋いデザインだ。パネル部両端のジャケットリンク機構により、ジャケットが開閉のジャマをすることはない。
底面のハンドストラップを利用

底面のハンドストラップを利用すれば、手持ちでも安定したPCの操作が可能だ。手触りもよく、がっちりとPCを固定できる。
パネル部分のジャケット取り外し

パネル部分のジャケット取り外し

スライド部分のパーツはフックになっており簡単に外すことができる。
ジャケットなしでも使えるように、フックそのものを外すことも可能だ。
ジャケット装着時の底面部

底面部はジャケットがネジ止めされており、パネル部分を外してからこのネジを外せばジャケットを取り外すことができる。
ジャケットのバリエーション

黒のパンサーブラックと、WEB直販限定の赤のカーディナルレッド、茶色のイーグルブラウン。いずれもワンポイントとして1本のラインが入っており、キリッと芯の通ったデザインだ。写真にはないが白のシフォンホワイトも用意されている。

 インターフェースはジャケットの関係上、手前部分と左右に集中しているが、これは他のLet’snoteシリーズも同じで、踏襲しているとも言える。CF-J9では、すでにレガシーデバイスとなったPC Cardスロットをなくし、USB端子を一つ増やしたと言う。確かに、このサイズのモバイルノートPCでUSB端子を三つ持つ製品はちょっとめずらしいかもしれない。本製品では右に二つ、左に一つのUSB端子を搭載している。USB端子はデスクトップで使う際にキーボードやマウスなどを装着して使うユーザーも多い。そのようなとき、もう一つUSB端子があればと思うこともしばしばだが、そのもう一つを搭載している。外部ディスプレイポートはD-sub15ピンとHDMIの二つを搭載。プレゼンなどに使われるプロジェクタには、DVI端子を搭載するものが最近になって出てきているが、まだまだD-sub15ピンの製品も多いだろう。また、新しい機器に接続するため、もう一つの映像出力にHDMIを採用している点もポイントが高い。手前部分には電源のスライドスイッチとオーディオ関係の端子とワイヤレス機能のON・OFFスイッチがある。

本体左側面

映像出力としてHDMIとD-sub15ピンを備えるほか、USB端子を一つ搭載する。左のスリットは排熱口。通常電圧版CPUを採用するため、高い排熱能力を持つ必要がある。
本体右側面

USB端子が二つと有線LANを搭載する、USB端子は左と合わせると三つで、このサイズのモバイルノートPCとしてはめずらしい。左下にあるスリットはSDメモリーカード用だ。
本体手前面

左から電源のスライドスイッチ、ヘッドホン端子、マイク端子、ワイヤレス機能のスイッチ。電源スイッチとヘッドホン端子の間には、電源と充電のインジケータが用意されている。ちなみに、Let'snoteおなじみのボンネット構造の天板を採用していないが、強度は十分だ。

 キーボードはこのサイズのモバイルPCとしては非常にタイピングしやすく感じた。ここにも独自の秘密があるようだ。実はCF-J9のキーボードは独自の「リーフ型キーボード」を採用しており、ミスタイプを減らすということだ。人の手はキーボードをタイプするときに左上や右下へ移動するとのこと。この点に目を付けたパナソニックはキートップの左上と右下の角の丸みを大きくすることで、指のスムーズな動きをサポートするリーフ型キートップを採用。パナソニックでの検証では10%程度のタイプミスの低減という効果が確認されているとのことだ。爪が当たってタイプミスが起こるというのはある程度の認識はあるが、とくに爪を大事にする女性に見た目にもうれしい新機能と言うか、新形状なのかもしれない。

キーボード部

カーソルキーは下に独立するような形になっており、ファンクションキーも四つごとに隙間をつくるなど、タイプミスの少なくなる配置だ。
リーフ型キートップ

左上と右下の角をなくしたリーフ(木の葉)型のキートップ。目的のキー以外に爪などが当たるのを防ぎ、タイプミスが減ると言う。
ホイール型タッチパッド

Let'snoteにすっかり定着した感のある、円形ホイールパッド。昔のトラックボールのときもそうだが、これを理由にLet'snoteを選択するユーザーも多い。

 また、前述した内蔵WiMAXのアンテナは、モニタのベゼル部分にアンテナが組み込まれている。一般的にはベゼルアンテナの性能はUSB端末などと比較して優秀などと言われているが、実際に筆者の所有するUSB接続のWiMAX端末を利用したところ、アンテナが6本の内、4本しか立たない場所でも、「非常に強い」という電波状態であった。WiMAXは、まだまだ屋内では電波が弱いと言われているが、これは屋内でのテスト結果で、非常に優秀だ。
高性能なベゼルアンテナ

ベゼル部分にはWiMAXのアンテナも内蔵されている。感度がよく、同じ場所でも筆者のUSB接続タイプのWiMAX端末より強い信号を拾っていた。
小さな電源アダプタ

電源アダプタは小型で、本体と一緒に持ち歩いても苦にならない。マイレッツ倶楽部で注文するときにはアダプタを別で購入することができるので、会社と自宅に置いておくのもよいだろう。


15秒でデスクトップが表示されるクイックブートマネージャー

 CF-J9にはノートPCをモバイル、あるいは通常使用でも便利に使える、さまざまなユーティリティソフトが付属している。利用場所に応じてネットワーク環境を切り換える「ネットセレクター2」。プレゼンやデスクトップでの使用時にプロジェクタや外付けモニタを利用して外部モニタの設定を行う「プロジェクターヘルパー」。Windows 7に最初から搭載されている電源管理機能を拡張した「電源プラン拡張ユーティリティ」などなど。

タスクトレイの常駐ソフト

さまざまなユーティリティが用意されており、タスクトレイに常駐している。
ネットセレクター2

ネットワークへの接続方法を選択できるネットセレクター2。複数の接続環境を設定できる。無線LANやWiMAXのON・OFF、IEEE802.11aの有効無効もソフトウェアで管理できる。
WiMAXユーティリティ

WiMAXのON・OFFもソフトウェアで行う。画面の呼び出しはタスクトレイからできる。
プロジェクターヘルパー

プロジェクターヘルパーを使えば、プレゼンや外部モニタ接続時に、あらかじめ設定しておいた接続方法が利用できる。
電源プラン拡張ユーティリティ

電源プラン拡張ユーティリティはWindows標準の電源管理機能よりも分かりやすく、機能も豊富。


 その中でもとくに注目したいユーティリティソフトが「クイックブートマネージャー」だ。これは、電源を入れてからデスクトップが表示されるまでの時間を高速化するユーティリティソフトだ。試用機では未設定であったため、最初に電源を入れてからデスクトップ表示までの時間を計測したところ22秒であった。これでも十分に速いのだが、クイックブートマネージャーで設定を行った結果きっちり15秒でデスクトップが表示されるという結果になった。これは驚異的な速さだ。

 このブート処理を加速させるユーティリティ、仕組としては「BIOSでブートロゴを表示しない」、「Windowsの起動ロゴの非表示」などの単純なもののほか、デバイスやサービスの遅延起動といった、特殊な動作をコントロールしている。前者はPCの知識がある程度あれば個人でもおこなえるが、後者に関してはユーティリティを使って行うしかなく、CF-J9独自の機能だ。このデバイスやサービスの遅延起動は、「デバイスやサービスの読み込みで起動が遅くなるのなら、後から読み込めばよいじゃない」という、コロンブスの卵的な発想から生まれたものだとは思う。しかし、この目の付けどころは非常に鋭く、大きな効果を発揮している。起動からデスクトップの表示までに伴うストレスはPCを使う人ならだれもが感じていることだろう。起動にかかる時間は短ければ短いほどよい。ましてやモバイルPCとしてスイッチを入れればすぐに使えるというのは大きな武器になるだろう。

クイックブートマネージャー その1

クイックブートマネージャーで、Windows 7の起動速度を飛躍的に高めることができる。詳細設定を利用すれば、遅延起動するデバイスやサービスも自分で選択が可能だ。
クイックブートマネージャー その2

かんたん高速起動モードを利用すれば、PCに詳しくなくても、一定の水準までブート速度を速めることができる。
ブートトレーニング

ブートトレーニングを行い、Windowsに起動プロセスを学習させる。再起動を繰り返すことで、起動プロセスを最適化し、起動速度を速める仕組だ。

 さて、モバイルの話が出たところで、サイズや重量についても言及しておこう。本体サイズは幅が251.9mm、奥行きが171.7mm、高さが27.3mm/35.1mm[前部/後部]だ。(ジャケット装着時は、幅 約259mm、奥行 約185mm、高さ 約39mm/48mm[前部/後部]) 幅と奥行きに関しては申し分なく小さい。厚みは少々あるが、持ち歩くのに不便なほどではないだろう。では重量はというとジャケットを含んで1kgちょっとだ。ジャケットを含まなければ1kgを切っている。いずれもバッテリを含んだ重量だ。駆動時間は標準の4セルバッテリで約6.5時間〜8時間、6セルバッテリなら約9.5時間〜12時間となっている。1kg前後なら持って歩いて苦になることはないし、駆動時間も十分。モバイルにうってつけのノートPCだ。

開いてすぐに使いたい

Let'snote CF-J9

プレミアムエディションJシリーズご購入者限定で、購入できる「SAZABYレザージャケット」


 CF-J9は高性能なCPUを搭載し、モバイル運用に堪えられる軽量さを兼ね備えた数少ないモバイルPCの一つだ。WiMAXの搭載など多機能な点も評価が高く、ユニークなジャケットで人とは違うPCをアピールすることもできる。何よりもたったの15秒でPCを使えるようにするクイックブートマネージャーは、PCが起動するのを待てないせっかちな性格の筆者にはグッと訴える機能だ。CF-J9の発売日は店頭モデルが10月15日、マイレッツ倶楽部での発売が10月29日となっている。高い性能と可搬性、高機能。加えてオリジナリティのあふれるLet'snote CF-J9、ぜひ手に取って出かけたい、そんな気分にさせてくれるモバイルPCだ。

(山本 倫弘)


[関連情報]

レッツノートJ(CF-J9)
http://panasonic.jp/pc/products/j9/index.html

Let'snote(レッツノート モバイルパソコン)
http://panasonic.jp/pc/


[関連記事]

パナソニック、SSD 128GBの10.1型モバイル「Let'snote J」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100928_396076.html

パナソニック、「Let'snote J9」新製品発表会を開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100928_396594.html